■感想など■

2010年12月23日

[LIPS]『Piece.00』「夜明け」〜決戦前夜〜

■■ Scene.06 ■「呪文」■■

 狂おしいほどの熱情が、彼女の胸を焦がしていた。
 もっともっと「いぢめて」欲しいという、普段の彼女なら考えもしない嗜虐的な想いが、ある。
 彼になら……いや、「彼だから」こそ、こんな想いを抱くのだろう。
 『私をいぢめてもいいのは、彼だけなのだ』という、屈折した独占欲がそう思わせるのだ。
 股間と胸のしこりと、頭の奥で繋がる目に見えない糸を、何度も何度も『波』が駆け上ってゆく。
 その度に、彼女は震え、喘ぎ、泣いた。
 背骨に添って走った痺れが、どんどん頭の芯と、恥骨の奥に溜まってゆく。
 膨れ上がり、渦を巻き、弾け跳ぶのを狙うかのように窺っている。
 それはまるで、一匹の蛇が獲物をめがけて、そのしなやかな体をたゆませているかのようだった。
「う……う……う……う……う……う……」
 言葉は既に無い。
 あるのは、低いうめきと泣き声。
 そして哀願の眼差し。
 しかしその眼差しさえも、彼を見てはいなかった。
 彼の舌と指に翻弄され、遊ばれる快感に酔って、その身を任せる幸せに何もかもを委ねていたのだ。
 彼女は自分が、丁度赤ちゃんが、おしめを換える時のようなポーズで、ベッドに転がされているとは気付いていない。
 膝できゅっと曲げた足を、あられもなく広げて、左手は首の横でシーツを掴み、右手は口元に当てられながら震えている。
 股間にあるもの全てを彼に捧げ、込み上げる悦びの声と震えを抑える事が出来ずにいた。
「は……あ……あ〜〜〜〜〜〜っ……」
 今だ彼女は、タンクトップと超ミニのタイトスカートと身につけている。
 しかしそれらは乱れ、本来の機能を失って久しい。
「気持ちいい?」
 彼は、彼女を冷たい目で見る。
 彼女が、こうする事で余計に感じるという事を、計算に入れての仕草だった。
「…………………………」
 彼女は優しくされるよりも、少しだけ冷たくされる方が感じるのだ、と彼が知るのに、さほど時間はかからなかった。
 彼女は「彼を好きだった女性がいなくなった事を喜んだ自分」が、心の片隅に巣食っていた事を、まだ許せずにいるのだ。
 だから、彼に「いぢめられる」事を望んでいる。
 彼がいじめる事で……彼に責められる事で、彼女もまた、救われたいと思っているのかもしれない。
 彼の加虐心を、『満足させる対象』でいつづけられる悦びを絡めたままで……。
「い……いや……」
 彼女は息も荒く、ふるふると首を振った。
 その拍子に、涙が飛沫となって散る。
 彼の問いに答えられず、ぼんやりとしていた彼女が、その苦しさに「はっ」と我に返った時、目の前に自分の『花』が、口を開けて震えていたのだ。
 彼の厚い胸板が、彼女のお尻を押し上げている。
 今、彼の視界には、充血して押し広げられた『花』と、その下でかすかに脈動する『蕾』、そして、ふるふると震えながら起立し、自己主張して張り詰めた乳首が、
 涙をいっぱいに溜めて、羞恥で首筋まで真っ赤にした彼女の顔と共に、一度に入っている筈である。
 彼は、彼女の股間を眼前に眺め、その濃厚に香る彼女の『オンナの匂い』を吸い込んだ。
 右手を前から回し、彼女の股間の花芯をその包皮から剥き出す。
 そして彼女が何かを言う前に、嘗めた。
「ひいあ……」
 びくびくびく……と震え、ぎゅっ……っとシーツを握り締める。

 じゅるっ……るっ……るるっ……

 彼は、わざと彼女に聞こえるように、蜜と花弁を、音を立てて啜った。
「ああ……う……あう……あう……」
 ビクビクとはぜ、しゃくりあげる彼女の腹を左手で抱えるように押さえて、右手で左乳房を捏ね回す。
「ひゃ……ああ……」
 彼女はもう、何も考えられなかった。
 ただ一つだけ、「貪りたい」という想いがあった。
 彼が与えてくれる快感を、少しも逃さずこの身に受けたいとだけ思ったのだ。
 掘り起こされ、なぶられ、嘗め尽くされる、その行為全てを、この身に刻みつけたいのだ。
 体だけは、覚え続けていられるように……。

         §         §         §

 彼女は熱くのぼせて、ぼんやりと、自分の茂みが彼の吐息で、ふわふわと柔らかくそよぐのを見ていた。
 頭の芯に直結した快楽の信号は、絶えず彼の舌と指によって送られ続けている。
 彼の行為は、彼女への『想い』に満ちている。
 けれど、彼はまだ、一言も口にしていないのだ。
 彼女が心から欲しがっている『秘め言』を……。
『どうして……?』
 それは『呪文』と言っていい。
 心を暖かくし、生きる力をくれる言葉だ。
 どんなに哀しくても、苦しくても、彼からのその『呪文』があれば生きていけるだろう。
 なのに、彼は口にしてくれない。
 せがみたかった。
 責めたかった。
「どうして言ってくれないの?」
 そう、聞きたかった。
 彼の、「肉欲の対象」としてだけでも良かった筈ではなかったのか?
 そう、自問してみる。
 「精のはけ口」としてでも良いと、「あの時」思った筈ではなかったのか?
『いや……』
 彼女は下唇を噛んで、ぎゅっと目をつむった。
『いや……やだ……やだよ……』
 彼が欲しい。
 彼の心が欲しい。
 自分のものにしたい。
 自分だけのものにしたい。
 自分だけを見て欲しい。

 彼の『呪文』が……欲しい……。

 『愛してる』と、ただ、その言葉だけが……。

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