■感想など■

2011年01月28日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【7】■■

「でもティファってすごいなぁ……何でも作れちゃうんだなぁ……」
 ユフィが水色のクッションを抱えて体をゆらゆらと揺らしながらそう言うと、ティファはカップを置いて両手の指を絡ませた。
「何でもってワケじゃないわよ。まだまだ作れないものの方が多いくらいだもの」
「そう言えるだけですごいってーの。アタシなんか食べるの専門だもん」
「……小さい頃の反動かもしれないなぁ……」
「反動? 何の?」
 エアリスが首を傾げてティファを見た。無垢な瞳で見つめられると、まるでちっちゃな女の子に質問されているようで、心の片隅が少しむず痒い。
「…………なんでもない……」
「なによ。そこまで言っといてやめちゃうわけ?」
「……だって……」
「だってなによ? 気もたせといていざとなったら逃げるのは良くないよ?」
 ユフィは、怒ってるんだか笑っているんだかわからない顔でティファを睨んだ。
 間違いない。
 彼女は完全に楽しんでいる。
「逃げるだなんて……」
「「ティファ」」
 エアリスとユフィの二人に詰め寄られて、ティファはおずおずと口を開いた。
「………………ん……。あ……あのね、私、昔は髪もすっごく短くしてて、スカートよりも半ズボン履いてる事の方が多くて、女の子と遊ぶよりも男の子と遊んでる事の方が多かったんだ」
「うんうんわかるわかる」
「こらユフィ、静かにね」
「ふふ……毎日泥だらけになってね……そりゃもうパパやママの頭を悩ませる御転婆娘って感じ」
 『御転婆……死語じゃん』と言ったユフィの額を、エアリスがぺちっと叩く。
「でも……ママが病気になって………………どんどん悪くなっていって……私が悪い子だからママの病気が悪くなったんだ……って思って……髪も伸ばして、スカートも履いて、なるべく女の子らしくしよう……って、ママの病気が良くなるように……って、ずっとずっといい子でいようって思って……」
「………………」
 ユフィが息を呑んだ。
 『マズった』という顔をしていた。
 それでも、ティファは続ける。
「ピアノ習い始めたのだって、ママの好きな曲を聞かせてあげれば、ママの病気も良くなるかな?って思ったからだったし、ママが得意だった木苺のパイだって一生懸命覚えた。私が女の子らしくしてるとママは笑ってくれたし、だっこしてくれて頭撫でてくれたり、髪の毛を梳いてくれたりもしたから……。私、一生懸命だった。ホントに一生懸命だった。一人で木苺のパイを作れるようにもなった。でも、やっと美味しい木苺のパイが作れたのに……」
「…………」
 どうなったのか、聞かなくてもわかった。
「それからずっと…………ずっと……思ってた。私がもっと早くから……ううん、ずっとずっと最初から女の子っぽくしてたら、ママの病気は治ったんじゃないかな? ママの病気があそこまで重くなることなんか無かったんじゃないかな?って……そう思」
「そんなわけないよ……そんなの、ティファが悪いわけないじゃない!」
 不意に声を上げたユフィに驚いて、ティファは目を見開いた。
 けれどすぐにその目を細めて、なにか眩しいものでも見るように彼女に微笑む。
 ……それは、哀しい微笑みだった。
 優しい……でも、心の奥底から顔を出しそうな“なにか”を必死に押し込めようとしているかのような、そんな微笑みだった。
「……うん。そう」
「だったら……」
「聞いてユフィ。そうなんだ。私がいっくら女の子らしくしても、どんなに料理を覚えても、男の子達と野原を駈け回ったりしなくなっても、きっとママの病気は治らなかっただろうな、って思う」
「だろ? なら……」
「今は、ね」
「……っ……」
「でもその時は、ずっとそう思ってた。“そうなんだ”って思ってた。全部私が悪いんだ……って」
「それで料理をしっかり作れる女の子になろう……って?」
 エアリスがぽつりと、静かに問いかける。
 その表情にはただ、ティファの言う言葉を受けとめようという意思だけがある。
「……う〜ん……ちょっと違う……かな?」
 ティファは重い空気を振り払うかのように、少しおどけて肩を竦め、唇を突き出してみせた。
「何が?」
「えっとね……私が作りたいのは、ママの料理なの」
「お母さん?」
「うん。……ねえ、ニブルヘイムって、結構閉鎖的な寒村じゃない?」
「うん……あ、ううん」
 思わず頷いてしまって、エアリスは慌てて否定する。
 例え本人が故郷を否定的に言ったとしても、それに賛同するのは礼儀に反すると思ったのだ。
「くすっ……いいわよ。その通りなんだもの。でね、あの村に伝わる料理って、すごくクセがあるものが多いの」
「ゲテモノ?」
 遠慮の無いユフィの言葉に、エアリスがぎょっとして彼女を見た。
 時々この子はとんでもなく無神経になるが、本人には決して悪意があっての事ではない……と気付いたのは最近の事だ。が、それでも不意にその顔を覗かせるとびっくりしてしまうのだ。
 けれど、ティファは気にした様子も無く、「うーん……」と困ったように眉を顰めて笑った。
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