■感想など■

2009年08月18日

第16章「欲しがるカラダ」

■■【6】■■
 一時間目が終わって保健室に行き、ソラ先生の御小言をたっぷり受けると、桂は教室に戻って自分の席で溜息をついた。
 御小言を聞いている間中、学生相談室でソラ先生の「診察」を受けた記憶が甦り、体が“うずうず”しだしていたけれど、なんとか我慢する事が出来たのは、奇跡に近い。
 あの時の強烈な快美感や、耐え切れず失禁さえしてしまった事を思い返すと、こうして机に突っ伏して目を閉じているだけで、無意識に右手がおっぱいに伸びそうになってしまう。
 もちろん、教室でそんな事をすればあっという間に「変態」のレッテルを貼られてしまうのは目に見えているから、鉄の自制心をフルで総動員しなくてはいけなかったのだけれど。

 教室の喧噪はじっとりとした空気に澱んで肌に纏わりつく。
 おっぱいの谷間や下には早くも汗が溜まって、それがむず痒さを生んでいた。
 今日は制服のミニスカートの下に短パンを履いていて、はしたなくも“がばぁ”と机の下で両脚を開いて“換気”している。
 スカートの端を両手で持って団扇みたいにバタバタ仰いでいると、涼しくは無いけれど蒸れた空気の入れ替えになってキモチ良かった。
「桂ちゃんさぁ……女なんだからそーゆーのやめようよ……」
「あ?」
 机に“べたっ”とほっぺたをつけたまま見上げると、クラスメイトの男子のニキビ顔が見えた。
「そ−ゆーことされると、俺達の夢がガラガラと音を立てて崩れてゆく気がする……」
「そーゆーこと?」
「スカートでばさばさすんなっつーの」
「仕方ねーだろ? 暑いんだから」
「俺達の夢が」
「なーにが夢だ。妄想の間違いだろうが」
 情けない顔をしながら言うクラスメイトの言葉を、“ケッ”と華も恥じらう年頃の女の子としてはひどく不穏当な顔でバッサリと切って捨てた。
「女の子はもっと恥らうべきじゃねーか? もっとこう……さあ……」
「ボクはオマエの妄想のために生きてるワケじゃねーし、そんなものを守る義務もねぇよ」
「女の子ってのは、もっと恥じらいってものを持つもんだろ?」
「はあ?」
「可愛くて、か弱くて、繊細で、もっとなんて言うか、守ってあげたくなるような……」
「キモイ。ウザイ。その上で言うけど、もっと現実の女を見ろ。妄想とかアニメとか漫画だけじゃなくてな」
「桂ちゃん……」
「桂ちゃんゆーな。気持ち悪いから」
 まったくもって容赦が無い。
 男ときたら、身勝手な妄想や願望を女に押し付け過ぎだ。
 そりゃあ嫌われるより好かれた方がいいに決まってるけど、本人の人格も無視して勝手に美化されても、気持ち悪いだけだ。
 もちろん、厳しい由香の『女の子チェック』が入って教育的指導を受けてはいた。
 けれどこの暑さの中では『そんなものは知ったことか』という気分だ。やめさせたかったら、室温が30度を越えない限り冷房が入らないこの学校の経費削減政策をクーデターで打ち倒してから言って欲しい。
 外はすっかり夏模様で、裏山からはうるさいくらいセミの鳴き声が降って来る。
 今日は生徒の誰もが、朝からプールを開放して欲しいと願っているに違いなかった。
「健司はいいよなぁ……」
 しつこい男子生徒の尻を蹴り上げるようにして追い払うと、ふと、水泳部の幼馴染みの顔を思い浮かべた。
 小太りのニキビ顔よりも、はるかに気持ちの良い顔だ。
 朝、一緒に登校したくらいでは全然足りない。
 もっともっとあの顔を見ていたかった……と、桂は思う。

