■感想など■

2009年08月30日

第19章「恋人」

■■【1】■■
 目が覚め、シーツの中でもぞもぞと身じろぎし、桂はゆっくりと身を起こした。
 頭がぼんやりとしている。
 体の節々が痛んで、シーツから“ぽろり”とこぼれたおっぱいを無意識に隠すようにして自分の体を抱く。
 部屋は、薄暗かった。
 寝息が聞こえ、一瞬、隣に寝ているのが誰かわからなくて“ぎょっ”と目を見開くと、今度は一転して顔を赤くし、世にも幸せそうな顔で“にへらっ”と笑った。
 そうしてから右手で口元を隠し、むにむにと唇を動かしながら、薄闇の中、仰向けになって口を半開きにして“ぽちょぽちょ”と無精髭が申し訳程度に生えた彼の顎の線を目で追った。
 鎧戸がピタリと閉じた窓に目をやり、それから光の差すバスルームの小窓に目をやって、ようやく外がすっかり明るくなっている事に気付くと、照明コンソールのデジタル表示に目をやった。

 06:12

 朝になってる。
 夏休み早々に外泊し、不純異…………純粋異性交遊をしてしまった。
 健司がフロントに電話して「宿泊」にしたのだろうか? ……なんてことを考え、欠伸を噛み殺しながら、ぼさぼさになった髪を手で梳いた。
 それから何かに気付いたように、自分の肩を、腕を、それから胸元を“くんくん”と犬みたいに嗅ぐ。

 …………体に、健司の匂いが染み付いていた。

 昨晩の記憶が、鮮やかに甦る。
 あそこが“じわっ”として“きゅんっ”となって、“しくしく”と痛んだ。
 ほっぺたが火のように熱くなり、少女はぷっくりとした唇を人差し指でなぞって、昨日の“感触”を確かめてみる。
『健司と…………した……んだ…………』
 胸がつかえ、息が苦しくなる。
 それとは逆に、体中にあたたかな“波”が満ち、泣きたくなった。
 壁の大きな鏡に浮かび上がる、自分の白い裸を見た。
 顔から首へ、首から肩へ、肩から腕、脇腹、そして腰。
 なだらかでなめらかで、女のカタチのやわらかそうな線。

 この頬を愛してもらった。

 この唇を愛してもらった。

 この肩を、腕を、胸を、腹を、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ。

 ぜんぶ、余すところなく、愛してもらった。

 右手の中指で頬を撫で、肩を撫で、おっぱいのふくらみをなぞり、“ぷにゅっ”とやわらかい乳首に触れた。
 そのままおっぱいの丸い半球をなぞり、ヘソを通って、ぺたりと肌に張り付くように茂る陰毛に触れた。
 昨日の、恍惚と幸福と愉悦と陶酔の時間を思う。
 子供のように無防備で無邪気な健司の顔を見た。
 彼の、あまりにも安らかな寝顔に“くすり”と笑みこぼれ、その頬に触れようとして、直前で手を引っ込める。
 泣きたくなるくらいに、幸せだった。
 このまま死んでしまえたらいいのに。
 そう思うくらい。
 気がつくと、はらはらと涙がこぼれた。
 ぽたぽたと胸元に涙粒が落ち、薄闇の中、桂は声も立てずに静かに泣いた。
「どうしたの?」
 いつ目覚めたのか、彼が目を開け、何の感情も浮かべない透明な視線で桂を見ていた。
「……ん……」
「けーちゃん……」
「うん」
「泣いてるの?」
「泣いてない」
「泣いてるじゃない」
「泣いてない」
「だって……」
「これは…………心の汗だっ」
「なにそれ?」
 意地っ張りな桂の言葉に、健司はとうとう吹き出して、膝の上の桂の手を取った。
 今の桂は素裸で、ベッドの上に正座している。
 健司からは、大きくてやわらかくていいにおいのするおっぱいも、なめらかですっきりとしたお腹も、楚々として可愛らしい陰毛の茂みも、全てが薄闇の中で鮮やかに浮かび上がって見えた。
 でありながら、熱い興奮や、全てを奪い去りたいような欲望を感じるより前に、その儚ささえ感じさせる造形の美しさに、彼は震えた。

 護らなくては。
 この少女を、俺が、護らなくては。

 そんな強い想いがふつふつと胸に湧き起こる。
「俺の前で、意地張らなくていいよ?」
 ごく自然に彼の唇を割った言葉に、桂が破顔する。
 涙で濡れてはいたけれど、真夏の野に咲き誇る向日葵のような、そんな明るい笑みだった。

