■感想など■

2009年08月28日

第18章「ラヴ・セックス」

■■【4】■■
 彼がようやくいきり立ったものを鎮めてバスルームから出ると、桂はうつ伏せのままベッドの上で伸びていた。
 濡れた体を適当に拭いてシーツを引き寄せ、お尻だけ隠しているけれど、しっとりとしてクリームを塗ったように艶やかな背中は剥き出しのままで、天井の照明の下で呼吸に合わせ、ゆっくりと上下している。
 裸の上半身の脇から、大きなおっぱいが“ぷにゅっ”とはみ出て見えているのが、そこはかとなくえっちだ。
「……けーちゃん、胸……つぶれちゃうよ?」
 バスタオルを腰に巻いてベッドに腰掛けた健司は、再び熱くなる男根の根元を意識しながら、桂のホクロ一つ無い滑らかな背中を見やる。
「あ? ……うん……」
 そんな健司の前で、桂がぼんやりとした目付きのまま“ころっ”とあおむけになると、体の動きに合わせてものすごく重たそうな乳肉が、“たゆんっ”と左右に揺れた。
「ばか……見んな……」
「ご、ごめんっ」
 そのおっぱいの動きに目を奪われ、思わずじっと注視してしまった健司に、桂は溜息のような声で抗議する。
 ぐったりしてぽわぽわした気分の桂には、それでも健司がおっぱいに魅入られたように、今も見つめ続けていることに気付いている。
 気付いていて、それでも隠そうとしないのは、自分の中の『覚悟』を定めるつもり……だったからかもしれない。
 呼吸するたびにゆらゆらゆれる桂のおっぱいから、健司は思い切って目を引き離すと、名残惜しそうにちらちらと見ながら冷蔵庫の中からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
 そして、両肘を立てて上半身を少し起こした桂に渡すと、挙動不審に目をきょろきょろさせながらベッドに座った。
 桂のおっぱいは、彼女が体を中途半端に起こしているために少し横に流れ、そのため、ただ立っている時よりも遥かに豊かに見える。こんもりと大きく盛り上がった乳肉がやわらかく双丘を形作り、頂点の赤い乳首を鮮やかに印象付けているのだ。
 桂はミネラルウォーターをこくこくと飲みながら、いたづらっぽく健司を見た。
 口元からわざと水をこぼし胸元に水滴を落とすと、水滴は双丘の間を滑り落ちてヘソの窪みに溜まった。
 その動きを、健司の視線が追う。
 桂は、自分が小悪魔か性悪女にでもなったような気分になり、口元にいぢわるな笑みを浮かべた。
「……健司って……えっちだよなぁ……」
「ええっ!?」
「だって、さっきからボクのおっぱいばっかり見てる」
「だ……だってさぁ……」
「オマエ、おっぱい好きだろ? おっぱいせーじんだもんなぁ……」
「…………いや、まあ……」
「えっち。すけべ」
「ひどいなぁ」
 もじもじとして照れまくる、大きな背中が愛しかった。
 桂はヘッドボード代わりの照明コンソール横にボトルを置くと、再びベッドに横になって天井を見上げた。
 天井の鏡には、シーツから腰から上を出した裸の女が映っている。
 その顔は、緊張と恐れを、ひどく幸せそうな微笑みの中に潜ませていた。

 恐い。

 でも、嬉しい。

 恐いのは、たぶん一瞬だ。

 一呼吸。

 震える唇を嘗め、目を瞑った。

 ――覚悟、完了。

「…………ボクのおっぱい、どう?」
 桂の問いに、健司はほとんど間を置かずに答える。
「きれいだと思うよ」
「おもう?」
「きれい」
 律儀に言い直す健司に、桂は“ふふっ”と笑った。
「けんじ……」
 今まで聞いたことも無いくらい甘ったるい声に、健司が振り返ると、桂はまるで
『だっこして』
 とでも言うように手を伸ばしていた。
 桂は、おずおずと伸ばされる彼の腕に掴まり、起き上がって、全身でしがみつく。
 そのまま“ぎゅうぅ”と抱き締めて、どぎまぎと体を硬直させた健司の裸の胸に、キスをした。

 触れたい。

 もっと触れたい。

 感じたい。

 その気持ちが溢れて、こぼれて、止めようも無かった。
 大きく背を伸ばし、剃り残しでもあるのか、少しちくちくする健司のほっぺたに、猫のようにすりすりと頬を摺り寄せ、御馳走を待ち望む犬のように「くうん……」と甘えて鼻を鳴らした。
 自分にもこんなマネが出来るのか……と心のどこかで冷静に見つめながらも、そうしてしまえる嬉しさにどんどんと“濡れて”ゆく。
 ――“溺れて”ゆく。
「け……けーちゃん」
 いやいやと媚びた視線で健司の喉仏を“はむっ”と唇で甘噛みし、汗で少ししょっぱい喉元から鎖骨までをぺろぺろと舐める。

 うるさい。
 好きにさせるの。

「あっ」
 オンナノコのように声を上げる健司が愛しくて可笑しくて可愛くて、夢中になって嘗めた。

 汗の匂い。

 男の匂い。

 他の男では感じない、濃密で芳醇な香り。

 その陶酔へと導く淫靡な芳香に、体が震えた。
 桂は嬉しくて嬉しくて仕方が無いという顔で、健司の喉を、顎を、首筋を嘗め続ける。
 たぶん、犬ならば尻尾をちぎれんばかりに振りたくっていただろう。実際、愛液の滴るお尻をシーツの下でふりふりと振っていた気もする。
 健司が“こくっ”と喉を鳴らすと、まるでそれが合図であったかのように、桂は本当に嬉しそうにうっとりと目を瞑って、ふっくらとした唇をわずかに開いた。

