■感想など■

2010年12月25日

[PAIN]『Piece.00』『秘密』〜SECRET OF MY HEART〜

 ティファは、目の前で何も言わず、黙々と酒を飲み続ける男を、何とも言えない思いで見ていた。
「……どういうつもり?」
 バレットと引き離され、神羅兵に、この部屋に連れられて来てから半時、男は、酒瓶と氷とグラス二つを持った女と共に入ってきた。
 女を人質にして逃げるという手も、一瞬だけ考えてもみた。だが、結局神羅兵に連れられてくる途中でも、本気で抵抗しようという気などはただの一度も起きなかった。
 もう、何もかもどうでも良かったのかもしれない。

 テーブルに酒を置くと、女は一礼して部屋を出ていった。
 テーブルと、大きな4人掛けのソファが二つ。部屋の隅には大ぶりなデスクと椅子が一組。その後ろには、大きな窓があり、海が一望できる。
 陽は水平線に沈み、残照が空にオレンジから紫、濃いブルーへと、美しいグラデーションを描いていた。
「私に……何の用なの? ルード」
 特殊ガラスを遮蔽(しゃへい)モードに切り替えて半透明にすると、ルードはティファの向かいのソファに座り、おもむろに厚手のダンブラーでロックを作り始めた。彼を観察するようにじっと見ていたティファは、彼が二人分のロックを作り終えても何も話さなかったが、彼がただ黙ってグラスを傾け始めると、10分後にはとうとう痺れを切らして自ら問い掛けたのだった。
 彼女の目の前には、たった今ルードの作ったロックが置かれている。彼がまず自分から飲んだのは、「毒は入っていない」という意思表示のつもりなのだろう。サングラスの奥に隠された瞳からは、何も窺い知る事は出来ないが……。
「……何か言ったら?」
「………………」
 根比べでもするつもりなのだろうか。
 ティファは頭を振ると、ソファの背もたれに身を任せ、漆黒に染まり始めた窓の外に視線を向けた。
「…………クラウドが……」
 言いかけて、止める。
『クラウドがどうなったか、何か知らない?』
 そんな事をこの男に聞いたとして、それが何になるというのだろう。
 自分は、この男の敵なのだ。
「……あの男の行方は、俺達も捜している。だが、まだ見つかっていない」
「………………」
「死体もだ」
 男が自分の聞きたい事を察した事にも驚いたが、何より、問いに答えた事の方が、彼女を心から驚かせた。
「…………仕事だからな」
 彼女の視線を感じたのだろう。
 ルードはボソリと言い、グラスに残った酒を一気に呷った。
 死体も見つかっていないという事は、まだ生きている可能性もあるという事だ。
 『生きている』と言わない所に、この男の無骨な優しさがあるようで、ティファは、なんとなくこのタークスに対する嫌悪感がわずかだが薄れていくのを感じた。

 この男は、ことある毎に「仕事」という言葉を口にする。
 人間であるならば、心を凍らせない限り出来ないであろう事すら、彼らはその手でこなしてきた。もちろん、それはどんな理由があろうと、許される事ではない。
 しかし、今まで考えもしなかったが、この男達が楽しんで仕事をしているのだと、無意識の内に思ってはいなかっただろうか? 彼らとて人間だ。本能で行動するモンスターでも、生体兵器のクリーチャーでもない。ならば、人としてあり続けようとする心を封じるには、そう思うためのキーが必要な筈だ。
 それが「仕事」という言葉なのだろう。

 ティファはグラスを取り、何も言わずに一口、喉に流し込んだ。
 今は、焼け付くような酒の感覚を感じていたい。そうでもしなければ、「彼」がいなくなってしまった哀しみに、心が壊れそうだったから……。

 そして彼女は、自分の迂闊さを呪った。

 ティファは、めまいにも似た感覚に、世界が歪むのを自覚した。
 二杯目のウィスキーを飲み干した時である。それと共に、明らかに酒のせいではない「高まり」を体の奥に感じた。
「何を……したの……」
 ルードがテーブルを回って、自分に近づいてくるのがわかった。
 けれど、身体が動かない。
 いや、動かす事が出来ない。
 手を上げる事すら、億劫で、全身を気だるさが支配している。
 男が自分の隣に腰を下ろす振動が、ティファの腰の中心に、甘い「疼き」を生んだ。

