■感想など■

2009年11月04日

[二次]うる星やつら「長い夜」〜あなたが愛してくれるなら〜

■■【3】■■
 日が落ちて夜になり、午後七時を過ぎる頃、彼女のユーフォーのコントロールパネルが呼び出し音を放った。
 「彼等」からではない。
 彼等からの呼び出しは、もっとアナログ的なものなのだ。今では、街のそこここにたむろする男達が、絶えず彼女の動きを見ている。
 彼女への呼び出しは、彼女が一人になる時、場合によっては彼女への目配せによって一人になるよう仕向けられた時、場所と時間を書き記した紙切れを、擦れ違いざまに渡される。それはもっとも確実で、そして最も彼女を畏怖させる方法であり、彼等はその方法を好んで使用した。
 信号は、愛しいひとの部屋に置いてきた、ビーコン(発信機)から発せられていた。それは以前、彼女が彼に持たせたまま、今まで一度として使われた事のない、ほとんど忘れ去られた発信音だった。
「……………ダーリン…………」
 彼女はこくり…と唾を飲み込み、震える手で受信シグナルを消した。
 彼が呼んでいる。
 彼女を呼んでいる。
 彼は、どうするだろう?
 彼女を殴るだろうか?
 罵るだろうか?
 本気で嫌われても仕方のない事をしたのだ。別れを………
 別れを言い渡されるかもしれない………。

 捨てられる………かもしれない………………………。

 彼と別れたくなかった。
 ずっと一緒にいたかった。
 死ぬまで一緒にいたかった。
 一緒に生きていきたかった。
 訳を話せば、彼はわかってくれるだろうか?
 心を込めて、全身で訴えれば、彼はわかってくれないだろうか?
 許されなくても、殴られても、罵倒されても、彼のそばにいられなくなるよりもずっとマシだ。
「…………………」
 彼女は決心を固めると、エアロックを開け、少しガス臭い…しかし慣れ親しんだ街の大気に身を委ねた。
 眼下には、愛しいひとの待つ、赤い屋根の小さな家が見える。
 彼の「おとうさま」が30年ローンで建てた、何度破壊されても、その都度彼女が復元機で元どおりにした、今では彼女のもう一つの家となった、小さな家が見えた。

           ◇       ◆       ◇

 彼は、いつもそうしているように、机に向かって漫画を読んでいた。
 窓からそっと中を覗き込み、恐る恐る彼の表情を伺っていた彼女は、彼の、思いの外、平静と何ら変わらぬその表情を見て混乱した。
 その表情には怒りも、裏切られた悔しさも、何もないのだ。
「…ダーリン……」
 意を決して窓から身を滑り込ませ、彼女は、硬く強張った表情で彼を見た。彼が顔を上げた瞬間体が震えたが、彼の表情は変化しなかった。漫画雑誌を閉じ、小さく伸びをする。
「来たか。メシだってよ。母さん用意してんだから呼ばれる前に来いよな。食うだろ?今日はエビフライだってさ。一人2匹だぞ。それ以上食うなよ」
「ダーリン…あの…」
「ほれ、行くぞ」
 いつもと変わらぬ口調。
 いつもと変わらぬ表情。
 何も無かったかのように。
 何も見なかったかのように、あまりにも今まで通りの彼の仕種…………。
「…………………」
 どういうことだろう?
 彼は見たはずだ。
 体中、キスマークと内出血と泥と精液と擦り傷に覆われた、彼女の体を。
 彼は見たはずだ。
 足元に散乱したティッシュとタバコと足跡と、精液の零れたコンドームを。
 彼女は、階下へと降りて行く彼の、その後ろ姿を見ながら、どこか落胆している自分を感じていた。


 食卓は、いつもと全く変わらなかった。
 彼と「おとうさま」のオカズの取り合いと、それを窘める「おかあさま」の怒鳴り声。
 TVでは何が面白いのかわからない地上波の娯楽放送が映り、ここでも彼と「おとうさま」のチャンネル争いが起こって、いつものように「おかあさま」が主導権を獲得した。
 地球産の甲殻類「エビ」を揚げたフライは、いつものように小さかったし、「おかあさま」の作った料理はいつものように味がしなくてタバスコを一瓶振り掛けた。
 何も変わらなかった。
 いつもと同じ夜だった。

