■感想など■

2009年10月16日

[異種姦-触手] 「再会」〜にくらしいあなたへ〜

■■【4】■■
 彼には珍しく、その日は深夜に目が覚めた。
 昼間、サレディアナに付き合って、グラビスの樹液カクテルを何杯も飲んだのが原因かもしれない。
 彼は止まり木から身を起こしローブを身に着けると、寝室を出て、入り組んだ大樹の廊下を歩き階下へと下りた。昼間と違い、トランスポーターは起動していないため、夜はこうして自分の肢で歩かなければならないのが少々面倒だった。
【……1時過ぎか……義姉さんはもう眠っている頃だろうな……】
 そんな事を思いながら調理場で水を飲み、それから何の気なしに召使い達の居住エリアに足を踏み入れた時、ふと、貯蔵庫の方から声が聞こえ、シグフィスは立ち止まった。
「……だ……んな………………ってのに…………」
「…………て…………た……しょ?……」
 一人は男だった。
 そして、もう一人は、滅多に聞けないけれど聞けばすぐにそれとわかる、忘れようも無い義姉の声だった。
 この城の……というより、『セグネット』の領地に住む人間は、内耳に広域文化圏共通翻訳機を埋め込む事を義務化されている。そのため、『セグネット』に対しての「密談」というものも成立しなかった。召使いに対してのプライバシーは、この『城』において一応は守られているものの、それも各自の自室においてのみであり、その自室内でさえ、2人以上の人間が同席した場合、侍従長によってモニターされる事が告知されていた。
 深夜に自室を出る事は基本的に禁じられているが、排便などの生理的欲求までは規制の対象になっていない。
 ティファニアと男は、持ち場が完全に異なる。
 そのため、深夜にこうして会っているなどとは誰も気付かなかったのかもしれない。
「いいかげんにして」
 厳しい姉の声に、シグフィスは思わず足音を潜めて物陰に身を隠した。
『……なにを隠れているんだ私は……』
 そうしておきながら、自分の行動に心の中で自嘲した。
 自分はこの城の主(あるじ)だ。
 召使いが何を話していようが、それを気にする必要など何も無いはずではないのか。
 頭の多目的感覚器官を闇の中で伸ばし、彼等の死角から貯蔵庫を覗く。
「……だからよ、いい加減あきらめて、俺の女になれよ」
「…………どうしてそこで『だから』となるのか、意味がわからないわ」
 ティファニアはこちらに背を向けて、弱い光に対して逆光気味になっている。
 着ているものは、いつもの黒いメイド服ではなく、自室用の私服であった。
 そして、一見すらりとしてスレンダーに見えるその体躯の、両腕のシルエットから胸部の乳房がわずかに顔を出して見えた。体のラインどころか腕の太ささも考慮しても、彼女の乳房がとんでもなく豊満だということがわかる。乳腺の発達具合も、「機関」から送られた資料では申し分無かったのだ。「幼体」にとって非常に栄養価の高い乳を、十分に分泌してくれるに違いない。
 そして、やわらかく丸みを帯びながら“キュンッ”と上向く尻は、とても形が良い。骨盤の張りも申し分無く、膣道を「幼体」が通り抜けるには十分の幅があるだろう。
 “仮母”として望む適正は、全て適えた上で選別したのだから、そのどちらも当然と言えば当然なのだが。
「いつまでここにいるつもりだよ?未練たらしいったらないぜ」
 彼女に相対している男は、名前は覚えていないが、確か『城』の剪定(せんてい)係の頭のはずだ。もっとも、ティファニア以外は人間に全く興味の無いシグフィスにとって、たとえ名前を聞いたとしても覚えておく価値など無いと判断して消去してしまう可能性の方が高いのだが。
 ただ、シグフィスの副脳にあるメモリーは、人間年齢で34歳だったと記憶している。
 男として十分に成熟し、脂ののる時期だろう。
 肉体労働を主としているためか、全身の筋肉量は相当なものだ。それでも、自分の体重の数倍の重量を軽々と扱うことの出来る『セグネット』には、到底及びはしない。もし彼が手に得物を持ち向かってきても、前肢一本で組み伏せる事は可能だった。
「あの蟲野郎はお前を“仮母”にする気なんか最初から無いのさ」
「……自分の主人を『蟲野郎』だなんて、よく言えたものね」
「蟲野郎は蟲野郎だろうが。それともカミキリ野郎って言った方がいいか?」
 近くに『セグネット』がいないと思って、好き勝手言っている。
 もちろん、シグフィスはこの『城』に住む召使い達の思想まで縛ろうとは思っていないし、種族的な差異からなる嫌悪感や敵意というものを充分に理解し、理性的に感情を処理しているため、こんな言葉を聞いたからといって男を処罰したり処刑したりするつもりはない。
 これは、昆虫型知的生命体『セグネット』が哺乳類型知的生命体を征服・使役するにあたって、どうしても避けられない齟齬だと言えた。
「……旦那様を侮蔑することに快感を覚えるなんて、貴方の頭の程度が知れるから他の人の前では控えることね」
「口の利き方に注意した方がいいぜ?蟲野郎のお手付きになったら、二度と人間社会じゃ生きていけねーのは、お前が母親を見て一番良く知ってるだろうが」
 男の言葉に、ティファニアの背中が“ぴくっ”と震えた。
『母親……セランのことか?』
 この『城』からティファニア共々出て行ってからの消息は、再び彼女の娘がここを訪れるまで途絶えていた。『城』を出た1年後に、シグフィスを「産んだ」時の傷が元で亡くなるまで、セランは人間社会から受け入れられることなくティファニアを育てたのだろうか?
 では、義姉は……ティファニアは、8歳から21歳までの13年間、どんな人生を歩んできたというのか。
「蟲野郎に味見された女は、二度と人間の男と一緒にゃなれねぇ」
「……『床見の儀』のこと?」
 『床見の儀』とは、大切な卵を産み付ける前に、“仮母”の膣と子宮内を『セグネット』の雄体が直接確かめる、いわば“仮母”のための「最終検査」の事だった。
 通常、1時間から2時間もかけて執拗に胎内をまさぐられる事に加え、痛覚麻痺の目的で注入される『セグネット』の体内生成物の効果と相まって、『床見の儀』を受けた人間の女性体は、人間の男性体のペニスでは決して満足出来ない体にされてしまう……と言われている。
 そのため、人間社会ではそのように“異種生物によって淫らにされた女性体”を「忌み女」として排除してしまうようになるのだ。
 そこには、同族の女を「化け物」に奪われてしまった男の、歪んだ嫉妬が垣間見える。
 だから、『セグネット』にとって大切で必要不可欠な儀式である『床見の儀』を、人間の男は「味見」と言って侮辱するのである。
「一度味見された女は、蟲野郎のそばでしか生きられねぇ体になるっていうぜ?」
「……くだらない男の情婦になるより、はるかにマシだって聞こえるんだけど?」
「へっ……俺の下でひーひー善がってたくせによ」
 男の瞳孔が拡大し、脈拍が早くなり、酸素を求めて鼻腔が広がって全身の汗腺からの発汗が増している。
 この男性体がティファニアと「交尾」したがっているのは、節操無く放出しているフェロモンでシグフィスにはすぐにわかった。
「昔のことをいつまでも引き摺ってるなんて、貴方って本当にしつこいわね」
 “ふう……”と大仰に溜息を付いて、ティファニアは腕を組んだ。巨大な乳房が寄せて上げられ、男の視線はその盛り上がったふくらみに引き寄せられる。
「たった一年しか経ってねぇだろうが」
 “ぐびっ”と喉を鳴らし、男はティファニアの何倍もありそうな腕で彼女の細い腰を強引に引き寄せた。
「……ねえ、『気の迷い』って言葉、知ってる?」
 それに対し、彼女はいつものクールな態度を崩す事無く、ニヤついた男の顔を下からねめ上げた。
「“初めての男”が俺だってのが……そうだっていうのか?」
「私には消したい記憶だわ」
 物陰に隠れて多目的感覚器官で二人の様子を「識(み)て」いたシグフィスは、ティファニアが男と「交尾」していたという事実に、自分でも驚くほど驚愕し、落胆し、ぶつけようの無い怒りを感じている事に気付いた。