 そして、待つ。

 じっと、待つ。

 やがて、桂が焦れて「ううん……」と拗ねたように鼻を鳴らすと、
「んふっ……んっ……」
 やわらかくてあったかくて濡れたものが唇に押し当てられ、ぬるりとした“甘いもの”が口内に入ってきた。
 健司の、舌。
 桂はそれだけで頭が痺れ、“びくびくびくっ”と体が震えた。
 秘密だけれど、ちょっとだけ、オシッコが漏れたかもしれない。
 それくらい彼女にとって激しい快感だった。
「んん〜〜……ふぁっ……んっ……」
 健司の舌は、桂のやわらかい唇をなぞり、歯茎をなぞり、ほっぺたの内側をくすぐった。
 口の中だけではなく、唇の下の窪みも嘗められた。
 くにくにと舌先で優しく撫でられたら、お腹の奥の方が“きゅうううっ”となって、たまらなくなり泣きそうになった。
 舌を絡め、送り込まれた彼の唾液を甘露として嬉しそうに飲み下す様は、まるで親鳥に口移しで餌をもらう雛鳥そのものだと、自分でも思った。
 健司はたっぷりと念入りに、時間をかけて桂の唇を味わい、舌を味わい、唾液を味わった。
 そして桂は、もうこれ以上は耐えられない、今すぐ次のステップに移ってくれなければ泣いてしまう…………というところで唇を離し、
「はふっ……」
 と甘い吐息を吐いた。

 夢が現実と化してゆく。

 いつか見た淫夢に、現実が追いついてゆく。

 汗が浮かび、しっとりと濡れた桂の額には艶やかな黒髪が張り付き、瞳は霞がかかったように濡れて潤んでいた。
 目元もほっぺたも首筋も胸元も赤く染め、酔ったように頭をふらふらさせているのは、口付けの快感があまりにも強かったせいだ。
 桂は唾を飲み込み、潤んで視界の滲んだ瞳のまま健司を一所懸命に見上げる。
「しよ……」
 言葉はするりと唇をすり抜ける。
「え?」
「…………しよ」
「…………なにを?」
「……ばか…………おっ……女に言わせんな」
「あ……うん…………えと、あの……大丈夫? のぼせてたんじゃない?」
「……ん……もう大丈夫。オマエは何も考えなくていいよ」
 桂の恥ずかしそうな……けれど、なんだか覚悟を決めた戦士のような強さを秘めた表情に、健司の頭が一気に沸騰した。

 いいのか?

 ほんとうにいいのか?
 ほんとうにしちゃっていいのか?
 えっちしちゃっていいのか?
 けーちゃんだぞ?
 相手はけーちゃんなんだぞ?

 健司のそんな葛藤を見透かしたように、再び桂は彼の唇を吸い、上唇を嘗めた。
 それで、何かがカチリと切り替わったのかもしれない。
 健司は小さな体を抱きすくめ、再び貪るように少女の唇を、舌を、吐息を吸った。
 そうして小さなやわらかい舌を嘗めしゃぶりながら、右手で少女を支えたまま、もったりとした豊かなおっぱいを左手で触る。
 肉のたっぷりと詰まって充実した柔肉は、健司の5本の指で自由に形を変えた。
 どこもかしこも、信じられないくらいにやわらかい。
 考えなくていいと言われても、どうしても考えてしまう。

 これが女の子の体なんだ。

 これが、けーちゃんの体なんだ。

 健司は桂を引き寄せ、ついには横抱きにだっこしたまま、おっぱいを、脇腹を、太股を、お尻を、その形を確かめるようにして丹念にその大きな手で撫でてゆく。
「……んっ……ふっ…………ぁっ…………はっ…………」
 桂は自分の唇を割って滑り出る甘い吐息交じりの声に、自分で驚いていた。
 あの亮と同じ事をされているというのに、嫌悪感なんてこれっぽっちも無かったからだ。
 ただ、愛しさだけがあった。
 そして、たまらなく心地良かった。
 “ぞくぞく”して“くらくら”して、世界はもう、酔っ払っているかのようにぐるぐるとまわっている。
 ぼんやりとした視界の中で、奇妙に“それ”だけが光を放つようにしてハッキリと見えていた。

 ――健司の「手」だ。

 大きくてたくましくて優しくて無骨な(夢で繰り返し見た)手だ。
「んっ……んっ……んっ……んっ……」
 胸を、ぎこちないながらも優しく優しく揉み上げる健司の手が、愛しくて愛しくてそしてもどかしくて可愛くてたまらなかった。
「んもっ……も……すこ……し…………強くしても……い……いいぞ……」
「強く?」
「あ……ああ……つよ…………ひっ……いったっ…………」
「ご、ごめん!」
「…………い、いいよ。オマエの……好きにして」
「……うん」
「……んっ……あっ……んっ……んっ……んっ……ぅんっ……」
 ゆったりと揉み込み、硬く勃起してしまった乳首を彼の太い親指が“ぴるっ”と弾き、“くにくに”と押し潰す。
 とても童貞少年の指使いではなかったけれど、乳をどう扱ったらいいのか、どう“楽しめば”いいのか、『おっぱい星人』だからわかることもあるのだろう。
「……ぁ…………ぁ…………ぁぅ…………ぁ……」
 桂はその刺激に身を任せ、腰を“びくり”“びくり”と断続的に震わせながら健司の胸に頭を預けてしまっている。
 やがて健司は、左手で“たぷん”と乳肉を持ち上げて、手を離し、“ぽよよよん”と揺れ動くおっぱいを楽しみ始めた。
 少しの間、それを黙認していた桂だったけれど、あまりにもそれを何度も繰りものだから、とうとう桂は
「ばか。人のおっぱいで遊ぶな」
 ……と、“ぷぅっ”とふくれて怒ってみせた。
「ご、ごめん。だって、なんかすごいよ」
「なにが?」
「こんなに大きいのに、やわらかくてプリンみたいにぽよぽよだよ」
 “たぷっ”“ぽにゅっ”“ぷるっ”“たぽんっ”と、左手でおっぱいを揺らして遊ぶ健司は、本当に嬉しそうだ。
「んっ……あっ遊ぶなっての」
「けーちゃん、好きにしていいって言ったじゃない」
「そりゃ……そうだけどさぁ…………ぁっ……」
 熱い吐息をおっぱいに感じ、滲む目で見下ろせば、じんじんと痺れてこれ以上ないくらいに硬く勃起した乳首を、健司がたった今からしゃぶろうとしているところだった。
 ついさっきまでだっこされていたはずなのに、いつのまにか真っ白なシーツに素裸で横たえられている。
 あれ? と思う間もなく、健司は口を大きく開け、舌を伸ばし、その舌から唾液がじんじんと喜びに打ち震える乳首へと滴った。
「んんっ……」

 はやく。

 はやくして。
 はやく嘗めて。
 しゃぶって。
 吸って。

 本当はそうすぐにでも願いたいのに、声が出ない。
 涙のいっぱいに溜まった瞳で真摯に見上げ、声無き声で懇願するものの、健司は焦らすように“たぷっ”と右乳房を揺すった。
『ほっぺたをつねってやろうか』
 あまりにも酷い仕打ちに桂がそう思うと、彼の口が急に乳首に近づいた。
 今触れる、もうすぐ吸う、舌で、歯で、唇で、おもうさましゃぶってくれる。
 期待感に体が震え、自分でもそれとわかるくらい“とろとろ”と蜜が垂れ落ちるのを感じた。