 ちなみに、明日は一学期の終業式ということで、今日は半ドンの4時間授業だ。
 月曜は「古典」「英語W」「国語II」「数学II」だから、教室移動も合同授業も無いし、健司のE組とは時間割が違う上に、先生達も一学期最後の授業という事で授業らしい授業などはしないだろうから、教科書を借りに行くという言い訳も出来ない。
 おまけに昼からは、毎年恒例となっている水泳部で行われる夏の大会前の「3年生の第一次追い出し会」のため、健司は昼食を摂ったらプールに直行するらしく、一緒に帰る事も出来ない。
 昼食は一緒に食べることにしてあるけれど、結果として今日はその時にしか話が出来ないという事になる。
 「つまんないなぁ」と、桂は思う。
 男の時は平気で休み時間に出かけていって、くだらない事とか他愛の無い事とか気軽に話せたのに、女になってからはなにかと理由をつけないと逢いに行けなくなってしまった。
 E組の連中にからかわれるのもシャクだし、盲目的に慕ってくる女子の後輩に騒がれるのも鬱陶しいからだ。
 こうして教室でじっとしている分には静かに過ごす事が出来るけれど、最初の頃は休み時間ごとにそんな下級生の後輩や上級生の「お姉様」方とかに廊下まで呼ばれたりもしていた。
 ようやくここ最近になってからだろうか。
 そんな馬鹿馬鹿しいような騒ぎが沈静化してきたのは。

「なーに黄昏(たそがれ)てんのよ?」
「あひゃっ!?」
 机に突っ伏して“ぐて〜っ”と伸び、首を捻って窓の外を見ていた桂は、突然、小柄な体に不釣合いなほど大きく下方に突出したおっぱいを横から“つつつんっ”と突付かれて飛び上がった。
「あら、可愛い声」
「なっ――ばっ……」
 見れば、恐怖の『エロエロ大魔神』な桑園京香が、机の横にしゃがみ込んで人差し指を1本立てている。
 その指を“くにくに”といやらーしく動かして、“にやぁ”と笑う京香は、やっぱりエロエロだった。
「ほんと、敏感よねぇ……」
「ひとのっ……をっ……突付くなよなっ」
「はいはい。もうそろそろあんたも慣れなさいよね? こんなの、ただの女の子同士のスキンシップじゃないの」
 艶々とした長い黒髪を右手で払いながら立ち上がり、お嬢様然とした少女は、パッチリとした二重で切れ長の目で少々呆れ気味に桂を見た。
 大人しくて優しそうな雰囲気でありながら、その実、気がめちゃくちゃ強くてエロエロで、思わず「姐さん」とでも呼びたくなってしまうような性格の彼女は、女になってからの桂に、何かにつけて目をかけてくれている。時には煩わしくもあるけれど、大体において、後でよくよく考えてみれば実は助かっていた……という事も多かった。
 ……もちろん、単に「面白いから」だけなのかもしれないけれど。
「…………何か用かよ」
「御挨拶ねぇ……せっかく私が夏休みの予定を知らせに来たのに」
 “しっしっ”と、桂の隣の席の、友達と笑い合っていた男子を追い払うと、まるで当然のようにその席にまろやかな形のヒップを乗せて、高く脚を組む。
 京香はそんな仕草が憎らしいくらい良く似合う女の子だった。社会人を含めて6股している女は、やっぱり纏う雰囲気がどこか違うのかもしれない。
「予定?」
「そ。海でしょ? 縁日でしょ? 花火大会でしょ? 盆踊りでしょ?」
 こんな顔していながら、京香は地元で行われる田舎臭い行事が大好きな少女だった。
 社会人で金持ちな男だって引っ掛けて(キープして)いるのだから、適当な理由をつけて親にナイショで海外の避暑地とか南の島とかに行っても良さそうなものだけれど、そこのところは何か深い理由でもあるのかもしれない。
「なにそれ?」
「だから、夏のイベント予定。あ、けーちゃんはもう参加決定だから」
「……問答無用かよ」
「だってぇ……男の子がけーちゃん参加しないならめんどくさいから行かないって言うんですものぉ〜ずるいわぁ〜」
「甘ったるい声を出すな。シナをつくるな。ヘンな目で見るな。乳を揉むな」
「この爆乳ね? この爆乳が男を引き寄せるのね?」
 正面から“ぐわし”と両手で桂のおっぱいを掴み、ぐにぐにと実に嬉しそうに揉み始めた京香に、桂はうんざりした顔で言う。

