■感想など■

2009年08月27日

第18章「ラヴ・セックス」

■■【3】■■
「いいか? ぜったいそれ取るなよ? 取ったらひどいからな」
 目隠しをしながら入って来る健司を見ながら、桂は噛み付くように言った。
 彼はタオルをバンダナのように頭で結び、鼻のところまで下げて目隠しをしている。
 ふと、手探りで入ってくる彼の、股間を隠すもう一枚のタオルから彼の“立派過ぎる”性器がちらりと覗いて、桂はその大きさに“ぎょっ”と目を見開き、バスタブの中で身を引いてしまった。
『ちんちん、でっっけー…………』
 女になってから一度、学校のプールの更衣室で水着姿の健司を見た事があったけれど、あの時は水着を着ていたからちんちんの大きさはわからなかった。
 それが今は、こんなにも近くで見ている……。
 もう興奮してしまっているのか、ギンギンに勃起しているのが、さすがにちょっと恐かった。
 中学の修学旅行で一緒に風呂に入った時は、当たり前と言えば当たり前だけど勃起なんてしていなかったから、彼のモノがこうなっているところを見るのは今日が初めてだ。
「けーちゃん、ちょっと端に寄ってくれる?」
「あ、うん……」
 バスタブを跨ぎ、目の前を逞しいちんちんが通り過ぎるのを、顔を真っ赤にして“ぽかん”と呆れたように口を開けたまま見送った。
『でも……』
 健司が自分に対して勃起しているという事実は、少し変な気持ちで、結構、嬉しかったり……した。
 なぜならそれは、ノーマルな彼が自分を完全に『女』として見てくれている結果だと思えたから。
「ふぅ〜……」
「健司……オヤジくさい」
 桂の言葉に「やだなぁ」と、ちっとも嫌だとは思っていない顔で笑う健司を見ながら、彼女は湯面に鼻まで潜って、ぶくぶくと泡を吹く。
 目の前の水面下に、彼の逞しく勃起したモノが見えていた。

 これが、ここに入るのかぁ……。

 本当に全部……入るのかなぁ……。

 思わずお湯の中でゆらめく自分の下腹部を見てしまう。
 小さいながら、自分にもあの男性器があったとは、もう信じられない。
 すっかり、「オンナノコ」の“肉の亀裂”に慣れてしまい、それこそが自分の体の本当の姿と思ってしまうようになった今では。
 タンポンは、入った。
 指も、入った。
 でも、健司のアレが入るなんて、とても信じられなかった。
『裂けちゃうかも……』
 考えるだけで、のぼせてしまいそうだった。
「いつ以来かな?」
「……え? なに?」
「一緒にお風呂に入るの。修学旅行が最後かな?」
「…………どうかな? そうだっけ?」
 バスタブは思ったよりも広く、もしこれが由香と2人だったら十分余裕だっただろう。
 けれど健司の大きな体と一緒では、こうして対面で入っていても、どうしても、彼の脹脛に腰が触れてしまう。
「んっ……」
「どうしたの?」
「ば、ばか。あんまり動くな」
「え? う、うん」
 健司が身じろぎするたび、彼の脚が腰に触れ、擦れる。その刺激が背筋を走り抜けて首筋を“ぞくぞく”と撫で、折り返して腰の奥にあるオンナの臓器を震わせた。
 そんな中でも、いざとなったら女は肝が据わってしまうものなのか、そのうち、健司の裸を観察する余裕すら出てくるから不思議だった。自分は見えても、相手は目を塞がれて見えない……という状況も、それを助けている気がする。
 健司の体は、もう何度も見ているけれど、男ではない女の目で、心で、感覚で見ると、うっとりするくらい逞しく、しなやかで、頼もしそうに見える。
 水泳で鍛えられた腕と肩は大きく、太く、酷使される強靭な肺と心臓を収めた胸板は、呆れるくらい厚い。
 これが、本当にあのいぢめられっ子だった健司なのだろうか?
 小学校の時は、絶対に自分からは喧嘩なんてしなくて、『笑顔の仮面』をいつも浮かべていて、だからこそ余計にいぢめられていて、『圭介』が結果として助ける形になってからはいつも『圭介』の後をついてまわっていた、あの健司なのだろうか?
「やっぱ、2人だと狭いね」
「オマエがでっかいんだ。……ったく……節操無くでかくなりやがって」
 お湯を掬い、じゃぶじゃぶと顔を洗う。涙も鼻水も涎も雨も、すべて綺麗に洗い流してタオルで拭うと、ようやく人心地ついた気がした。
 考えてみれば、そんなめちゃめちゃでぐちゃぐちゃな顔のまま健司とキスしたのだ。
 そう思うと、今さらのようにとてつもなく恥かしさが込み上げてくる。
「……俺、けーちゃんを護れるくらい強くなりたかった」
 ポツリと、健司が呟く。
 不意の言葉に胸を突かれ、桂は思わず口篭もった。
「な、なんだよ……お、男を護りたいって思うのは、ヘンだろ」
「けど、そう思ったんだ」
「……いつから?」
「……わかんない。もうずっと前から、かも。
 けーちゃんは俺のヒーローだったからね。
 護られてばかりだったから、悔しかったのかも」
「なんだよそれ」
 ばしゃっと健司にお湯をかける。かけながら、どうしようもなく可笑しくて、桂は笑った。

