■感想など■

2009年09月26日

「隙間から」〜ゆめうつつであそぶ〜

■■【2】■■
 彼女は、とある地方都市の公立高校の教師をしている。
 ストレートで教育大を卒業して既に2年が経ち、もうすぐ24歳になる。
 24歳といえば、女としても脂がのり始めて艶の出てくる頃合だ。
 実際、同僚の教員や生徒の父兄から、折に触れ何度も食事や映画に誘われたりもするのだ。彼等が、あわよくば彼女をこの手で抱き、その美しく豊満な肉体を味わいたいと願っているのだろうことは、誰に言われるまでもなく明白だった。
 そういうのは、安っぽいテレビドラマか三流小説、または自宅で昼間からパソコンに向かってるような無職の男が暇に飽かせて書いたオナニー文の中の世界だけだとばかり思っていた美樹にとって、そんな彼等のあからさまに欲情した視線は、むしろ新鮮でさえあった。
 だからといって誘いに乗るわけにもいかないのが現実というもので、かつて教育大を出てすぐの、右も左もわからず日々いっぱいいっぱいだった頃の美樹にとって、彼等の浅ましくも性的に“膿んだ”視線というものは疎ましくはあっても決して心地良いものではなかった。そして、街の有力者というPTA会長の誘いに過剰に反応し、とうとう彼等の反感を買ってしまった彼女は、赴任して1年で現在の学校に移ることを余儀なくされてしまったのだった。
 あの時と同じ轍を踏むのは、二度と御免だった。
 過剰に反応などせず、軽くいなし、時にはむしろその場の雰囲気を積極的に活用して自分の立場と価値を確固たるものにしていく。
 誰かに教わることも出来ないその方法を、彼女はなんとか模索し、身に付け、ようやく今日に至っている。その苦労は決して小さくは無かった。
 そして、だからこそ誰か特定の男性と懇意になることもまた、この一年、ずっと避けてきたのだ。
 今の彼女の密かな愉しみといえば、レディースコミックを読んで妄想に拍車を掛けたり、脂の光るエネルギッシュな生徒の父兄の逞しいであろう「アレ」を想像したり、体育の後で教室に残る、男性生徒達の汗臭くも青臭い体臭の残り香から、彼等に誰もいない教室で寄ってたかって犯される…などという夢想に遊んでみるのが関の山だった。
 今はまだ色素の沈着も見られないが、指やバイブでのオナニーばかりしていては、いつか陰唇も黒く濁ってしまうかもしれない。
 そしてなにより、このままだと確実に婚期を逃してしまうだろう。
 それよりまず目先の問題として、若さが段々と失われていっているような気もしている。同僚であり大先輩でもある、教師生活15年を唯一の心の支えにしている干乾びたお局教師のようには、なりたくなかった。
 最近になって特に、澱のように身体の奥底に重く溜まりギリギリまで抑圧された性欲が、熟れた肉体を更に疼かせている。
 放課後の教室の窓から、水飲み場で上半身肌になって火照った身体を静めている運動部の男子生徒達を目撃などしようものなら、それだけで腰が重く感じてしまうのだ。疲れを知らない彼らなら、飽くまで自分を責め立てて、熱くて硬い“激情”で許しを請うまで犯し抜いてくれるに違いない。
 直に触れる者の無いまま甘く熟れ切った身体を、ただ自分で慰める日々には飽き飽きだった。
 美しい美貌と豊満な肉体を持ちながら、モデル業や芸能界より、教育というものに強い憧れと熱意を抱いて教師になったものの、理想と現実のかけ離れた実情に軽い失望を抱いていたことも、欲望を押さえ付ける心のタガの弛みに拍車をかけていた。
 いっそ…
『…“食べ”ちゃおうかな…』
 ふと、そんな想いが頭に浮かんだ。
 今、自分がいる場所が満員電車の中だということも、今は失念してしまいたかった。
 美樹は左腕を返して、手首の時計に視線を走らせた。
 今日は、修学旅行の下見に同僚の教師とはるばる九州まで出向くのだ。空港までのシャトルバスが出る市の中心街まで、あと20分はかかる。いつものように夢想して遊ぶには、ちょうど良い時間だろう。
 それは“本当に実行出来るはずもない”からこそ、自由に羽を伸ばす事の出来る淫猥な夢想だった。
『こんな想像ばっかり慣れていくなぁ…』
 彼女は小さく息を吐き、再び、うとうとと夢現(ゆめうつつ)に意識を“落として”ゆく。
 誰がいいだろうか?
 教師?
 例えば、痩せぎすでカマキリみたいな相貌の教頭は、いつも美樹の豊満な胸を見てから顔を見る。
 彼に乳を吸われ犯される嫌悪感は、いつも欲望を激しく燃え上がらせる。
 それとも、生徒の父兄?
 教え子の保護者と姦淫してしまうという背徳感は、妄想のセックスに振り掛ける最上のソースだ。
 背徳的であるからこそ、その快美感は極上に違いない。
 けれど、どちらも今の気分にはピンと来なかった。
 では…生徒?
 オンナを知らない教え子を導くつもりが、反対に自由にされてしまい「女の弱さ」を強制的に自覚させられてしまう屈辱感。
 または教え子と姦通してしまうという、保護者とそうなってしまうよりも、より強い背徳感…。
 美樹は無意識に唇を舌で濡らし、頬を笑みにゆるめた。
『…相手はD組の…そう、山下達也くん…』
 柔道部に所属し、朴訥としていながらガッチリとした体付きで動作もキビキビとしており「愚鈍」とは縁遠い雰囲気の子だ。
 実は前から、“ちょっといいな”とは思っていた子だった。笑顔が高校生らしく爽やかなのもポイント高い。白い歯と短く刈った髪が、汗臭く不潔と言われている柔道部であっても、むしろ清潔感の方を際立って感じさせる。
 そして彼は、美樹に単なる教師以上の感情を抱いている。
 少なくとも彼女はそう感じていた。
 彼は美樹が教えている数学が本来、苦手の科目のはずだった。
 なのに授業中の熱心さは目を見張るほどで、しかも時折、授業中や廊下で、彼の決して勤勉意欲から来るものではないのだろう“熱っぽい”視線を感じたのは、一度や二度ではないのだ。それも他の生徒のように、単に身体目当ての嘗め回すようないやらしい視線ではなく、どこか「崇拝」さえ感じさせるものだった。教師に恋した自分に戸惑い、そして手の届かぬ高嶺の花と半ば諦めつつも恋焦がれてしまう…。
 そんな好ましい純真さを感じさせるような視線だった。
 電車は駅に進入し、新たに人を乗せてすぐさま発進した。降りる人より乗り込む人の方が多いため、人の密度が更に増したようだ。
 ドアに半ば押し付けられるようにして、美樹は目を瞑った。
『…放課後の…誰もいない…教室…夕日…』
 人の目を盗んで、素早く彼に口付ける自分を、彼女は夢想する。