         §         §         §

 これが彼女なのか?
 部屋に入った直後、ルードは一瞬、自分の目を疑い、サングラスをわずかに押し下げたい欲求にかられた。そこには、姿形はそれでも、中身が全く変わってしまったとしか思えないオンナが一人、ぼんやりと座っていたのだ。
 彼を見上げた瞳には生気が無く、ほつれた髪を直そうともしない。彼が「好きだ」と思った瞳の光が、すっかり消え失せていたのだ。
 彼は顎で、同行した女を下がらせ、ぼんやりと座る彼女の前のソファに、その巨体を沈めた。
 言葉が無い。
 もともと無口な方だと自分でも思っているが、必要な事以外は喋らない事を、身の危険を回避する一つの方法として身につけてきた彼にはその性癖を直すつもりはない。しかしそれでも、彼女に何か言葉をかけてやりたいと思っていたのだ。
 だが……。
『声をかけて、どうする……?』
 自分がこの娘の『敵』であるという事実は、そう簡単に変えられるものではない。感情はどうであれ、少なくとも今の自分の立場と置かれた状況では、そうなのだ。
 だから、彼は黙って酒を呷る事にした。
 今から彼がしようとする事は、彼の主義に著しく反する。
 感情にも、だ。
 酒に酔えない自分の体が、これほど恨めしいと思った事は無かった。
 一言二言、彼女と言葉を交わし、そして彼女が酒に手を出した時、彼は意識を閉じた。「仕事」をする時にする、いつもの『儀式』。チャンネルを切り替えるように、心のエリアをシフトさせる。そこには彼女への好意も、己の主義も無い。
 ただ一つの事を考えるマシンへと、自分を変える作業だけがあった。


 自らの体をティファの隣に置きながら、ルードは、彼女の体に毛ほども触れようとはしない。ただ、じっと手に持ったグラスを見つめるだけだ。
 それに反して、ティファはどんどん高まる動悸と、身体を駆け巡る熱い「疼き」に、思考を痺れさせていた。
 重い乳房が張り詰め、先端の小さな果実が、痛いほど起立しているのがわかる。目を瞑り、両手で肩を抱いて身を屈め、必死に、失いそうになる自分を繋ぎ止めていた。
「はっ……」
 熱い吐息が漏れる。
 ぶるぶると身を震わせ、脚を擦りあわせて、『花』の熱さを感じている。
 熱い。
 我慢できない。
 この感覚が、何かの薬物の結果、もたらされたモノだという事は明白だった。それが酒に混入されていたのだと、子供でもわかる道理だ。
 彼に何の変化も見られない事で、安心してしまった事を後悔すると共に、自らに怨嗟の言葉を投げかけた。
 そして「疼き」のために潤んでしまった瞳で、精一杯男の横顔を睨み付ける。
「ひどい……」
 しかし、そう言いながらも、自らの愚かさを認めざるをえないのが悔しい。ルードが体を動かす度に伝わる振動に、体が反応してしまう。
 そんな微細な震えさえも、愛撫のように「感じて」しまうのだ。

 求めてしまう……!

 ティファの体は、十分に開発され、開花した『大人の身体』だ。
 愛撫に身を硬くする生娘ではない。
 だからこそ、ティファは自らを恐れた。
 感情とは別に、隣に圧倒的な質量を持って存在する『オトコのカラダ』を求める自分が、確かに存在するのを自覚しているからだ。
「クラウド……クラウド……クラウド……クラウド……」
 ティファは必死に愛しい男の名を呼び、自分を繋ぎ止めようとした。
 だが、彼女はその行為をすぐに後悔した。愛しさが蘇ると共に、身体の「疼き」が力を増してしまった事に気付いたのだ。
『彼を抱きたい』
『彼に抱かれたい』
 その思いが、ティファの脳を犯す。
「助けて……た……助けて……たす……」
 ひう……と息が漏れる。
 知らず、涎が滴った。
 『花』が充血して開ききり、じゅくじゅくと『蜜』を滴らせているのを感じた。
「はっ……やっ……」
 ……と、今まで無関心を決め込んでいたルードが、不意に彼女の右の首筋を撫ぜた。
「……!!…………」
 きゅううう……と全身の筋肉が収縮する。
 ……が、それは終わりを見せずに、立て続けに彼女を襲った。
『イけない……!!?』
 終わりの無い「高まり」。
 大きすぎる快感の波が、引く事を知らぬかのように、彼女を翻弄し続けるのだ。
「いあ……いあなの……いあぁ……」
 口をうまく動かす事が出来ず、「嫌だ」という言葉を正確に発音する事すら出来ない。
「た……たす……たすけ……」
 混濁した意識の中に、ティファは「堕ちて」ゆこうとしていた。
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