■感想など■

2009年06月30日

第10章「ドキッ!?女だらけの勉強会!?」

■■【4】■■
 今日13日は、健康診断、放課後の研究会……と、「女の快感」を覚えてしまった体の、どうしようもないほどの不便さを、まざまざと実感してしまった1日だった。

 結局あの後、由香は由香なりに彼の事を想ってした事だと圭介は理解して、やわらかいほっぺたを30秒ほど“ぐにぐにびみょーん”と引っ張るだけで許してやった。
 それに、なんだかんだ言ってもそれなりに(ものすごく不本意だけど!)勉強になったし、京香を中心としたクラスの中の人間関係もなんとなくわかったし、京香にはなるべく逆らわない方がいい……と学習もしたから、それはそれで(ほんとーにものすごく不本意だったけど!)有意義な時間ではあったのだ。
 さすがに、パンツの中が“とろとろ”に濡れてしまったのは参ったけれど、これはもう慣れるしかないのだろうと想う。
 でも、圭介が本当に困惑して、焦燥して、落胆して、悲嘆までしまったのは、次の日……6月14日の水曜日、からだった。

 健司が、変わってしまったのだ。

 夏休みに行われる水泳部の大会が近いし、これからその大会まで何度か記録会も行われるため、練習量が増えて、朝、一緒に登校出来ないのは、わかる。
 でも、練習が終わるまで待っててやると言っても
「いいよ。夜遅いし、危ないよ」
 と言って先に帰るように言ったり、第一そんな時でも、前ならあのどこか安心出来る牧歌的な微笑みを向けてくれていたのに、こちらを見ようともしてくれない。
 たまに見ても、決して目を合わせないし、すぐに顔を背けてしまう。

 もともと健司とは、2年になってからクラスが分かれて合同授業も一緒になることは無くなっていたのだ。圭介はC組で、健司はE組だったからだ。C組は、美術部で同じ宮森倫子(みやのもり りんこ)のいるD組と合同授業を受け、E組はF組と受けると決まっているのだ。
 2人きりになるなんて事は、それこそほとんど無い。
 廊下で会っても必ず誰か側にいるし、教室に会いに行っても全身から「何か用?」っていう、なんだか拒否されているような感じがして、圭介の方がいたたまれなくなってしまう。顔は前と変わらない笑顔だったりするものだから、違和感はかなりのものだった。
 伊達に8年間付き合ってきたわけじゃい。
 こういう時の健司は、何か嫌な事があったり、不機嫌だったり、何かをじっと一人で考えているのだ。
 原因は、圭介にもなんとなくわかる。
 昨日、2階の渡り廊下にいた健司に、裸の上半身を見られた事だ。
 細い体に似合わないくらいたっぷりと重たく実った乳房を、健司の右1.8、左2.0の目で、バッチリクッキリハッキリと見られてしまった事だ。
 それしか思い当たる事が無い。
 親友がある日突然女になって……いや、女だとわかって、しかもどんどん女っぽくなってゆく。
 髪も、顔も、格好も、着ている服だって、それに化粧……というほどの化粧ではないけれど、紅い唇にはツヤツヤのグロスなんて塗ってるし、それに加えてあの場面だ。
 ある意味、健司の兄貴よりも兄貴みたいに付き合ってきた圭介が、自分の知らない「女」になっているのを視覚的にハッキリと衝撃的瞬間で認識してしまったのだ。
『キモチワルイって…………思ったのかも……』
 圭介は、思いたくないけれどそう思った。
 もし健司がある日突然女になって、胸にでっかいおっぱいが出来たら……たぶん自分も「キモチワルイ」と思うに違いないからだ。
 でも、顔も見てくれないのは、寂しい。
 嫌われたのかもしれないと思うと、哀しい。
 でも、そんな事を健司に聞けるわけないのだ。
「ボクの事、嫌いになった?」
 ……どの顔(ツラ)下げて、聞けるというのか。
 どうしたらいいかわからなかった。
 ただ、日々だけが過ぎていった。
 木曜になり、金曜になり、それでも、結局、アイツの姿だけ遠くに見て、それで一日が過ぎてしまう。
 ただ、昼休みに一度だけ、いつもと同じように圭介と由香と健司でお弁当を食べた事があった。
 その時も、話は普通にするのに、とうとう最後まで健司は圭介の顔を見てはくれなかったのだった。
「健司くんとケンカでもしてるの?」
 由香がそう心配してくれたけれど、話せなかった。
 話したくなかった。
 やっぱり嫌われた。
 気持ち悪いと思われた。
 それを認めるのが、嫌だったから。

 結局、そんな日が続いて、土曜日になった。
 その日は一日中ずっと雨で、どこにも出掛けずに家でごろごろして過ごした。
 ずっと哀しかった。
 ずっと苦しかった。
 アイツと普通に話せない事が、こんなにも辛いだなんて、思いもしなかった。

 話したい。

 顔が見たい。

 また、前みたいにあのでっかい背中を「ばしんっ!」と叩きたい。
 「しっかりしろよオマエよー」とか言いながら、後から硬い尻を蹴り上げてやりたい。
 あの、ごつごつしてて、力強くて、あったかくて頼もしくて、そして優しい手に、もう一度触れたかった。
 アイツの優しい目に映る、自分の顔が、見たかった。
 アイツの家に行こうか?
 そう思った。
 でも行けなかった。
 ケータイでメールしようか?
 でも、なんて打つ?
 以前なら、男だった時なら、きっとこんな時は有無を言わせず家まで押しかけて、
「文句あんなら言え!うだうだしてんじぇねーよ!」
 とか言えたのに。
 ……いや、本当はそうすべきなのだ。そうすれば、また月曜からでも元の関係に戻れるような気がする。
 男だった時と、なにも変わらない態度でさえいれば…………。

 でも、そうこうしているうちに夜になり、夕食になったけれど、母が何を言っても「うん」とか「あー」とか「へー」とかしか返事しなくて、その上、大好きな麻婆豆腐も辛口のはずなのにちっとも辛くなくてあんまり食べられなかった。
 心配してあれこれ言う母に「生理じゃないか?」と、珍しく2日続けて家に帰ってきた父が言ったけれど、キックする気も起きなくて黙ってお風呂に入った。

 母が気を利かせてくれたのか、大好きな柚子の香りの入浴剤が入ったバスタブに身を沈めても、悶々とした気持ちはちっとも治まらなくて、
 圭介は、なんだかもうどうしようもなくなって、
 涙がぽろぽろこぼれて、
 苦しくって切なくって、
 胸がいたくていたくて、
 なんでもいいから紛らわせたくって、

 健司を想って、した。

 それは、アイツを想っての、2回目。
 切なくて切なくて切なくて、泣きながらした2回目。

 ……だった。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/30131185

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★