■感想など■

2009年10月23日

[TS]「閉じた世界で生きる意味」〜交配と繁殖〜

■■【1】■■

 ――真っ白な部屋だった。

 横を向いても、上を見上げても、どこもかしこも真っ白だった。
 およそ、影というものが無い。
 だが、「影が無い」ということは「明るい」ということであり、それ光を生み出す“光源”が存在するということの筈なのだが、部屋のどこにもどこにもそれらしいものが見当たらなかった。
 天井や壁、建材そのものが発光しているとしか思えなかった。
 手を宙に翳(かざ)してみても、その下に影が出来ないのだ。
 部屋の広さは5メートル四方ほどで、数十分前に入ってきた壁には、その時はまだ入り口だった窪みがある。
 今はその窪みも壁と一体化し『目的』を果たさない限り、この部屋からは出られないようになっていた。
 そして、部屋の中央にはベッドが1つ在るだけだ。
 しかも大きい。
 この部屋の調度品はそのベッドが1つきりで、まさしくこの部屋は、このベッドのためだけに誂(あつら)えられたものだと思えた。
 ベッドの真っ白なマットレスに、シーツらしきものは敷かれていない。柔らかく、それでいてしっとりとした肌触りのそれは、スプリングとも低反発素材とも違うもので、更に言えば“あえてマットレスのように見せかけてはいるものの、実はマットレスではないもの”であった。
 だが、若干硬いハンペンとか、強度と柔軟性を得た汲み出し豆腐というか、そんな素材を民間のベッドのような日用家具に転用出来る技術はまだ、地球には存在していないのではないだろうか。
 そのベッドの端と端に、歳若い男女が素裸のまま、背中合わせに腰掛けていた。
 男は、年の頃18から20歳くらいだろうか?
 アジア系黄色人種の男は、まだ幼さが少し残るものの、短く刈り上げた銅色の髪と鋭い眼光が、彼をただの少年とは思わせなかった。
 それなりに盛り上がった背中と腕の筋肉は、だが、よく日に焼けた皮膚と相俟(あいま)って、肉体労働に日々従事している者のソレと同じだった。
 それに対し、女は不思議なほど、その年齢を窺い知ることが出来ない。
 顔付きは少年と同じ頃だろう…と推測出来るものの、その肉体はそれを裏切るかのように、成熟した大人のソレだったからだ。
 肩で切り揃えられた黒い髪に覗く項(うなじ)は白く、それに連なる細い肩や滑らかな背中は流れるような美しいラインを描いている。腰から尻にかけては下品にならない程度に適度な肉が付き、健康的で脂ののった肌は、まるで保湿クリームを塗った直後のように艶やかだった。
 充実した太腿や腰付きは、十分に男を知ったオンナのように妖艶ささえ感じさせる。その匂い立つような色香は、ほっそりとした腕や首からは似つかわしくない、目を見張るほど発達し、重力に負けず前方へと突出した重量感たっぷりな乳房にも纏い付いていた。
 男の手を大きく広げ、下から掬い上げたとしてもまだまだ余るほどの、重たげで柔らかそうなその乳肉は、上質のレアクリームチーズケーキのような白さで、うっすらと血管さえ透けて見えていたし、それに対して鮮やかなサーモンピンクの乳暈は、ぷっくりと膨れてツヤツヤと光を弾いている。そして赤ん坊の小指ほどの乳首は、今すぐ男に嘗めしゃぶり、千切るほど強く噛んで欲しそうに“ふるふる”と豊乳の上で震えていた。
 彼女の、全体的に見れば細身であるのに、出るところは思い切りよく出て、引っ込むべきところは素晴らしく引っ込んだバランスの良い豊満な肉体は、どう見ても十代の、まだ「青い」青年期の体ではない。むしろ、毎日のように夫に愛され、可愛がられ、精をたっぷりと注がれて充実し磨かれた25〜30歳くらいの人妻の柔肉が、丁度こんな感じではないだろうか?
 だが、妖しいほどの色香を放つ豊満な肉体の、その首から上にあるのはどこか“可愛らしい”とさえ言える18〜20歳程の、少女のものなのだ。
 目はぱっちりとして睫(まつげ)が長く、瞳はあどけなささえ感じさせるほど大きい。鼻筋は通っているものの、ちょっとだけ上を向いている鼻先のおかげで愛嬌を感じさせていた。そして、リップクリームを塗っているわけでもないのに艶やかなピンクの唇は、“ぷっくり”“ふっくら”として実に『美味しそう』だった。
 アジア系黄色人種…十数年前には「日本」と呼ばれていた島国の種族に、北欧系コーカソイドの血が混じっているようにも思える。が、その身体のしなやかさや手足のラインはニグロイドを思わせた。その他にも、2〜3の多種族的特徴が感じられる顔と身体だった。
 まるで、地球人類の様々な種族の美的要素を混ぜ合わせ、最もセックスアピールが得られる形に作り直したかのようだ。

 ―なんのために?