 それは全く、驚くべき事実だ。

 彼女が誰と「交尾」しようとも、妊娠さえしていなければ“仮母”としての役目が果たせなくなるわけではない。
 ましてや、彼女は「義姉」であり、その上、種族も違うのだ。
 これではまるで、誰よりも早く彼女と「交尾」したかったみたいではないか。
 彼女の「初めての男」になりたかったみたいではないか。
「へっ……なんべんもヤッて、最後にゃ狂ったみたいに善がってたじゃねーか。もう俺ナシじゃあいられねえんだろ?」
「……おめでたい男ね」
「もうアソコも濡れ濡れなんじゃねーのか?」
「確かめてみる?」
 彼女の言葉を聞いた途端、男は左腕で軽々とティファニアを抱え上げ、右手を彼女のスカートに潜り込ませた。
「湿ってるぜ?」
「女のアソコは、湿ってない方がおかしいわよ」
「クソッ」
 舌打ちして、男は彼女を背後の貯蔵樽の上に座らせると、今度は両手をスカートに突っ込み、頼りないくらい小さな下着を一気に引き下ろした。シグフィスからは、今度は男の背中とティファニアの顔が見えるようになる。ここに至って、ようやく彼女が涼やかな水色のブラウスと膝丈のスカートを身に着けている事に気付いた。
 一瞬、闇にまぎれた感覚器官を彼女に気付かれたかと思ったが、ティファニアは全く気の無い様子で天上を見上げた。それは、心底つまらないものを見ているような、冷え冷えとした表情だった。
「……ねえ、明日早いんだから、するなら早くしてくれる?」
「クソッ……クソッ……」
 彼女の首元の青い紐タイを解き、白くてやわらかそうな首筋を露出すると、男はそこにキスを繰り返し、野卑にべろべろと嘗めた。
「……服……汚さないでくれない?」
 男の右手はスカートに潜り込み、彼女の股間の性器を執拗に嬲っていた。
「へっ……へへっ……濡れてきたぜ?」
「女の生理を、もっとよく勉強しなさいよ」
 ティファニアは、観察対象の動きを解説する科学者のように、冷めた目で男を見た。
 その目には、何の感情も込められていない。

