■感想など■

2009年09月01日

第19章「恋人」

■■【3】■■
 トイレから出た時、健司はもう服を着て、ベッドに腰掛けて靴下を履いていた。
 照明も点けられ、部屋の中はさっきよりずっとずっと明るい。
「け……健司……ちょっとあっち向いてて」
「……どうしたの?」
「いいからっ」
「……恥かしがってないで、出ておいでよ」
「あっち向いてろって」
「ちょっと前までもっとスゴイことしてたし、さっきも平気だったじゃない」
「さっきはさっき。今は今」
「わかんないなぁ……」
 なんとも言えないような顔をして、健司は桂に背中を向ける。
 桂は素裸でトイレから出て、“ひょこひょこ”としたぎこちない動きで洗面所下に置かれた籠からバスローブを出すと、“さささっ”と手早くそれを
「服、もう乾いてるよ」
「ばかっまだこっち見るなっ!」
「あ、可愛いお尻」
「ばかっ」
 ……羽織った。

「これはもう、ダメだなぁ……」
 バスローブの帯を締め、空色のブラを手にして桂はひとりごちた。
 国産の下着で「65のGカップ」というサイズ自体、店頭で見つけるのは珍しいのに、これはそんなサイズでありながらちょっと可愛い感じの刺繍がお洒落にあしらわれていて、しかも多恵さんが選んでくれたこともあって、彼女にとって、結構“とっておき”の一つになっていたのだ。
 なのに、背中のホックが完全に捻じ曲がって、縫製もめちゃめちゃになってしまっている。
 亮が引き千切るようにして引っ張ったせいだ。
「……こっち見るなよ」
 赤い顔で健司をちらりと見て、桂はブラを彼の目から隠した。
 どうしてだろう。
 彼に下着を見られるのが、桂は、ひどく恥かしかった。
「俺、トイレ行ってるよ」
 くすくす笑いながらトイレに入る健司を見送って、桂はバスローブを脱ぎ、まだちょっと湿った感じの綿シャツに腕を通した。
 ノーブラの胸元は“ぱっつんぱっつん”に張り詰め、立ってもいないのに乳首がハッキリクッキリと浮かんで見える。夏用のため、生地が薄手である事も一因しているのは明白だった。ボタンが取れているため深い胸の谷間が丸見えで、とてもとても扇情的に見える。
 こんな格好で路地裏に入ったら、一晩で野球チームが作れそうなくらいのレイプ犯と仲良しになれそうだった。
「…………朝早いから……大丈夫……かな」
 シャツを押し上げる乳首を、右手の中指でそっと撫でてみる。
「んっ……」
 “ぴりっ”と刺激が走り、身体が震えた。
 まだ、えっちの余韻が残ってるのだろうか。
 膣内にいまだ太いモノが入っているような違和感と、全身を包む健司の匂いに、数時間経った今でも身体が鎮めないでいるのかもしれない。
「…………パンツ……どうしようかな……」
 カラオケボックスで脱がされて、それからこのホテルまで、ずっとノーパンで来てしまった。スカートはミニだし、日も昇って昨夜のように暗がりに紛れるわけにもいかない。いくら人が少ないだろうとは言っても、今はもう6時50分だ。学生は夏休みでも普通のサラリーマンには平日だろうから、そろそろ通勤の人達が動き始めている頃かもしれない。
 ノーパンにミニスカートで強引に帰ってしまおうか……。
 そう考えて、すぐに泣きたくなる。
 胸の谷間が丸見えの“ぱっつんぱっつん”なシャツと、ノーパンにミニスカート。
 これではまるで痴女か、頭のゆるいアッパー系ストリートギャルと同じだ。
 第一、こんな格好で健司と街に帰ってもし誰かに見られでもしたら……。
 そんな事を思いながらスカートを履いてホックを留めていると、排水の音と共にドアが開いて健司が顔を出した。
「どうしたの?」
「ん……その……なんでもない……」
「ね、けーちゃん」
 言い渋る桂を、健司が“ちょいちょい”と呼ぶ。
 まるで子犬か子猫を呼ぶような仕草にちょっと“むっ”としたけれど、彼の笑顔を見ているとそんなことはどうでも良くなってくるから不思議だった。以前だったら「ボクは犬じゃないぞ」とか「オマエが来い」とか言いたくなっただろうに。
「なに?」
 スカスカの下半身を気にしながら健司のそばまで行き、なんとなくまっすぐに顔を見られなくて上目遣いに彼を見上げると、彼のほっぺたが少し赤かった。
「ええと……」
「……なに?」
「……ぎゅっってして、いい?」
「ぎゅ?」
 『“ぎゅっ”ってなんだ?』と、そう思ってすぐにそれが「ハグ」の事だと気付き、今度は桂の顔が真っ赤になる。
「…………い、いちいち聞くなよ……」
「だって……さ」
「…………もうっ……」
 桂は自分から健司の腰に手を回し、身体を押し付けて抱き締めた。
「健司はさ…………健司は……その……ボクの…………こと……その……」
「好きだよ」
「……っ…………こっ恋人……なのかな? ボク達……」
「どう思う?」
「……健司は、どう、思う……んだ?」
「今までずっと一緒にいて、幼馴染みで、今日から急に恋人ですってのは、ちょっと難しいかもしれないね」
「…………そっそうかな? なれないかなっ?」
 勢い込んで桂が聞くと、健司は思ったよりやわらかく“くすっ”と笑った。
「なれないって言ってるんじゃないよ。時間が必要かもって話」
 桂の身体を“きゅ”と抱き締めながら、健司は彼女の髪に鼻を突っ込むようにして静かに言った。
「だってさ、まだけーちゃん、恋人っぽくなんて出来ないでしょ? そういうの、急に意識してぎこちなくなるくらいなら、もっとゆっくり時間をかけて恋人らしくなっていけばいいんじゃないかなぁ?」
「で、できるよ。だっ……だってボク、もう、その……健司のオ…………オンナ、なんだ、からっ」

