■感想など■

2009年10月19日

[異種姦-触手] 「再会」〜にくらしいあなたへ〜

■■【7】■■
 教会の懺悔室で神父に語るかのような口調で、義姉はとつとつと語った。

 6年前、母セランに連れられて『城』を出た後、母と二人で故郷の集落へと帰ったこと。
 その出奔は、セランが、当時の領主であるシグフィスの父が、自分を大切に囲うことで周囲から受ける非難に耐えられなかった事が原因だったこと。
 故郷で「忌み女」として蔑まれながらも、母は自分を愛し、そして“仮母”となったことを決して後悔しなかったこと。
 出奔して一年後、セランが流行病にかかり、十分な治療も受けられないまま死んでしまったが、それは決してシグフィスを“産んだ”ことが原因ではないこと。
 シグフィスの父はセランの居場所をすぐに突き止めたが、母の強い意向で決して姿を見せなかったこと。
 けれど、生活に十分な金は毎月送られてきたこと。
 病に倒れても、母は一度もシグフィスの父には知らせなかったこと。
 そしてそれを知らせようとするティファニアを厳しく叱ったこと。
 死ぬ直前まで、「忌み女」のセランを治療してくれる医者は一人もいなかったこと。
 母が亡くなり、セランはその事を事後に知ったシグフィスの父によって、地球統合府の「機関」に保護されたこと。
 そこは『セグネット』が“仮母”のための使役用人類を育成し教育する場所だと、その時初めて知ったこと。
「13年間、私はそこで教養や礼儀作法、あなた方『セグネット』の本能から慣習に至るまで、全てを学びました。苦しかったことも哀しかったこともありましたが、自分の運命を呪った事は一度もありません。良き友にも良き師にも巡り会えましたし、何より、シグ……」
 義姉はそこで初めて彼の前肢を取り、両手でやわらかくマニピュレーターを包み込んだ。
「貴方に再び会えた」
【義姉さん……】
「貴方を愛しています」
 一瞬、彼女が何を言っているのか、シグフィスにはわからなかった。
 自分とティファニアは、『セグネット』と『人類(ホモ・サピエンス)』なのだ。
 その間に、愛など……。

 いや……そうか。

 違う。
 義姉は、家族的な愛情について話しているのだ。
 一瞬高揚しかけた心が、急速に鎮まってゆく。
 けれど、そのせいで気付いてしまった。
 知ってしまった。

【シグフィス様は、その地球人の「節無し」に恋していらっしゃるのね】

 サレディアナの「言葉」が、耳に蘇る。
 ああ、そうだ。
『私は、ファニー義姉さんを愛しているんだ』
 種族的な差異にこだわって、本当の心を……気持ちを知ろうともしなかったのは、私の方ではないか。
 でも、だからこそ種族を超えて「家族的な愛情」を向けてくれる義姉に、この気持ちを知られるわけにはいかなかった。
【……私も義姉さんが好きだよ】
「……違うの。私は貴方を『愛して』いるのよ。シグ」
【……え?……】
 だが、義姉は彼に思いもよらない言葉を投げかけた。
 そうしてゆっくりと立ち上がり、キチン質に覆われた鎧のように硬いシグフィスの頭を、触覚を傷付けないようにしながら優しく抱き締めた。たっぷりとした大きくてやわらかくていい匂いのする乳房が、彼の顔を包み込んでくれる。
 そのあまりの気持ち良さに、シグフィスは意識が飛びそうになった。
 匂いと体温と感触が、時に『セグネット』の感覚器官を大きく狂わせるというけれど、まさに今がその時なのだろう。
「私がここに来た最初の理由を、思い出して」
【義姉さん……?】
「私は……シグ……貴方の『子供が産みたい』の」
 そして彼は、今度こそ本当に、頭が真っ白になって何も考えられなくなったのだった。


「……母さんは本望だったと思うわ。地球人と『セグネット』……決して結ばれぬ種族…………ならばせめて……と思うのは、『女』なら当然のこと……。母は貴方の御父様の事を、心から愛していました。今なら……わかるの。私も……」
【で……でも……】
「“仮母”に選ばれた時、嬉しくて泣き出しそうだったって……言わなかった?たとえそれが自分との子供でなくても、愛する御方の子供である事に変わりはない。その御子を自分のお腹を痛めて産めるということがどんなに幸せか……きっと殿方には理解出来ないかもしれないわね」
 当たり前だ。
 自分との子供でもないのに、自分が傷付くことを承知で産むなど、シグフィスには……いや、『セグネット』族には想像も出来ない。
「母は貴方の御父様を愛し、そして御父様は母を受け入れた。ただの“仮母”ではなく、一人の『女』として。だからこそ、母は御父様のために身を隠したの。ただの“仮母”なら、そんな必要無いし、する意味も無い。全ては、貴方の御父様を心から愛していたからこそ。だから、貴方にもそうして欲しかった。貴方は貴方。御父様とは違う。私は義姉かもしれないけれど、貴方にとっての『女』にはなれないわ。私が愛するように私を愛して欲しいと思っても、貴方は私を家族以上のものとして見られないはずだもの」
【……なぜ?】
「なぜ?それは、貴方が『セグネット』だからよ。そしてそれは『セグネット』として当然の感情。むしろ、異種族の雌性体を『異性』と感じられる貴方の御父様が特別なの」
 猛烈に腹が立った。
 どうしようもない怒りだった。
 義姉と交尾していた男に対するよりも、もっと激しい……そしてもっと切ない怒りだった。
【何もかも勝手に決めないでくれ】
「え?」
【義姉さんは、そういうところ、小さい頃からちっとも変わってないんだな】
「シグ……」
 ティファニアは戸惑ったように彼の固い頭を乳房から解放して、カミキリムシのような顔を見詰めた。
【さっき、私がどんな気持ちで見てたのか、知りもしないで】
「……貯蔵庫での……こと?」
【……義姉さんが……君がヤツに孕まされるかもしれないと考えた時、私は理性が吹き飛ぶかと思った。私は、小さい頃は君を孕ませるのは私だと、ずっと本気で信じていたくらいだからね……。そんなの絶対に無理な事なのに……】
「シグ……」
【君を誰かに盗られるなんて、考えるのも恐かった。義姉さん……私は、君を私のものにしたい。私だけのものにしたいんだ】
「ああ……シグ……」
【たぶん……いや、私は……義姉さんを愛してるんだ】
 義姉の瞳から透明な水分がきらめきながら零れ落ちる。
 涙だ。
 感情が飽和し、抑えきれない奔流となって彼女の精神を揺さぶっているのだ。
「……最初から有無を言わせず、強引にでも自分のモノにすれば良かったのに。私はいつも……いつでも待ってたのよ……」
 椅子から立ち上がり、自分を見下ろしてくるシグフィスにしがみつくと、彼女は全身の力を抜いてゆったりした口調で呟いた。
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