 ――これはただの生理現象だ。
 ――男の無遠慮でデリカシーの無い動きに粘膜が傷付かないよう、
   自然と膣液が潤滑液として分泌されているだけなのだ。

 彼女の目は、雄弁にそう語っていた。
 覗き見ているシグフィスは、それを見て、いつも自分が向けられている刺すような視線が、実はまだまだ全然優しいものだと思い知った。

 そこにあるのは、男に対する明らかな無関心……。

 好意の反対は嫌悪や敵意ではない。

 完全なる無関心なのだ。

「おい。ふざけるんじゃねーぞ」
 何をやっても冷めた反応しか返さないティファニアに、男は苛立ちを隠そうともせずに身を起こした。甲に毛がもさもさと茂った手で彼女のブラウスを強引に押し開き、下着をずり上げる。
 たっぷりと豊かで真っ白で滑らかな肌の乳肉が“ぶりゅんっ”とまろび出て、光の下で跳ねるように大きく揺れた。
 彼女はそれにすら動じず、小さく溜息を吐く。
 実に退屈そうだった。
「乱暴にしないでよね」
「うるせぇっ」
「おおこわ……」
 男がティファニアの巨大な右乳を左手で掴み、捏ね回す。男は空いている左乳に取り付くと、首筋にしたようにべろべろと嘗め回した。
 ティファニアは目を瞑り、ただじっとしている。
 この下らない退屈な時間が、早く過ぎるのを待っているかのように。
「下りろ」
 男はそう言いながら貯蔵樽から彼女を下ろすと、強引に後を向かせた。そうしてスカートを捲くり上げ、たくし上げてウエストに裾を押し込むと、優美な曲線を描くつるりとした白い尻を剥き出しにして、そのやわらかい尻肉を右手の指で分ける。
 深い狭間からは、赤く充血して“てらてら”と濡れ光った性器が、ハッキリとシグフィスの目に見えた。

 ――ここまでか。

 シグフィスはそう思い、頑強な顎を噛み合わせて、『セグネット』特有の、錆びた鉄をガラスに擦り付けるような「警戒音」を鳴らした。
「なっ……」
 そうして、ことさらに時間をかけ、のそりと貯蔵庫へと入り、驚いて硬直している男をじっと見詰める。
 ズボンを下げ、下半身を剥き出しにしたままの男の男根が、たちまちのうちに萎縮して垂れ下がってゆくのを、ただ見詰めた。
「そ……な……だ、旦那様……」
【邪魔をしたか?】
 “キシキシキシキシ”と間接を鳴らし、シグフィスは人間がユーモアを込める際によくやるように、前肢を左右に広げ背をわずかに逸らせてみせた。
「い……いえ……お、俺は……」
【彼女に話がある。席を外してもらえないか?】
「は……も、もちろんでさ……」
 あたふたとズボンを上げながら、男は転ぶようにして貯蔵庫を出てゆく。
 シグフィスは何もせず、ただ脇を通り抜ける男を複眼で追った。

 猛烈な「怒り」を感じる。

 焼けるような「怒り」だ。

 左手を振るって男の首を胴から飛ばしてしまいたい衝動に駆られる。
 だが、我慢した。
 こちらに背中を向けたまま、手早く大きく重たげな乳房をブラに押し込んで仕舞い、服を調え、スカートの裾を正してネクタイを締めるティファニアが、その間中ずっと背中でこちらを伺っているのが、その雰囲気でわかったから。
 彼女の前で、彼女の同族を殺すわけにはいかないのだ。
 小さく息を吐くと、彼女は床に落ちていたパンツをのろのろと拾い上げ、脚を通す。
 引き上げて丸く豊かな尻を包みながら、それでもこちらを一向に見ようとしない義姉。
 その義姉の耳が、まるで熟れたリンゴのように赤く染まっているのを見ながら、シグフィスは男の足音が遠くなってゆくのをじっと聞いていた。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/32864616

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★