■感想など■

2011年02月07日

[PAIN]『Piece.02』「おいらにはわからないこと」〜絡み合う二匹のケモノ〜

■■【2】■■

「中に出してもよかったのに……」
 ティファが、くすっと笑みを浮かべながら上半身を起こした。肥大した二つの乳房が、ゆらっと重そうに揺れる。
 その乳房と、滑らかな腹には、白い粘液が飛び散っていた。あれがおそらくクラウドの精液だろう。彼はティファの胎内に放つ事無く、彼女の腹に射精してみせたのだ。
 ティファは枕元のティッシュで、手早く乳房から垂れる彼の精液を拭った。そして次には、タオルでもう一度拭い、顔や手足の汗を軽く拭き取る。その表情はサバサバしており、どこか、スポーツを終えた時のような、トレーニングを終えた時のようなさっぱりとした雰囲気があった。
 少なくとも愛を交わした、とろけるような蜜の香りは無い。
「私、もうちょっとでイクところだったのよ?」
「……すまない」
 クラウドは溜息と共に小さく呟き、ティファが差し出したティッシュを股間にあてがった。おそらく、自分で陰茎についたティファの粘液と精液を拭っているのだろう。
「いいわ。ヴィンに満足させてもらうから」
 ティファはそう言うと床に立ち、イスにかけてあったガウンを素裸に羽織(はお)った。そうして軽く髪を整えると、屈み込んでクラウドの頬にキスをした。
 軽い、挨拶のようなキスだ。
「じゃあね」
 身を翻して入り口に向かって歩いてくるティファに、『彼』は慌てて廊下の暗がりに身を潜めた。
「やだ、ドア開いてるじゃない」
 ティファは眉を顰めて小さく呟いた。しかし次には、その形の良い眉を“くっ”と上げて、肩を竦めてみせる。彼女にとて自分の艶声が廊下に漏れようが、どうと言う事は無いのだろう……。
「ま、いっか」
 ドアを締める瞬間、部屋の中のクラウドをちらっと見て、すぐに視線を外す。そして、すたすたと軽い足取りで2つ向こうの部屋まで行くと、軽くノックした。
 『彼』は暗闇から気配を消したまま、彼女の挙動を見ている。彼女は未だ『彼』の存在には毛ほども気付いていないようだ。
 いくら訓練を積んでも、何度死線を潜ろうとも、生まれついての狩人の気配を人間ごときが察知出来る筈も無い。それにも増して『彼』は、隠形(おんぎょう)にかけてはどんなモンスターにも引けを取らないという自負があった。
 程なくしてドアが開き、黒髪を長く垂らした細面の美丈夫が顔を出した。上半身は裸の胸を露にし、下にはレザーパンツを身につけている。左手に愛用の銃を持っているのは、今までその整備でもして時間を潰していたためだろう。『彼』の聴覚は、ティファとクラウドの交尾の音を聞きながら、部屋を一つ挟んだにもかかわらず、彼の立てる物音を聞き分けていたのだ。
「はーい」
 ティファは右手を軽く上げ、にこやかに挨拶をした。
 思えば、何というタフさだろう。ティファはつい先程までクラウドに組み敷かれ、責め立てられながら息も絶え絶えに喘いでいたのではなかったか?
 しかし、今も、どこかつまらなそうにティファを見る美丈夫に向けた顔には、そんな事は無かったかのように明るい笑顔を浮かべているのだ。
 美丈夫はヴィンセントという。
 彼もまた、『彼』の仲間の一人だ。仲間内では「ヴィン」とか「のっぽ」とか「眠り姫」とか呼ばれているが、彼としては「ヴィン」が一番性に合った呼ばれ方らしく、その他の愛称は、甚だ彼の機嫌を損ねる事が多い。
 彼はティファの肩を抱くと、無表情に部屋に招き入れた。ティファの顔に、艶っぽい発情した雌の色が浮かぶのが、『彼』の目にははっきりと見えた。
 髪の毛が落ちるよりも静かに、『彼』はヴィンの部屋の前に脚を進める。
 饗宴は既に始まりつつあった。
「んむっ……んっ……ふっ……んっ……」
 くぐもった声と共に聞こえるのは、くちゅくちゅとした粘液の音だ。『彼』の耳には、その粘液を嚥下する音が、乳飲み子が乳をそうするように聞こえている。
 口付けをして、互いの唾液を混ぜ合い、交換し、飲み下しているのだろう。
 部屋にティファを招き入れてすぐにこれだ。余程待ちきれなかったか……それとも、ティファの方こそ、中途半端に猛った体を持て余していたか……。
 そして布擦れ。
 吐息。
 声。
 喘ぎ声。
 濡れた声。
 切なそうな息遣い。
 ベッドの軋む音。
 同じだ。
 先程クラウドと共に立てた音と同じ音を、今度は別の男とティファは奏でている。
 これこそが、『彼』には到底理解出来ない人間の謎だった。
「あ……い…………あっ……あひっ……あっ……あーーーーーーっ!……」
 悦びの声は、ぺちゃぺちゃという粘液質の音と共に聞こえる。立てているのは彼女の性器に違いない。ヴィンが、ティファの性器を嘗めている音だと、『彼』は思う。濃密な雌の匂いが、ドア越しにも届いてくるからだ。
 そして二人は、じきに性器を結合し、ヴィンはティファの胎内で射精するに違いない。
「…………………………」
 言葉も無かった。
 やはり、“彼等”の行為は、『彼』の認識の範疇を越えているのだ。
 どう考えても常識的では無い。
 一体の雌が、多数の雄によっての種付けを望むなどと……。
 そしてそれを、二体の雄は受け入れているのだ。
 自分の“魂の設計図”が、未来に受け継がれないかもしれないのに、それを当然の事のように受け入れているのだ。
 彼等は正常ではなかった。
 何かが狂っている。
 そう思うしか、無かった。
「………………!…………」
 いや、クラウドはどうだろうか?
 どうして彼はティファの胎内に放たなかったのだろう?
 二人は愛し合っているのではなかったのか?
 『彼』は身を翻すと、クラウドの部屋の前まで脚を進め、中の音に神経を集中した。
 音はない。
 ドアを器用に開ける。
 クラウドは、さっきと同じ姿勢で、ベッドの端に座っていた。
 ……何を考えているのだろう……。
 今、自分の「番」が他の雄と交尾をしているというのに……。
 辛くはないのだろうか?
 哀しくはないのだろうか?
 怒りが込み上げてきたりはしないのだろうか?

 『彼』は何とも言えない暗い気分で、宿屋から出た。
 月明かりの庭先に腰を下ろし、すぐ脇を流れる小川のせせらぎと虫の声に耳を傾ける。
 そして青白く晧々と照る月に向かって、小さく溜息を吐いた。
「じっちゃん……おいらにわかんないこと……まだまだいっぱいあるよ……」
 今夜は、心や優しい戦士−ナナキにとって、眠れない夜になりそうだった。


         −おわり−

■■[PAIN]『Piece.02』「おいらにはわからないこと」〜絡み合う二匹のケモノ〜■■

「2011/02/06 01:00」投下開始
「2011/02/07 01:00」完了
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