 食事を終え、彼の部屋に戻るまでは。

『えっ?』
 一瞬、何が起こったのか、彼女は理解出来なかった。
 「おかあさま」を手伝って食事の後片付けを終えた彼女は、彼の部屋に入って、彼に今までの事を洗いざらい話して謝ろうとした。
 だが、そっと襖を開けて、俯いたまま部屋に入った彼女は、突然腕を掴まれ、畳の上に引き倒されたのだ。
 何が起こったのか理解出来ぬまま彼を見上げようとした彼女の肩を、彼は乱暴に押え付けて、素早く虎縞のブラに手をかけた。

ぶるっ……

 捲り上げるように引き上げ、取り去る事無く首元に押しやられたブラは、躍り出るように飛び出した乳房を両側から押さえつけて、殊更に盛り上がらせる。豊かな丸い造形は、それによって尚いっそう豊かに突出し、鮮やかな紅い色の乳首は、クリームを塗ったように光を弾く乳輪の上でふるふると震えた。
「ちゃっ!?」
 慌てて両手で乳房を押さえ、乳首を彼の目から隠そうとする彼女の、その両手を乱暴に払いのけると、彼はたっぷりとした柔肉を右手でぐにぐにと揉みたてる。その動作は彼女の事など考えぬ、ただ、その柔らかさを味わおうとする身勝手で独善的なものだ。
「あっ…い…いたっ…痛いっちゃ……いたっ………」
 ラムは、乳房に満ちる鈍い痛みに身じろぎし、彼の手から逃れようと身体を捩った。その拍子に、掴まれていない右乳房がゆさりと揺れ動き、その頂上の紅が彼の視界を刺激した。

がりっ!

「ひぎっ!」
 彼は突然乳房に吸い付き、頭頂の紅を口に含むと、容赦なく歯を立てて彼女の胸に激痛を走らせた。
 それは彼女の左乳房を自由に捏ね回している右手と同じで、彼女の痛みを考慮に入れた行為では全くない。そしてその時彼女は、ようやく彼がしようとしている事を知ったのだ。
「いっ………やっ………やぁっ……」

 涙が溢れる。

 こぼれて頬を伝う。
 懇願の声を上げても、彼の歯は彼女を解放しない。血が滲み、千切れそうな乳首の痛みに、彼女はほとんど泣き出しそうだった。
「……ごめんなさいぃ…ごめんなさいダーリン、ごめんなさいぃ…」
 血を吐くような切実な哀願に、彼はようやく乳首を解放する。白い乳房にじわり…と、彼の唾液に混じって命の紅が広がる。地球外生命体と言えど、彼女の体に流れる血潮は、人と同じ紅なのだ。
 解放された右乳首を右手で庇い、ラムは濡れた目で恨めしげに愛しい男を見上げた。天井の電灯で逆光となり、涙で滲んだ目では、彼の表情はわからない。それでも、彼女には彼の瞳が、怒りで鈍く光っているように見えて戦慄した。
「……ダーリン…ダーリン…ダーリンダーリンダーリン………ダーリン……」
 母親にすがる幼子のように、ラムは彼の肌を求めた。
 首を抱きたくて口付けが欲しくて温もりが欲しくて両手を伸ばした。
 だが、

ぱしっ

 彼はまるで汚いものを振り払うかのように、伸ばされた彼女の両手を叩き退けたのだ。
「あう…うーー…うーーー…………」
 鳴咽は耐えられなかった。喉の奥から苦しげに漏れた。

 私はこの人を裏切ったのだ。

 それを、その行為の罪の深さを、まざまざと思い知ったからだ。
 この人を迎い入れる前に、何人何十人もの男に体を許し、その『精』を胎内いっぱいに満たした。
 受け入れた。
 抵抗する事もせず、ただ彼等が弄ぶに任せていたのだ。それは、自分から進んで交わった事に等しいではないか。
「あっ」
 彼はまるで、まな板の上に魚をそうするように、機械的な動作で彼女をゴロン…とうつ伏せにした。それは、彼に「これ以上お前の顔など見たくない」と言われたようで、彼女はあまりのショックに息を呑んだ。
 ラムはまだ一度も、彼とはセックスをしていない。ただの一度も愛し合っていないのだ。
 初めての「愛交」は、怒りと嫌悪とを、鋭い針のように向けられながら迎えるものではないはずだった。
 彼からの優しい言葉と優しい愛撫、愛しげな眼差しとあたたかい口付けの、たまらない喜びの中で迎えるはずだったのだ。
 なのに。
「ひっ…」
 前触れも無く、ずるりとアンダーを太股までずり下げられ、無遠慮に指を差し入れられた。もどかしげに捻じ込まれた指は尻肉を押し開き、肛門をなぶってやすやすと性器に辿り着く。
 性器は『花』であった。
 『花弁』は柔らかく、狭間は『蜜』でしっとりと湿っている。そこを彼は蹂躪する。
 さして濡れていない『蜜口』に指が押し込められ、引き攣れて痛みが走る。強引な行為に粘膜が切れてしまいそうになるが、彼女の『花』は自らを護ろうと潤滑液となる『蜜』を分泌し始める。それは、男によって開発され開花した、オンナの生理機能だった。
「あっ…やだっ…やだっ…」

