■感想など■

2010年08月24日

◆◆ Act.05 ◆◆「苦悩」◆◆

■■【3】■■

 日本においての『プロジェクト・ギガンテス』の最終段階である「パートナー選別」は、被験者にそれと知らされること無く、徹頭徹尾、ほとんど全てが秘密裏に行われた。

 そもそも現在の日本において、ギガンテスとの“星幽体(アストラル・ボディ)適合可能年齢粋”である15歳から35歳までの人口は、1年前の大災害『神の息吹(ゴッドブレス)』によって、災害前は約1500万人いた、その約6割を失い、600万人を割っている。
 選別はそこから更に一次から五次まで行われ、最終的に4人までに絞られたのである。
 一次選別としてパートナー候補者が、まずはその「日本国在住の適合可能年齢粋」の中から70項目に及ぶ適正検査を経て、およそ9%の532人にまで絞り込まれた。
 だが、そこから更に二次選別として、遺伝子検査や親族の病歴などを元に、主に肉体的見地から87人まで選定された。次に、その87人の候補者の、寝室及びリビングに相当する居住空間に、膨大な情報がナノマイクロセコンドでやりとりされる双方向通信システム──通称<L.o.Ve>(ラヴ)が仕掛けられたが、それは二次選別からたった4日後のことであった。もちろんそれは本人及びその近親者や配偶者にも知らされる事無く、超法規的(非合法的)手段によって行われたものである。
 そして三次選別ではそれを使い、「プレ小サティ」とも言える「大サティのパーソナリティから作られた適合実験用アニマ(anima:男性にとっての理想の女性像)」との適合テストが行われたのである。

 その三次選別テストは「プレ小サティ」と87人の候補者との間で、6日間に渡り、夜間睡眠時においてほぼ同時に行われた。結果、それを単なる夢ではなく現実的な体験だと認識した者だけが選別されたが、それは全体のほぼ半数の43人であった。
 そしてその中でも四次選別としてサティの側への『愛力(正エネルギー)』提供が認められたのは16人であり、さらにそこから五次選別──“特務”が年齢・素性・健康状態を考慮して選別──した4人が、『最終マスター候補』としてここ、ギガンテス・ベースへと召喚された。
 今思えば、あれは「召喚」などいう生易しいものではなく、なかば強制的に行われた、いわば連行であった。
 と、今となっては幸一もそう思う。
 なにしろ、食料配給の帰りの道で、どこにでもいそうなスーツ姿の中年に声を掛けられ、振り向いたら次の瞬間意識を無くし、目が覚めたら見たことも無いような部屋で寝ていたのだから。

 「プレ小サティ」(大サティのパーソナリティから作られた適合実験用アニマ)の造形は、被験者(マスター候補者)それぞれの潜在意識から拾い上げられた“理想の女性像”と、「大サティ」のパーソナリティが合成されて創造される。
 そのため、87人の候補者の「夢」に現れた「プレ小サティ」は、それぞれ候補者が理想とするものに近い、87通りの容姿を有していた。ただし、この時点での「プレ小サティ」はアニマとしての色が濃く、幸一の夢に現れた「彼女」は年齢こそ今の「小サティ」より少し年下のローティーン程度であったが、胸はAAカップのほとんどまっ平らな「微乳」であり、そのため幸一との適合テストは全く問題無かった。と言うより、問題無いどころか候補者の中でもトップクラスの適合率を叩き出し、この時点で既にパートナーとして最有力候補であると記録されている。

 三次選別において「プレ小サティ」と行われたのは『愛合』テストであった。

 『愛合』とはすなわち、仮想現実において行われるセックスそのものであり、「プレ小サティ」は「適合実験用アニマ」とはいえ現在の「小サティ」とパーソナリティにおいては変わりなく、マスター候補者から受けた体験・刺激・反応は、データとして蓄積され大サティへとフィードバックされる。そして正規のパートナー決定後に、より効率的に『ラヴ・ドリップ』を受けられるよう「小サティ」にその「技術」が適用されるのである。
 幸一は、見た目だけなら「少し成長の早い小学生」に見える「プレ小サティ」を愛し、「処女」であった彼女を何度も何度も抱いて、開発し、そして彼自身の好みを彼女へと蓄積していった。
 まさしく夢のような蜜月だったと、幸一は記憶している。
 なにしろ、サティが世界中のギガンテスの中で、最も美しく、最も優しく、そして最も清楚であると言われている所以は、「ヤマトナデシコ」を規範とし、初々しい処女性と、無邪気で可愛らしい少女性と、男心をくすぐる娼婦並みに富んだ機知と、淑女のように慎ましやかで男を立てる謙虚さと、そして男の全てを許し受け入れてしまう母性を併せ持っているから……だけでなく、この適合実験によって蓄積された「セックス技術」があるからだと、技術者の間ではまことしやかに囁かれていたりもするからだ。
 愚かなりし男の夢は、処女と少女と淑女と母性の全ての性を併せ持し、それに反するように夜はたっぷりと濡れ、乱れ、娼婦のように男を喜ばせる性技に富んだ美女を抱きたいというものだ。前時代のアイドル歌手の歌詞ではないが、突き詰めれば男の言う「イイオンナ」なんてものは、結局はそれに尽きると言って良い。
 もちろん、そんな女など現実には存在しない。
 存在しないものを創り出すには、創り出せるほどの濃密で詳細な情報をテラバイト単位で集めるしかないのである。
この記事へのコメント
 ぼちぼちと更新してきます。
 この辺からストックがゼロですね。
Posted by 推力 at 2010年08月24日 13:50
更新お疲れ様です。
復帰したとはいえ、季節の変わり目ですので体調にお気をつけください。
Posted by 通りすがり at 2010年08月24日 17:33
 ありがとうございます。
 まだまだ暑い日が続きます。キーボード打ってても頭がぼーっとして何も浮かびません…。
Posted by 推力 at 2010年08月25日 16:50
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