 少女の笑いの発作が治まると、健司はちょっと口篭もりながら、彼女を「抱っこしたい」と、言った。
「ダメ」

 即答だった。

「どうして?」
「……どうしても」
「どうしてもダメ?」
「……なんでそんなにしたがるんだ!?」
「ん〜…………なんか、ぎゅってしたい」
「…………どうしても……したいのか?」
「うん」

 即答だった。

 桂は諦めて、しぶしぶ了解し、少しふらつきながら湯船の中で体の方向を変えた。
「変なトコ触るなよ?」
「……努力する」
「ナニ笑ってんだ、ばか」
 健司の両脚の間に腰を下ろすと、桂の小さな体がすっぽりと納まってしまった。
 つるりとしたお尻に何かが当たって、少し揺すってみた桂は、それが健司の股間のモノだと知って体を硬くした。
 たちまち、やーらかい桂の身体に、勃起のおさまりかけていた健司のソレが反応する。
「ばか。ちんちんでっかくすんな」
「無理だよ」
「…………ボクの身体に……はんのー……したのか?」
「そうだよ。だってさっきも言ったじゃない。
 俺はけーちゃんにえっちなことしたいって思ってる……って」
「…………ばか……」
 お湯と健司の言葉と彼の匂いと体温と……それら様々なものが桂を心地良く酔わせ、とろかしてゆく。
「おっぱい浮いてる。巨乳って本当に水に浮くんだ……」
「きょにゅーってゆーな。……ってゆーか、オマエ、見えてるな?」
「見えてないよ?」
「ウソつけ」
「心の目で見てるから」
 真面目くさった健司の言葉に、桂の唇から笑みがこぼれる。
「ばか」
 実を言えば、目隠しのタオルの下から、健司には全てが見えていた。
 少女の細いうなじも、華奢な肩も、肩越しに見える、お湯に“ぷかり”と浮いたでっかいおっぱいも。
 風呂に入る時にアップにして、髪留めの輪ゴムで留めたのだろう黒髪から、ふんわりといいにおいが立ち昇ってくる。
 これは、少女が男だった時には絶対に感じなかった「オンナノコ」の匂いだった。
 今、自分の胸の中には、やわらかく、あたたく、芳しく、可愛らしい「オンナノコ」の裸の体がある。
 それを自覚するたびに体の奥からふつふつと湧き起こるマグマのような熱い欲望を、強引に抑え込むには限界があった。
 このままでは、とても耐えられそうにないのだ。
 健司は、とりあえず少しだけ自分に正直になる事に決め、彼女に
「おっぱい触っていい?」
 と、聞いた。
 少女は息を呑み、体を強張らせて、そしておずおずと体を預けてくる。
「スケベ」
 言葉にはトゲがあったけれど、決して怒ってはいなかった。
「やーらしいな。健司は」
「だって……」
「……………………………………………………いいよ……」
「ホント?」
「い、いいけど、痛くすんなよ?」
「うん」
 桂は、自分でもどうして許したのかわからなかった。
 気がついたら、許可していた。
 本当は自分でも、きっとして欲しかったのだろう、と思う。
 けれど、自分から言う事など出来なかったのだ。
 つまり健司の方から「触りたい」と言ったのを、これ幸いにと利用したのである。