ちゅう……

「はうんっ……」
 声が、漏れた。
 たまらず唇から飛び出した音は、喜びと戸惑いに濡れたオンナの声だった。
 ぱくっと右乳首に健司の口が覆い被さり、“中”で“ちろちろ”“くちゅくちゅ”と嘗めしゃぶられる。
「はっ……あっ……やっ……んぅっ……」
 びくっびくっびくっと体が震え、思わず彼の頭を抱え込んで抱き締めた。
 そして、だっこされながら……ではあったものの、『子に乳を与える』という感覚は、こんなものなのだろうか? と思ってしまい、
『赤ちゃんにおっぱい吸われても、こんなになっちゃうのかなぁ……』
 などと、少々的外れな事まで考えてしまう桂だった。
 一度そう思うと、自分の乳首に取り付いて一所懸命に吸い立てている健司がなんだか可愛くて、桂はうっとりと身を任せながら彼の頭を“なでなで”と優しく撫でた。
 健司の赤ちゃんなら、可愛いだろうなぁ……と、唐突に思う。
 そう思った途端、お腹の中で子宮が“きゅん”と疼き、切なさに涙がこぼれそうになる。
 それは果たして“母性”だったのだろうか?
 彼に精を注ぎ込まれ、胎内で命を宿し、慈しんで世に送り出す。
 その至福を、つかの間、夢想したのだった。
 健司は、そんな桂の胸の内などよそに、右の乳首と左の乳首を交互に嘗め、しゃぶる。
 まるで、亮に吸われたそこを自分が“消毒”するかのように。

 どれだけそうしていたのか。
 やがて、桂がふと我に返った時、
「けーちゃん……本当にオンナノコなんだねぇ……」
 と、うっとりとしたような声が思いもよらない方から聞こえてきた。
 ずっと、ぼ〜〜っと、していた。
 あったかくて、気持ちよくて、幸せで、泣きたくなるくらい嬉しくて、自分がどうなっているのか、何をされているのか、全くわからなくなっていたのだ。
 健司の声に“はっ”と気がついて、その声が聞こえてきた方に顔を上げれば、いつの間にか脚を広げられて、その間に屈み込んだ彼に、大事なところを“じっ”と見られていた。
「ばっばかっ!! そんなにじっと見るな!!」
 たちまち、全身が“かあっ”と赤くなって頭に血が上り、沸騰する。
「ご、ごめん。けど、ちゃんと見とかないと、後で困るし……」
「見なくていいっ! そんなとこ汚いだろ!?」
「汚い? なんで? 可愛いよ?」
「かわっ…………ばっばかっそんなわけあるかぁっ!」
 懸命に閉じようとする両脚を健司の両手が押し留め、それどころか“ぐいっ”とさらに大きく広げてしまう。
 脚に力が入らなくて、腰を捻る事も出来なくて、桂は真っ赤になりながら懸命に両手で股間を隠した。
 洪水だ。
 内腿までぬるぬるしている。
「だっ……だめっ……見るなっ…………見ちゃ……」
 恥かしくて恥かしくて恥かしくて、涙がぽろぽろとこぼれる。
 健司に見られてしまった。
 浅ましく“涎”をだらだらとこぼす膣口も、おしっこの出るところも、うんちの出る場所も。
 そこは、汚くてどんなに洗っても不潔な事には変わりなくて、とても綺麗だとは言えないところなのだ。
 そんなところを、健司に穴が開くほど見られてしまった。
 観察されてしまった。
 激しい羞恥に、体が焼けて灰になってしまいそうだった。
「やだっ……やだぁ……」
「ご、ごめんっ」
 急にぐすぐすと泣き出した桂に、健司は慌てて身を起こす。
 少し調子に乗り過ぎたことを後悔しながらも、恥ずかしさに泣いてしまった桂を、驚きと新鮮な感動でもって見つめてまった。
 桂がごく普通のオンナノコみたいに泣き出してしまった事への驚きと、自分が、“あの”桂を“泣かせてしまった”ことへの形容し難い感動……。
 自分が桂を泣かせてしまえる存在だというのが、酷い話かもしれないけれど、とても嬉しいと思ったのだ。
 だから。
「けーちゃん……嘗めて、いい?」
 そう、聞いてしまった。
「だっ……だめっ! ぜったいだめっ!」
 いやいやと首を振る桂が、たまらなく可愛い。
 白くて細くて、そのくせ脂がたっぷりとのってすべすべとした太股に“ちゅっ”とキスをする。
「けーちゃん、俺の好きにしていいって言ったじゃない」
「そっ……それはっおっぱい……だけっ……んっ……」
 “ちゅっちゅっちゅっ”とキスの雨を降らせると、それだけで“ぴくんぴくんぴくん”と少女の腰が震えた。
 彼女の両手に隠された秘部から、えもいわれぬ香りが立ち昇ってくる。
 それは、オンナノコの匂いだった。
 発情してたっぷりと濡れ、オスを請い求めるメスの匂いだった。
 その香りを胸一杯に吸って、健司はもう大人しく引き下がる事なんて、出来なかった。
「ひいんっ……」
 “ねろっ”と太股を嘗める。
 あそこから垂れ落ちた蜜液を嘗めとり、酸味の強い甘露(矛盾しているようだけれど、していない)を口内で味わう。
 眩暈がするほどの興奮に我を忘れそうになって、健司は一度頭を冷やすために“ちゅっちゅっちゅっ”と、キスを太股から、しゃくりあげるように波立つ白い腹へ、そして少女が身を震わせるたびに“ゆさゆさ”と揺れる乳へと移動させてゆく。
 股間を意固地に隠しているために、その両腕によって両側から挟み込まれ、押し上げられ、いつもの4割増しほど豊かに突出した乳房へ、キスを降らせた。
「……あっ…………あっ…………あっ……」
「けーちゃん、嘗めていい?」
「だめ……だめ……」
 熱に浮かされたように汗を浮かべいやいやと首を振る桂を、健司の唇が、舌が、歯が、いぢめる。
「俺、けーちゃんを気持ち良くさせてあげたいんだ。
 あそこを嘗めるのって、みんなしてる事だって聞いたよ? クンニって言うんだって。
 けーちゃんもアダルトビデオで見た事あるでしょ?
 平気だよ? 恐くないよ?」
「ちがっ……んっ……だめっ……はずかしっ……」
「恥かしくないよ」
「だめっ……そこっ……きたなっいっ……もんっ……」
「汚くなんかないよ。けーちゃんの体で汚いとこなんて、無いよ」
「うそっ……やだっ……あっあっあっあっあっあっあっ……」
 “ちゅううう”と乳首を吸い、舌で転がし、歯で甘噛みする。優しく揉み立てながら首筋を嘗め、耳たぶを揺らした。
 初めてのはずなのに、どこにそんな余裕があるのか。
 彼女が「弱い」部分を的確に探り当て、責め立てる。
 そう。

