■感想など■

2010年05月14日

第3章「はじまり」

■■【1】■■
 特別教室練の1Fにある保健室へと薫を送り届けると、直人は「鞄を取ってくる」と言って再び出て行った。
 実はそのまま帰ってしまうのかと思っていた薫にとって、それは意外な行動だった。
 薫がいきなり体調を崩して床に座り込んでしまったことを、彼は自分のせいかもしれないと思っているらしい。
 その辺りの早計な愚直さというか思い込みの激しさは、小学生の頃を思い出させて薫を少し楽しくさせた。

 いつもいる保健教諭の篠崎は、何か用事があるのか席を外していたため、薫は一人、保健室に残って扉をロックした。
 一応、窓のカーテンを引いて外から見えなくしておいてから机の上にあったティッシュを掴んで、2つあるベッドのうち、廊下側の1つに向かう。
 そしてさらに、ベッドの周囲のカーテンまで引く。
 これで完全に周囲から…グラウンドに面した窓側からも、廊下側からも見えないはずだ。
 そうしておきながら、薫は両手をスカートの中に入れ“ごそごそ”とまさぐると、意を決したように“ずるっ”とパンツを一気に膝まで引き下ろした。
『うわぁ…』
 思ったとおり、白いパンツはぐっしょりと濡れ、クロッチの部分は“ねとねと”の白っぽい粘液でべったりだった。
 おまけに、前の方がなんだか黄色っぽくなり、ちょっぴりアンモニア臭い。
『学校でお漏らしなんて…』
 小学校の1年生の頃以来かもしれない。
 薫は涙を拭って鼻を啜ると、小さく溜息を吐いた。
 それから制服のミニスカートを汚さないように左手で捲り上げながら、ティッシュを何枚か取って少し腰を落とし、股間に当てる。
「…んんっ…」
 まだ尿と蜜に濡れているあそこを、丁寧に拭う。
 だが“ぐちゅぐちゅ”と濡れそぼったそこは、そんな些細な刺激さえ増幅してしまった。
 拭うたびに“むずむず”した刺激が腰にわだかまり“びくんっ”“びくんっ”と薫の体が震える。