 ――健司のオンナ。

 口に出して初めて、その言葉の持つ意味に“くらり”と眩暈まで感じて、桂は彼の胸に顔を押し付けた。
 ノーブラのおっぱいが綿シャツの下で張り詰め、先端がこりこりと立ち上がってくるのが自分でもわかった。
「こうして、“ぎゅっ”てしたくなったらしてもいいの?」
「う…………い、いいよ」
「手を繋ぎたくなったら?」
「う……うん」
「街で普通の恋人みたいにデート出来る?」
「……で、できる」
「キスしたくなったら? えっちしたくなったら?」
「そ……それは……その……」
 桂の顔がどんどん赤くなり、可愛い耳たぶまで綺麗なピンクに染まってゆく。滑らかな肌がしっとりと汗ばみ、彼女の身体から、えもいわれぬ良い香りが立ち昇って健司の鼻腔をくすぐった。
 健司は彼女の髪の、日向の草原みたいなあったかい匂いと共にその香りを胸一杯に吸い込み、その薄い背中を優しく撫でた。
 撫でるごとに彼女の身体が“ぴくっ……ぴくっ……”と震え、それがまた健司の胸に愛しさを満たす。
「“恋人になる”ってどういうことなのか、俺、考えたんだけど……。
 キスしたから、えっちしたから、そういう事をしたからって、だから恋人になれるってわけじゃないでしょ?
 俺、けーちゃんと一緒にいろんなものを見て、いろんなものを感じて、けーちゃんをもっともっと知りたいって思うんだ。
 けーちゃんが何を見てるのか、何を感じてるのか。何が好きで何が嫌いなのかは知ってるけど、まだまだ足りない。もっと知りたい。けーちゃんのこと、もっと知りたい。けーちゃんが宇宙人なら、その事も知りたい。秘密にしなくちゃいけない事なら絶対に誰にも言わない。由香ちゃんにも言わない。
 ……一緒に宇宙についてきてくれって言われたら少し困るけど考える」
「……ボクは宇宙人じゃないよ」
「おばさんが宇宙人なのは本当なんでしょ?」
「……らしい、けど、うん……」
「他にもきっといるんだよね? そういうひと」
「え……あ、う……そ……ん……」
「秘密なら秘密って言っていいよ。怒らないから」
「……秘密」
「ん。わかった。秘密な事は秘密なままでいいよ。でも、知る事が出来ることは出来るだけ知りたい。だって俺はけーちゃんが好きで、けーちゃんと一緒に生きていきたいし、けーちゃんが困ることからけーちゃんを護りたいって思うから」
 健司は普通なら言いにくい事をハッキリと言った。
 そのあまりにも真っ直ぐな物言いに、桂は顔がどうしようもなく火照ってしまうのを感じる。
 彼の真摯な言葉と真剣な声音に身体が震え、彼の胸の鼓動と熱さと汗の臭いに身体が熱くなる。