 ――まるで、桂の心を読んででもいるかのように――。

 桂の両手がとうとう股間から離れ、乳を弄びいぢめ続ける彼の手をそっと掴んだ。
 見上げれば、目元も耳たぶも首筋も胸元も、どこもかしこも赤く染めた桂が、拗ねたように顔を背けている。
 健司はそれを「許し」ととって、再びキスをしながら少女の秘部を目指す。
『これが……けーちゃんの……』
 再び目にした少女の股間は、大陰唇も小陰唇もたっぷりと充血し、ぷっくりと膨らんでほころび始めていた。
 貝のように口を閉ざし、隙間からデリケートな粘膜を覗かせたまま“とろとろ”と蜜を滲ませ、滴らせていた秘花は、今ははっきりと花開こうとしている。
 “くにゅ……”と、親指で押し広げてみれば、サーモンピンクの粘膜がハッキリと露になる。
『ちんちんが、変化した……というより、もともと女の子だったみたい。……というか、そう思った方が簡単かも……』
 そんな思考が健司の脳裏を、明確な言葉にならないままよぎってゆく。

ぺちゅ……くにゅっ……ちゅっ……ちゅちっ……

 舌を滑らせ、潜り込ませ、くすぐり、捏ねる。
 複雑な襞の内側まで嘗めて、やわらかく、あたたかく、繊細で敏感な秘部を、思うさま堪能した。
 『秘貝』とはよく形容したものだ。
 まさしく、ハマグリとかホタテとか牡蠣とか、そういう海生生物の舌触りを思い起こさせる。
「……ぁあっ! ……あっあっあっあっ……ぁあ〜〜…………」
 びくんっと桂の腰が震え、太股に“ぎゅうっ”と頭が挟み込まれる。
「け、けーちゃん……苦しい……」
「だ……だって……だって……」
 泣き出しそうな幼馴染みの小さな頭を、小高く盛り上がった乳房の間から眺めやりながら、健司はひどく奇妙な思いを胸に抱いていた。
 それは、ついさっきまで、女性の性器など洋モノのエロ本とかエロビデオとかでしかお目にかかったことの無い男が、今はこうして幼馴染みの、しかも一月半前まで正真正銘の男だった親友の“女性器”を嘗めているという不思議。
 それを強く認識しながらも、これこそが本来あるべき姿なのではないか? と思わずにいられないのだ。
 もちろん、それは思い込みに過ぎないのだろうけれど、少女から、自分のために「女になった」と告げられては、そう思ってしまうのも仕方ないとさえ思う。
 舌で包皮に包まれたクリトリスを、包皮の上から何度も嘗めたくり、いささか乱暴に“ちゅうっ”と吸い上げる。
 その包皮も小陰唇も大きな舌で“ぺとり”と覆い、微妙に蠢かして細かく刺激する。
 誰に教わったわけでもなく、ただAVと、青少年なら誰でも青春期に一度は御世話になるその手の「How To本」と、後は自分の内なる声に従っているだけだ。
 それでも、桂の“堪えようと思ってもどうしても漏れてしまう”といった、感極まった艶声を耳にすれば、興奮もいや高まった。
「……んっ……んひぅっ………………んぁっ……」
「けーちゃん…………可愛い声出すんだ……」
「ばっ……ばかやろっ……これは…………んっぁっ……」
 健司の指が、乳やあそこを弄るたび、全身を痺れるような波が駆け巡る。
 翻弄され、意識が引っ張り上げられたり沈み込んだり、目まぐるしく変化するなか、悔しい事に、桂には健司がめちゃくちゃ冷静に見えた。
「……オっ……オマエ……なんで……こんなに……慣れてんだよっ!? ……」
「そ……そうかな? 俺も初めてなんだけど…………気持ち良い?」
「ばっ…………ばかっ! ……そ、そんなこと……ないっ……」
「じゃあ、やめようか?」
「……っ…………」
 健司の、無慈悲で凶悪で血も涙も無い言葉に、桂はたちまち顔を歪め、泣きそうな顔になった。
 それを見て健司は「ほにゃっ」と笑い、少女はそのたまらなくいぢわるな笑みに本気で泣き出してしまう。
「ばかっ……オマエなんかっ……だいっきらいだっ」
「俺は好きだよ」
「……っ……」
「好きだよ」
「………………けん……」
「好きだよ」
「……ばか…………」
「好きだよ…………けーちゃん……」
 「好き」という言葉には、『猛毒』があると思う。
 どんなに強い抵抗心も苛立ちも、たちまちのうちに殺してしまう『猛毒』が。
 桂は、涙がぽろぽろぽろぽろと止めどなくこぼれて、全身からすっかり力が抜けて“くたぁ”とシーツに体を預けた。
 そんな桂を見て、健司は腰のタオルを取り、裸になる。

 そして桂は見てしまった。

 健司の股間にそそり立つ、凶暴で暴力的な『凶器』の姿を。
 一瞬で甘ったるい気持ちが吹き飛び、全身に汗が噴き出した。
『でけーよ! んなでかいの入るワケないじゃんかっ!!』
 顔が引き攣り、全身が硬直する。
 男だった頃に見た自分のちんちんが、他の男子より小さかった事は知っている。
 けれど、健司以外の男子のちんちんなんてほとんど見たこと無かったし、健司のですら修学旅行以来無かったのだから、実際には17歳の標準的な大きさより若干大きい程度でしかない彼のモノを無闇に大きいと思ってしまっても、それはそれで無理も無いと言えた。
「やっぱり今日はやめ…………」
 身を起こしかけ、直後に感じた激痛に背中がピンと反り返った。
「ひぎっ」
 健司が尻を揺するようにしながら、ぐっ、ぐっ、ぐっ……と太くて熱くて大きい『凶器』をねじ込んでくる。
 太股が痙攣するように震え、尻肉の中の大臀筋(だいでんきん)がぴくぴくと緊張して張り詰めた。
 よく、破瓜の痛みは「焼けた鉄の棒を突っ込まれたよう」とか表現していたけれど、とてもそんなものではない。
 そんな、生易しいものではない。