 不本意ながら、もう女子にはイヤになるくらい揉まれまくったお陰で、今ではさすがの桂も、ただ揉まれただけではさして動揺もしない。これが先週であったら、きっとすぐに体の“スイッチ”が入ってえっちな感じになってしまったところだろう。
 けれど実は、もう朝起きてすぐに1回、学校に来てから1回……と、“自家発電”でえっちな感じは処理済だったりする。
 1時間目の休み時間に保健室へ行き、ソラ先生の“診察”を思い出して疼いた体も、今ではすっかり沈静化していた。
 早くイク方法も覚えた。
 あれにはちょっとしたコツがあって、それを掴んでしまえば絶頂に登りつめるのはさして難しい事ではないのだ。
 ただ、そのままだとパンツがぐしょぐしょになってしまうので生理でもないのにタンポンを入れてナプキンをパンツに貼り付けないといけないのには少々閉口する。
 それに、匂いがどうしても気になるから、ウェットティッシュとフレグランスは必須アイテムだった。
 今だって、他のコスメ女子よりはマシとはいえ、学生にしてはちょっとどうなの? というくらいコロンをつけているから、生活指導担当のアナゴに見咎められたらオシマイな気がする。幸い、担任のはるかちゃんは「女の子」の不都合とデリケートなハートを理解してくれているから、その辺りは寛容なのだけれど、果たして彼女がアナゴに対しても擁護してくれるか? といえば、これは全く期待出来そうにもない。
 けれどそんな習慣にも、すぐに慣れてしまいそうな気がしていた。
『ホント……慣れってコワイなぁ……』
 スカートのポケットに入れたままの、ソラ先生にもらったプラチナ(白金)色の立方体を意識する。
 これが無ければ学校で自慰など出来やしない。
 とはいえ、あるから平気で出来るというものでもない。
 つまりは……まあ、これが「慣れた」という事なのだろう。
 それをたっぷりと思い知ってしまった、女暦ひと月半の桂だった。

「だからやめれって」
「あだっ!」
 以前は「爆乳(ばくちち)」と言っていた単語を今ではすっかり「ばくにゅう」と言いながらいつまでも揉みしだいていた京香の頭に、由香直伝のちょっぷを降らせて、桂は溜息をついた。
「ほらみろ、みんな引いてんだろ?」
 突然始まった桂と京香の「れずぷれー」に、一部の男女は確実に引いていた。
 もっとも、大多数の男子はニヤニヤしながら見ているし、女子に至っては「また始まった」とでも言いたそうな顔で曖昧な笑みを浮かべながら、自分達の会話を続けている。
「これしきで引くなんて、だから童貞と処女はイヤよね」
「不穏当な発言をしないでくれませんか? 桑園議員」
「異議あり。議長は自分が処女だから甘いんだとおもいまーす」
「そういうことを公衆の面前で口にするな」

 ちょっぷ。

「いだっ! もうっ……ホントの事言っただけじゃないの」
「ホントの事言えばいいってもんじゃねぇーの。オマエと一緒にすんな。この『エロエロ大魔神』」
「うふぅ〜ん……ありがとう〜っ」
「いや、誉めてないし」
「実はさ、吉崎とか加原とか金子とかさ、セッティングしてくれってうるさいのよ」
 教室の後でゲラゲラとバカ話に興じている3バカをちらりと肩越しに見やり、京香は小さく肩を竦めた。
「急に話を戻すな」
「休み時間は短いんだから、脱線してたら進まないじゃないのよ。
 で、クラスで何人か集めてさ、とりあえず海に行こうって話になってね」
「一緒に行って楽しい面子とそうでない面子がいると思うけどな」
「やあね。“楽しくする”のよ。せっかくの夏でしょ? アクティブにいかなきゃ」
 見飽きた顔とはいえ、今は男と女だ。
 もう彼らとは、一緒になってバカやってたひと月半前とでは、確実に立っている場所が違う。
 「楽しむ」という言葉の意味が、男同士だった頃とは全く違ってきてしまうのだ。
 かつて男だった桂には、それが目に見えるほどハッキリとわかる。

