■感想など■

2012年04月30日

【ボクキミ】34

■■【34】■■

 どの写真も顔は写っていなかった。
 口までは写り込んでいても、鼻から上は必ずカットされているか強烈なボカシかモザイク処理が施されていた。それでも髪型と髪の色は、「彼女」を知る者にはそうとわかってしまうだろう。

 だから哉汰も、わかった。

 これは、「ユウ」だ。

 冬休みに入ってから、ずっと探していた「ユウ」であり「優也」だった。
 腕も肩も胸の半分ほども露出している、ピンクと白で構成された、コルセットかビスチェみたいな形のコスチューム。
 ほっそりとした両腕の先には、精緻なレースの施された上品な白い手袋。
 すらりと長い両足は踝までが透き通るような白さで、その足先は手袋と同じようなレースがあしらわれた純白のソックス。
 右足首にはピンク色をした足首飾りのフリルベルト。
 パールピンクのピンヒールはこれでもかと高く、手を踏みつけたら穴が開きそう。

 それはまさしく、あの「露出過多な魔法っ娘コスチューム」そのものだったからだ。

 だが、違和感もあった。
 強烈な違和感だ。
 それが何なのかハッキリしないまま、哉汰はリンクを辿った。
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2012年04月26日

【ボクキミ】33

■■【33】■■

 クリスマスが過ぎ、年の瀬が迫っても、哉汰は毎日ネットカフェに通い詰めた。
 これではまるで、部屋に引き籠もって日がな一日、具にもつかない非生産的な議論や他人への中傷に明け暮れる屑ニートと同じだ。
 それでも哉汰は、それこそ寝食を忘れてアダルト系掲示板巡りに没頭していた。
 何かとても大切なものが手の指の隙間からすり抜けてしまいそうな、ひりつくような焦燥感と、もう既に何かが失われてしまったような喪失感、そして、何をしても無駄なんじゃないかと諦めてしまいたくなる虚脱感が、哉汰の心を蝕んで、ネットでの情報収集へと狂ったように固執させていた。
 『クロウ=アイズ』での書き込みも膨大になり、他にも存在するウィッチ・ファンサイトの常連にもなった。ライトからディープまで硬軟取り混ぜての会話術も身に付けたし、こちらの情報を嘘にまぶして御馳走に見せかけるテクニックも身に付けた。
 時にはチャットで数時間もウィッチの話で盛り上がることもあった。

 そこで学んだのは、総じてウィッチ・ファンはゲスばかりという、ユウが聞いたら心底落胆するような事実だった。

 特にアングラ系サイトの関連者には、ウィッチを犯す事ばかり考えているファッキンな気違いが多かった。
 たとえば、容姿の美しいウィッチのものであれば、その涙も唾液も汗も尿も嘗めたい、大便さえも食べてみたいと願うスカトロジー愛好者、女性ウィッチを殺して切り刻んで乳房を食べることを「夢」と嘯く猟奇変質者、四肢を切り取って達磨にし、家で飼って精液便所にするのを夢に見るという倒錯愛者などで溢れていた。
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2012年04月23日

【ボクキミ】32

■■【32】■■

 クリスマスイブの朝、哉汰はカナケンに協力を求めた。
 もちろん、この街のウィッチが「ユウ」という名前だということも、そのユウがあの優也であることも、そして自分がそのパートナーであることも、全て伏せて、だ。
 カナケンは学校では有名な筋金入りの「ウィッチ・マニア」だ。
 財力も人脈も親あってのものとはいえ、それを最大限に活用してウィッチを求める思い切りはハンパない。油断すれば、少しの情報からでも隠しておきたい真実へと辿り着いてしまう危険が十分にあった。
 だから今まで哉汰は、なるべく自分からはウィッチ関連で彼と積極的に関わるのを避けていたのだが、ここに至ってはそうも言っていられないと思ったのだ。
 とにかく優也の行方を知りたかった。