 裂ける。

 体が股間を始点にしてそこからメリメリと引き裂かれる。
 処女膜は無いはずだから、正確には破瓜の痛みではないのだろう。
 これは純粋に、狭い肉道が強引に押し広げられてゆく痛みに違いなかった。
 括約筋が引き千切れるのではないか?
 あそこがガバガバになってしまうのではないか?
 そんな瞬間的な思考が沸騰し、桂は痛みに泣き叫んだ。
「いだっ! いだだだだだだだだだっ! いだいっ! いだいいだいいだいーー!!」
 実のところ、健司のモノは、まだ亀頭が入りかけたところでしかなかった。
「けーちゃん……」
「いだいっ! いだいーーっ!!」
 ずりずりとベッドの上をずり上がり、ヘッドボードに頭をぶつけ、それでも我慢出来ないのか必死ににじり上がってゆく。
 さすがの健司もそれには困惑したのか、不意に腰を引いた。
 入りかけていた亀頭が離れ、“ちゅっ”とキスの時のような音を立てる。
「……いっ…………ひぃい……ひぃ……ん…………」
 自分の体の下で肩を震わせ、子供のように泣きじゃくる桂の姿が健司の胸を強烈に突き刺し、鋭く抉り、あっという間に彼の『凶器』は萎えて“だらん”と情けなく垂れ下がってしまう。
 男の健司には、体内に異物を挿入されるという感覚に免疫が無い。
 だからこそ本能的な“恐怖”を感じてしまうわけで、かくゆう桂も少し前まで男だった以上、その感覚を体が覚えているはずだ……と、無意識に思ってしまったのだ。そうなると、自分がひどく残酷な事をしているような気持ちになり、高ぶっていた心が急速に冷えていくのを、ただ感じるしか無かった。

 もちろん、女になったばかりの頃ならばいざ知らず、もう今の桂にとって、体内に異物が浸入することそのものには、さして抵抗があるわけではない。
 なにしろ、今までの1回目の生理では既にタンポンを使用していたし、最近になって、体が性的興奮に陥りやすくなり膣内分泌が顕著になってからは、ほぼ毎日のようにその生理用品を膣内に挿入してたからだ。
 それに、オナニーでは中指を第二関節まで入れる事だってあるし、桑園京香の“特別授業”でアダルトビデオを見たりなんかすると、その後の彼女の“講義”もあってセックスそのものが男の何倍も気持ち良いものだ……という認識を深めたりしていたから、実のところ、桂は健司とのえっちに少しは“期待”していたこともあったりなかったり……したのである。
 けれど、当然と言えば当然の事ながら、ただ夢想するのと実際に体験するのとでは雲泥の差がある。
 実際には何の役にも立っていない平和な人間の自己満足的暇潰しである反戦デモが、たった一発の銃弾で簡単に瓦解してしまうように、現実は“色ボケ”た頭の想像など軽く凌駕してしまうものなのである。
 理由は簡単だ。

 想像の快楽(平和)は、現実の痛み(戦争)には、哀しいくらいに全くの無力だからだ。

 健司はひっそりと溜息を吐くと、桂の両脚の間から体を抜き、ベッドに横になって、ぐずぐずと鼻を鳴らす桂を“きゅ”と胸に抱いた。
「……ごめんね」
「……なんで…………オマエが……あや、あやまる……んだよ……」
「だって……」
「悪い、のは、ボクだ。……かっ覚悟が、足り……なかった」
 しゃくりあげる桂の頭を言葉も無くなでなでと撫でる健司は、彼女の髪に顔を埋め、ゆっくりと芳しい香りを胸一杯に吸い込んだ。
 “護りたい”と、“護るのだ”と、誓ったのではなかったのか。
 その自分が彼女を傷付けてどうするのか。
 哀しませ、脅えさせて一体どうするのか。
「もう、大丈夫。今度は逃げない。がんばるから」
 もぞもぞと身じろぎし、見上げてくる小さな顔に、健司は苦笑して首を振った。
「なに?」
「今度は俺が無理っぽい」
「え?」
 健司の言葉に“そっ”と体を離せば、あれほど逞しく天を突いていた凶悪な“凶器”が、今はサバンナで草を食むアフリカ象の鼻のように、だらりと力無く垂れている。
「……ボクのせいか?」
 桂が“はっ”として彼に問うものの、答えは無い。
 ただ、困ったように笑うだけだ。

 ――けれど、それが答えだった。

「ど……どうすればいいのかな? ……あ、ええと……手……手ですればいい?」
「いつっ……」
「あっごめっ……」
 思わず“ぎゅっ”と男根を握ってしまい、健司が痛みに声を上げると、桂は青褪め慌てて手を離した。
 自分のちんちんなんて、もう一月半以上も触っていない。
 当然だ。
 喪失(な)くなってしまったモノは、どうあっても触れる事すら出来ないのだから。
 今となっては、どんな風に触れていたのか、どのくらいの力加減で握っていたのかさえ曖昧になっていた。
『他の男の男根を触る事に、抵抗は無いのか?』
 そう問われたら、
「健司のは、いい」
 としか言いようの無い、今の桂だった。
 いやむしろ、さっきまであんなにも猛っていたものがここまで“ふにゃふにゃ”になってしまうところを目の当たりにすると、なんだかとてつもなく可愛そうで、哀れで、そして可愛く感じてしまうから不思議だった。
 それは、今はもう無い自分の男根(モノ)への懐かしさから来るのかもしれない……と、思ったりもする。
 不思議と“汚い”とは思わなかった。
 男根が“小便をするための器官でもある”という認識はしっかりとあるのに……だ。
 それはきっと、さきほど健司が自分のあそこを嘗めたのと、たぶん近い感覚なのだろう。

