■感想など■

2011年01月31日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【9】■■

「な、なによ〜」
 それでも虚勢を張って上目使いに二人を見上げるティファに、
「エアリス姐さん? このヒト、こんな事言ってますけど」
「ふふふー……そうねぇ……正直じゃない子には御仕置きが必要よねぇ〜……」
 エアリスがゆっくりとトレイを横に追いやる。
 ユフィがぺろりと可愛らしいピンクの舌で唇を嘗めた。
「え? え? なに?」
 ティファはそう言いながらもすでにクッションを抱えて、犬に睨まれた子猫のように、じりじりとお尻の方から戦略的撤退をしていた。
 形勢は圧倒的に不利だ。
 ここは勇気を持って戦略的撤退をすべきではないか!?
「ちょっ! またっ!? きゃっ! あっ! やっ!」
 ……しかし、全ては遅過ぎた。
 退路を絶たれ、2人がかりで飛びかかられてくすぐられ、ティファは逃げることも出来ずに息も絶え絶えになりながら床の上をバタバタと転がる。
「……あっ……やっ……たっ……たすっけっ……ひっ……くっ……」
 ……本当に苦しそうだ。
「本当のこと言う?」
「ほ……ほんと……って……わた……ウソ……言って……な……ひっ……」
 ぜーぜーと荒い息でエアリスを見上げ、ティファは少ししてから途切れ途切れに弁明する。
 けれどエアリスはにっこりと笑うと、死刑執行人に無情な命令を下した。
「はいユフィ。再開〜!」
「うひひひひ……」
 両手の指を“わきわき”とさせながらにじり寄るユフィに、ティファはそれだけでもうひとたまりもなく怯えてしまって、首をぶんぶん振りながら泣きそうな顔をした。
 その姿はとてもパーティの前衛としてモンスターの攻撃の矢面に立ち、果敢に肉弾戦を仕掛ける格闘家には見えない。不思議なことにティファは、こと、ユフィやエアリスが相手だと「断固とした拒否」とか「毅然たる態度」などといったものとは、からっきし無縁になってしまうのだった。
 そしてまた、そんなティファを見ると、ユフィはいぢめたくなって仕方なくなってしまうのだった。
 知り合って、仲間になってまだ2ヶ月経っていない。
 それなのにもう何年も一緒に旅を続けているかのような雰囲気が、そんな気安さを生んでいるのだろうと思う。
 ティファがもし、自分の容姿やプロポーションを鼻にかけるようなイヤな女だったら、絶対にこんな事はしないだろうと思うのだ。
 あんなボディコンシャスな服で格闘なんてしてしまえるのに、いつもどこか自信無さげで、その上、時々何かに脅えているような瞳をする……。自分よりも何歳も年上で人生経験も豊富なのに、ともすると自分よりも人の感情に敏感に反応し、その様はまるで多感な少女のような危うさがあった。
 強いのに、弱い。
 カッコイイのに、自分に自信が無い。
 優しいのに、何かあると自分を責める。
 もどかしい。
 見ていられない。
 我慢出来ない。
 彼女にはもっとカッコ良くいて欲しいのだ。
『今だってほら、たかだか私がにじり寄っただけで顔色を変えて、どうやって逃げようか考えてる』
 私なんか、その腕で撥ね退けて力で反撃してしまえば次からはこんなことしなくなるのに……。
 ユフィはそんなティファが、大嫌いで大好きなのかもしれなかった。
 彼女は未成熟な心に相反する感情を同時に持ってしまったがため、この混沌とした感情をどうしていいかわからず、だからこそ、その直接原因であるティファにぶつけてしまうのだろう。
『ま、それが出来ないのが、ティファなんだよなぁ……』
 ユフィは“ふっ”と息をついた。
 ……すると、
「どうしよう……」
「え?」
「あたし、なんだかドキドキしてきちゃった……」
 エアリスが、両頬を両手で包んで、熱く潤んだような瞳でティファを見ていた。
「エアリス?……あ、そうか……うん……実はアタシも……」
 エアリスの言わんとするところを共犯者のシンパシーで瞬時に理解し、ユフィは彼女に合わせてティファを見た。
「???」
 笑い過ぎて涙に潤んだ瞳のまま、鼻水をじゅるっとすすったティファは、警戒したまま二人を見た。
 その彼女を、エアリスとユフィは嘗めるように見る。
 ……その視線は、なんだかむちゃくちゃ怪しい雰囲気だった。
 ティファの全身に、再びどっと汗が浮かぶ。
 本能的な恐怖が、恥も外聞も無く今すぐ立ち上がってそのまま回れ右してダッシュで逃げろ、と言っていた。
 もちろん、背後には窓があるだけで、2Fの窓からこんなえっちな格好で飛び出すことなんか、彼女には到底出来やしなかったけれど。
「ティファ……かわいい……」
 エアリスの甘ったるい言葉に、ティファの全身にぞぞぞ……と鳥肌が立った。
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