 夕暮れの保健室で、汚れたパンツを片手に、スカートを捲り上げてティッシュで中腰に立ったまま股間を拭く爆乳女子高生…。

 なかなかにシュールな絵だった。
 こんなところ、誰かに見られたら恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
 それより、直人が早いところ鞄を持ってきてくれないと、ブラもパンツも無い状態ではどこにもいけない。
 代えのパンツは無いけど、体育の時に使った短パンがある。ミニスカートから少し覗くからみっともないと言えばみっともないけど、無いより遥かにマシだと思えた。
 または篠崎先生が帰ってきてくれれば何とかなるかもしれないのに、彼女は一向に帰ってくる様子が無かった。
「――すーすーする…」
 あそこを乾かそうと、ミニスカートをパタパタ扇ぎながら薫はひとりごちた。
 思えば、半袖セーラーの夏服と、紺のミニスカート、それにハイソックスしか身に着けていないのだ。
 なんて心もとないのだろう。
 男だった頃は、夏なんて家の中も外もタンクトップと短パンだけで一日過ごすのが極普通だった。
 半袖セーラーの夏服・ミニスカート・ハイソックス。
 タンクトップ・短パン。
 数は男だった頃の方が少ないのに、今のこの心細さはどうしたことか。
 それはやはり、女になってから、肌を晒す事は恥なのだと「常識」として身に染み込まされてきたのと、スカートは短パンのように下が「閉じて」いないからなのだろう…と、薫は思った。
 ロックをかけているから大丈夫…とは思いつつも、ベッドのカーテンから“ひょこっ”と顔だけ出して様子を伺い、誰も来ていない事を確かめる。
 そして保健室備え付けの洗面所まで行き、急いで汚れたパンツを洗った。
「ふう…」
 直人が離れた事で、だいぶ体の中を荒れ狂った嵐は沈静化していた。
 あれは、どういうことなのだろう。
 ひょっとして、直人の匂い…というか体臭とか皮膚感覚とか、そういうものが自分とめちゃくちゃ相性が良いということなのだろうか?
 クラスメイトの松瀬志宇(しう)が、前に言ってた事がある。
「ちょっとフェチっぽいかもしれないけど、私は男の子の外見とか仕草とかより、匂いとかの方がメチャクチャ興奮するわね。汗の匂いとかもそうだけど、特に整髪料とかじゃない髪の匂いにビンビンくる。それに、気になってる男子の2〜3日洗ってない頭の匂いとか嗅いじゃったりすると、それだけで濡れちゃうことあるわ。え? や〜らしい? まあ、カオルちゃんもそのうちわかると思うけどね〜」
 正直、その時はそんなヘンタイチックな性癖なんか、わかりたくもないと思っていた。
 でも今は、それが嫌というくらいにわかる。
 …わかってしまった。
『だけど、ここまでスゴイものなのかな…』
 だが自分は、まだ他の男の誰とも“そういう関係”にはなっていない。
 つまり今まで、男の匂いとかルックスとか仕草とか言葉とか“普通の女の子が惹かれるような男の魅力”とかには、さっぱり反応しなかったのだ。
 なのに、こんな急に…しかも直人に対してこんな風になってしまうなんて…。
『それって、僕がナオタの事を好き…って…こと?…』
「ぁ……」
 パンツを洗いながら直人の事を考えていたら、またあの感覚が蘇り、お腹の中で何かが“ぬるっ”と動いたような気がした。
 そうしてそう思った途端、すぐに“つう…”とあそこから太腿を伝い落ちるものを感じた。
 薫は慌てて手に持っていたパンツで拭い、「せっかく洗ったのに…」と顔を顰める。
『なんか…“多い”のかな…僕…』
 蜜の多さは、まるでその手の漫画みたいだった。
 現実には、あそこまでダラダラと犬の涎みたいに垂れる事なんて無いのに。
 学校の保健室でノーブラ・ノーパンのままいるというのが、この異常な興奮状態が続いている原因の一部にもなっているのだろうか。
 ひょっとしたら自分は、露出狂の気がある変態なのかもしれない。
 そう思って、すぐに否定する。
『別に…ノーブラで教室に帰ったんだって、みんなに見て欲しかったから…ってワケじゃないし…』
 それにしても、乳首が透けていたのを男子が気付いたのなら、女子も当然気付いていたに違いない。
 でも、誰一人として教えてくれなかった。
 きっとそれは、みんなで面白がって黙っていたに違いないのだ。
『貞華も志宇も友香も、教えてくれればいいのに…薄情なヤツら…!…』
 薫はむくれて頬を膨らませ、パンツをぎゅっと絞って水気を切ると、それをハンカチで包んで、直人が来てもすぐにはわからないように洗面所横の箱の陰に置いた。
「ナオタ…遅いな…」
 口に出して呟くと、その音の響きで、再びあの“むずむず”が腰の辺りにもやもやとわだかまった。
「ぅあ…」
 ここまでくると、もう立派な変態だ。
 直人の匂いや皮膚感覚や声を思い出すだけじゃなく、名前を口にしただけで濡れそうになるなんて…。
 自分で性衝動をコントロール出来ないなんてのは、男だけだと思っていた。陰茎の勃起などはその最たるもので、特に年頃の男子の場合は水着グラビアを見ただけで反応してしまうのだ。そしてそれは止めようと思って止められるものではない。
 薫は過去に男の体でそれを経験しているから、それが女の体でも起こる事に驚いていた。
『それとも…これって僕だけなのかな…』
 だとしたら、それは男の脳を、クローンニングして性変換した女の肉体へと移植した弊害なのかもしれなかった。
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