 愛しいから。

 愛しい人の、ものだから。

 だから、たとえ汚れていようとも、形が奇妙でもグロテスクでも、『可愛い』と思ってしまう。
 普段は下着に隠されている場所だからこそ、こうして光の元で目にしてしまうことで、愛しい人の「秘密の場所」をあからさまにしてしまった……という背徳感と高揚、そして、それと共にそこはかとない親密感を感じるのだ。
 もちろん、自分だからこそ“その姿”を見る事が出来た……という「優越感」も、ある。
 誰に対しての優越感か? と言えば、それはもう“自分以外の女”に対してであり、桂にとっては無意識にも、あのプールで彼に声援を送っていた女子生徒連中に対してのものであるに違いなかった。
『ぬるぬる……』
 手の平についた、彼の男根の先端の粘液を指で撫でてみる。
 これは、自分のあそこから出た粘液と、健司のちんちんから出た粘液の混じり合ったもの。
 そしてそれは、自分と健司が一つになれなかった行為の、残滓であった。
 桂は再びそろそろと手を伸ばし、しんなりとした健司の男根に手を添えた。
「けーちゃん……」
「いいから」
「恥かしいよ」
「ボクだって恥かしいんだ」
「でも……」
「……さっきはボクのあそこ…………めたくせに。お返しだ」
 思い出しただけで、耳まで熱くなる。
 自分だってそう何度もまじまじと見た事なんか無かった場所を、明るい照明の下でじっくりと観察され、あまつさえたっぷりと時間をかけて“嘗められ”“しゃぶられ”“弄られた”。
 恥かしい場所を視線で愛撫されるという行為も初めてなら、口で、舌で愛撫されるというのも初めての事だ。
 由香にえっちな事をされた時だって指でされただけなのに。
『改めて思うと……なんか……スゴイ事されたんだな……』
 そう思わずにはいられない。
 けれど、すごくすごく気持ち良かったのは、確かだった。
『声……たくさん……出ちゃった……し…………』
 女の子みたいな…………いや、実際に今は女なのだから何の問題も無いのだけれど、小さく密やかな、泣き出してしまいそうな声が、抑えようとしても抑えきれず、後から後から迸った。
 それすらも全部彼に聞かれてしまっては、もう何も恥かしがる事など無いように思えた。
『えっと……こ、こう……だっけ……』
 だから、桂はぎこちなく健司のモノに手を添え、すりすりと擦ってみせた。
 ただ、さすがにまだ『フェラチオ』は出来そうにも無かった。
 男のアレを口で愛撫する……と考えると、相手がいくら健司でも「うえっ」となってしまうのだ。
 今だって、少し冷静になってみれば、人の“ちんちん”をこんな風に手にしているなんて信じられないのだから。
「……んっ……」
 ぎこちない桂の手の動きに、健司が困ったような、怒ってるような、それでいてむず痒いような、変な表情になった。
 桂を抱き締める手が“ぴくっ”と動き、彼の腰が時々“びくんっ”とはぜる。
 最初は「痛かったのかな?」と思い、手の動きを止めたりもした桂だったけれど、やがてそれが快感のために生じた動きだと知ると、今度は意図して同じ動きを繰り返してみた。
 手の平で包むようにして竿の部分を擦り、時々、人差し指と中指で挟んで“くにくに”と嬲ってみる。“ふにゃふにゃ”した触感の玉袋にまで指を伸ばして、“ころころ”した精巣を優しいタッチで転がしてみたりも、した。
「……どう? ……かな?」
 おずおずと聞いてみるものの、抱き締められて彼の厚い胸に頬を寄せている桂には、彼の顔は見えない。
 ただ、少し荒くなった呼吸が彼の状態を示していると思うしかない。
『気持ち良いんだ……』
 それだけで、なんだか嬉しくなる。
 “ふにゃふにゃ”だったモノも、やがて徐々に硬さを増し、手の中で熱さを誇示するようになってきた。
「あ、硬くなった」
 無邪気な声で桂が言う。
 彼女は気付いていなかったけれど、その声には“冷蔵庫の中にケーキを見つけた小学生の女の子”みたいな、ものすごく嬉しそうな響きが含まれていた。
 そしてその声に、健司の両手が我慢しきれなくなったように動く。
「……んっあっ…………だっ……ばっばかっ……」
 桂のすべすべした背中を彼の左手が撫で、肩甲骨の窪みや背骨の凹凸を、一つ一つ確かめるように指が踊った。
「……んっ…………んっ……んっ…………んっ……」
 “ぴくんぴくん”と面白いように少女の白い体が踊り、熱い吐息が健司の胸を撫でる。
 明らかに感じやすくなっている桂の体は、健司のちょっとした指の動きにも翻弄され、たちまち瞳が“とろん”としたものへと変化していった。
「……ばか……ボク……するのに……」
 “今度はボクが気持ち良くする番なのに”とでも言いたいのか、桂はおでこを健司の胸に押し付けながら甘い鼻声で講義した。
 彼の手は桂の可愛らしくも意外に豊かで、女らしく張った肉付きのお尻まで下り、その引き締まりながらも男とは確実に違う肉質を“きゅきゅ”と堪能している。
 揉み、撫で、そしてやがて指が尻肉の狭間へと滑り込む。
「あっ! だっ……そこっ……だめっ……」
 健司の太くて優しくていぢわるな指が、桂の密やかで楚々とした後の蕾を“くにくに”と弄る。
「そこっ……ちがっ……あっ……」
 “ずっ……”“ずっ……”と、蕾と女性器の間の“会陰(えいん)”とか“蟻の門渡り”とか呼ばれる場所までも擦られ、桂は再びお腹の中の秘臓器が“きゅうう”と切なく動いたような気がした。
 それでも、こうして身体を寄せ合い互いの身体を触り合うだけで、ひどく幸せな気持ちになり、その幸福感と身体に与えられる快美感で、桂の胸がいっぱいになってゆく。
 「好き」という気持ちが、体全体に甘い蜜のように広がってゆくのだ。
 血の一滴一滴、細胞を満たす水分の一滴一滴が、全て蜂蜜にでもなってしまったかのような感覚。
 今、身体のどこを嘗められても、噛まれても、甘い果汁が溢れ出してしまうような、そんな感覚。
 吐息が荒くなり、“はっ……はっ……はっ……”と短く浅く呼吸を繰り返す桂は、その苦しさから開放して欲しいとでも言うかのように、健司の胸にキスを降らせる。
 そんな桂の滲んだ目に、ふと、胸や腕、脇腹に残る痣の痕(あと)が映った。
「……これ……亮にやられたのか?」
「え?」
「……なんか、体中痣だらけ……」
「あ、えと……うん……」
 口篭もる健司に、桂は哀しくなる。
 自分のために、こんなになってまで護ろうとしてくれた健司を迎い入れる事が出来なかったのだ。
 痛みに負け、身体を刺し貫かれる恐さに負け、彼を拒絶したのだ。
 硬くなり、手の中で“びくっびくっ”と震える彼の激情を感じ、桂は唾を飲み込んで唇を引き結んだ。
「いっ……いいよ。もう、大丈夫」
 気合十分の桂の言葉と、まるで果し合いでもするみたいな雰囲気に、健司が思わず吹き出した。
「なっ……なんだよっ!」
「なんでも」
「笑うなっ」
「うん。でも、けーちゃん……可愛い」
「ばっ………………………………ばか…………」
 蚊の啼くような声で呟き、桂は目を瞑る。
 そしてキスで再び唇を塞がれ、胸を、脇腹を、太股を、内腿を、あそこを、丹念に撫でられて、ゆっくりと両脚が開かれた。
『ぁああ……』
 たっぷりと濡れ、充血して花開いたそこは、それでも先程の余韻で少しひりついている。
 その身体の“中”に、彼が押し入ってくる。
「ぃあっ! ……」
 捩じ込まれる。
 入らないものを強引に割り入れるために、そこが広がってしまう気がする。
 むちゃくちゃ痛い。
 泣いた。
 涙がこぼれた。
 シーツを掴んで、顎を引き、歯を食いしばった。

