■感想など■

2011年05月18日

[LIPS]『Piece.04』「二人の睦」〜愛しあうということ〜

■■〜睦言の夜〜■■

■■【1】■■


 闇は深く……月明かりは、冴え冴えとしていながら、深淵の柔らかさを胸に届けていた。

 室内灯の微かな明かりが、彼の魔晄の瞳をして、闇を闇とさせずにいる。
 常人の眼とは、その持てる力が格段に違うことに気付いたのは、そう遅くはない。もしここに、彼と、彼の愛する彼女以外の人間がいたならば、カーテンの隙間から差し込む蒼い光で、彼の瞳が不思議な彩光を放ったことに気付いただろう。

 魔晄の光……。

 人によっては、彼の……いや、“彼ら”のこの瞳を『魔眼』と呼ぶ者もいる。「汚れ」に犯されているわけでも無いのに……だ。
 彼自身、この光そのものを忌み嫌った事もある。
 ……だが、それは過去の話だ。
 砂漠の砂が水を渇望するほどに憧れ、そして求めたあの狂気の男と、自分が同じ眼を持っているその事実が、かつての彼を苦しめていた事もある。だがそれでも、それは全て過去の想いの記憶でしか無いのだ……。
「ふ……ん……」
 彼は、自分の左腕を独占し、安らかな眠りを貪る独裁者を見た。
 囚われ、そして独占されているのは、腕ばかりではない。この心も……想いの全てを、この暴君に捧げているのだから。
 むにむにと可愛らしい唇を動かして、こじんまりとした鼻孔から息をつく。その仕種は、満腹して昼寝をする猫にそっくりだ。
「…………ふ……」
 枕にした彼の腕は、そろそろ感覚が無くなりつつある。
 それでも、そんな事は知らぬげに、彼女は何か、ひどく心地のいい夢でも見ているのだろう。
 彼女の全てを心に住まわせている彼には、彼が与え、彼女が謳歌しているその時間を、無慈悲に奪うつもりなど、当たり前のように……無い。

 ただ……ほんの少しだけ、悪戯心が浮かんだだけだ。

 彼女は、彼の左腕を枕にして、彼の脇腹にぴったりとその身を寄せていた。小さく縮こまるように……そう、まるで母親の胎内で安らぐ、胎児のように。
 彼は、その彼女をわずかに仰向けにさせる。チョコボ柄のパジャマが、はちきれそうな彼女の胸を包んでいるのを、思わず目を細めて見つめた。
 最初は、ずいぶんと反対したものだ。
 黄色地に青い川チョコボがプリントされたパジャマなど、20を過ぎた女性が着るようなものとは、彼には到底思えなかったからだ。しかも彼女は、同じタイプのパジャマ……青地に、普通の黄色チョコボがプリントされたパジャマを、彼にも『着て欲しい』と言った。
 もちろん彼は、抵抗を……した。
 ……したのだが……。
 彼が彼女の言葉に、決して勝てるわけもなく……結局、今現在も彼は、そのパジャマを身に着けている。

 彼は、攻撃的とでも言えるくらい挑戦的に、たっぷりと膨らんだ布地越しに、小さく可愛らしい『果実』を探した。人差し指の、第一関節と第二間接との間の背で、膨らみの頂上に当たるパジャマの表面を、撫で付けるようにして探すのだ。
 やがて、布地越しに、ぷっくりと盛り上がった部分が、彼の指を押し上げたのを感じる。
「…………」
 彼の口もとが、ちょっとだけ意地悪そうに笑みを形作った。
 彼はその部分を、今度は円を描くようにして、中指の腹で優しく擦り始めた。傷口に薬を塗りつけるように、注意深く、そして優しく……優しく撫で付けていると、やがてその部分は、パジャマの布地の上からでも、はっきりとその形を露にし始める。

 硬くなっている。

 つい先程まで「ふにゅ……」とした感触だったものが、こりこりとした手触りに変わっているのだ。だが、体の変化が顕著になりながらも、彼女には、一向に目覚める気配が無い。
 もっとも、それも当然と言えば、当然かもしれない。
 彼は、“その部分”から一旦指を離し、すやすやと寝息をたてている彼女を見やった。
 この可愛らしい暴君は今日、久しぶりに思いきり体を動かし、心地良い疲労のまま、夕食には、軽くアルコールまで口にしているのだ。

 先週、この街に一つのジムが出来た。
 「ジム」……と呼称するのは、実は適切ではないかもしれない。そこの指導者は、その場所をそう呼んではいなかったからだ。
 彼の愛する彼女に言わせると、そこは「道場」と呼ぶのが一番ピッタリするらしい。
 そこでは、街の子供や若者、果ては老人に至るまで、幅広い年齢層に、いわゆる「武術」を教えている。そして彼らは、その武術を「格闘術」ではなく「護身術」……そして「拳法」と呼んでいるのだという。
 「拳をもって法を成す」……もしくは「拳をもって己の法とする」……かどうかは彼にも良く分からない。
 ……が、積極的な打撃攻撃よりも、むしろ自己の内なる力を生かし、相対者から、相対者自身の力をもって身を護る術とする技……らしい。
 世の理(ことわり)を理解し、自分のものとして、自分の中に眠るもう一つの自分を開放、そして制御することこそが、その「拳法」の道だという。
 話だけ聞いていると、彼には怪しげなものとしか理解できないが、これが意外に人気があるのだと、彼女は言った。武術の一派ではあるものの、その動きは、流れるように滑らかなのだ。
 指導者の「演武」を見た彼女は、まるで「舞いを踊っているようだった」と評した。

