■感想など■

2009年09月23日

第23章「ボクたちの選択」

■■【5】■■

 愛して。

 愛して。

 愛して。

 全身で愛して、心の全てで愛して。
 そして結ばれ、繋がり、溶け合った少女。

 その少女の華奢な体躯に負担をかけないように、健司は両腕で自分の体を支えながら少女の豊かに盛り上がった乳肉に頬を寄せていた。
 頬に“ぺたり”とくっつく、熱を帯びた……けれど表面は汗でひんやりとした柔らかくてすべすべの肌は、それが現実ではないとはとても思えないリアリティがあった。

 自分の、全てを注ぎ込んだ。

 そう思った。
 体の中がからっぽになったんじゃないか? とさえ思えるほどの心地良い虚脱感。
 男のものとは確実に違う、少女の甘い体臭と汗の匂いは、桂が『圭介』であった頃には感じなかったものだ。
 その少女が、大きく息を吸ったのがわかった。
 目の前の大きなおっぱいが、“ゆらっ”と揺れたからだ。
「けーちゃん?」
 気が付けば、少女の胸からポウッと灯る一つの光がゆっくりと浮かび上がってきていた。
「け……」
 ひどく悲しそうな……優しい微笑を浮かべ、桂が身を起こして健司の唇にたっぷりと愛のこもったあたたかいキスをした。

 だから、わかった。

 だから、わかってしまった。

 終わりが、きたのだ。

 別れが、きたのだ。

 こんな時だというのに、身を起こして立ち上がろうとする桂の、たまらなく大きくて魅惑的なおっぱいが、椰子の実のようなカタチのまま重たげに体躯から垂れて揺れ動く様子に、どうしようもなく惹きつけられてしまう。
 愛しい人のおっぱいには、やはり魔力が宿っているのに違いない……。
 魂を引き付け、全てを虜にする魔力が……。
「けーちゃん……」
 桂はその胸に、自分の中から生まれた光を抱いて健司の前に立った。
 顔のすぐ前には少女の薄い茂みがあり、キラキラと濡れたその光景には、先ほどの激しくも甘美な熱い交歓を思い起こさずにはいられない。
 けれど、見上げる桂の顔には、ただ微笑が、あった。

 微笑だけが、在った。

「けーちゃん……その光……」
 健司は、少女の抱くその光が、自分と関係の深いものなのだと本能的に認識(し)った。
 けれどそれは具体的なイメージとなって結ぶ事は無い。
 それよりも、少女の浮かべるその微笑みが、いつかどこかで見た宗教画に出てくる女の人の顔に良く似ている事が胸に引っかかっていたのだ。
 それは母の笑みだった。
 『聖母』の微笑みだ。
 愛しくて愛しくて愛しくてたまらない。
 この子を護るために私が在る。
 私があなたを護ってあげる。
 そんな、微笑み。
「じゃあ……な。元気でな」
「あ……」

 光が。

 光の粒が、上方から降ってくる。
 ゆらゆらと。
 ちらちらと。

 光の粒が雪のように舞う中………………………………桂の姿が


       ――消えてゆく。


「けーちゃん!!」
 立ち上がりかけた健司を、桂の微笑みが押し留める。
 その、涙がこぼれ落ちそうなくらいいっぱいに溜まった瞳が、“動かないで”と告げていた。
「ワタシ……まだ、一度も言ってなかったよね」
「な……なにを?」
「あ、あのさ…………ワタシさ……ワタシ、オマエのこと……」
 笑顔を残したまま、桂の姿が、滲むように消えた。
「…………あなたのこと…………」
 笑顔なのに、その頬に流れる涙が、健司の目には最後まで焼きついて離れなかった。
「けーちゃんっ!!!」
 少女は、最後に何を言ったのだろう?
 何を伝えようとしたのだろう?
 自分は確かにそれを聞いたはずだった。
 なのに。

 それを思い出す事が出来ないまま、健司の意識は闇の中へと沈んでいった……。


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