 どこにいるのか。

 なにをしているのか。

 ウィッチ・ユウとしてケガレと戦っているのか。

 なぜ魔力補給に来ないのか。
 来られないのだとしたら、それはどうしてなのか。

 カナケンにはただ、この街のウィッチの情報を求めた。
 以前も、二度三度と情報確認や収集に付き合わされたのだ。それを思えば、その後、情報はどうなったのか、ウィッチの存在を確かめられたのか、聞いても何ら不自然ではないはずだ。
 そう思ったのだ。
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【ボクキミ】31

■■【31】■■

 どうしてあんな事をしてしまったのか。

 どうしてあんな事を言ってしまったのか。

 あそこまでするつもりはなかったし、する必要も無かったはずだ。

 一晩寝て朝目覚めると、哉汰は昨晩の自分の行為を思い出して布団の中でゴロゴロとのたうち回った。
 昨日とは打って変わって、まるで憑き物が落ちたように、後悔と懺悔の想いが胸を満たしたのだ。
 どう考えても、昨日の自分のしたことはやりすぎだった。
 罵倒し、肉まんをぶつけ、心の中で何度も「死ね」と叫んだ。
 いつもの自分ならあんなことは絶対にしない。
 たとえ相手が、あの唾棄すべき「便所女」だとしても、だ。
 あれはもう、本気で何かに取り憑かれたとしか思えなかった。
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2012年04月16日

【ボクキミ】30

■■【30】■■

 深夜の0時過ぎに街を走るのは久しぶりだった。
 いつかのケガレ退治の見学以来だろうか。
 哉汰は完全防寒に身を固め、親にバレないように家を抜け出して、自転車を駆って2区画先の優也の家へと走らせた。
 電話もメールも通じない上、ユウの方からも来ないとなると、残るはウルフに連絡を取るか、直接優也の家に行くしかない。そしてウルフへの連絡方法を哉汰が知らない以上、残るは一つだ。
 哉汰はそう思い、自転車を走らせたのだ。
『真っ暗だなー……』
 さすがに真夜中過ぎのため、電気の点いている家はまばらだ。20メートル毎に道を照らす街灯の光だけが頼りだった。
 その中をひた走り、数分後には優也の家の前にいた。
 この街をずっと護ってきたウィッチ親子が住むには少々平凡過ぎる建て売り住宅も、今は玄関の電灯が消え、家中が寝静まっているようだった。
『さすがにもう寝てるよなー……』
 そう思い、帰ろうとした哉汰の目に、玄関脇のポストに突っ込まれた大量の新聞とチラシの束が入った。
「え?」
 もう一度、道路に出てから改めて家全体を眺めると、2階の“雨戸”が、全て閉まっていた。裏に回って中庭を覗くと、1階の雨戸も同様に全て閉まっている。
「まさか旅行……じゃないよな」
 玄関脇のポストの中身は、ここ二日三日の量ではない。少なくとも十日分以上はある。
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2012年04月12日

【ボクキミ】29

■■【29】■■

 いつしか日は過ぎ、12月も後半に差し掛かろうとしていた。
 この一ヶ月、思えば優也とは、学校にいる間はロクに話すことも出来なかった。
 だから、珍しく一緒に登校しようと優也の方から誘われた時、哉汰は純粋に嬉しかった。
 本当に、ただ、嬉しかったのだ。
 今日、12月19日は月曜日で、二学期最後の日だった。
 明日は終業式である。
 そして、待ちに待った冬休みが始まる。
 学校が無い分だけ、もっとユウの力になれるかもしれない。
 いや、なりたい。
 それは登校途中、そんな想いで始めた会話だった。
 少なくとも最初はそうだった。
 だが……。
「なんだよ!? お前、あんな便所女の肩持つのか!?」
 命を賭(と)して人々の生活を、日常を、命を護ろうとしているユウのようなウィッチもいれば、快楽に溺れて人の迷惑を考えない人間の屑のような女もいる。
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2012年04月09日