 彼女は、昨日からその道場に通い始めているのである。そして今日は、師範代の要望で実際にザンガン流格闘術の技を、一連の「流れ」として披露してみせたという。
 ザンガン流格闘術の最終奥義まで収めた彼女が、どうして他流派の武術に教えを請う気になったのか……それは彼も知らない。
 だが彼には、なんとなく彼女の想いがわかる気がしている。
 ザンガン流格闘術は、活人の拳である。それはまごう事無き事実だ。
『拳をもって、人を正しく導くべし』
 その思想は、ウータイの僧兵にも通じるものがある。だが、基本としているのは、相対者に対しての積極的な「攻撃」だ。
 護りたいもの、護らなければならないものを護るために、それが傷つけられる前に、他者を排除する。
 ……だが……「護るため」とはいえ、その行為は……心に痛い。
 何の疑問も無く、その格闘術を駆使して幾多の危機を乗り越えてきた彼女だったが、あの旅を通して……いや、仲間達と生死を共にして、「護る」というものの「意味」と、真摯に向き合ったのだろう。
 他流派の修行は、ザンガン流に、ティファなりの新たな解釈・アレンジを加えるためのものだと思えばいい……と、思う。
 その証拠に、今日、彼の元に帰って来て、きらきらと輝やく彼女の瞳には、迷いは無かったのだ。

『だからといって……なぁ……』
 彼は、すっかり立ち上がり、パジャマの上からでもはっきりとその形を見て取れるようになった小さな果実……彼女の可愛らしい乳首を、再びくりくりといじり始めた。
 最初は、テーブルクロスの上に一滴だけ落ちた、コンソメスープの染みのようだった悪戯心も、彼女の平然とした吐息を感じるにつれ、吸い取り紙の上に落としたインクのように、彼の心を黒く染め上げ始めていたのだ。

『ごめんなさい……私、先に寝るね』
 気持ち良く酔っ払って、シャワーも浴びずにベッドに横になった彼女を、彼が着替えさせて、そしてその後、夕食の後片付けまでしたのだ。
 結婚は……していない。
 二人が一緒に暮らし始めて、まだ日も浅いのだ。
 それでも、忙しい合間を縫って、彼女との時間を作った彼には、彼女の行動はあまりといえばあまりな仕打ちかもしれない……。
 彼は、今日は久しぶりに、彼女を「求めたい」と思っていたのだ。

 この、猛る体をどうしてくれよう。

 そう思いながら彼女の隣に体を滑り込ませた彼は、彼女のあまりにも無邪気な寝顔に、すっかり毒気を抜かれてしまった。だからこそ、今までずっと、彼女に腕枕をしてやりながら、ただ、暗闇の中で一人、物思いにふけっていたのである。

 しかし、何事にもガマンの限界というものがある。

ぷち……ぷち……

 彼は、片手だけで、彼女のパジャマのボタンを、上から順に外していった。そして、全てのボタンを外してしまうと、まるで壊れ物を包んだ布をめくるような慎重さで、パジャマの前を開く。
 薄暗い室内灯と、蒼い月明かりの中、ほのかに浮かび上がる白い肌の丸みは、彼の目を射て、心臓を直接貫いた。
「………………」
 思わず唾を飲み込む。
 下着は……無い。今、彼の目の前には、豊穣の地……楽園の果実が、彼に食べられるのを待ち望むかのようにして、あった。
「ん…………」
 彼女がわずかに身じろぎした。
 その拍子に、たっぷりとした乳房が、ゆらっ……と、重く……けれど、柔らかく、揺れる。
 それはまた、魅惑の動きでもあった。
この記事へのコメント
クラウドのターン!!
Posted by 青玉 at 2011年05月18日 09:00
 クラウドのヘタレ攻めとか、ちょー好きです。
 もちろん、男らしい攻めも好きなんですが(笑)。
Posted by 推力 at 2011年05月18日 22:22
クラティには初々しさがお似合いだぜ!
Posted by 青玉 at 2011年05月19日 07:42
胸を服の上から愛撫しているというよくある描写なのに、それがパジャマというだけでなんともエロチックに感じるのはなぜなのでしょうか。
それにしてもクラウドにまでチョコボパジャマを強要するとは…チョコボパジャマを着ているクラウドを想像するだけでニヨニヨしてしまいますw
Posted by 通りすがり at 2011年05月20日 23:20
>青玉さん
 いつまでも初々しい恋人のような夫婦……というのが、あの二人に対しての私の理想です。
Posted by 推力 at 2011年06月01日 21:34
>通りすがりさん
 チョコボパジャマを渡された時の、なんとも言えないクラウドの表情を思い浮かべるとニヨニヨします。
Posted by 推力 at 2011年06月01日 21:35
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