■感想など■

2009年06月29日

第10章「ドキッ!?女だらけの勉強会!?」

■■【3】■■
 映像はその後も、男優と女優の行為を次々とスクリーンに映し出していった。
 女性上位でしばらく膣内でのちんちんの摩擦を楽しんだ女優は、男優が上半身を起こすと、その首に抱きついて、まるで遊園地で父親に甘える幼女のように、甘ったるい笑みを浮かべて安心しきったように身を任せた。
 貪欲なメスの顔だったものが、次の瞬間には無垢な少女の顔をしている――――――。
 自分にはきっとあんな事は出来ない。
 そう圭介は思う。

 体位はやがて体面座位から、正常位になり、男優は女優のHカップの乳房に顔を埋めるようにしながら腰を動かしていた。そして正常位から、今度は横臥後背位(添寝するような格好でのバック)になり、やはり後から女優の豊かな乳房を揉みしだく。
 最後はバックになり、カメラは犬のように四つん這いになった女優の、重たく垂れた乳房が、男優に突き入れられるたびに“ぶるんぶるん”と前後に激しく揺れ動く様を映した。
『痛そうだな』
 圭介はそう思う。
 でもたぶん、その痛みさえも気持ち良いのだろう。
 あられもない声を上げ、全身を紅潮させて、それでも腰を振りペロリとピンクの舌で自分の唇を嘗めてみせる。
 ついさっきの、圭介のように。

 そしてビデオは、男優が女優の背中に射精し、豊かなお尻で拭うように精液を塗り付けて、唐突に終わった。

         §         §         §

 プロジェクターの明かりが消えると、最前列の蛍光灯だけが、突然点灯した。
 熱っぽい顔で“ぼ〜〜〜……”と放心状態にあった圭介は、はっとして、入り口のところに立つ京香を見た。彼女の手は、蛍光灯のスイッチパネルにかかっている。上目使いに圭介の方を見て、妖しい笑みで“にやっ”と笑った。
「セーエキ出した後は、くっだらない三文芝居が続くだけだから、後はパスね」
 パンパンと、ついてもいないホコリを払うような仕草をしてから、壇上に上がって教卓に両手をついき、一同をぐるりと見回した。
「で、どうだった?勉強になった?」
 にっこりと、それはそれは魅力的な笑みで京香は問い掛ける。
「てゆーかぁ、コレ前に見たじゃん」
「えーそうだっけ?」
「ねえ、今日って、アナル拡張じゃなかった?あたし期待してたんだけど」
「変更したんでしょ?ニューフェイスがいるからさぁ」
「イチバン無難だもんねぇ」
「そうそ。グロくないしね」
「でも圭ちゃんのおっぱいなら、アレ、できんじゃねーの?」
「パイズリ?でもさぁ、デカ過ぎて男のチンポ挟んでも中に隠れちゃいそうじゃない?ナメらんなきゃイミ無いじゃん」
「Fなら大丈夫っしょ」
「いいもん持ってるよなぁ……あ〜あ、アタシもキョヌー欲しいよ。キョヌー」
 周りで女子生徒が好き勝手言っても、圭介は何も答えられなかった。
 隣の由香を見ると、なんだか彼女「も」妙な表情で、ひたすら“もじもじ”している。
 今の圭介には、彼女の気持ちがよおくわかった。
 それはもう、分かり過ぎるくらいに。