 ――逃げたい。

 さっきまでの気持ち良さも覚悟も、ぜんぶ吹っ飛んでしまった。
「……いっ……」
 『痛い』という言葉を、飲み込む。
 飲み込んで、口を閉じ、唇を引き締めた。
「けーちゃん……ごめん……俺……最後までいくよ」
 桂が痛がっても苦しんでも泣いても叫んでも、もう途中で止められない。
 止めてなんていられない。
 そう、彼は宣言したのだ。
 桂は目尻から涙をこぼしながら、ただこくこくと首を振り、全身の筋肉を緊張させた。
「けーちゃん、力抜いて」

 無理。

「力抜かないと、たぶん、もっと痛い」

 無理。

 ばか。

 ぜったい無理。

 桂の声無き声が「う〜〜……う〜〜」というケモノじみた唸り声に込められ、汗ばんで大きく盛り上がったおっぱいが“たぷたぷ”と揺れる。
「けーちゃん……けーちゃん……」
 うなされたような、助けを求めるような声に目を開ければ、涙で滲む視界の向こうに泣き出しそうな健司の顔が見えた。
 そのあまりにも情けない顔を見た途端、桂の胸にあたたかいものが満ち、今の自分が出来る限りの範囲で、体の力を抜いてみせる。
 “ぐっぐっぐっ”と浸入を果たそうと懸命に突進を繰り返す彼のモノは大きくて、まるでゲンコツくらいの大きさがあるように感じてしまう。そしてその熱さは火のようだ。
 けれど、健司の一生懸命な姿を見ていると、滑稽で可愛そうでそして可愛くて、どうしても護ってやりたくなる。

 我慢しよう。

 けど、出来れば早く終わってくれ。

 そんな風に祈るような気持ちでいる桂に、健司が不意にキスをした。
 桂は夢中になって彼の舌を吸い、唾液を“こくこく”と嚥下する。
 砂漠を2時間歩き通した人間が水筒を渡された時のように、親鳥を待ち望んだ雛鳥がようやく餌にありついた時のように、桂は下半身から這い上がってくる痛みから逃れようとでもするかのように、恍惚と陶酔の表情で彼の舌を吸った。
 やがて“ねろっ”と唇を嘗められ、ほっぺたを嘗められ、耳までもを嘗められる。
「ひっ……んっ……んひっ……あっ! ……」
 そうして、耳穴を嘗められて“びくっ”と全身が震えた瞬間、桂の体の一番深いところを割り裂くようにして、健司が“入って”きた。
「……ぁ…………」
 腹筋が緊張し、背筋が反って、内腿の腱が張り詰める。

 痛い。

 苦しい。

 気持悪い。

 吐きそう。

 体の中心から左右に引き裂かれてゆくような、そして陳腐な表現をあえて使うのであれば「真っ赤に焼けた鉄の棒をねじこまれてゆくような」耐えがたい痛み。
 だのに。

 で、あるのに。

 この、からだの奥からフツフツと沸き起こる気持ちは何なのか。
 痛みに硬化し緊張に震える桂の体を、健司の逞しい体が支配してゆく。
 全てを彼の色に染めあげてゆく。
 この時の、苦悶と歓喜と悲哀と愉悦に彩られた桂の顔は、子供っぽい少女の顔ではなく、一人前のオンナの顔をしていた。
「……けーちゃん……入ったよ……」
 健司の言葉にぽろぽろと涙をこぼし、無我夢中でしがみつきながら“こくこく”と頷いた。
「一つに……」
 健司が何を言いたいのかわかった。
 健司が胎内に入り、桂が胎内に迎い入れ、二人の体がその一点を通じて“繋がった”のだ。
「動くよ」
「……ぁ……まだ……ひぃんっ……」
 “ずっ……ずっ……ずっ……”と、ひどく緩慢な動きで健司が動き始めると、膣壁の粘膜をこそぎとられるような激痛が桂の脳天まで体を一直線に刺し貫いた。
「いっ……ひんっ……ひっ……んっ……」
 “ゆさゆさ”と体が上下に揺さぶられ、下から突き上げられる。
 太くて、熱くて、硬くて、凶暴な激情が、体の中心を刺し貫く。
 シーツを掴み、歯を食いしばりながらも全身の細胞が健司を求めていた。
 こんな時だというのに、いや、こんな時だからこそなのか。

 健司の色、カタチ。

 ニオイ。

 味。

 感触。

 そして何より心が。

 桂の魂が、健司という存在そのものを求めてやまなかった。

 ――ああ、好きとはこういうことか。

 言葉ではない。
 直感とでも言うべき鮮烈なイメージの奔流だった。
 自分の全てが健司を求め、健司を受け入れ、健司に流れ込んでゆく。
 彼に抱かれている事が嬉しかった。
 彼に必要とされている事が嬉しかった。
 仰臥し、脚の着け根の関節が“こきり”と音を立てるまで開かれ、まるで理科の解剖実験の蛙のような不格好でおかしな姿のまま健司の肩越しに天井を見ている。
 天井は鏡張りで、そこには肌色の生き物が絡み合いながらうごめいていた。

 ああ……。

 思わず右手の甲で目を覆いその情景を塞いだのは、恥ずかしかったからではなくあまりに生々しかったからだ。

 健司の熱い吐息が降ってくる。
 熱い汗が降ってくる。

 こんなに汗びっしょりになって……。
 健司……きもち……い……?
 きもち……いい?