 そんな自分を、桂は「我ながらずるいよな……」と、思わなくもない。

 そう思いながら、これが“女のズルさ”なのかもしれないと、性差を理由にしてみたくもなる。
 いつか、あのエロエロ大魔神の桑園京香が、例の“特別教室”で言っていた。
『つまるところ恋愛ってのは闘いで、将来、より良い子孫を残すための試練なのよ。
 だから闘わなくちゃいけないし逃げちゃいけないし誤魔化してもいけないの。
 狙い定めたら躊躇っちゃダメよ。負けたくないならね。
 利用出来るものはなんでも利用して、絶対に負けるもんかって思わなくちゃダメ。
 え? 何に負けるのかって? そんなの決まってるじゃないの。
 男にでも世間にでも世界にでもライバルの“メス”にでもなく、自分自身に、よ』

 そう考えれば、やはり自分は「女」なのだと、思う。

 「本当に女になった」のだ、と思う。

 ほんの少し前まで、その認識は桂を落ち込ませ、暗くさせた。
 男のメンタリティと記憶を色濃く持ったままの桂には、その認識はあまりにも重過ぎたからだ。
 けれど、今はそれがひどく嬉しい。
 そう思える自分が、今は嬉しい。
「……っ……」
 健司の大きな両手が脇から回され、お湯にぷかりと浮いたおっぱいを下から掬い上げるようにして持ち上げる。
 こうして改めて自分ではない手によって寄せて上げられると、まるでお尻が前についたみたいに思えるほど大きい。
 女になってからの桂の小さい手では、掴んでもぜんぜん掴みきれない大きさだ。
 健司の太い指の間から肉が盛り上がって“ぷりゅぷりゅ”と弾力で指をはじく。彼の手は指をいっぱいに開いて桂の胸を包むけれど、彼の大きな手でもってしても彼女の重たく実った胸を包むのは無理のようだった。
 健司の指の間から盛り上がる乳肉のやわらかさは、彼をよほど惹き付けたようで、何度も何度も何度も執拗に桂の胸を揉みたて、捏ね、ぷるぷると震わせた。
「……んっ……ばっばかっ……あんまり……遊ぶなっ……」
「あ、ごめん」
 桂の抗議に、健司の手の動きがゆるやかになる。興奮の余りか急いて少し乱暴だった動きが、もっちりとした手に吸い付くように滑らかな、彼女の肌の感触を楽しむかのように変化したのだ。
 そんな健司の手は、ごつごつしてて、力強くて、あったかくて頼もしくて、そして優しかった。
「…………ぁ……」
 やがて桂は安心して彼に体を任せきり、男の手が生み出す快楽の波に全身を震わせながら小さく声を洩らした。
 後から厚い胸板にだっこされている幸福感で胸が詰まり、目に涙がいっぱいに溜まって、瞼を開けばぽろぽろとこぼれる。健司の両手はあくまで優しく優しく、まるでこわれものを扱うみたいに桂の大きくて重たくてやわらかい乳房を扱った。
『ああ……これ……』
 この光景、この感覚、この喜び……。

