■感想など■

2010年12月30日

[LIPS]『Piece.00』「夜明け」〜決戦前夜〜

■■ Scene.08 ■「渇望」■■

 彼女の「中」は、たっぷりと蜜が溢れ、温かく、優しく「彼」を包み込んでいる。
 まといつく花弁も、さわさわとした茂みも、全てが彼には愛しい。
「ティ……」
「ふぁ……ふぁああああん……」
 彼の呼びかけに、熱い啼き声で答える彼女は、うっすらと目を開けていながら、その焦点を中空に漂わせている。
 何も見えていないのではないかと思える虚ろな瞳は、時折ぎゅっと瞑られ、雫を目尻からぽろぽろとこぼれさせていた。
 彼女は、高々と掲げた両脚を彼の腰に絡めて、両手で彼の腰を求めた。深く深く向かい入れようと、一生懸命に腰を揺すっている。彼女のこの姿を、彼が夢想しなかったと言えば嘘になる。
 だが、幼なじみの彼女を「オンナ」として意識したのは、ごく最近の事のように感じているのもまた、事実なのだ。
『ティは……』
 憧れであり、そして、護るべきものであった。
 そう、思っている。
 思っていた。

 あの頃は。

 彼女の名を「ティ」と呼んでいた頃を思い出す。
 「ティファ」という名は、子供の舌では発音しづらく、彼はいつもこう呼んでいたのだ。
 他の子供はちゃんと「ティファ」と発音出来ていた事を考えると、ひょっとしたら彼だけだったのかもしれないが、彼女は、彼がそう呼ぶ事を許した。
 最初は嫌がっていたが、それでも、彼が発音できないでいると、お姉さんぶって、「許した」のだ。
『僕の方が年上なのに……』
 彼はそう思ったが、子供の論理に道理など無い。
 彼女にとっては、あの頃、彼は手のかかる大きな弟だったのだ。
 その頃の彼女は、黒髪を無造作に束ねて、男の子に混じって泥だらけで遊びまわるような、そんな、普通とは少し違う、元気な女の子だった。
 首の後ろで乱暴に切った髪は、長さが揃わず、ひどいありさまだったが、不思議とそれが彼女の「元気」に良く似合っていた事を思い出す。
 そんな彼女が、髪を整え、伸ばし始めたきっかけが、実は彼にあるのだと、彼自身は気づいていない。
 ひょっとしたら、彼女自身も覚えていないかもしれなかった。
「ティ……」
 彼は、愛しいオンナの中で、その温かさを感じながら、必死に自分にしがみついてくる彼女を想う。
 時の流れを感じるのだ。
 「あの時」ニブル山を、母を呼んで泣きながら歩いていた彼女が、今自分に組み敷かれ、貫かれる彼女とダブって消える。
 ティファは……妹でも、姉でも無い。
『俺の……』

 ──愛した女だ。

「クラウド……クラウド……クラウド……クラウド……クラウド……クラウド……」
 激しく、何度も何度も身体の奥底へと「熱情」を打ち込まれる彼女は、喘ぎ喘ぎ、うなされたように彼の名を呼ぶ。
 すがるように、甘えるように、泣きながら。
「ティ…………ティ…………ティ……ティ…………ティ……」
 彼は、彼女にキツく抱きしめられながら、彼女の額に、頬に、唇に、首筋に、耳たぶに、名前を呼ぶ度にキスをした。
「ふうっ……うっ……」
 彼女の吐息が彼の前髪を揺らす。
 彼は、彼女の背に手をまわし、ぐいっ……と身体を起こした。
「はっ……やっ……」
 不安げに彼にしがみついた彼女は、繋がったまま彼が座り込み、自分が彼に跨るようにして向かい合っている事に気づくと、安心したように、彼をきゅっ……と抱きしめて、その耳たぶをこりっ……と噛んだ。
 そのまま耳だぶを唇で挟み、ちろちろと舌で嘗める。
「はあああっ…………」
 座位の形のまま、そのお尻を揺すって、より深く彼を迎え入れようとする彼女は、うっとりをしたまま深く息を吐いた。

 きゅうっ……

 彼女の締め付けは、リズミカルに彼を刺激し、裸の胸にこすり付けられる、乳房とその先のしこりは、彼の未成熟な乳首に、うずくような快感を生ませていた。
 男の乳首も、女とはいかないまでも快感を得る事が出来る。
 だが、多くの男、そしてその連れ合いの女でさえも、その事実を、より「昇華」させようとはしない。
 クラウドも、今まではそうだった。
 しかし、ぷにぷにと弾力に富み、豊かであるのに挑戦的に突き出した彼女の乳房でこすられると、自分の「乳首にも快感があるのだ」と思い知らされる。
「ふあっ……あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……」
 幸せそうに彼の首にかじりつき、ごろごろと甘える彼女の、そのゆらゆらとした動きは、快楽を知ったオンナのそれである。
 乳首の快感も知らないまま、ただ処理するだけの情事しか知らない彼にしてみれば、積極的に快感を貪ろうとする彼女を、こうまでにした男の存在に、嫉妬すらしてしまう。
「クラウド……好き……クラウド……クラウド……クラウド……クラウド……」
 けれど彼女は、彼の名を呼ぶのだ。
 まるでこの世には彼しかいないとでも言うように、心細げな小さな声で。
 またそれは、愛しくて愛しくてたまらないと、甘く、甘く囁くようにも聞こえる。
 どちらも本当なのだろう。
「すき……スキ……好き……好き……好き……スキ……」
「ティ……」
「ちゃんと……あ……う……ちゃんと……ちゃんと……」
 彼が、何が言いたいのだろうと彼女を正面から見つめると、彼女は涙の溜まった瞳で、請うように囁いた。
「ちゃんと……呼んで……」
「……ティファ……」
 彼は彼女の名を呼ぶと、その唇に熱い口付けをし、そして、
「好きだ………………愛してる…………愛してた…………ずっと……ずっと……昔から……」
 途端、彼女は大粒の涙をぽろぽろとこぼし、たちまち顔をくしゃくしゃにしてしゃくりあげ始めた。
「どうしたの?」
「……………………」
 彼女は答えない。
 ……いや、答えられないのだ。
 ただ、震える唇を、きゅっと引き締めたまま、強く目を瞑って、ふるふると首を振るだけである。
「……ひっ……ひっく……」
 しゃくりあげ、何度も何度も鼻を啜って、彼をじっと見つめる。
 今だ二人は繋がったままなのだ。
「欲しい……欲しいの……」
「うん」
 彼女が何を言いたいのか、彼には解っていた。
 彼にも、異存はない。
 今はこんな世界だけれど、それを思えば、どんな事をしても、何があっても生きていけるだろう。
 何が起こっても、生きていこうと思うだろう。
 こんな世界に……と思う人がいるかもしれない。
 それが当たり前かもしれない。
 けれど、そう思う事がどんなに愚かしい事か、彼は彼女と、そして仲間達に教えられたのだ。
 彼らの想いは、次の世代に継がれるべきだ。
 刹那的な想いではない。
『ティと俺の……子供……』
 彼は、強く強く、そう、思った。
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