■感想など■

2011年01月22日

[PAIN]『Piece.00』『秘密』〜SECRET OF MY HEART〜

■■ Scene.11 ■「性具」■■

「また行くのか?」
 神羅ジュノン支社。
 数ある特別室の中で、ただ一箇所、タークスルームとして使われる支社のゲストルームのみに存在する天然木材の扉。
 その重厚な質感の扉を開け、部屋から一歩を踏み出した途端、ルードは、入り口の左に立つ赤毛の青年の、少し皮肉めいた、いつもの声を聞いた。
「…………」
 答えず、無言で扉を閉める。
「もう2日になるぞ、と」
 青年を無視し、歩き始めたルードの背中に、再び声がかけられる。
「いい加減にしないと、ツォンさんにどやされるぞ、と」
 タークスリーダーの名に、ルードの眉が反応した。
 彼は、歩みを止め、ほんの一瞬逡巡したが、ようやく、諦めたように口を開いた。
「問題無い」
 そして、再び何も無かったかのように歩み始めた。
 赤毛の青年は、壁にもたれたままガリガリと頭を掻き、顔を顰める。彼の相棒は、本来ならば与えられた職務を放棄して、その上、神羅の社員を上部に無断で使うような男ではないのだ。
 だが、今の彼は、「彼だけの正義」のままに行動しているように感じられる。ただでさえ頑固で融通の利かない男が、揺るぎ無い信念を持った時、とてつもなく厄介な存在になる事を、彼は既に身をもって熟知していた。
「………………ちっ…………」
 青年は、ルードが彼らしくない行動を取り続けている原因を知っている。本来ならば、当の昔に「然るべき処置」を受けて当然の女のために与えられた仕事を拒否し、その女がいる部屋へ、この2日間、毎日足を運んでいるのだ。
「何を考えている?」
 青年の、皮肉な音の消えた声に、ルードはその歩みを止めた。この青年が、その声音から皮肉なニュアンスを消す時、そこには青年が魂の奥底に本来持つ、凶暴性と隣り合わせの、刃のような酷薄さが顔を覗かせるのだ。
「ツォンさんの命令は絶対だ。そこまでの価値があの女にあるのか?」
「…………」
「消されるぞ」
 青年は、胸元のポケットから取り出したチョコバーの包み紙を、器用に片手と口だけで剥きながら、壁から身を起こした。

         §         §         §

 一方の壁一面にある大きな窓の特殊ガラスが、外からの光を感知して半透過モードに切り替わる。
 彼女はその様を、左腕に一人の女性から「薬」を打たれながら、身じろぎもせずに見詰めていた。

 彼女の夜明けは、いつくるのだろう……。

 2日間立て続けに、ルードによって犯され続けた。
 人形のように。
 道具のように。
 あの時、ウィスキーに混入された「薬」は切れ、何度も逃げようと試みた。
 ルードを殺そうとも……した。
 しかし、この2日間というもの、食べ物には必ず、何らかの薬品が混入されていた。
 それがわかっていながら……薬物が混入されていると知りながら、食べるしかなかった。脱走のための力を得るためには、チャンスを逃さないためには、空腹でいる事に甘んじている訳にはいかなかったのだ。だが、そのために力が出ず、脱走を試みてもすぐさま捕まり、易々と組み敷かれて、その度に新しい「薬」を打たれた。
 神羅が闇マーケットに流す、「麻薬」だった。
 ドン・コルネオが蜜蜂の館で、娼婦の「教育」に使用しているものと同類のものだ。宝条以下、科学班が開発した、脳内麻薬を模した神経系の即効性媚薬である。習慣性もなく、後遺症も無い。本来は、戦場に赴く兵士の娯楽として開発されたものである。だが今では、思考を鈍らせ判断力を狂わせるとして、戦場での使用が全面的に禁止されている。
 そのようなものを打たれてさえいなければ、いくら弱った体の彼女でも、薬品の混入された食事を警戒もせずに口にしようなどとは決して思わなかっただろう……。
 その上ティファは、ルードに付き従う神羅の女性シークレット(神羅社長ルーファウス直属の神羅女性兵士)に朝晩2回、通常の2倍の薬を強引に流し込まれ、そして、彼にいいように体を嬲られた……。
 そんな日が、2日も続いたのだ。

 もはや抵抗する気も起きなかった。

 ルードが、ティファの胎内に精を放ったのは、この2日間でも8回を数える。
 彼女がどんなに哀れに懇願しようが、激憤しようが、一滴漏らさず、彼女の胎内へ放った。
 彼女の願いが聞き届けられる事は、一度たりとも……無かったのだ。

