■感想など■

2009年09月11日

第21章「あなたにここにいてほしい」

■■【4】■■


 夢を見ていた。


 彼は、夢を見ていた。
 長い夢だ。
 いつ眠ったのだろう?
 そう思いつつも“これ”が夢である事を認識している不思議を、彼は感じている。

 ――きっかけは、何だったろうか?

 彼は、少女を愛している。
 護りたかった。
 護りたいと思った。
 護ろうと思った。
 自分しか、少女を護れないのだと思った。

 『少女』は、かつて『少年』だった。
 彼が目指すべき『目標』でもあった。

 『少年』のように強くなりたかった。
 『少年』のように優しくいたかった。

 『少年』のようにまっすぐでいたかった。
 『少年』のように前を向いていたかった。

 『少年』のように。

 初めて出会った教室の乱闘から、そしてあの夕日の昇降口から、彼の全てが『少年』を中心に回っていたような気がする。
 彼の目はいつも『少年』の背中を見ていたし、『少年』が見つめるその先を一緒に見ていたいと願っていたから。

 けれどそれが、ある日突然、消えた。

 『少年』は、いきなり『少女』となり、可愛らしく、いい匂いのする、やわらかい体へと変わった。
 自分が憧れ、目標にし、求めた、強くて優しくていぢわるで、プライドが高くてちょっと乱暴な『少年』は、心だけそのままに『少女』へと変わった。
 憧れが、切望が、「彼のようになりたい」と願う熱望が、「彼を護れるくらいになりたい」という渇望へと変わったのは、『少年』が『少女』となった日より、もっと前からだ。
 そこに、友情以外の気持ちは無かったはずだ。

 それが、友情以外の気持ちが生まれたのは、確かに『少年』が『少女』へと変わった頃からだった。

 今の自分なら護る事が出来る。
 体も大きくなり、勉強だけでなくスポーツでも十分な結果を残せるようになった今ならば。
 小さく、か弱く、やわらかくて可愛くていい匂いのする『少女』を。
 全ての、彼女に害成すものから。

 そう思い『少女』を一人の「オンナ」として意識したのはいつ?

 いつからだったのか。

「けーちゃん…………」

 彼は夢の中でそうつぶやき、そして再び、何も生む事の無い深い深い闇の中へを沈み込んでいった。
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