 まだ、ひりひりしてるのに。

 昨日、あんなに痛かったのに。

 なんだかもう、再び健司を身体の“中”で感じたくなっていた。
 彼を迎い入れ、包み込み、この世の全てから護り慈しみ愛してあげたくなる。
「けーちゃん……」
「……ん…………」
「けーちゃん」
「……うん……」
「けーちゃん」
「……だから……なんだよ」
 うっとりと彼のシャツに頬を押し付け陶然としたまま、至福の時を邪魔した彼に、ちょっと拗ねたように答える。
 彼は少しだけ躊躇ってから、
「キスしていい?」
「……っ……」
「ホテル出たら、きっとたぶん、当分はキスもえっちも出来ないと思うから、今のうちに堪能しとく」
「たっ堪能……って……」
 なんともいやらしい言い方なのに、健司が言うとちっともいやらしく感じないのはなぜだろう。
「べつに……その……キスくらい……ホテルじゃなくても…………」
「どこで?」
「そっ……そんなの……その…………そ、そうだ、今、うちの親、両方ともヨーロッパに行ってるから、うちに来れば……」
「……けーちゃん、なにげにものすごいこと言ってるね。自分で気付いてる?」
 健司に苦笑混じりに言われ、そこでようやく桂は『えっちしたかったら家で待ってるからいつでも来い』と言ってるのと同じなのだと気付き、その“ぷくぷく”したほっぺたをトマトのように赤らめた。
「そっそっそーゆーつも、つもりで言ったんじゃ……」
 口篭もる桂のほっぺたに、健司の大きな右手が重ねられ、自然と上を向かされてしまう。
 それはあまりにも自然な動作で、だからこそ桂は思わずうわずった声を上げてしまったのだった。
「けっけんっ……」
「しっ……」
 制止され、唇を閉じ、それからまっすぐに自分を見る彼の瞳をまともに見てしまい、桂はまるで満員電車の中のチカンのように、ものすごく挙動不審な視線を“きょろきょろ”とさ迷わせた。
 思えば、昨夜は一種の興奮状態にあって、キスするのに何の抵抗も無かった。
 ほっぺたに最初にキスしたのは桂の方だったし、不意打ちのように健司から唇にされた時は、咄嗟の事で反応すら出来なかった。
 それからは、もう夢中だったから、今のように冷静な状態でキスをするのは、これが初めてなのだ。
「んっ」
 “ふっ”と、一瞬だけ“小鳥のキス”で啄ばまれ、それだけで首筋から背筋を通って脊髄をお尻まで“びりびり”とした痺れが走り抜けて、桂は目をぎゅっと瞑って“ぶるっ”と身体を震わせた。
 そんな少女のおでこと自分のおでこをくっつけて、健司は密やかな少女の呼吸を吸い込むようにギリギリの場所で唇を止める。
 いつまで待っても下りてこない彼の唇に不審に思ったか、桂の唇が口付けを請い願うように“むにむに”と動く。
 その唇を、思い切り野卑に健司が嘗めた。
 天気の良い牧草地でのんびりと草を食んでいる大型草食動物みたいな顔をしているくせに、どうしてこんな事が出来るのか。
 “べろっ”と、少女の“ぷっくり”とした唇を嘗め、舌を隙間に滑り込ませ、びっくりして閉じてしまった真珠のように滑らかで白い歯の表面をつつくようにしてくすぐったのだ。
「んっ……んんっ……ん〜〜っ〜〜……」
 そして、わずかに開いた歯の隙間を、健司は見逃さない。
 たちまち太くて力強くてぬるりと官能的な舌が強引に口内に入り込み、彼女の脅えた舌を巧妙に誘い出して巻き込んだ。
 “にゅるっにゅるっ”と舌を嘗め上げられ、扱かれ、舌の下も歯茎も歯の裏側も丁寧に嘗められて後から後から泉のように湧き出す唾液を甘露のように啜られて飲まれてしまう。
 唾液を吸い上げられる恥かしさと頭の芯が真っ白になってしまうかのような快感に、全身から力が抜けて膝がガクガクと笑い、腰が落ちる。それでも健司は許してくれず、苦しいくらい“ぎゅっ”と抱き締められたまま、濃厚で官能に満ちた口付けは続けられた。