 彼等が望んでいるのは、「友情」などではない。

 「性愛」なのだ。

 そもそも、かつて、登校途中に必ず、背の低い『圭介』を揶揄するように頭を叩いていった三馬鹿トリオの、吉崎卓巳(たくみ)も加原も金子も、今では立派な『山中桂フリーク(熱狂者)』なのだ。
 もともとそういう「属性」があったのか、はたまた桂という人間が目の前に実際に現れたからなのか、むしゃぶりつきたくなるくらいでっかくて形の良いおっぱいが目の前にぶら下げられたことで、桂がもとは自分達とバカやってた『男』なのだという認識は、彼らの中ではすっかり意識的に封印されてしまったらしい。

 その変化は、なにも三馬鹿トリオばかりではなかった。

 ついひと月半前までは完全に男として通学していたのだから当然と言えば当然なのだけれど、今の桂は男みたいにサッパリした性格で、挙動はといえば、おっぱいが盛大に揺れてもスカートがまくれ上がってもあまり気にしないほど、どうにも無防備。
 それに加えて容姿は、ちょっと生意気そうながらも、可愛らしくあどけない『ロリータ顔』という、まるで少し前の少女漫画の主人公みたいで、セミロングの黒髪は艶やかでやわらかく、その上、体つきもほっそりとして背も低い。
 口が少々悪くて自分の事を「ボク」と言い、しかも細くて頼り無いくらいの体躯にちっとも見合っていない“どかん”としたでっかいおっぱいを持っていれば、個人的な嗜好はともかく興味を抱かない男子はいないだろう。それは、ここ数年、着実に男性誌の紙面で数を増やしてきたセクシャル系グラビアアイドルの傾向と(少なくとも中身以外の部分は)バッチリ合致するからだ。

 それはこの学校の男子達にしてみれば、超人気グラビアアイドル(にも劣らない極上の美少女)が同じ学校に通っているようなものであった。
 にも増して、健康診断の時に撮られた桂の上半身裸の写真や、“どこの誰が撮ったかわからないけれど”『画像処理をされていても確実に桂だとわかる隠し撮り映像』などが、パソコンを持つ男子生徒の間でネットを介してやり取りされるに至って、桂を狙う男子は“爆乳化”以前とは比較にならないくらい水面下で“冷蔵庫の裏の茶色い奴”並みに増え続けていた。
 にもかかわらず、そんなアンダーグラウンドの動きに桂本人が気付かないのは、それらの写真や映像が、男子の口頭のみならず、メディアやネットに流出しないからであろうか。
 それは涼子の『メッセージ』による精神コントロールと強烈な「刷り込み」によって、情報が在校生だけに封じ込められているからであった。誰もが、「桂に関するあらゆるデータを自分達以外の人間に見せたり流布したりすること」に、強烈な罪悪感と忌避感、嫌悪感を抱いてしまうのである。

「けーちゃん狙いの男子は他にもいるんだけど、みんなこれでも遠慮してんのよ?
 なにしろけーちゃんには、ちゃあんと『意中の人』がいるみたいだしぃ」
 意味深な京香の言葉に、桂の顔がトマトみたいに一気に“ぼんっ”と赤く染まった。
「なっ……なんだよそれっ……そっそんなのオマっ、わかっ」
「『そんなのオマエにわかるわけない?』そう思ってるのはけーちゃんだけ」
「由香かっ!?」
「あ、のべっちに問いただしても無駄。別にあの子に聞いたわけじゃないもん」
 『どうして名前を呼ばれたのかわからない』といった顔の由香を“ギッ”と睨み付けた桂に、京香は“ふふふーん”と笑ってみせた。
「相手は男の子でしょ?」
 そっぽ向く桂の顔を覗き込むようにして、京香は実に嬉しそうに聞いてくる。
「……さあね」
「E組の子でしょ」
「ちがう」
「けん」
「言ったら殴る」
 血走った目で「本気」と書いて「マジ」な桂の顔を見て、京香は気にした様子も無く肩を竦めた。
「別に恥ずかしい事じゃないと思うけどなあ。けーちゃん、今は女の子なんだもん。
 男の子として生きてきても、これからは女の子として生きるわけでしょ?
 そりゃ確かに、男だったのに急に女になったからって男を好きにならなくちゃいけないって事は無いけど、でもだからといって、女の子になっても男の気持ちを持ち続けなくちゃいけない……なんて、そんなバカな事は無いし。
 相手が誰だろうと、それを他人がとやかく言うのは間違ってるわよ」
「みんながみんな、そう思ってくれるわけじゃないだろ?」
「そりゃあまあ、そうだけど」
 肩を竦め唇を突き出して眉を顰める京香は、歳相応の少女の顔をしていた。
 6股で男と付き合っていると、納得ずくの付き合いとはいえ、やはりそれなりに苦労はあるのだろう。
 と、桂は思う。