 ぶっ…

 背後で、彼が何かを“吐く”音がした。
 続いて股間に、まだ十分に濡れていない『花』に、べっとりと生暖かいものが塗りたくられる。
『………………ひどい………』
 彼がした行為を知り、彼女はぎゅっと目を瞑って唇を噛み締めた。彼の行為は、ラムの想いも自尊心も、全てを引き裂いて泥にまみれさせる事に等しかったのだ。
 彼は、十分に濡れていない彼女の『花』の中に自らを押し入れるため、痰の混じった「唾」を塗りつけたのである。

ずっ…りゅ…

「ひぃあっ…ああああ…」
 彼は無遠慮に、少しの優しさもなく、まるでモノを相手にしているかのような無神経さで押し入って来た。
 体の中身を根こそぎ引っ張られるかのような激しい痛みの中、彼女の豊満な両乳房は、身体の下で押し潰され、擦れて、右の乳首から染み出した赤い血が畳の上に塗り広げられる。
 顰められた眉は痛みに歪み、とめどなく流す涙は畳に染みて消えた。
 「やだ…やだぁ…………」
 しゃくりあげ、泣きじゃくって身じろぎしながらも、ラムは抵抗しなかった。いや、

 出来なかった。

 もちろん、こんな形で、愛しいひとと一つになどなりたくはなかった。今の彼の心には、彼女への「愛」はひとかけらも無い。
 いや、同情すら無いかもしれない。
 それどころか、あるのは「嫌悪」と「怒り」と「侮蔑」かもしれないのだ。
 でも、ここでもし彼を拒んだら?
 抵抗したら?
 そうしたら、彼は二度と彼女に触れようとしないかもしれない。彼の元から追い出されるかもしれない。徹底的に嫌われてしまうかもしれない。
 初めて。
 初めてなのだ。
 初めて愛しいひとと一つになれたのだ。それがどんな形であれ、彼は私を“抱いて”くれているのだ。

 けれど。

 けれど、この引き裂かれるような胸の痛みには、これ以上耐えられそうもなかった。
 冷たい涙だけが頬を伝った。
 喜びの涙ではなく悲しみの、後悔の、冷たい涙だった。

ぬっ…ぬっ…ぬっ…ぬっ…ぬっ…ぬっ…

 『蜜』は満ち、ちゅるちゅると粘液質の音を立てて彼の蹂躪を許した。後から犯され、彼の首を抱きしめる事も叶わず、彼の顔を見る事も叶わず、ただ犬のように、性欲処理の人形のように扱われている。
「ふっ…うっ…ううう…」
 ぼたぼたと涙は畳に滴り、鳴咽は唇をこじ開けようともがいている。

 感じなかった。

 ほんの少しも快感を、彼との一体感を感じなかった。
 ただ、悲しみだけがあった。
「ダーリン……ダーリン……」
 ラムはぐすぐすと鼻を鳴らし、両手で体を支えて、彼の顔を見ようと首を捻じ曲げた。
 だがその首を、今まで彼女の尻を掴んでいた彼の右手が、すぐに乱暴に押さえ込んだ。そして、振り返ろうとする彼女の行為を押し留め、そのまま、彼女を畳へと押しやる。

 顔すらも……見るなというのだ。

「うあっ…あっ…あーーーーーーーー…ああーーーーーーーーーーーー…」
 ラムは声を上げて泣いた。苦しくて哀しくて辛くて、まるで母親を見失った迷子の幼女のように、泣いた。だが、
 だが彼は、左手でラムの尻肉を思い切り抓り上げたのだ。
「ひぐっ…」
 泣き声すら上げる事を許さないというのか…………。
「うっ…ふうっ…」
 両手で口を押さえ、泣き声を押し殺して、ラムはいやいやをするように首を振った。
 彼に嫌われたくない。
 彼に捨てられたくない。
 我慢しよう。
 彼の好きにさせよう。
 なぜなら。

 なぜなら、悪いのは全て私なのだ。
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