 これは何の拷問だろうか。

 辱められつつも、その羞恥に例えようも無いほどの歓喜と愉悦が纏わり付き、官能の波に翻弄されながら彼の与えてくれるものを甘受するしかない。頭の中が真っ白に塗り潰され、心も体もたちまちたっぷりと濡れたのだ。
 そして、抜け出す事も拒絶する事も許されない、たまらなく甘美な拷問は、突然鳴り響いた内線コールによって中断された。
「け…………あ……でん……わ……」
「うん」
「……で……なく……ちゃ……」
「うん」
 “とろん”ととろけた瞳でのろのろと健司の腕から抜け出し、両手をついてベッドに這い上がるようにして照明コンソール横の内線電話を目指した。
 身体が重い。
 重くて熱くて、そしてすっかり“スイッチ”が入ってしまいそうになっていた。
『モーニングコールサービスです。ただいま、午前、7時、30分、です』
 受話器を取ると、合成音声のぶつ切りで無機質なメッセージが繰り返し聞こえて、桂は思わずスピーカー部分を眺めた。
「……けん…………モーニング……コール……頼んだの……?」
 そして、気だるい身体で振り返った桂が見たのは、顔を真っ赤にして口元を押さえ、柔和な瞳をびっくりしたように見開いた幼馴染みの顔だった。
「どうした……?」
「けーちゃん……」
「あ?」
「見えてる……ぜんぶ……」
 ノーパンでミニスカートのまま、四つん這いになった桂の股間が、捲くれ上がったスカートに遮られる事無く全てが健司から見えていた。白くてつるりとした滑らかな双丘の狭間、薄いココア色をした可愛らしい“後の蕾”も、“きゅ”と潰した柏餅かふっくらと重ねたパンケーキみたいな大陰唇から“ちろり”と顔を出した小陰唇さえも。
 しかも、その肉の亀裂はたっぷりと潤い、天井の明かりのため“ぬめぬめ”と粘液にぬめって見えた。
 そして太股の中ほどまで、“てらてら”と光る道筋が出来ているのがわかった。
 キスだけで、濡れてしまったのだ。
 それはとても淫靡で、卑猥で、そして蠱惑的な光景だった。
「……え? あ! みっ見るなばかぁっ!!!」
 一瞬、思わずキスしたくなるほど可愛らしい“蕾”が“きゅっ”と窄まり、お尻の肉が緊張に強張る。
 羞恥に戸惑い、後手に股間を隠そうとして手に持った受話器を取り落としそうになった桂は、バランスを崩しかけて両脚を開いた。
 そしてそれがさらにハッキリと、肉の亀裂を健司の目に晒す事となる。
「ご、ごめんっ」
 そう言いながら、健司は目をそらすことが出来ないでいる。
 なぜなら“雄の本能”とでもいうべき動物的衝動に、意識が支配されそうになっていたから。
 四つん這いで尻を向け、たっぷりと充血した性器を雄に晒すというのは、それこそ発情した雌の所業だった。

 アナタの性器をココに突っ込んで、射精して、ワタシを孕ませて。

 そういう、生殖本能に基いた雌の積極的な受動行為だからだ。
「あっ!!」
 慌てて受話器を電話に戻し、その右手でようようスカートを押さえた桂は、とろ……と“中”からねっとりとした粘液が垂れ落ちてきたのを感じ、ベッドに腰を落とした。
 そうして、腰を捻って彼からお尻を隠し、右手で股間を塞ぐ。指の間に“ぬるり”と絡まる粘液のぬめりは、思ったよりずっとずっと粘性が高かった。
 健司の精液。
 咄嗟に、そう思う。
 それがまた、出てきたのだ。
 もちろん、単純に考えて彼の精液がそんなに大量に桂の子宮に注がれたわけではない。たぶん、その残滓が彼女自身の粘液と混じり合い、粘性を高めて子宮内や膣内に留まっていたものが、彼女の再びの性的興奮によって分泌された愛液によって希釈され垂れ落ちてきたのだろう。
「もうっ……なんでこんな…………っ!?」
 “ぎしっ”とベッドが軋み、スプリングがたわんで、“はっ”と顔を上げると、そこに健司の顔があった。
 その顔は、怒ったような、困ったような、どこか慰めたくなる色を浮かべながら、それでいて興奮したオスのイキオイを感じさせるものを纏っていた。
「けーちゃん」
 喉に何か引っ掛かったような、しゃがれた声で健司が呼ぶ。
 “ごくっ”と喉が動いて、唾を飲み込んだのがわかった。
「だっ……だめっ……」
 膝立てにした両脚の間に粘液で“ぬるぬる”と濡れた右手を起き、上半身を少し捻ったカタチの桂の姿は、ひどくいやらしかった。
 スカートの中は素裸なのだ。
 そして、綿シャツの胸のところでは硬く屹立した乳首が尖り、激しく自己主張している。
 目が潤んで涙ぐんだ瞳のまま、懇願するように見上げたそのポーズは、まるでえっちな男性雑誌のグラビアページとか、投稿系エロ雑誌の淫猥な写真のようで、男なら一目見ただけで誰でも飛び掛ってしまいそうな吸引力を持っていた。
「けーちゃん、俺……」
 果たして、健司は妙な迫力で這い寄り、桂の華奢な脚を押し開いてその間に身体を割り入れた。
「あっ! ……だめっ……だめっ! ……」
「けーちゃん……」
「だめだってばっ……もう、帰るんだから……出るんだから……」
 ベッドの上を、逃げるように肘でずり上がり、桂は潤んだ瞳で健司に懇願した。熱情にかられてもなお優しげな彼の瞳に吸い寄せられて、一時も目を逸らす事が出来ない。
「けーちゃん……」
「だめ…………ね? 頼むから……お願いだから……」
「けーちゃん」
「お願い……お願い……」
 ぶるぶると震え、全身が熱くなり、頬が火照って涙が盛り上がる。
 態度では、言葉では、ずっと拒否を示しているのに、体が、心が、鼻がくっつきそうなくらい顔を寄せた彼の首を抱き締めたくて顔を埋めたくて鼻を擦り付けたくて、もうほとんど泣き出しそうだった。
 お腹の中で子袋が“きゅううん”と啼き、苦しくなるほどの切なさにぐるりと寝返りを打つ。
 じっとりと胸元や脇に汗が滲むのを感じて、胸を破って飛び出してしまいそうになるくらい、心臓が激しくドキドキと踊り狂っていた。

