■感想など■

2011年01月27日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【6】■■

 さすがにスケスケネグリジェのままでは恥ずかしくて、ティファは薄いショールを羽織る事だけは“許して”もらった。
 それでも胸の“先っちょ”が透けて見えてしまうというのは、同性の前だといってもものすごく恥ずかしい。風呂などで一緒に入っても特に意識する事無く平気になっていたが、こうして明るい部屋の中に身を置くとなると話は別だ。
 何より、すーすーとして心許(こころもと)無いことこの上ない。
「あ、アタシ砂糖3つね」
「3つも入れるの? 太っても知らないから」
「そんなこと言うんだったら、そもそも寝る前に焼き菓子なんて齧(かじ)れないって」
 エアリスの呆れたような言葉にそう切り返して、ユフィはティファの焼いた焼き菓子をポリポリと齧る。
 ティファは、まるで仲の良い姉妹みたいな二人のやり取りを横目に、最後に自分の分のお茶をカップに注いで、ふかふかのクッションを抱え込んだ。
 部屋の木板の床に、エアリスは一つ余ってるベッドの毛布やシーツを敷きクッションを置いて、真ん中にお茶と焼き菓子の載ったトレイを置いた。そうして、今、3人はその周りに思い思いの格好でくつろいでいるのだ。
「このお菓子、不思議な味がするね。甘酸っぱくて美味しいけどさ」
「そう?」
 ティファも、木皿から丸くて平べったい形の焼き菓子を一つ摘んで一口齧る。
 香ばしさと共に甘味と酸味が口の中いっぱいに広がる。
 鼻に抜けるシナモンの香気がまた、微妙に心地良い。
 この焼き菓子は、小麦粉に塩を少し入れて水と卵黄で練ったものに細かく砕いたクルミと“ナチャの実”を練り込んで、ごく弱い火力で二回に分けて焼きながら、その合間に卵白と蜂蜜、それに香り付けのシナモンを混ぜたものを塗った……比較的簡単な焼き菓子だった。
 そしてまたこの菓子は、ティファが故郷ニブルヘイムにいた時によく口にした、村のおばさんなどがよく焼いていた、ポピュラーなものであった。
 村の寄り合いやお茶会などでは、誰かが必ずと言って良いくらい焼いてきたものだ。
「本当は鶏の卵じゃなくて、スピードサウンドの卵を使うし、ナチャじゃなくてケルナチャの実を使うんだけどね……」
「どうして使わないのさ?」
「“使わない”んじゃなくて“使えない”の」
「どうして?」
「あいにくね……ニブル山でしか取れないその2つは、このあたりじゃあ市場に出回ってもいないの」
「マイナーな食材なんだなぁ」
「ふふふ……」
 確かにスピードサウンドの卵は鶏卵よりも濃厚でコクがあるが、数年前から個体数が激減して以降、卵を取る事はニブル地方の町村でも禁じられているのだった。
「それに、ケルナチャはナチャの原種だから、レシピの通り作ったらきっとユフィは食べないと思うな」
「そんなに不味いの?」
「違うわよ。酸味がずっと強くて、ここまで甘くならないの」
「エルミナ母さんに聞いた事あるわ。ケルナチャって、辛味料理の付け合せにも使われるのよね?」
 エアリスがお茶を一口飲んで「おいし」と呟いた。
「うん。よく知ってるね。ミッドガルじゃ、ナチャだって使わないのに」
「あれって大変なんでしょ? アクを取るために一昼夜冷水に付けておかないといけない……とか」
「そう。面倒でしょ? だからナチャが作られたの」
「品種改良?」
「うん。今市場に出てるナチャは、ケルナチャみたいにアク抜きする必要も無いし、甘味もずっとあるから、辛味料理の付け合せだけじゃなくて、ケーキとかにも使われる事があるの。でも……」
「……?……でも?」
「それだと、あの懐かしい味は出ないんだ」
 エアリスとユフィは「ああそうか」と言った顔で目をパチパチと瞬(しばたた)かせると、どちらからともなくそれぞれもう一つ手に取って、神妙な顔でぽりぽりと齧った。
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