■感想など■

2011年05月23日

[LIPS]『Piece.04』「二人の睦」〜愛しあうということ〜

■■【2】■■


 彼は、彼女の胸が好きだ。

 「胸も」でも、「胸は」でも無い。
 彼女の胸「だからこそ」好きなのだ。

 ゆる……と揺れる乳房に、つ……と指を触れる。柔らかな産毛が、光を弾いてきらめいた。突出して、自己を誇示するように起立した乳首が、少し大き目の乳輪の中、突然剥き出しにされた恐れで、ふるふると震えている。
 何度も指で触れ、摘まんで、口に含み、舌でなぶった果実だ。
 それなのに、わずかに色が濃くなっただけで、その優しい造形は、初めて結ばれた夜から少しも変わっていないのではないか……と思われた。
 その紅い甘露に、ついっ……と舌を滑らせる。
『熱い……』
 乳首は、小さなものだ。
 赤ん坊の小指ほどしか、無いだろう。
 なのにその部分には、人と人が過去から未来へと伝えゆくための、命の流れを感じるのだ。

ぴちゃっ……ぴちゃっ……

 ミルクを嘗める猫のように、ハチミツを嘗める仔熊のように。
 彼は、彼女の乳首を舌でなぶった。

ちゅっ……ちゅうっ……

 赤ん坊のように、かすかな音を立てて吸うと、彼女の剥き出しの下腹が、ひくっと震えた。
「う……うん……」
 声が漏れる。

ぴちゃっ……

「ん……」
 繰り返すごとに、息は荒くなり、彼女は無意識の内に、舌で唇を濡らしていた。吐息が荒く乱れ、いやいやをするように、ゆっくりと首が左右に振られる。
 彼は右手をいっぱいに広げて、そのたっぷりと豊かな左乳房を下から包み込むようにして優しく優しく揉み上げた。
「あん……クラ……」
「目、醒めちゃったか」
 ぼんやりと目を開き、彼の顔を見、そして、そこから腕を伝って、自分の胸を揉みしだく、彼の右手を見た。そして、彼の繊細な指の動きに陶然となりかけながら、目を瞑って、左手で彼の手の動きを止める。
「…………何してるの?」
「いじけてんの」
「…………?……」
「久しぶりにこうしてゆっくり出来るのに、先に寝ちまうんだもんな」
「…………もう……」
 彼の言葉に、彼女の目が、悪戯を咎める母親の目になる。
「ダメよ。お願い……今日は休ませて……」
「触ってるだけなら、いいだろう?」
「……あなたって、時々……ヘンに甘えんぼになるのね」
「そうか?」
「……ん……そう……よ」
 再開した彼の手の動きに、彼女の美しい眉根が寄せられる。
「はっ……う……」
 息が荒くなり、心臓がどきどきと高鳴る。やがてその変化は、彼女の『花』を艶やかに開かせるに足る「波」を、身体の奥から運んできた。
『あ……やだ……』
 彼に知られないように、もじもじと両脚を擦りあわせる。
 下着を、しっとりと濡らすものが、あった。
「やっぱり……ダメ……」
「どうして?」
 彼の目が悪戯っぽく笑う。何もかもわかっていて、それでもしらばっくれる悪魔の笑みだ。何もかも承知の上で、彼女が我慢できなくなるのを狙っているに違いない。
「だめよ。だって……ん……寒いもの……」
 答えをはぐらかす彼女の言葉に、彼は剥き出しの彼女の胸を見た。仰向けにしているために、わずかに外側に流れているその豊乳の表面は、少しだけ泡立っている。
 この部屋の、少しひんやりした空気が原因だろう。
「そうか」
 彼の言葉に、彼女は少しほっとして、小さく息をついた。
「え?」
 ……が、彼は何を思ったか毛布を彼女の体にかけると、今度は毛布の下で、彼女の膨らみをまさぐりはじめたのだ。
「だめ……」
 彼女はそう言うと、甘い吐息そのままに、んちゅ……と彼の頬に抗議のキスをした。
 彼は彼女の、このキスに弱い。
「どうしても?」
「……どうしても」
 申し訳無さそうに、上目遣いに彼を見上げる彼女に、彼は小さく肩をすくめて彼女の乳房から手を離した。
 その瞳は、落胆の色を濃く滲ませている。
「ごめんなさい……」
「いいよ。俺が悪かった」
 感覚のすっかり無くなった左手で、彼女のさらさらの黒髪を撫でる。
「…………明日……明日なら……」
「…………明日からミディールだよ。言った筈だろ?」
「………………」
 彼の言葉に、彼女は身を硬くして、その魔晄の瞳を見上げた。けれど、彼は天井を見上げたまま、彼女と視線を合わせようとしない。
「…………怒った……の?」
「……いや、別に」
『うそ。怒ってる……』
 彼女は心の中で、口に出せない言葉を言った。
 怒ってる彼にその事実を問いただしても、ますます意固地になるだけだ。それが身にしみてわかるから、だから、彼女は哀しかった。
「……ね……キスして……」
「………………」

……ちゅ……

 軽いキス……。
「…………っ……」
 彼女は涙が出そうになって、きゅ……と唇を噛んだ。
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