【ボクキミ】28

■■【28】■■

 気付けば、いつしか哉汰の周囲でも、真っ赤なチョーカーを首に巻いた、あの黒サングラス女性の目撃話が他の生徒の話題に上ることが増えていた。

 曰く、
 混雑したバスの後部座席で、おっぱいを出して隣の男に吸わせていた。
 繁華街のオープンカフェで男とキスしていた。それも軽い挨拶みたいなものじゃなくて、舌を絡ませ唾液を交換するような、ディープでエロいベロチューだった。
 横断歩道を前から男連れで歩いて来たと思ったら、急に男に胸元を開かれて、ノーブラのおっぱいがこぼれ出るのを見た。
 公園の公衆トイレから多くの人間の気配と男の呻き声が聞こえて、不審に思いつつ外で見ていたら、やがて複数の男達がぞろぞろと出てきて、その後少ししてからコートを着たあの女が出てきた。彼らの姿が見えなくなってからトイレに入ってみると、床にはティッシュや使った後のコンドームが散らばり、あの男女の情事特有の、すえた臭いがした。
 ショッピングモール内にある食品スーパーの商品棚の陰で、男に手マン(手で性器を愛撫)させていた。それに気付いた男子生徒は、女のあそこを弄っていた男に「貸してやろうか?」と言われ、怖くなって逃げたらしい。
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2012年04月07日

投稿ミス

 こちらの自動投稿ミスで、一か月先の投稿が公開されてしまいました。
 ので、修正しました。

 コメントリンクから閲覧出来てしまうので、アンディさんのコメントを削除させて頂きました。
 アンディさんには精神的ダメージを与えてしまったようで……申し訳ないです。
 忘れて下さい……と言っても無理かもしれませんが……。
posted by 推力 at 10:54| Comment(0) | TrackBack(0) | ■つれづれ■

2012年04月05日

【ボクキミ】27

■■【27】■■

 その夜、ユウは初めていつもとは違う姿でやってきた。
 あの露出度のやたらと高いエロコスチュームはそのままらしいのだが、上にすっぽりと上半身から太腿までを覆う、ポンチョのようなものを羽織ってきたのだ。
 本人曰く、今日の相手はいつになく強力な奴で、魔力が枯渇して治癒がうまくいかず、胸元にひどい痣が残ってしまったのだという。
 見せてみろと哉汰が言うと、ユウは慌てて彼を押し止め、いつもの魔力補給を行えばすっかり元通りになるから大丈夫と言った。
「カナちゃんが心配するといけないから、こうやって隠してきたんだよ?」
 さすがに痣が恥ずかしいから電気は消してね、とユウは言って、いつもの“ほにゃっ”とした笑顔で哉汰を見つめた。
 今まで一度だって「電気を消して」とか言ったことないのに。
 だが哉汰が気になったのは、そんな事ではなかった。
 ユウの髪の色が、昏い赤……まるでザクロかアメリカンチェリーのような色になっていた事だった。
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2012年04月02日

【ボクキミ】26

■■【26】■■

 その次の日曜日。
 哉汰はまたしてもカナケンに呼び出されて、怪しい目撃情報の確認に奔走していた。
 今日のポイントは、街の東部を流れる比較的大きな河の上流にある水門付近だった。その近くには森林公園があり、シーズンの休日には家族連れが多く集まる憩いの場所でもあった。
 だがオフシーズンの上、日曜とはいえ11月も半ばになれば、人もまばらで証言など取りようもなく、たまに出会うジョギング最中の人とか、犬の散歩中の人などには、あからさまに奇異な目で見られたり無視されたり、時にはあからさまに警戒されたり……と、散々な目に遭った。
 そもそも「この近くでウィッチを見かけませんでしたか?」と直球勝負で聞くのはどうか。
 いくらウィッチの存在が公然に認知されていたとしても、いきなりそんな事を聞かれて答える人もいまい。
「11月13日、日曜日……午後5時25分。目撃例……ゼロ」
 一応、カナケンのケータイに、頼まれた「報告」をメールしておくことにする。
 とりあえず今日の追跡調査の約束は午後3時から5時半だから、これが最後の報告になるだろう。
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