 それはおそらく、“相手”となる男のためなのだろう。
 “ここ”は、“そういう場所”なのだから。
「…じゃあ始めようぜ」
 男は頭をガリガリと掻くと深呼吸を1つしてベッドに上がり、女の細い肩を掴んだ。
 それだけで、女の胸元でたっぷりと重そうに実った乳肉が“ゆさり”と揺れる。
 が、女は硬く唇を引き結んだまま正面の壁を睨んでいた。
「おい」
 男は苛立ちを隠そうともせずに、女を強引に振り向かせた。
 “ぶるんっ”と乳房が派手に揺れ動き、女は慌てて両手で胸を押さえて逃げるように視線を逸らせる。
「いつまでそうしてるつもりだよ」
「…いや、ちょっと待ってくれ。まだ心の準備が」
「そう言って、この部屋に入ってもう何十分も経ってるんだぜ?」
「時計も無いのにわかるもんか」
「そろそろ腹が減ってきたからわかるんだよ」
「…お前の腹時計なんか当てになるわけないだろ?」
「……あのな、オレたちはセックスしないとこの部屋から出られないんだぜ?このままだと下手すりゃオレもオマエも昼飯が抜きになっちまうだろ?」
「…ッ…」
 男の言葉に女の白い背中が波打ち、薄い皮膚の下の筋肉がうねったと思う間もなく、彼女は観念したように溜息を付き、不承不承でベッドに仰向けに転がった。ベッドの、材質が不明の柔らかなマットレスが彼女の体を優しく受け止め、豊満な乳房が飛び跳ねるようにして“ゆさゆさ”と揺れ動く。
 それだけで男の股間の男根が“ぴくり”と反応した。
「…手早く済ませてくれ」
 女の声がわずかに震えているように聞こえるのは、気のせいだろうか?
 だが男はそれを無視し、男性であれば誰であろうと奮いつきたくなるような素晴らしく豊満で美しい女の体に覆い被さっていった。
 唇へのキスはしない。
 それが“ここ”での暗黙の了解になっていた。
 顔を近付け、吐息を感じ、至近距離で互いの目を見ると、どうしても思い出してしまうからだ。
 意識したくなくても意識せざるを得ない、決して忘れる事の出来ない事実…。
 それは…。

「あのよ…いい加減、慣れろよなオマエ…」
 女の首筋に舌を這わせて乳を揉み、肉体反射で勃起した乳首を指で捏ね回しながら、もう片方の手で股間に開く、湿った肉の亀裂を撫でさする。
 男は自分を興奮させるため、そして“仕事”を円滑に進めるために、懸命に彼女を愛撫していた。
 だが、女は時折“ひくん”と体を反応させるだけで、目を瞑りただベッドに横たわるだけだ。
 いわゆる“マグロ状態”というヤツだった。
 河岸に水揚げされた、または船舶の冷凍庫から引き出された、これから競に掛けられる直前のマグロのように、女は無反応に天井を見詰めるだけなのだ。
「どうせやるなら楽しもうぜ?」
「…慣れるかよ」
「慣れろよ」
「俺を妊娠させるだけの“作業”だろうが。だったら、俺がどうしていようが関係無いだろうに」
 女の、可愛らしい顔付きに似合わない蓮っ葉な言葉遣いを、男は特に気に留める様子は無い。
「あるさ、そんなつまんねー反応の女相手じゃ、チンポ起たねーんだよ」
 むしろ男の口調には、まるで同性に対するような遠慮の無さがあった。
「女じゃねぇだろ」
「“今は”女だ」
「子供を産んだら…すぐに男に戻るんだ」
「戻れるかよ」
「戻るんだ!」
「はいはい。でも、“今は”女だ」
 男の言葉に、女は悔しそうに唇を噛んだ。
 そう。
 意識したくなくても意識せざるを得ない、決して忘れる事の出来ない事実…。

 それは、男にとっての相手が、そして女にとっては自分自身が、元は“男”なのだという事実だった。
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