■感想など■

2009年11月02日

[二次]うる星やつら「長い夜」〜あなたが愛してくれるなら〜

■■【1】■■


 悪いのは全て私なのだ。と、彼女は思った。


 彼女は、夜になると途端に人通りの途絶えてしまう中央公園の、
 大勢の人間の小便が発酵してツンとした異臭の立ち込める、
 薄汚れたコンクリートの公衆便所のその裏で、

 五人の男にかわるがわる次々と犯された。

 つい十数分前の出来事である。
 だが、彼女にとってそれは、初めての不幸ではない。
 この一ヶ月というもの、呼び出されるまま、強迫じみた言葉のままに、彼女はほとんど抵抗らしい抵抗もせぬまま、いったい何人…いや、何十人もの男達に唇を許し、乳房を与え、デリケートな胎内に男達の熱い性器を迎え入れただろう…。
 今日は五人だった。
 一昨日前は八人だった。
 五日前は六人。
 一週間前は三人。
 そして九日前は九人。
 十一日前は十三人だった。
 それ以上前になると記憶も曖昧で覚えていない。けれど、少なくとも二日に一度、一日おきに呼び出された事は覚えていた。
 男達は、主犯格らしき一人を除いて、いつも違う顔ぶれだった。
 けれど、脱色した髪を染料で染め、ピアスや貴金属で無闇に飾り立てている男達のファッションは、判で押したように個性の無い、雑誌やTVの出来の悪いフェイクにしか見えなかった。
 不健康なまで黒々と焼いた肌は、荒れ果てて見苦しかった。そして、抑揚の無い口調でどうでも良い事をさも熱心そうに語る仕種は、真に熱中出来ない心の空虚さを誤魔化すかのようにも思えた。
 そして本質は、自分一人で考えているようで、その実他人と同じような格好をしていないと不安になる、自己というものを持たない精神的幼児。一人では何も出来ないくせ、多人数になると途端にあからさまな攻撃性を剥き出しにして、自分達より弱い存在を集団で攻撃するのだ。
 社会性とモラルを捨てる事を「カッコイイ」と勘違いしたモノほど性質の悪いものは無いのに、だ。
 そんな無個性な男達の中にも、時折、何度か見知ったような顔が混じる事があったような気がするが、彼女にとっては、そんな事はどうでも良かった。
 彼女がいつも願うのは、この地獄が早く終わる事。
 彼女が心に浮かべるのは、たった一人の男の面影だけだったから。

 ダーリン。

 彼女にとって、この世でもっとも大切で、愛しくて、失う事を思うだけで恐怖に身を震わせてしまうただ一人のひと。
 何度も弄ばれて肌に染み込んだ男達の精液と唾液の匂いは、たとえコロンを振りまいても幻臭として彼女を捕らえた。そしてそれは、日常の中で何も無かったかのように愛しい彼の前で微笑む彼女を、心から恐れさせた。
 自分が彼等の「玩具」にされているという事実を、もし彼が知れば、何と思われるか…。
 彼に嫌われるくらいなら、死んだ方がマシ。
 彼に嫌われるくらいなら、彼を殺して自分も死んだ方がマシ。
 でも、彼を殺すことなんか出来やしない。
 だから、苦しい。

 だから、哀しい。
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