 そして、逃げる。

 わざと。

 追ってくる少年。
 放課後には人の滅多に来ない、特殊教室練の化学準備室まではすぐだ。
 そこに彼女は“逃げ込む”。
 もちろん、それはわざとである。“走ったことで乱れてしまった服”の胸元から、豊かな乳房のまろやかな丸みや氷河のクレバスのような深い谷間が覗いていることも、ちゃんと知っている。
 追い詰めた彼は後ろ手にドアを閉め、錠をかける。
 熱にうかされたように、いつもの穏やかな彼とは全然違う動きだった。
 目が血走っている。
 息が荒く、口の中で真っ赤な舌が踊っている。その様子は、まるで獲物を前にした野獣のようだ。
 彼の汗の匂いが“むっ”と押し寄せ、美樹はその“オスの匂い”に頭がくらくらするほどの陶酔を感じる。
『…あぁ…』
 机を背にじりじりと逃げようとする美樹を乱暴に捕まえ、今度は彼から荒々しいキス。
 そして柔道で鍛えられた無骨で逞しい手が、「期待」に震えて揺れる乳房を掴み、捏ね、そしてブラウスをボタンが弾き飛ぶのも構わずに強引に押し広げる。
『…待って…ここじゃいや…』

 嘘だ。

 “ここ”がいい。

 教師という聖職が身を置く聖域である『学校』の、しかも人気(ひとけ)が無いとはいえ、いつ誰が来るとも知れない“ここ”が、いい。
 彼が美樹の、どうしようもなく豊かな乳房に…若々しく張りがありながら自重によってわずかに下垂した“おっぱい”にむしゃぶりつく。
『きゃ…ぅん…』
 彼らしくない粗暴さに驚きながら、それでも美樹は声を抑えられず、甘い艶声を上げる。
 彼はなめらかで白い肌のやわらかいおっぱいを夢中で嘗め、しゃぶり、そして噛んで、下品に音を立てて吸う。
 “ちゅばっ!”と湿った音と共に充血した乳首へと与えられる刺激は、まるで拷問のようだ。
 熟れた美樹の身体には少年の性技では稚拙であり、的確に快楽を得る事が出来ず、もどかしい。
 だが、そのもどかしささえ、愛しかった。
 彼は我を忘れておっぱいばかりを責め立てる。まるで美樹にはおっぱいしか性感パーツが無いとでも言いたげだった。
 それともこの年頃の少年は、おっぱいにしか興味が無いのだろうか?
 美樹は夢想の中で“くすり”と笑った。
 それは余裕のある大人の笑みだ。
 自分は彼よりも5つも年上なのだから、自分の方からリードしてあげるのが道理だろうと思ったのだ。
 それと同時に、おっぱいに夢中でむしゃぶりついている彼が、どうしようもなく愛しいと感じていた。
 夢想の中の美樹は、彼の左手をそっと取ると、自らタイトスカートをたくし上げ、その中へと誘い入れた。そこはもうしっとりと濡れ、彼の愛撫を今か今かと待ち侘びているのだ。
 彼は初めて(?)触れるオンナの股間の熱さに、思わず手を引くが、美樹はそれを許さずもっと奥へと導いてゆく。
 下着のクロッチ部分の端から、彼の指が“ぬるっ”とした陰唇を撫でる。
 陰唇は頃合良くほぐれ、彼の指をその狭間へと…
『……!……』

 その時だった。

 美樹の夢想は、不意に断ち切られた。
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