■感想など■

2010年06月03日

◆◆ Act.01 ◆◆「出撃」◆◆

■■【4】■■

 エレベーター横のコントロールパネルに、手首の“Iスーツ”情報端末をかざして認証を得ると、幸一は自分に与えられた10ケタのコードナンバーを告げた。
 すると、すぐに目覚まし時計のアラームのような、どこか軽妙な電子音が響き、2人(?)のいる地下空洞を見下ろせる、すべてのガラス窓に可能な限りの速度でシャッターが下りる。
 これから行われる「エントリー」は、少なくとも衆目の中で行われるべきものではなく、せめて他者の生の視線はカットして欲しいと組織上部に進言した、幸一の少ない功績のうちの一つであった。
 シャッターが下りると、続いて「待機ベッド」の横の、平坦な床の一部が円形にゆっくりと開き、その中から高さ2メートルほどの、凹凸のある白い筒がせり上がってくる。

 これが、これから彼が内部に入る「イグニッション・シリンダー(ignition-cylinder)」だ。

 一見すると「鉄の処女」……「アイアン・メイデン(Iron Maiden)」(ドイツ語で「アイゼルネ・ユングフラウ(Eiserne Jungfrau)」)と呼ばれた、中世ヨーロッパで刑罰や拷問に使用されていたとされる拷問道具に見えなくもない。果たして、油圧ポンプと圧縮空気によって床からすっかり姿を現した「それ」は、まさしく「アイアン・メイデン」さながらに前面が左右に開き、その中と言えば、成人男性がすっぽりと立って入れるようになっていた。
 もっとも、口幅ったい人間は「コンドームの使用説明図みたいだ」などと言うが、その外観と“使用目的”を鑑みると、あながち外れてもいないので誰も反論出来ないのが痛いところだった。上部先端が人の頭のように突出している上、シリンダーの表面には定間隔で大人の拳大ほどもある突起が並んでいるのだから。
 まだ「バイブレータみたいだ」と言ってしまわないだけマシだった。
 この中に入り、彼はサティと意識融合して、星幽体(アストラル・ボディ)を彼女の自我領域(イド)に溶け込ませるのだ。
 それによってのみサティは、「脅威」に対抗する「力」を得る事が出来るのである。
 そしてまた、これこそが、サティが存在を許されている理由……ただ一つの存在理由であった。
 だが、この「リンクシステム」を考え出したヤツは絶対に変態だと、幸一は思う。
 建前上は様々な利便性を並び立ててはいるが、これに代わるシステムなら、いくらでもありそうなのに、そうしない。そして更に腹立たしいのは、「イグニッション・シリンダー(ignition-cylinder)」のエントリーに必要な、キー・ワードだった。
 ちらりと15メートルほど頭上にあるサティの顔を見上げると、ものすごく期待に満ちた顔で山のように巨大な乳房の向こうからこちらを見ている。それこそ、「大好きな彼氏」が「自分への誕生日のプレゼントを持ってる」ことを、あらかじめ知っているオンナの顔だった。
 彼女の体から薫る甘い香りが、更に濃密になる。今すぐにでもエントリー可能なほど『準備』が整っている証拠であった。
 このままではその薫りに酔ってしまいそうだった。
「あ〜〜……」
 彼は一瞬だけ躊躇し、薄く無精髭の生えた口元を往生際悪く“むにむに”と動かして、やがて意を決したようにサティの目をまっすぐに見上げた。

「せ、『世界中で一番に愛してる』!!」

 やけっぱちに大声を張り上げた彼は、どうしようもない恥ずかしさに顔も上げられない。このキー・ワードは、あの窓の中の科学者達はもちろん、幕僚将校から整備員に至るまで、情報端末を持つ全ての人間に知れ渡っているのだから。
 もちろん、こんなふざけた言葉をキー・ワードに設定したのは幸一ではない。彼がマスターに決まった時には、もう既に変更不可能な決定事項となっていたのだから、これはもう嫌がらせとしか思えなかった。
 対するサティはというと、みるみる頬を赤らめ、陶然と天を仰いで“ぶるるっ”と身震いすると、うっとりと熱い吐息を吐いた。
 彼の言葉が物理的な熱量となって耳朶を打ち、脳髄を揺さぶり、疾(と)く、背筋を走り抜けてゆく。幸せの本流が肉厚の尻にわだかまり、じんじんとした熱で彼女の“大切な場所”をたちまち潤していった。
 オプティカル・スキンに覆われた両手で頬を包むサティの、圧倒的な存在感を誇示する巨大な乳房が、腕に挟まれて南極のクレヴァスのような深い谷間を形作っている。その両乳房の先端で、乳首の盛り上がりが“むくむく”とたちまち大きく尖るのが見えた。
 彼女は『愛』を告げられ、『愛』を感じ、『愛』を注がれて、『愛』に濡れたのだ。
「はい……」
 うわずった声で彼に返事を返すと、それだけでサティは泣き出しそうだった。

 幸せ過ぎて。

 どうしようもなくて。

 今この瞬間に彼にキス出来ない事が、もどかしくて哀しくて切なくて、胸が苦しくて苦しくて仕方なかった。
「うぅ〜〜〜……」
 対して彼は、彼女のその気持ちがわかるから、どうしようもなくわかってしまうから、ただ低く唸って頭をガリガリと掻き毟るしかない。そうして、彼女からの熱っぽい視線に耐え切れず、彼はそそくさとフルフェイスのヘルメットを被り、2重のファスナーと3重のマジックテープを閉め、手首のパネルで“Iスーツ”とのリンクを完了した。
 こうすれば、少なくとも素顔を晒して彼女の熱い……熱過ぎる視線を感じる事も無いからだ。
 つまり、逃げたのだった。
 とんでもないヘタレである。

 だが、その代わり……

【ああもうっ! やっと話が出来るっ!!】
 突然、幸一の“目の前”に、キラキラとした光を纏いつかせつつ唐突に出現した小人が、バラ色に頬を染めて彼の顔面……ヘルメットのバイザーに“ぺたり”とへばりついてきて、その薄い胸や体毛の無いつるりとした股間がこれでもかとばかりにアップになった。
この記事へのコメント
まったくもって変態的で羨ましい合体方法ですね。
新キャラ?はいろいろ小さいサイズで、サティと大小揃ってサイズフェチとしてはお得で嬉しいですw
Posted by 通りすがり at 2010年06月03日 07:10
 おっきい子を出すならちっちゃい子も出す、ということで(笑)。
 別人かというとそうも言えませんが。
Posted by 推力 at 2010年06月04日 12:27
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