 だが、ルードは、射精するつもりが無くても、ティファを放さなかった。
 常にルードのモノは、ティファの胎内にあった。
 普通ならば、既に快楽と言うものは存在しない。だが、真っ赤に充血し、ひくつく『花』は、それでもとくとくと『蜜』を湧き出し、少しでも痛みを和らげようとしていた。皮肉にもそれは、絶え間無く打たれる「薬」の沈痛作用の「恩恵」であった。
 でなければ、内出血と、内部を犯した細かい傷で疲弊しきった『花』は、性交の度に激しい激痛のみを、彼女に与えたであろうから……。

「殺してやる……殺してやる……殺してやる……」
 怨嗟の言葉は、彼女の口癖となった。

 食事も、そして小便や大便の排泄も、全て、ルードの目の前で、ルードの見ている前で、しなければならなかった。
 そうする事を、強要された。
「お願い……トイレに……」
「このまま……しろ」
 小さな、青いバケツ。
 おそらくトイレ掃除の際に使われていたのだろう青いポリバケツ。
 それが、彼女に与えられた排泄の場所だった。
 素裸のまま、彼が立ち見下ろしているその前でしか、排泄は許されなかった。
 泣いて懇願しても、跪いて床に頭を摩り付けても、決して許される事は無かった。
 ティファは恥かしさと、人間の尊厳そのものを打ち砕かれる痛みに、涙ぐみ、身を震わせながら便をひり出し、小水を放出した。
 我慢しても、床に押さえ付けられ、尻を片手で分けられたまま肛門から直腸に直に薬品を流し込まれ、強制的に放出させられた。
 しかしそんな屈辱的な排泄も、5度、6度と繰り返されると、最後には真っ直ぐにルードを睨み、殺気に満ちた目で行うようになった。
 男に排泄行為を眺められる事で生まれる羞恥心を、精神力で感情から切り離す事に、成功したのだ。

 ここまで貶められた女は、ほとんどの場合、次のどちらかを、好むと好まざるとに関わらず、選ぶ。
 つまり、「全てを諦め、全てを受け入れて、快楽に埋没する」か、「全てを拒み、相手を殺すまで憎み続けるか」……だ。
 ティファは後者であった。
 そしてそれは、他ならぬルードが望んだ事なのである。
 無理矢理に快感をほじくり返され、息も絶え絶えに喘ぎ、あられもなく声を啼きながらも、ティファの瞳には暗い光が満ちていた。
 ティファの心には、「彼」がいるのだ。

 「彼」は生きている。
 だから、私も生きなければいけない。
 何としても生き延びてやる。
 生き延びて、こいつらを……神羅の人間を殺してやるんだ。
「何があっても……私は……死なない……」

 薬が体中を走り揺らぎ始めた景色に陶然となりながら、ティファはそれだけを、強く願った……。

         §         §         §

「くせえな……」
 ルードの後を追うように部屋に入ってきた赤毛の青年は、開口一番にそう言い放ち、ソファにぐったりと横たわるティファを一瞥(いちべつ)した。
 入れ違いに、いつもの女性シークレットが、栗色の髪を揺らして一礼し、出て行く。
 表情には何の変化も無い。同性が辱められていても、それによって波立たせる感情を、この女性は持ちあわせていないのである。
『おぼっちゃんの肉人形……か』
 青年はがりがりと頭を掻き、再びティファに視線を戻した。
 汚れた髪、汚れた顔、異臭を放つ身体、白いものがこびりついた太股……。
「風呂……入れてねぇのか……ちょっと匂うぞ、と」
 素裸で、何も見えていないように表情を凍らせたティファに、顔を顰める。
「問題無い」
 ルードはさっさと服を脱ぎ捨て、ティファに覆い被さって行く。
 青年は、ルードのその行為を、嫌悪からではなく、憐憫と悲哀をたたえた瞳に写して、小さくため息をついた。
 薄汚く汚れ、吐き気をもよおす異臭を放つ女を抱く。
 それは、その女に特別な感情が無ければ出来ない事だろう。
 その女を……。
「……あんたには……価値があるんだな……」
 ルードには、その問いに答えるつもりは……無い。

この記事へのコメント
すべからく【須く】
[副]当然のこととして。ぜひ。下文を「べし」で結ぶ。「〜努力すべし」

『全て』と混用されがちなので注意だぞ、と。
Posted by 青玉 at 2011年01月22日 01:45
 記述そのものを変えました。
 ありがとうございました。
Posted by 推力 at 2011年01月24日 12:04
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