■感想など■

2010年10月11日

◆◆ Act.05 ◆◆「苦悩」◆◆

■■【8】■■

 幸一が最近、毎夜サティの姉達から次々と誘惑……もとい、「精神攻撃」を受けていたのは確かである。
 それは、睡眠時にもギガンテスのパートナーの精神状態をモニターし、ケアするためのシステムを介して、世界に散るギガンテス・ベース(研究所)から偽装を施しての周到で用心深いアクセス……いや「精神侵食」であった。
 彼女(ギガンテス)達からすればそれこそ「つまみ食い」的な感覚なのかもしれないが、幸一にしてみればたまったものではない。
 だがそれは、サティが姉妹誰彼構わず幸一の事をノロケまくったこと原因だとは、当の幸一だけが預かり知らぬ事だった。
 いつの世も、姉妹が多ければ多いほど姉にとって末妹は可愛いもの。ましてやサティは“ぽややん”な“天然系純朴娘”なのだ。たとえ外見が20代後半の成熟した女性だとしても。それに、そんな天然娘を“めろめろ”の“とろとろ”にする、「カッコ良くて逞しいマスター」なら、一度は逢ってみたい、味わってみたい(傍迷惑にも甚だしいが!)と思うのが人情というものだ。そこの所は神性の受肉体であっても人間とメンタリティが非常に似通った、いや、ほとんど変わらぬがゆえに、ギガンテスも同じらしい。もちろんこの場合、幸一が本当に「カッコ良くて逞しいマスター」かどうかはあまり関係が無い。
「いや、ちょっと待ってよサティ……あのね、僕だって困ってるんだから!」
 事実だ。
 嘘だと思うなら実際に毎夜のように様々なタイプの美女に迫られてみるといい。三日目にはいくらなんでもいい加減にしてくれと言いたくなる。
 世界中で現出(創体召還[クリエイト])し、登録管理されているギガンテスは『ペトラー(岩・石)』『ピュール(火)』『ヒュドール(水)』『アネモス(風)』『フォース(光)』『スコトス(暗闇・暗黒)』『ウーラノス(天)』『ヘーリオス(太陽)』『アステール(星)』『ハイマ(血)』『オロス(山)』『ニュクス(夜)』、そして『アガペー(愛)』であるサティの13体である。
 そのうち、「最初の四姉妹(Gia ta prota tessera)」である『ペトラー』『ピュール』『ヒュドール』『アネモス』の4体と、アメリカのギガンテスで馬鹿が付くくらい真面目で融通の付かない『スコトス』、最近パートナーを亡くした『ウーラノス』、そしてサティを含めた7体を除く、他の6体のギガンテスが入れ代わり立ち代わり、<L.o.Ve(ラヴ)>を介して幸一を『品定め』に来るのである。
 さすがに夢の中とはいえ愛合(セックス)まで至ったことはないが、好きでもない相手に口付けされたり(サティより積極的で情熱的で官能的だった!)全身をくまなく嘗められたり(未知の体験だった!)、挙げ句には体感時間で何時間もフェラチオされるというのは(最後にはちんちんが溶けて無くなってしまったかと思って怖くなった!)、快感よりも苦痛の方が大きいのだ。確かに双方向での膨大なデータ通信によって形成される仮想空間では、時間の概念は現実とは異なり、仮想空間での1時間は現実世界での1分程度でしかないため、肉体的な疲労感はほとんど無いのだが、精神的な疲労はかなりのものとなる。
 正規の手続きを踏んでいるわけではないから、サティに与えるほどのラヴ・エナジー放出は無いのだが、それでも全く奪われないというわけでもないのだから始末に負えない。口にすると色々と問題があるから決してしないようにはしているが、例えてみれば毎晩サッキュバスに精気を吸い取られているようなものなのだ。
 幸一にしても、ラヴ・エナジーはサティただ一人に与えるものであり、いくら姉妹とはいえ他のギガンテスに与えるものではないという意識があるため、どんなに快楽中枢を刺激されても、それで「気持ちがいい」わけではなかった。
「僕にはサティだけだよ。僕のエナジーはサティのためだけにあるものだから、サティのお姉さん達が欲しがっても、本当の意味での……その、ラヴ?がね、こもってるわけじゃないから」
 まるで『浮気した夫が口にするような言い訳』じみているが、それは真実だった。だから、非常に情けないが、ありのままを言うしかない。
 幸一はサティのふっくら柔らかい頬に手を添えて自分の方を向かせると、
「サティがいてくれたら、僕は他に何もいらない」
 照れないように自分を奮い立たせつつ、そう言い切ってみせた。
「幸一さん……」
「本当だよ。サティも、わかってるんでしょ? 感じてるんだよね?」
 そう言って、幸一は正面からサティの瞳を見つめる。
 その瞬間、サティは“ずんっ”と脊髄から尾てい骨まで、甘い衝撃が物理的な重みを感じさせながら走り抜けたのを感じた。
 もうあそこは先程からずっとねっちょりべっとりで、それは、幸一のアレでナニな“暴れん棒”を迎え入れたくて奥深くで感じたくてウズウズしているのだということは明白だった。
 サティが、幸一には勝てないと思うのはこんな時だった。
 結局どうあっても、自分は彼には逆らえないのだし、彼に嫌われるのは死よりも辛く、彼にキスしてもらえるのであれば他の何を犠牲にしても惜しくはないのだ。彼のキスに比べたら、自分のプライドとか尊厳とか見栄とか建前とか、そんなものはどうでもよかった。「キスしてやるから裸になれ」と言われれば喜んで裸になる。「キスしてやるから足を嘗めろ」と言われれば喜んで嘗める。「キスしてやるから世界中の人間に自分がどんなにスケベでいやらしくて馬鹿なただのオンナなのか宣言しろ」と言われれば現存する全てのワールドワイドネットワークで心からの満面の笑みを浮かべながら素っ裸で全人類に宣言してもいい。
 でも彼はそんな事は絶対にしない。させない。心地良い独占欲でサティの心を包んでくれる。
 だからこそ、サティは全てを捧げても惜しくないほど、いや、むしろ全てを捧げたいと請い願うほど彼に心酔し、愛していた。
「ずるい……」
「そう?」
「幸一さんは、ほんとうにひどいひと」
「ははは……」
「でも許してあげる。そのかわり……キスして」
 そうやって、サティは可愛らしくも艶やかに視線を寄越してくすりと笑うものだから、
「うん」
 幸一はその外見からは想像も出来ないほど力強く、男らしく、毅然とサティを抱き寄せると(仮想現実だから出来たことだ)、そのぷるんとした瑞々しい唇に自分のそれを寄せていった。
この記事へのコメント
サティという嫁が居るのに味見に来るとはなんと言う恐ろしい姉達…。
Posted by 通りすがり at 2010年10月11日 07:01
 サティは「怒ると怖い」と思っているので、姉達とのその辺のやり取りとか、想像すると楽しいです。
 想像するだけですが(笑)。
Posted by 推力 at 2010年10月14日 11:07
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