■感想など■

2011年01月19日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【2】■■

 ところで、男女混成で長旅をする彼等にとって、宿において浴室が部屋に無いというのは、意外に不便なものだ。
 幸い、今回の宿は共同浴室が男女で別れていた。
 そのため、こういう宿に泊まる時にはいつもするように、後から入る男性陣達のために急いで体を洗い、なるべく浴槽の湯を汚さないように気をつける必要も無かった。
 クラウドやバレットは、自分達の後に女性を入れるのは可哀想だ……と、彼等にしては珍しく気を利かせてくれているのだろうが、男性の前に入浴するのも、それはそれで非常に気を使うものなのだ……というところまでは、わかってはくれないらしい。
 それがまだ、シャワーであるならば事は簡単なのだが、田舎ともなると浴槽式の場合が多く、しかも、温水器も無いために溜め置きで沸かすタイプの方が多かった。
 そうなると、まず浴槽に入る前に十分体を洗い、汚れを落として、それからそろそろとゆっくり浴槽に身を沈める。
 もちろん、浴槽ではあまり体を動かさない。
 泳ぐ……なんてのはもってのほかだ。
 体がある程度温まったら、再びゆっくりとお湯から出て、じ〜〜〜〜〜……と浴槽を観察するのだ。
 そしてこの時、一本でもお湯の中に“体毛”が残っていたら大変だ。
 浴室から出る時間がたっぷり10分は延びてしまう。
 そうなるとせっかく温まった体が冷えてしまうし、男性陣が入る時間も、もっと後になってしまうだろう。
 彼女と一緒に入浴する女性の髪は栗色で体毛の色も薄い。だから湯に入ってしまうと比較的目立たなくなってしまうのだが、彼女のはそうはいかなかった。
 漆黒の髪は……特に体毛ともなると、ものすごく目立つのだ。
 ……………………………………と、少なくとも彼女はそう思っている。
 そんなわけだから、男女別々の浴室だった今回の宿泊では、彼女はたっぷりと時間をかけて体を磨き、髪を洗って、うっとりとリラックスしながら浴槽に身を横たえる事が出来た。
 時には野宿をする時もあるのだから、男女兼用であろうと汗を流すことが出来るのであれば、それがどうであれ感謝すべきではあるのだろうが、やはりこうして満足ゆくまで入浴出来るのと比べればその差は天と地ほども違う。
 その嬉しさは他の2人も同じらしく、今日は女3人だけでパジャマのまま、湯上り後に少しだけ夜更かししてしまおうと思っていた。
 もちろん提案は、栗色の髪の女性だ。
 彼女は3人のうちで一番の年上でありながら、時に3人のうちで一番の年下みたいな提案をする事があるのだ。
 けれど、それはイヤな事ではない。
 むしろ、同世代の女の子と多感な少女時代を送ることのなかった彼女にとって、栗色の髪の女性の提案はとても嬉しく思えたのだ。
「お待たせ〜……ごめんね、なかなか髪が乾かなくて……」
 彼女がトレイを持って女性部屋となった宿泊室のドアを開けた時、他の2人はそれぞれ、ベッドに寝転んだり椅子に座って本を読んだり……と思い思いにリラックスしていた。
 ベッドに寝転んだ少女はTシャツにホットパンツという格好だ。だらしなく仰臥した彼女の胸はささやかで体つきもどこか幼さが残るものの、大の字に伸ばした手足はすっきりとして健やかだ。肌は健康的に焼けて、例えればそれは、草原を駆ける野鹿のような若々しさがあった。
 対して、椅子で本を読んでいる女性は、淡いピンク色の生地に可愛らしい野草花をあしらったナイティを身に着けていた。どこか子供っぽい可愛らしさを感じさせる姿だが、それがこの女性にはとても良く似合っている気がする。
 部屋は3人が泊まるにはいささか広い感じがしていた。
 本来なら4人部屋なところを、3人で使用しているためにそう感じるのだろう。実際、ベッドは4つあるのだが、今夜使われているのはそのうちの3つだけだった。
 ……と、椅子に座って本を読んでいた女性が顔を上げて黒髪の女性を見た時、その異変は起こった。
「やだティファ!! 何着てるのっ!?」
 彼女は、「信じられない!」と言いたげに本をテーブルに取り落とすと、ガタタッ! と椅子を蹴って立ち上がったのだ。
 悲鳴のような、切羽詰った声音だった。
 彼女の眼はいっぱいに見開かれ、唇はわなわなと震えて、両手は恐怖に恐れおののくかのように血の気の引いた頬に添えられている。それは、どんなモンスターを目の前にしても見せたことの無い、驚愕の表情だった。
「え? な、なにって……パジャマ……」
 驚いたのは黒髪の女性、ティファの方だ。
 今、彼女が身につけているのは、上下で共にオレンジ色をした少し厚手な普通のパジャマだった。
 デザインはシンプルで、特に目立ったところもなく、おもいきりメリハリのついた彼女の身体を今はすっかり覆い隠して、すっきりとしたプロポーションに見せていた。
 ティファはその女性の反応に面食らって危うくトレイを落としてしまいそうになり、慌てて側のサイドテーブルの上に置くと、いささかオロオロとした様子で彼女を見た。
「なんだって!?……よりにもよってなんてことを……!!……」
 そしてそんなティファの様子に眉根を寄せ、険しい表情で彼女を見やったのは、今までベッドで寝転んで穏やかなまどろみに身を任せていた短い黒髪の少女だった。
「え? え?」
 2人の尋常ならざる様子に、ティファはただオロオロと立ちすくむのみ。
 きらーーん……と2人の目が光ったのはその時だ。
 栗色の髪の女性はどこからか一着の服を取り出すと、彼女に駆け寄るようにして有無を言わせず押しつけた。
「早くこれに着替えて! 早く!」
「え? え?」
 びっくりして眼をぱちぱちとさせて、ティファは手に持った肌触りのやけに良い服と、まるで世界の危機とでも言わんばかりの目の前の女性を交互に見た。
 せっかくの風呂上りなのに、汗がぶわっと吹き出た。
「ユフィも手伝ってあげて!」
「わかった!」
「きゃあっ!」
 いつの間にか気配を消して後に立っていた黒髪の少女−ユフィが、ティファのパジャマの上着を、ボタンも外さずに強引に素早く捲り上げた。
 そしてあっという間に脱がされ、恥ずかしがるよりも先に二人がかりでその“やけに手触りの良い服”を着せられてしまう。

