■感想など■

2011年01月13日

[LIPS]『Piece.00』「夜明け」〜決戦前夜〜

■■ Scene.12 ■「夢現」■■

 「夢」を見始めたのは、彼を愛したもう一人の女性……エアリスが、「狂気の男」にその命を絶たれたその日からだった気がする。

 彼女は、「その日」自慰をした。

 彼女を失った悲しみと、自分自身を見失う恐怖に打ちひしがれる彼を見ていながら、彼女は夜、自分のベッドで自分を慰めたのだ。

 エアリスの事は好きだった。
 ティファにとっても、彼女はかけがえの無い仲間であり、友だったから……。
 涙が止まらなかった。
 冷たくなってゆく頬に手を添えても、彼女は目を開けない。
 当たり前のその事実は、氷で出来たナイフのように、彼女の心の上を滑り、裂いていった。
 なのに、彼女は、体に灯った火を抑えられなかった。
 消せなかった。
 そんな事をしてはいけないと思いながら、両手は乳房と『花』をいじった。
 すぐ側に眠る、クラウドとバレットの寝息の中、ひっそりと啼いた。
 声を上げた。
 それより数日前、ゴールドソーサーのイベント会場で、彼から受けた右手の甲の口付けの記憶が、彼女の躊躇いを溶かしていた。
 火を付けたのは、彼なのだと、彼女は思い込んだ。
 思い込もうとしたのだ。
 心のどこか片隅で、「これで彼は、私一人のクラウド」と、そう思う自分がいる事に気づいたのは、二度目の絶頂を迎えた時だった。
 愕然とし、そして、嫌悪した。
 自分は、なんて浅ましいオンナなんだろう……。
 そう思った。
 人としてしてはいけない事をしてしまったようで、心にどす黒いものが広がっていくような感覚に、身体が震えた。
 けれど、彼への想いは抑えられなかった。
 苦しくて哀しくて、そして恐かった。
 死にたくなるくらいに彼の事が好きなのに、想いを告げてはいけないと、もう一人の自分が、いつも言っていた。
 囁いていた。
 彼の手が触れると、身を竦めた。
 エアリスが見ているようで、夜を恐れた。

 けれど、そんな想いも、彼女の……エアリスの想いを知る度に、逆に恥ずかしいと思うようになった。

 彼女に、「自分に正直に生きて」と言われている気がした。
「自分の分まで、彼を愛してあげて」
 彼女の事を知らなければ、それは、「自分勝手に都合良く考えた事だ」と言われても仕方の無い事だった。
 けれど、エアリスならばそう言うだろうと、自然に、そう思えたのだ。

 しかしそれでも、自分の行為に対する嫌悪感と、彼女への罪悪感は、消える事は無かった。
 「夢」は時折……思い出したように彼女を責めた。
 淫らで、汚く、醜悪な自分の心が、彼女を責めた。
 「お前には彼を愛する資格なんか無い」と、彼女を責め立てた。
 ベッドの上で目覚めた時、必ずと言っていいほど、彼女は涙を流していた。
 彼に知られたくない。
 汚い自分を、彼にだけは知られたくない。
 例え心が壊れても。
 彼が愛してくれるなら。

 魔晄中毒になった彼を看病して、そして、あの「ライフストリーム」の中で自分の心と向き合って、彼女は、彼を愛している事を、それまでよりもはっきりと確信した。
 そして今日、彼に愛してもらえた事は、自分にとっての至福となるだろうと思える。
 これからは、決して「夢」は見ないと、確信できる程に……。

「クラウド……愛してるわ……」
 彼女は小さな声で、うとうとし始めた彼に聞こえるか聞こえないかの声で、そう口にしてみた。

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