         §         §         §

 明かりと言えば、バスルームから漏れ差す朝日の他は、入り口と洗面所の電灯だけで、天井の照明は消したままにしているため、なんとなく部屋の中がオレンジ風味になっていた。
 さっきより明るいとはいえ、部屋の隅には薄闇がわだかまっていて、だから……というわけでもないのだろうけれど、ほんの少しだけ桂は不安を感じてしまう。
「……ボクは……これからどうなるんだろう。男に戻るのか……それとも、このまま……女のままなのか……」
 健司に寄り添い、その厚い胸板にほっぺたをのせて、少女は溜息をつくように言った。
 体の大きな健司だから、桂が“ぺたり”と上半身を乗り上げるようにして体を重ねても、まるで小学生が大好きなパパに甘えているようにすら見えてしまう。
 もちろん、桂は自分の豊かなおっぱいが健司の胸で鏡餅のように“ぷにゅり”とつぶれ、彼を刺激してやまないのを自覚しながらそれを気付かない風を装っていたりする。
 彼の裸の胸にほっぺたをつけ、鼓動を聞きながら、視線は彼の下半身を向いているのだから、彼女は今、シーツと毛布を盛り上げて彼の股間が“たいへんなこと”になっている事にも、しっかりと気付いていた。
 いいのだ。
 昨夜はあんなにいっぱい“いぢわる”されたのだから、少しはお返ししてやらなくては。
「ねえ、けーちゃん」
「ん?」
 なのに彼は、涼しい顔でこんな事を言った。

「もし女のままだったら、俺のお嫁さんになる?」

 一瞬、何を言われたのかわからなくて、頭が真っ白になる。
「……ば……ばかやろー……そういう事を、簡単に、言うな」
「だって、けーちゃん、可愛いもん」
「かわっ…………ぁ……」
 右手で“さらっ……”と髪を撫でられた。
 それだけで桂はむっつりと黙り込み、耳たぶまで綺麗なピンク色に染めて熱い吐息を吐いた。
 髪を撫でられるのは、気持ち良い。
 健司に撫でられると、大好きな御主人様に膝の上で背中を優しく撫でられる子猫のようになってしまう。
 うっとりして“きゅん”として、少しだけ“じゅんっ”となるのだ。
 桂はそれも、昨日、知った。
「あれ? 照れてる?」
「……ばっ……おまっ…………もう出るっ! 出るからなっ! さっさと服着ろばかっ!!」
 真っ赤ではれぼったくて、そしてきっとたぶんとろとろに笑み崩れているに違いない顔を見られるのがなんだか無性に嫌で、桂は素っ裸のまま洗面所まで、逃げた。
 “へなちょこ”な桂は、想いが叶っても、「オンナ」になっても、やっぱり“へなちょこ”に、変わりはなかった。


 洗面所で顔を洗っている最中に、再び身体の中を健司の精液が垂れ落ちてきた。
 桂は真っ赤になりながらトイレに逃げ込み、ペーパーで拭って小さく息を吐いた。時間にして「あれ」から5時間近く経ってるというのに、この時になってもまだ出て来るとは思ってもいなかった。いったいどのくらい大量に注ぎ込まれたのだろう? ……と、つい思わずにはいられない。
 ただ、彼の放出した精が大量であればあるほど、それは彼が自分に対して抱いてくれた欲望と愛情の大きさと比例するように思えて、なぜだかどうしようもなく嬉しくなってしまうのもまた、事実なのだけれど。そして、身体の中も外も健司で染まってしまったというのに、シャワーを浴びようか? とは少しも思わなかった自分に、桂は苦笑してしまう。
 それはきっと、せっかく健司の匂いに包まれたのに、それを洗い流してしまうのが嫌なのだろう……と、桂はそんな風に自分の心の動きを客観的に分析してみたりもした。
「……んっ……」
 それにしても、と思う。
 あそこがむちゃくちゃ“ヒリヒリ”している。
 目立って出血するような事はなかったものの、膣内粘膜は馴れない異物挿入で相当傷付けられているのだろう。素裸のまま便座に座って少しだけ“ぴちぴち”と放尿したら、それだけで“チリッ”と焼け付くような痛みが走った。そして“じんじん”して“ずくんっ”と痛む。放尿するための括約筋の動きだけでそれを感じるのだから、あそこに指を入れたりなんかしたら、きっと飛び上がってしまうくらいに痛むかもしれない。
 便器に当たって跳ねる小便の音を聞きながら、桂は“歩く時にガニマタっぽくなってしまうのは、それはもうどうしようもない”と思った。
 そして。

 ――次もあんなに激しくされて、あんなにたっぷりと注がれたらどうしよう……。

 無意識にそう思い、
『つ……次って?? ??』
 と、少々パニックになりながら火照るほっぺたを両手で包んだ桂は、自分がもうすっかり「オンナ」の思考に染まっている事を自覚したのだった。
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