 数十秒後。

「え? ちょっとやだ! これ、スケスケじゃない!」
 ……すべすべの肌触りの、心細くなるくらい軽い服は、男の目を楽しませる事に主眼を置いた薄い布地のネグリジェだった。
 恥ずかしくて思わずベッドに座り込み、両手で出来るだけ隠そうと自分の肩を抱いて身を屈(かが)めてしまう。
 不幸中の幸いは、パジャマの下に下着をちゃんと上下共に身に着けていた事だろうか。
「ふぅ〜〜〜任務完了しました! 隊長!」
 ユフィが今まで見たことも無いくらい爽やかな表情で、出てもいない額の汗を拭った。

 ……すごくいい笑顔だった。
 炭酸飲料のCMに出演依頼してもいいくらいだった。

「よろしい! んふぅ〜良く似合うわ、ティファ」
 栗色の髪の女性エアリスは、腕を組み右手の人差し指を顎の先にあててティファの姿を頭のてっぺんから脚の先までじっくりと見た。

 ……ものすごく幸せそうな顔をしていた。
 クリスマスの朝に、欲しかったぬいぐるみをもらった少女のような、邪気の無い可愛らしい笑顔だった。

 二人とも、どこかなんかがヘンだった。
 まだ昼間の戦闘でかかった混乱がとけていないみたいに思えた。
この記事へのコメント
心温まりますた
たまにはのんびりしないとね〜
Posted by 青玉 at 2011年01月19日 22:13
 この3人は、書いててとても楽しく、面白く、ほっとした覚えがあります。エアリスは私の中では、かなり「ヘンな子」ですが、それゆえにとても愛しいです。
Posted by 推力 at 2011年01月20日 14:09
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