■感想など■

2010年07月27日

◆◆ Act.04 ◆◆「帰還」◆◆

■■【4】■■

 イグニッション・シリンダーから解放されて幸一が最初に目にしたのは、泣きそうな顔で心細げに覗き込むナビィの顔と、その向こうでゆるやかに口を開いたままのサティの巨大な陰部であった。とろとろと蜜液を垂らしながら“ぽっかり”と虚(うろ)のように口を開けた膣口と“ゆるゆる”と蠢く軟体動物のような小陰唇は、赤く充血してひどく生々しいことこの上ない。ねっとりとした蜜液にまみれたその部分は、見ているとそのまま呑み込まれてしまいそうな錯覚に陥ってしまう。
 幸一は「アイアン・メイデン(Iron Maiden)」のように前面が左右に開いたシリンダーから苦労して身を引き剥がし、床に一歩踏み出した。戦闘後──正しくは『融合(エントリー)』後──は、肉体的にも精神的にも疲弊が激しく、ともすると激しい脱力感に床へ膝をつきたくなってしまうが、そんな事をすれば可哀想になるくらいサティ(ナビィ)が心配するだろうことが目に見えているので、懸命に堪える。
 だが実際、息苦しく、発汗も激しかった。まるで水泳のような全身運動でもしたかのようだ。
 吸水性のインナーがじっとりと湿り、指先などの先端部の皮膚がふやけているのを感じる。
 幸一が身に着けている“Iスーツ”は、生体反応をモニターするための各種センサーや、生命維持装置、老廃物処理機構など、およそ長時間密閉空間に閉じ込められる上で必要とされる機能はほとんど備えている。生命維持装置は、スーツ内の温度をコントロールし、呼吸用の酸素や、システムに必要な電力を供給するほか、サティとの精神リンクや緊急時における外部オペレーターとの通信機能を提供するシステムで、その特性は気圧コントロールを除けば宇宙服(大気圏外作業用気密服)とほぼ同じと言える。だが、体温調節は完璧だが、発汗等によって放出される水分処理に関しては、冷却はされても、宇宙服とは違い循環システムが機能として搭載されていないため、全ては排出されないのが現状であった。
 “Iスーツ”着装の際には、スーツの内側に微細に設置されたセンサー素子とのリンクを正確かつ緻密にするため、ローションのようなジェルを全身に塗りたくっており、そのため、今はそのジェルに汗がプラスされ、どうにも居心地が悪く感じる。そしてその居心地の悪さが、疲労感を増幅させているようにも感じていた。
【大丈夫ですか? 幸一さまぁ……】
「うん。大丈夫。問題無いよ、いつものことだし……」
 ナビィに微笑むと、彼女はほっとしたように表情をゆるめた。
 サティとのリンクはまだ切れていない。そのため、サティの意識の一部がインターフェスとして現出した人工精霊である彼女には、幸一の生体反応が正常値の範囲であることは周知の筈だった。だが、データとして正常であると周知であっても、実際に表情と言葉で受け取らなければ安心出来ないのは、これはもう“恋する少女の理不尽”というものかもしれなかった。
 幸一はそんなナビィの気持ちをありがたく感じながら、けれど消耗そのものは自分よりもサティ(ナビィ)の方が激しいことを感じていた。
「それより、『お腹減った』でしょ? 少し休んだら……その、する?」
 彼の言葉に、ナビィの顔が文字通り『ぼんっ』と湯気を立てて真っ赤に沸騰し、“ひょろろろ〜”と墜落するように床に落ちて“ぽてっ”と伸びた。
 じわじわじわ……と顔の赤味が全身に広がり、まるで長湯して湯当たりした幼児のようだった。
「ナビィ……その、僕が言うのもなんだけど……いい加減馴れようよ」
【無理ですよぅ……デカ女、あと、任せたから】
「あっ」
 涙目でひらひらと手を振ると、ナビィは“ぽしゅっ”と可愛い“音”を立てて幸一の目の前から消えた。
 後に残されたのは、脱力した幸一とサティのみ。
 少し待ってはみたものの、以後、ナビィが姿を現すことはなかった。
「ふぅ……」
 やがて幸一は諦めたように嘆息し、フルフェイスのヘルメットを脱いだ。
 ナビィがあれでは、サティと話すしかない。そう思い、頭上のサティの顔を見上げてみれば、彼女は
「あ、わ、私……は、その……い、今すぐ……」
 と言ったきり黙り込んでしまった。
 彼女の肌は発汗著しく、頬は紅潮し、潤んだ瞳は上擦って濡れたように甘えた声と共に、幸一の胸の奥をまっすぐに突き刺した。
 家屋解体用モンケーン(鉄球)のような超重量級巨大“椰子の実”乳房がゆらゆらと揺れ、その先端でオプティカル・スーツを内側から破かんばかりに乳首が勃起している。視線を下げれば、人間の女性と同じ生理反応をした女性器が床にとろとろと蜜液を滴らせているのが見えた。
 それらを見れば、彼女がすっかり発情しきって、言葉通り「今すぐにも抱いて欲しい」と願っているのは明白だった。
「なに? サティ」
 それでも幸一にはそれをすぐに是と言えない。
「お、お情けを…頂きたいと…」
 清楚で美しく、たおやかで清純な顔立ちの黒髪ロング爆乳美人が、目に涙を浮かべながら縋るようにして愛を請うているのだ。抱いてほしい、セックスしてほしい、愛してほしいと懇願しているのである。男子であれば一度は夢想せずにはいられないほどに有り得ない状況ではあるが、成熟した女性にトラウマがある幸一にとっては、だからといって「はいわかりましたセックスしましょう」と即断出来るわけもなかった。ただ、自分に全幅の信頼と最大限の愛を寄せて来る美女相手にここで躊躇していては、流石に男が廃るというものだ。そう思うだけの男としての気概はあるのである。
 ナビィに言えた義理ではない。
 それこそ、パートナーでありマスターである幸一こそ「馴れ」なくてはいけないことだった。
「ええと…今すぐ?」
「よろしければ」
 自分の一挙手一投足を固唾を飲んで見守っているデタラメに美しい美女は、断られればその場で泣き出してしまいそうなほど切羽詰まった真剣な表情だった。
 幸一にサティを泣かせて喜ぶような嗜虐的な趣味は無い。
「……ドクターに聞いてみるよ」
「で、ではっ…」
「【部屋】で、待ってて」
 だから彼女を安心させるように微笑みながら、出来るだけ優しく言ったのだが……
「は……はいっ!!」

 やっぱり泣いてしまった。

 だが幸一は、頭上からボタボタと煌きながら降り注ぐサティの大粒の涙を見上げながらも、今から行う睦事を思って体が熱くなるのを感じていた。
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