 あそこが、洪水なのだ。

 “とろとろ”で“くちゅくちゅ”で“ぬるぬる”なのだ。このままだと、スカートにまで染み出してしまいそうな気がした。
 すぐにトイレに行って、それで染み出したぬめりを拭い去りたかった。替えのパンツに履き替えたかった。
 壇上の京香を見る。
 顔は少し赤かったけれど、まったく平気みたいだった。やせ我慢してるようには見えなかった。
『こいつはバケモンか』
 そう思った。
「……今のビデオの……その、どこが勉強になるんだ?」
「なるじゃない」
 『あら?』と、京香はその形の良い眉を上げて圭介を見た。あからさまに『わからなかったの?』という顔をしている。
「男からの服の脱がされ方、キスの仕方、され方、おっぱいの見せ方、指マンの時の反応の仕方、フェラの仕方、その時の表情、パイズリの仕方と顔の見せ方と表情、騎乗位の入り方、男の乳首の愛撫の仕方、騎乗位の時の腰つき、おっぱいの触られ方、誘い方、その時の仕草、体面座位での肌の密着のさせ方、甘え方、正常位での腰の使い方、各体位での顔の見せ方、体の動かし方、男を喜ばせる声の上げ方…………数え上げればキリが無いわよ?」
「ちょ…………待てよ。それ全部出来るわけないだろ!?」
「どうして?」
「だってその……あ、あんなにか、感じてたら、そんなの自分でわかんないじゃないか」
「はあ?」
「はあ?……って……」
 いかにも「驚いた」という顔の京香を見て、圭介の方が驚いた。
 周囲の女生徒も、なんだかクスクスと笑みを漏らしている。
「圭ちゃん、あのね、さっきのアレ、女優が本気で感じてるなんて、思ってないわよね?」
「え?え?え?」
 思ってた。
「あのね、あれはお芝居。演技なの。大体、周りにはスタッフが最低5人はいるのよ?
 そんなとこで本気になれる女は、よっぽどのセックス好きか、男優がめちゃウマか、ドラッグやってるかよ」
「そ……そうなの……?」
「まあ、私達とセックス商売の人とは別だけどね。
 恋とセックスの基本は、いかに男に気取られないように主導権を握るか、よ?本気で感じるのはそれはそれで悪くないけど、全部である必要は無いの。むしろ、70パーセントは感じても、30パーセントはいつも冷めてないとダメ。自分を演出しないと、男はいろんな意味で本気になってくれないから」
 京香が何を言ってるのか、正直、圭介にはよくわからなかった。
「特にセックスで大事なのはね、男に
 『あなたが好きだから、こんなになっちゃうの』
 『あなただけよ?こんな私を見せるのは』
 『あなたが欲しくて欲しくてたまらないの』
 …………って、女が思ってるって思わせること。
 真実がどうあれ、『あなただけ』ってとこが大事なのよ。
 最近の歌にもあったじゃない?
 ベスト・ワンよりもオンリー・ワンなの。
 この女には自分しかいないんだ……って思わせとけば、後は好きにできるから」
「……はあ」
 『好きに』って、なにをどう『好きに』するのだ?
「でも、女がそう思ってるだなんて男に気付かれたらアウト。
 男にはね、『へっ……こいつはもうオレのトリコだぜ』って思わせとくのがイチバンなのよ。
 男ってのは基本的に馬鹿だから、そう思わせておけば操縦もしやすくなるから。
 『可愛い女だ』って思ってくれたら、それでもう勝ったも同然。
 可愛くおねだりして、可愛く怒って、可愛く拗ねて、可愛くキスしてあげれば、男は何でも言うこと聞いてくれるわ」
「はあ……」
「やあねぇ。気の抜けた返事なんてして。圭ちゃんも男として17年間も生きてきたんだから、自分が女の子に対して抱いてた幻想の一つや二つあるでしょ?」
「幻想…………」
「そうよ。幻想。
 男の子は幻想が大好きなの。
 周りを見てみなさいよ。今の世の中には幻想が溢れてるわ。ファンタジーよね。
 男は自分の都合の良い今しか見えないし、見ないし、感じないし、反応しない。
 だからここまで男に都合の良い女性像が氾濫してるの。
 女としては、それを利用しない手は無いわ。
 アダルトビデオなんて、その最たるものよね。ここに出て来るのは、男にとって甘い甘い砂糖菓子みたいな都合の良い女ばっかりだから、いい御手本になる。どうすれば男から見て『可愛い女』『えっちな女』『いやらしい女』『スケベな女』になれるか、その答えが全部詰まってるもの。
 エロゲーでもエロマンガでもエロアニメでもいいけど、ああいうのはキモイから生理的にダメ。
 あんなの見てたら感性が死滅するわ。
 ああいうのを見てシコシコオナってるようなキモ男(お)は、最初から眼中に無いから別にいいんだけど」
「はあ……」
「自分にベタボレな女の子を無下(むげ)に出来る男は、そうそういないわ。
 その上『自分にだけ』『可愛くてえっちでいやらしい女』だったら、大抵の男は落とせる。
 気に入らないところがあっても、相手がこっちに惚れてるうちはどうとでもなるわよ。
 自分に惚れさせておきながら、上手に自分好みの男に変えていけばいいの。
 ほら、よく言うじゃない?
 『歴史は夜、創られる』って。
 イチバン恐いのは男じゃなくて女だっていうのは、歴史や物語が証明してる。
 女は魔物だって言われるのも、それだけ女が男を魅了して自由自在に操る力を持ってるからなのよ。
 聖職者が女を不浄のものって言うのも、別に『お月さん(月経)』で血がドバドバ出るからってだけじゃなくて、神の道を外れさせ、神への愛を奪って独占してしまうからよね、きっと。女の魅力は聖職者にとっても神に勝る魔性の美酒なのよ。
 そうそう。