 泣き出してしまいそうな感情の飽和の中、懸命に心の中で問い掛けるも、それが彼に伝わる筈もない。

 もう何分経った?
 何時間経った?
 1時間?
 2時間?

 突き挿す健司の腰の動きが早くなり、摩擦の生じた膣内が焼けるように痛んだ。
「け……けん…………は、はげっ…………はげっ…………」
「…………けーちゃん、俺、ハゲてないよ?」
「ばかやろー!」
 こんな時だというのに不覚にも「ぶふっ!」と笑ってしまい、全身から力が抜けた。
 初めてだというのに、本当になんでコイツはこんなに余裕があるんだ!? と思って、ちょっと悔しくなる。
 こっちは、こんなにも余裕無いというのに。
『あっ……だぅ……う……なに……?』

 熱い。

 痛い。

 苦しい。

 それは変わらない。
 けれどいつしか、痛いけれど自分の身体がどうにかなってしまったような感覚が下半身を中心に全身へ漣(さざなみ)のように広がってゆく。
 それが恐くて恥かしくて、桂は顔を両腕で隠した。
「けーちゃん……顔……見せて……」
「……ばっ…………やだ……」
「見せて」
「やだっ」
「じゃあこうする」
「んひゃっ!?」
 強固に抵抗して拒絶する桂に業を煮やした健司は、あろうことか、“ひょい”といとも簡単に彼女を抱き上げ、自分はベッドに座り込んでしまった。
「対面座位……って、いうんだよ?」
「んあっ……あっ……やっ……やあっ……」
 聞こえていなかった。
 正常位よりももっともっと深いところまで健司がやってきて、もっともっと深いところをしきりに刺激したからだ。
 そして、その「熱さ」と「硬さ」といったら!!
 あそこが『健司のカタチ』になってしまう!
 膣の形が、健司の剛直にぴったりと合わさるようなカタチに変えられてしまう!
 もう健司以外では、否、健司でないとダメなように、体が作り変えられてしまう!
 そう思った。
 そう思うしかなかった。
「いっ……ひいっ……ん……」
 痛くて苦しくて、そして気が狂うくらい熱かった。
 たっぷりと染み出した蜜液でいくらか軽減したとはいえ、強制的に膣腔を押し広げられた痛みは容易には消え去るものではない。会陰裂傷にまでは至らなかったとはいえ、粘膜を傷付けた事は確かなのだ。
 そんな桂の体を、健司は腕ごと抱き締め、涙に濡れた桂の頬に何度も口付ける。
 桂は顔を隠す事も健司を押し退ける事も出来ず、ただ彼の厚い胸板に手を回し、ゆらゆらと頭を揺らしながら睨み付ける事しか出来なかった。
「けーちゃん……可愛いよ」
「ば……ばかっ! ………………………………ばか…………」
「さっきから『ばか』しか言わないね」
「…………ばかぁ…………」
 後から後から、止めどなく涙が出てくる。
 ぽろぽろとこぼれる涙は、果たして今日、何度目の涙なのか。
 もう、一生分の涙を流したような気さえした。
「……ぁあ…………ぅ……」
 彼の腰に両脚を巻きつけ、必死にしがみ付きながら、その彼に下から刺し貫かれている。
 もじもじと腰を揺すれば、太くて熱い灼熱が、確かに“お尻の中”で硬さを誇示しているのがわかった。
 そして、わかるからこそ、恥かしい。
 彼のモノを咥え込み、奥深くでその脈動を感じて痛みより苦しみよりもっともっと大きな喜びにとろけそうな顔を見られるのが。
 真実の心が、顔に出てしまうのだ。
 いぢわるな健司には秘密にしておきたい心が。

 嬉しくて嬉しくてたまらない。

 あなたにこうしてもらえるのが、涙が出るくらい嬉しいの。

 言葉に出来ないそんな想いが、ともすれば表情に滲み出いてしまいそうだった。
 あの夢の中の自分のように、しっとりとしたキスで応え、重たく揺れるおっぱいを捧げ、罠に掛かった小鹿のような、震える両脚の間に『彼』を迎い入れることで愛情の深さを示そうと躍起になってしまいそうになる。
「け……けんじ……だめ……だめ……」
「何が、だめ、なの?」
「だめっ……あっ……だめっ……あっ……あっ……」

 愛しさが……溢れるっ…………!! …………

 意識が真っ白に塗り潰され、激しい波に翻弄され、痛みも、苦しみも、悲しみも、切なささえもが消えてゆく。
 何度も意識が飛び、何度も自分がどこにいるのか、何をしているのか、どうしてこうしているのかを見失った。

 ――ただそこには、悦びと、相手が健司だという認識だけが、あった。

 『彼』の逞しい胸板に頬を埋め、芳しい体臭を思い切り吸うだけでくらくらした。
 『彼』の腕にぎゅっと抱かれ、体温を体全体で感じるだけで、頬が熱く火照った。
 『彼』の唇が肌をなぞるだけで、泣き出しそうなほど心細げな声が、唇を割った。
 『彼』の舌が口内を蹂躙しただけで、腰が震えて全身から力が抜けるようだった。
 『彼』の大きな手がおっぱいを壊れ物でも扱うように揉んだだけで、涙が零れた。
 『彼』の太い指が硬く勃起して屹立した乳首を摘んだだけで、濡れた声が迸った。

 どこを見られても、どこを触れられても、どこを口付けされても揺らされても嘗められてもしゃぶられても弄られても、
 熱く熱く熟しきったあそこが、とろとろの『蜜』を滲み出させながら『彼』の激情を優しく包み込んだ。
 しっとりとした柔肉で締め付け、奥へ奥へと誘い込み、下りてきた子袋の小さな口が、さらさらとした体液を彼の激情に噴きかけながら今か今かと待ち望んでいる。
 彼の、“命”の迸りを渇望している。
 そしてとうとう『彼』が仰臥する桂の体に覆い被さり、激しく腰を打ち付けた時、桂は砂糖をまぶしたかのような甘い甘い恋焦がれた切なさの滲んだ歓喜の声を上げ、『彼』の名を呼んだのだ。
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