 すべてが、いつか見た夢の通りだった。

「なんか…………すごい、ねぇ……」
「……な、なにがだよ」
 声が上ずってしまったのは、それはもう仕方ないと思う。
「重くない?」
「重いに決まってんだろ?」
 もったりとして重たくてやわらかくて、ちっちゃい体にはとっても不似合いな、健司の手にも余りそうなおっぱい。
 そのおっぱいを自分が自由にしているという事実は、健司を容易に興奮させる。
「……けーちゃん、いい匂い、する」
「…………ばか……匂いなんか……嗅ぐな……」
 はっ……と大きく吐息を吐き、“くたぁ”と肩に頭を持たせかけてくる桂の髪から、首筋から、とんでもなく甘く優しい匂いが立ち昇ってきていた。
 さっきより、もっともっと『濃く』なった気さえする。
『でも……ほんと……いい匂い……』
 肌を合わせて初めて気付く匂いというのは、そこはかとなくエッチだ。
 健司はそう思う。
 実際、健司のまだまだ知らない部分がいっぱいある、この「け−ちゃん」は、今まで感じた事がないくらいいーにおいが、した。
 汗も、吐息も、髪のにおいも、ものすごく、いーにおいが、した。
 やっぱり女の子なんだな、と思う。
 もう、ぜんぶ女の子なんだなぁと、思う。
「だめ……」
 ドキンと、した。
 甘く、とろけるような、それでいてどこかむずがるような声が、桂の唇を割り耳に届いたのだ。
「どうしたの?」
「……熱い…………のぼせたみたい……」
「もう、出る?」
 健司の問いに、まるで子供のように“こくり”と頷き、ふらふらしながら無防備に立ち上がった。
 目の前に、ハート型をした、思ったより豊かなヒップが現れ、お湯が滑らかな肌を滑り落ちてゆく。
 屈んでバスタブの縁に両手をかけると、ちっちゃな体の脇から、似つかわしくない大きさのおっぱいが、重力に引かれるまま冬瓜か椰子の実のようにもったりと重たく垂れ下がっているのが、見えた。
 健司は、彼女の頭くらいの大きさがあるようにすら見えるそのでっかいおっぱいからお湯の雫ががぽたぽたと湯船に落ちるのを見ながら、思わずお湯の中で両手の指を“わきわき”と動かしてみてしまう。
 たった今まで、自分は“あの”けーちゃんの“この”やーらかいおっぱいを触っていたんだなぁ……と思うと、それだけでなんだか不思議な気分になり、深い感慨を抱いてしまうのだ。
 それともちろん、それに負けないくらいえっちな気持ちも。
 さっきから、股間のモノがとんでもない状態になっているのだから、否定しようもない。
「ふぅ……」
 小さく吐息を吐いた桂が、あろうことか健司の側の脚を上げて湯船を跨いだ。
 たぶん、完全に無意識なのだろう。
 お尻のワレメから、可愛いお尻の穴や、柏餅のように折り重なりやわらかく潰れた大陰唇が見えた。
「あ」
 思わず声を上げた健司に、少女はようやく気付いたかのように“ふらっ”としながら後手で股間を隠す。
 身体を捻って後を振り返った拍子に、豊かなおっぱいが“ふるんっ”と揺れて飛沫が飛んだ。
「見るな。ばか。すけべ」
 顔が真っ赤なのは、決して湯当たりしたばかりというわけでもなさそうだ。
 全身を綺麗なピンクに染めて、たまらなく色っぽくなった桂は、ちょっとふらつきながらバスルームを出て行った。
 力が入っていないのか、全身がしなやかにうねり、腰が揺れ、ヒップを左右に振っている。ハイヒールも履いていないのに、自然体でモンローウォークになっていた。
『うわぁ……』
 健司は見てはいけないものを見てしまったような、そんなむず痒い気持ちになり、今まで以上に硬くなってしまった股間のモノを無意識に右手で掴んでいた。
 湯船の縁に腰掛け、見下ろせば、その“激情”は“びくんびくん”と脈動してさえ、いる。

 ――えっち、したい。

 でも、無理にえっちしないと、決めたばかりなのだ。
『俺も……のぼせそう……』
 もう少し頭を冷やしてから出よう。
 健司はそう思い、大きく息を吐いた。
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