 『傾国の美姫』って言葉はあっても『傾国の若君』とか『傾国の美少年』なんていう言葉は無いわよね。それに敵国に自分の娘を嫁に差し出して血縁を結び、内側から篭絡していく方法は、古来から西洋でも東洋でも行われていた軍事的にも政治的にも極めて有効な手段だったし……………………って、なんて顔してるのよ圭ちゃん」
「あ……いや……」
 よほど間抜けな顔をしていたらしい。
 眉を顰めて訝しげに見る京香に、圭介は“ふるふる”と首を振った。
「いい?女の価値は、男で決まるの。
 どれだけイイ男を手駒に出来るかで、女の人生が変わっちゃうんだから、いろんな男と関係して、トリコにして、それで自分の価値をどんどん高めていくの。
 安売りなんてもってのほか。
 本気になるのもなるべくBAD(バッド)。
 基本は
『ハートはクール、瞳はゾッコン。オトコのチンポは操縦桿(そうじゅうかん)』
 これよ」
 驚いた。
 ただのエロエロでエッチ大好きなセックスマニアかと思ったら、こんな事を考えていたのか。外見的には清楚なお嬢様然としていて品行方正(ひんこうほうせい)そのものという京香が、まさかこんな事を考えながらいろんな男とえっちしていたなんて、圭介はこれっぽっちも知らなかった。
 『スケベ大魔王』の遥か上をいって宇宙にまで飛び出してるような『エロエロ大魔神』の称号は、まさしくこの女にこそ相応しい気がした。
 なまじ頭が良いだけ、凶悪だと思った。
「オマエ…………今、何人と付き合ってんだ?」
「そうねぇ…………6人くらいかな?」
「6人!?」
「有望なのは3人ね。
 将来モノになりそうなのが1人いるけど、あとの2人はえっちが上手だから。
 あ、でも、寝たのは4人だけよ?」
 まるで、スポーツチームの監督みたいな口調で言った。
「6股してるのがバレたりしないのか?」
「5人は、他にオトコがいるの知ってるからバッティングしてもヘーキ。気をつけなきゃいけないのは1人だけだから大丈夫よ。
 大体、バレるような女は最初からしなきゃいいの。そもそも、そんな資格無いわね」
「……オマエ……その人達のこと、本当に好きなのか?」
「好きよ?当たり前じゃない。
 じゃなけりゃ寝ないし、抱かないし、抱かせないし。
 人を好きになるスタイルに決まりごとなんて無いでしょ?
 その人のどこを好きになるかは人それぞれだし、どこに価値を見出すかも人それぞれ。
 御飯とパンとパスタとお粥のどれか一つを選べって言われても、それぞれにいいところがあって、それぞれに悪いところがあるから、すぐには答えは出せない。
 人が人を好きになる要素だって、それが優しさであったり、地位やお金であったり、社会的立場であったり、若さであったり、テクニックであったり、千差万別でしょ?」
「本命は?」
「ぜんぶ」
 京香はケロッとした顔でそう言うと、
「もちろん、あの人達の期待を裏切らないように、服や化粧品にはしっかりお金をかけるし、エステや毎日のスキンケアにも時間をかけるのは当たり前だと思ってる。女を磨くのは、好きになった男に好きでいてもらうための、最低限の礼儀だわ。
 そしてその分、『いい女を抱ける』ってだけでも神様に感謝して欲しいし、その上『オレを好きでいてくれる』っていう自尊心と満足感を充足してあげるんだから、自分の人生のためにあの人達を天秤にかけるくらい、私には許されて当然の権利じゃない?」
 圭介は何も言えなかった。
 ただ絶句して、壇上の京香の顔を見ていた。
「何かを得ようとするには、それに見合う代償が必要。
 それをちゃんとわかった上で、私は私の生き方を選んだ。
 それに対して文句を言われる筋合いは無いし、言わせない。
 OK?」
 何もかも見透かしたかのような切れ長の美しい目で、圭介と由香を順番に見た。
 その目には決意と自信とプライドが、まるで薄闇の中の「明けの明星」のように強く強く煌(きらめ)いている気が、した。
「だからね、せっかく可愛い女の子になったんだから、出来れば圭ちゃんには、とびっきりのイイオンナになって欲しいのよ。
 かの孫子も言ってるわ。
 『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』ってね。
 今回、この研究会に御招待したのは、そういう意図もあったワケ。
 圭ちゃんには『女』として、『男と女』を知って欲しい。
 そしてそれは、のべっちも了承済みなんだから」
 圭介は“ぎぎぎ……”と壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように、ぎくしゃくとした動きで隣に座る由香へ首を向けた。
「ごめんねぇけーちゃん……。で、でも、私だってまさか“こんなの”だなんて知らなかったから……」
「“こんなの”は失礼ねぇ」
 手を合わせて平身低頭で謝る由香へ、壇上の京香は複雑な表情を浮かべながら嘆息した。
「“圭ちゃんに今イチバン足りないのは『女としての自覚』だ”ってのべっちが言うから、あんなことやこーんなことをいろいろ教えてあげようと思っただけなのに」
「京香ちゃん、だめだよぉ言っちゃぁ……」
「ほお…………そーかそーか……オマエが……」
 ゆらりと立ち上がる圭介を、由香は冷や汗をかきながら引き攣った顔で見上げる。

 LL教室の扉が開いて、由香が圭介に追いかけられながら飛び出してくるまで、あと10秒。
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