■感想など■

2010年12月18日

[PAIN]『Piece.00』『秘密』〜SECRET OF MY HEART〜

■■ Scene.01 ■「呪言」■■

 「この事……あの人の前で口にしたら……私、許さない……。ううん……殺すわ。絶対に……」
 皮張りのソファの上で、いまだその白く、柔らかでありながらしっかりと引き締まった尻をむき出しにしているオンナに、彼は無言で視線を返した。吐息も荒く、気だるさを纏わりつかせた顔をソファに付けたまま、彼女は目だけを光らせて、男に言い放ったのだ。
 部屋には、汗と、タバコと、酒と、そして、オトコとオンナの情事の生々しい残り香が充満している。
 彼女のぷっくりとした白い尻から、とろり……と自分の精が滑り落ちるのを見ながら、男はゆっくりと紫煙を揺らし、胸一杯に苦みを吸い込んだ。
「…………………………」
 言葉は無い。
 口にする言葉など持たなかったし、また、話そうとも思わない。
 彼は、そういう男だった。

         §         §         §

 彼女を初めて見た時の事を、彼は、まるで昨日の事のように思い出す事が出来る。

 その時彼の胸には、何か、言いようの無い“想い”が広がった。それは、久しく忘れていた遠い日の、小さな『疼き』にも似た感覚だった。
 太股まである、長く、艶やかな黒髪。すっきりとした顎の線と、凛とした瞳の光は、彼女の意志の強さを感じさせる。少し垂れた目尻は、彼女の顔を冷たい印象にせず、愛敬のある可愛らしいものにしていた。そして、口紅を塗っている訳でもないのに、情熱的な紅い唇は、濡れたように艶やかに彼女の言葉を紡いだ。
 その唇から紡ぎ出される声は、奇麗に透き通り、聞く者の心に深く入り込むが、決して冷たさは感じさせない。温かみのある声音は、彼女に親しみやすさだけを感じさせるのだ。
『……似ている……』
 彼は、3年前、ただ一夜を過ごした、少女の面影を彼女に見た。髪の長さも、スタイルも違うが、声と、話す時に真っ直ぐ相手の目を見る癖、そして、唇の形は、驚くほど良く似ている。
 あの少女は、名を、歳を偽り、ただ彼と体を重ねた。寂しさに押しつぶされそうな彼を、何も言わずに抱いていてくれた。
 彼はその少女に……彼よりもずっと歳若かった少女に、まだ礼を、言っていないのだ。
『……ばかな……』
 センチメンタリズムとは程遠い、今の自分の立場を思い出し、彼はかすかに首を振って、薄く笑った。
 そうして、カウンターのスツールに腰掛け一人グラスを傾けていた彼は、ポケットからシガレットケースを取り出し、そこからタバコを一本抜き取る。
 ……が、オイルライターが見つからない。モノに執着しない彼にしては、珍しくお気に入りのライターなのだが……。
 どうやら、本社のデスクに忘れてきたようだ。
『……』
 不意に、ゴソゴソと懐やスーツパンツのポケットを探っていた彼の目の前に、す……とマッチが差し出される。
 気がつけば、カウンター越しに彼女が目の前にいた。
「はい。無いんでしょ?」
 硬い表情で、それでも精一杯の愛想笑いでマッチを差し出す。
『……』
 彼女の表情が硬いのは、彼にとっては別段不快でも不思議でもない。

 ─ タークス ─

 その名を知らぬ者は、このミッドガルにはいない。しかしまた、その名を口にする者もいない。
 それ程までに知られた名でありながら、その名を口にする者がいないのは、それが「忌むべき名」だからである。
 神羅カンパニー総務部調査課の別名として知られるこの名は、ここスラムでは、疫病の如く嫌われている。会社の命令を、疑問を抱く事も無く、ただ遂行するマシン。会社に反抗する者、会社の不利益になる者などを、命令さえあれば眉一つ動かす事無く「処理」する者達……。
 そう、人々は認識している。
 だが、その強固な組織に比例するように個々の戦闘能力がずば抜けて高い事から表立って反抗する者はいないが、彼らの命を狙う者は想いの外多い。
 オフに街の片隅のバーで酒を飲んでいてさえ、気を抜けばそこには死が待っている。
 今、マッチを差し出したこの女性が、突然ナイフを取り出し、彼の心臓に突き立てない保証など、どこにも無い程に……。
「…………」
 彼は無言でマッチを受け取ると、彼女にかまわずに火を点した。
「ちょっと! ありがとうぐらい言えないワケ?」
 顔を上げれば、そこには形の良い眉をひそめ、腰に手を当てた彼女が、可愛らしい唇を突き出して、彼を見ていた。挑戦的に前方へと張り出した乳房が、彼女の動きに合わせて艶めかしく揺れ動く。
「…………」
 視線に困り、慌てて、だがさりげなく、サングラスを掛け直した。もしここに相棒の赤毛の男がいたなら、この仕種を見て、ニヤニヤ笑いながら、彼の肩をバンバンと叩くに違いない。
「タークスってのは、礼儀も知らないのね」
 彼が黙ってグラスを傾け始めると、彼女は肩を竦めて言い放ち、カウンターの向こう側へと行ってしまった。
「…………」
 紫煙がゆらゆらと天井に向かって上ってゆく。立ち込めた煙と交じり合い、すぐにその軌跡を隠してしまうのを、彼はじっと見つめた。
 ふと、彼女を呼ぶ声に視線を巡らせると、その先に一人の男がいた。テーブルに陣取った、ひどく胸板の厚い、大柄な男だ。浅黒い肌の下では、強靭な筋肉が束となってうねっている。そして、短く刈り込んだ黒髪と、あまり手入れをしていない顎鬚が、男を無頼漢然とさせていた。
 背は自分とそう違わないが、肉体労働階級には珍しくないタイプだ。右手は義手だろうか。だが、本来そこにあるのだろうギミックアームは、今は付けられていない。
 ギラギラと油断無く光る目は、テーブルに近づく彼女に向けられているが、その実、カウンターから視線を走らせるこちらを、注意深く盗み見ているのがわかった。
「…………」
 やがて男は彼女と一言二言言葉を交わし、おもむろに立ち上がって、店から出ていく。

 そろそろか……。

 彼はカウンターに金を置き、無言で席を立った。
 彼女の名前が耳に残る。
「ティファ」
 あの男は、彼女をそう呼んでいた。

         §         §         §

 彼は起き上がろうとした彼女を強引に引き倒し、乱れて汗と『蜜』をたっぷりと吸った革張りのソファへと押さえつけた。
「い……いやっ! もういやっ!!……いやあぁっ!!」
 長い黒髪を振り乱し、脅えるように暴れる彼女を、力でねじ伏せ、押さえつけて、強引に両脚の間に体を割り込ませた。
「いやっ!!……あうぅぅっ……」
 自らの精で溢れた彼女の『花』を、太い指で無理矢理押し開き、無造作に挿入した。
「ぐ……うっ……」
 くぐもった声を漏らし反り返った彼女の体の上で、たっぷりとした豊乳が、ぶるっ……と揺れる。

 彼には、彼女を解放するつもりは、まだ、無い。

この記事へのコメント
secret of my heartは、ofよりinのほうが正しいように感じます。
of 私の心の秘密
in 私の心の中の秘密
Posted by 青玉 at 2010年12月18日 02:36
 タイトルの意図は、とりあえず全部読んで頂いてからで……。
Posted by 推力 at 2010年12月18日 11:37
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