■感想など■

2010年10月08日

◆◆ Act.05 ◆◆「苦悩」◆◆

■■【7】■■

 幸一の脳裏にアラートが鳴り響く。
 自分はまた何か地雷を踏んだのだろうか。
 サティは怒らない。少なくとも本気では。
 でも拗ねるのだ。拗ねてみせるのだ。頬を少し膨らませ、ぷっくりとしたピンク色の瑞々しい唇を尖らせて、長い睫を震わせながら決して目を合わせようとしない。それは分かり易すぎるほどに分かりやすい拗ね方だった。
 ただ、決して嫌な拗ね方ではない。「あなたが好き」という最上最大限の愛情が込められた拗ね方である。だが、それが幸一の「男」を刺激する。庇護心とほんのちょっぴりの嗜虐心が、むくむくと頭をもたげる。「護ってあげたい」という気持ちと「いじめたい」という想いが、胸の中で渦を巻いて煩悩を焚きつけるのである。
 それは可愛らしい「やきもち」の範疇であった。
 「ちょっと頭の弱そうな童顔爆乳美少女萌えアニメ風味」の格好で行われるその示威行動は、その筋の人達にしてみればたまらない状況に違いない。だが、その姿に「色々頑張っちゃったようだけど、どこか勘違いしているような微妙なズレ」を感じる幸一にとっては、ただもう、なんというか、ひたすら困ってしまうだけなのもまた、確かだったが。
「あ、いや、そのっ……かっかわいいかわいいかわいいなぁ!」
「うそ。ちっとも心がこもってない」
 慌てて言った言葉はバッサリと一刀両断に切り捨てられた。
 見抜かれている。
 ヴァーチャルな現実だというのに、汗が吹き出た。
「私、識(し)ってるんだから。幸一さんがお姉さま達からアプローチ(ちょっかい出)されてるの」
 ギクリとした。
「な、ななな、何のこと?」
「<L.o.Ve(ラヴ)>のアクセスログには、通常の解析方法ではわからないほどの巧妙で周到な改竄の痕跡がありました。それも平時のアクセス回線ではなく緊急時のサブ回線、しかもSAレベルの第七回線なんて、コアスタッフの4レベル職員以上でなければ、きっと気付きもしなかったでしょうね。アクセスポイントも、世界中に散らばった軍事用秘匿回線を経由してダミーログを……足跡を、あたかもそれを知られなくないかのように巧みに隠し、デコイまで散りばめてみせて……。ふふっ。私も危うく見逃してしまうところでした」
 サティが見逃してしまいそうになるほどの微細な差異。
 それは取りも直さず、逆説的にとんでもなく高い技術力が示されるということにならないだろうか?
「な、なんで知ってるの!?」
 思わず声が上擦ってしまう幸一に、そのヴォリュームたっぷりな超重量級おっぱいを“もにゅうん”と押し付けながら、サティはあえて視線を彼から外してみせた。
「お姉さまから聞きましたから。直接。うふふ」
『いや、だからさ……』
 その「うふふ」が怖いのだ。
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