 ――体が、開く。

 健司に向かって“開いて”ゆく。
 彼に向ける全てのものが、急速に花開いてゆく。
 心も、想いも、瞳も、唇も、震える両脚もとろとろにとろけた“蜜花”さえも。
「けーちゃん」
「……ああっ…………」
 唇が、触れる。
 あと、3ミリくらいで。
 彼の吐息が唇を撫で産毛を揺らしている。

『い、痛いかな? 2度目だもんな。また激しくされたら今度こそ体が壊れちゃうかもしれない』

『あそこがゆるゆるになったりしたら、ぜったいぜったいぜったい健司に責任とってもらう』

『時間大丈夫かな? 家には誰もいないから、大丈夫だと思うけど。夏休みだし』

『あ、でも健司はどうなんだろう? 朝帰りだからおばさんに怒られないかな?』

『また中にいっぱい出されちゃうのかな? 今日、大丈夫な日だっけ? ダメな日だっけ? あれ? どっちが大丈夫でどっちがダメなんだった? 赤ちゃん出来ちゃダメな日が大丈夫だったら、ダメな日が大丈夫なんじゃないのかな?』

『ヤバいっ! 顔、洗ったけど、歯磨いてない! どうしよう、さっきキスしちゃったよ。ヘンな匂いとかしなかったかな? 臭くなかったかな? 大丈夫かな? どうしよう』

『中に出されたら、帰る時にまた出てくるかも……パンツ無いのに出てきたら、クツまで垂れちゃうよ……』

 いろんな思いが桂の頭を光の早さで飛び交い、ぐるぐるとものすごい速さで回って混乱し、思わず“ぎゅっ”と目を瞑った。
『ああぁ……でも……でも……』
 健司に求められる悦びに気が狂いそうだ。
 全身が歓喜に震えている。
 早く愉悦を味わいたくて泣いている。
 彼を早く迎い入れたくて、あそこが“じゅんっ”と潤いを増している。

 ……と。

「はい。もう乾いてるよ」
 不意におでこに乗せられた、布地の感触。
「…………え?」
 目を開ければ、健司はもう身を引いてベッドから下りようとしているところだった。
『え? なに? する……んじゃないの?』
 呆然として、桂はベッドに仰臥したまま彼の背中を見つめた。
 助かったような、肩透かしを食らったような、お預けを食ったような……行き場の無い感情が混乱を招いていた。
 あられもなく脚を開き、すっかり濡れたあそこを光の下に晒していることに気付いて、のろのろと両手でスカートを押さえる。
 脚を伸ばして股間を閉じると“くちゅっ”と粘液質の水音がした。
 そして、ようやくのろのろと手を伸ばし、おでこに乗って視界を半分塞いだ小さな布切れを手に取る。
 天井の照明にかざしてみれば、それは、昨日カラオケボックスで亮に脱がされた、

 桂の可愛いパンツだった。
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