 ――別にわかりたいとは思わなかったけれど。

「で? それと夏のイベント目白押しと、どんな関係があるんだ?」
「そうそう。で、けーちゃんって、まだ女の子してから日が浅いじゃない?
 だからさ、『男に好かれる女の子』目指すんなら、より多くの男と遊ぶのが一番だと思うわけ」
「べつに『男に好かれる女の子』なんて目指してないぞ?」
「でも、『意中の人には好かれたいわけでしょ?」
「……うぅぅ…………。でっ、でもっボクはずっと男としてヤツらに混じってたわけだし……」
「ちゃんと知ってるって? 甘い甘い。男ってのは友達に対する顔と女に対する顔は全然違うんだから」
「……ボクは使い分けたりなんかしなかったぞ?」
「それはけーちゃんが『おこちゃま』だったからよ」
「なんだよそれ」
「けーちゃん、色恋に興味無かったでしょ? 好きな女の子とかいた?」
「いっ……いたぞっ」
「いつ?」
「…………小学校の時とか……」
「はっ」
 鼻で笑われた。
「あそこに毛も生えないうちの『好き』なんてのは、『ママが好き』と同じレベルの話よ?
 恋とか愛とかいう以前のレベルね」
「そーゆーオマエはどう…………いい……言わなくて」
 周囲の生徒達の視線がいつの間にか自分達に集中している事に気付いた桂は、嬉しそうに何か言いかけた京香の口を慌てて塞いだ。

 それから京香は休み時間になると桂のところまでやってきて、時にはトイレまでついてきたりしながら、夏休みに入ってからの計画を話した。その計画は思ったよりも細かくて、なんだかもうイロイロと進んでしまっているようにも思えて、正直ちょっと恐かった。
 けれど、そんな話でもずっと聞いていると、最初は乗り気ではなかった桂も、いつしかその夏休みのイベント計画とやらについて思いを馳せてしまうから不思議だった。
 このままいけば、たぶん8月に入ってすぐあたりに3回目の生理がくる。
 そうすれば桂は完全に性が固定され、女としての人生が本格的に始まるわけだ。
 そうなったら、京香の話に乗って、健司も無理矢理連れ出して、海に行くのもいい。
『それで……』
 今度は布地ギリギリな「あたまわるい」ビキニでも着て、健司を悩殺してやるのもいいかな……なんてことを、この時の桂は考えていたのだった。

 昼休みになって、いつものようにいつもの3人で昼食を取っている時、桂はE組の河野内が、夏休みを前に突然転校した事を健司から聞いた。
 桂は河野内という男子生徒については、何の感慨も抱いていないし、それどころか、以前E組の教室の前で、彼のせいで不快な想いを味あわされたため、むしろせいせいしたという感想しか抱けなかった。
 記憶の片隅にある何かが“ぞわり”とした不快感を胸に黒い染みのように浮かび上がらせたものの、隣で揚げ豆腐の甘煮をパクつく健司を見ていたら、そんなものは綺麗サッパリ消えてしまった。

 ちなみに。

 昼食は、健司を見ているだけでほとんど食べ物が喉を通らなくて、食べ終わってすぐにトイレに駆け込んで今日3回目の自慰をしてしまったのは、ホントのホントに誰にも言えない秘密だ。
 食事をしながらあそこをとろとろに濡らすなんて、ますますヘンタイっぽい方向に体が傾いていくような気がしたけれど、それもあと2週間足らずと思えば、目をつぶってもいいかな……と思い始めている。
 ……それに。

 気持ちいいのは、結局……嫌いじゃないのだから。
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