■感想など■

2009年09月22日

第23章「ボクたちの選択」

■■【4】■■
「あぁ……ああぁ…………あ〜〜〜…………」
 かたく閉じた瞼から、涙が湧き出すようにしてぽろぽろとこぼれ、少女は泣いた。
 身も世も無く、泣きじゃくった。
 失いたくなかった。
 彼との、この精神世界での邂逅は、現実世界ではいったいどれほどの時間だったのか。

 何分?

 何時間?

 いや、ひょっとしたら一秒にも満たない時間なのかもしれない。
 生体波長を『生体管理調整槽(コクーン)』で同調させることによって起こる精神同調は、膨大なデータを一瞬の内にリンクさせるのだと、美智子は言った。その間、意識は無いとも言っていたけれど、実際にはこうして同調した精神世界で彼と再会することも、深く愛し合うことも出来た。 けれど、この後、桂は体の中で、自身が体内で製造したナノマシンに対する『ワクチン(カウンター素子)』を作り出すことになる。それを健司の体内に注入しなければ、彼は絶対に助からない。ただ、無理に合成した『ワクチン』で、桂の体は過剰な免疫反応を起こし、おそらく耐え切れないほどの激痛を感じるだろう。
 場合によっては、死んでしまうかもしれない。
 いや、死ななくても、『ワクチン』を作ると、それに順応・対抗するために体が急成長し肉体が固定され、もう健司と同じ時を生きる事が出来なくなる事は、ほぼ確定している。
 そして、成体個体となり、その姿で何年も、何十年も生きる事になるのだ。

 覚悟はしていた。

 でも、こんなにも愛されている事を実感し、女でいること、女になったこと、女であるということを魂まで刻まれた今となっては、それは身を切られるよりもずっとずっと辛かった。

 健司だけのオンナとして生きていきたい。
 健司だけにただ抱かれて生きていきたい。
 健司だけを愛し愛される日々を送りたい。
 健司だけを包んで癒して生きていきたい。

 ――健司と二人で、ずっと一緒に生きていきたい。

 それを痛切に感じる。
 願う。
 でも、それはもう、無理だ。

 無理なのだ。

「けーちゃん……イク……イクよ?」
 泣きじゃくる桂を抱き締め、あやすように口付け、そして再び床に寝かせて激しい反復運動を始めた健司は、少女に負担をかけないように両腕で体を支えながら彼女の体の中心へと激情を叩きつける。
 細い体に不釣合いな巨大でやわらかいおっぱいが、彼の腰の動きに合わせて“たっぷたっぷたっぷ”とリズミカルに前後に揺れた。それが痛くて、でも気持ち良くて、桂はお腹の中に感じる異物感を「いとおしい」と感じる。
 彼を「包んでいる」ことを、どうしようもなく「いとおしい」と感じる。
 そしてこれが本当に「最後」なのだということを「かなしい」と感じた。
「けんじ……ワタシ……ワタシ……」

 言いたかった。

 「好き」って言いたかった。

 「愛してる」って、言いたかった。

 けれど、こみ上げ、しゃくりあげ、喉の奥に何かが詰まったように感じて言葉を紡ぐ事が出来なかった。
「…………ッ……」
「ひんっ……」
 桂をぎゅっと抱き締めたまま“びくびく”と震え、健司が少女の細い体の奥深くまで腰を押し付けるようにして激情をねじ込んでくる。
 こんなにも彼の想いが伝わってくるのだから、きっと自分の想いもとうに彼へと伝わっているはずだった。
 そう桂は思う。
 でも、だからこそ最後の言葉は、自分の言葉で伝えたかったのだ。
 自分がどれくらい彼を好きで、どれくらい愛しているかということ。
 自分の全てを投げ打っても彼に生きていて欲しいと思っていること。
 そして。
「……ふっ……ぅ……」
 ぐぐぐっ……と、お腹の中で彼のモノが緊張し、二度三度と“びくびく”はじけたのがわかった。

 「射精」というにはあまりにも生々しい感覚が、桂の全身を痺れさせる。

 膣奥や子宮口では実際に射精の感覚を感じることはほとんど無い。
 感覚は膣口周辺に集中していて、奥の方では圧迫感くらいしか感じないからだ。
 だのに…………やはりこの世界は現実とは違うのだろう。
「ああっ!!! ……いやっ……やだっ…………あぁああぁぁ〜〜〜……」
 自分が消し飛んでしまうような光の奔流……!!

 ――全身が、彼に染まる。

 彼を構成するものが、桂を構成するものを一つ一つ染め上げてゆく。
 いや、彼を構成する全ての情報を桂の体が読み取っているのかもしれない。
 それは、今まで体験した事が無いほどの、強烈な体験だった。

 そして、


        「終わり」を、感じた。


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