■感想など■

2011年10月26日

[THEM]『Piece.01』「ナイショだよ?」〜あなただから〜

■■【2】■■

「もう……何するのよぅ……」
 起き上がろうとしたティファをエアリスの白くて細い腕が抑え込んだ。跳ね除けようとすれば簡単に跳ね除けられる弱い力なのに、ティファは簡単に抑え込まれて草原に仰向けに転がってしまった。

 万事休す。

 だった。
「ふふふ」
「なに? 悪ふざけしないで。急がないと」
「急がないと?」
「……バレット達が、待ってるから……」
「バレット達? クラウドが、デショ?」
「エアリス!」
「違う?」
「…………同じじゃない」
「同じじゃないよ?『バレット達』は複数形。だけど、ひとりだもん、『クラウド』は」
「何が言いたいの?」
「ふふ」
 エアリスはいぶかるティファをそのままにして、ごろん……と“でんぐりがえし”で自分も草原に寝転んだ。
 ティファの顔のすぐ横に、さかさまにエアリスの顔があった。
「クラウド怒んないよ、10分や20分、休んでも」
 目を閉じて、うっとりと草の匂いを深く吸い込みながら彼女は言った。そんなエアリスの顔を見ると、ティファは今まであんなにも焦って波立っていた心が、急速に沈静化していくのを感じる。
「バレットが車を早く直したいって言ってたじゃない」
「バレットじゃないよ。クラウドだよ」
「……どっちでもいいじゃない。私は」
「あ、ひばり!」
 突然エアリスは空に向かって手を上げ、小さな黒い点を指差した。
 ティファはその時初めて、ひばりの囀(さえず)りが耳に届いていた事を知った。
 風が渡る。
 雲が流れ、傾いた太陽の眩しい光を遮って草原に影を落とす。ゆるやかな空気の流れは草花の優しい匂いを運んでくれた。
 二人はしばらく、空を見ていた。
 言葉は無かった。
 ……必要無かった。
 ただ、すぐそばにある命のあたたかさを感じていた。
「…………ね」
「…………ん?」
 もう一度、ざあっ……と風が草原を撫でた後、エアリスがティファを見た。
 ティファは空を見上げたまま、吐息のような小さな声で答えた。
「わたし、すごいヒミツがあるの、実は。知ってる?」
「…………………………秘密……?」
「うん。ヒミツ」
「……なに?」
「知りたい?」
 ティファはゆっくりと首を向けて、エアリスの方を見た。
「うん」
 エアリスの瞳はクラウドの魔晄色の瞳と良く似た色で、陽(ひ)の光できらきらときらめいてまるで宝石のようだった。
「ナイショだよ?」
「……うん……」
 少し不安になって、ティファはこくん……と喉を鳴らした。
 でも唾はほとんど出なくて喉はかすれていた。
「わたしね、クラウドのこと、好き」
「…………………………………………うん…………」
 エアリスの言葉は“すとん”とティファの心の深いところに落ちてきて、じんわりと染み込むように広がった。
「…………うん……知ってる……」
「まだあるの」
「うん?」
「わたしね、ティファのこと、大好き」

 不意打ちだった。

 『どうしよう』って、思った。
 こんなのは反則だ。
 ルール違反だ。
 厳重処罰モノだ。
 ティファはエアリスにばれないように顔を背けてぎゅっと目つむり、彼女の視線を避けた。
 けれどエアリスは、ティファの仕草には何も気付かなかったかのように、もう一度空を見上げた。そうして両手を空に向けて掲(かか)げ、空全体を抱きしめるようにしてそのまま自分の肩を抱いた。
「ねえティファ。
 世界は、すごいね。
 この星は、すごいね。
 こんなにも、キレイ。
 こんなにも、優しい。
 すごいよね。
 でも、すごく、恐い。
 恐ろしい。
 そーゆーとこも、ある。
 今わたし達が、生きて、恋して、悩んで、
 ちょっぴり泣いて、
 たくさん笑って、
 時々怒って、
 でも、そんなことおかまいなしに、この星も、生きてる。
 すごいよね。
 言いたいキモチ、
 伝えたいコトバ、
 ぜんぶ出さないと、伝わらない、きっと。
 それは、たぶん、セトラもおんなじ。
 だからわたし、言うね。
 きっと言うね、この星に」
 ティファは、エアリスが本当に言いたい事が、なんとなくわかった気がした。
 でも、わかったことが悔しくて、気付かないふりをした。

 私は彼女とは違うのだ。

 そこには、意固地な子供のような自分がいた。
「エアリス、この星と話をするの?」
「うん」
「出来るの?」
「うん。たぶん」
「ふうん……」
「あ、ティファ信じてない」
「だって……ねぇ……」
「あ〜ひっどいんだぁ」
「あっ! やっ! やめてっ! きゃぁっ!」
「やめない。ほらほらほらぁ」
「待って待って待って待って待ってくすぐるの反則〜〜〜〜!!!!」
 子猫のように子犬のように、どたばたと草原でじゃれ合う二人を、レッドXIIIはバギーの上からまどろみながら見ていた。
 空がうっすらと赤味を帯び始めている。
 やがて草原を渡る風も冷たさを含み始めるだろう。
 けれど彼はもうしばらくそのままにしておこうと思う。
 黒髪の女性が声を上げて笑う姿など、旅に同行するようになってから久しぶりに見たのだ。
 それは、栗色の髪の女性の持つ力のおかげだと、彼はまどろみの中でひっそりと思った。


         −おわり−

■■[THEM]『Piece.01』「ナイショだよ?」〜あなただから〜■■

「2011/10/25 11:30」投下開始
「2011/10/26 00:00」完了
この記事へのコメント
推力さんおかえりなさい!

youtubeにある「7番街の未使用イベント」という動画が最近のお気に入りです。

デンゼルの登場で「マリンに手を出すな」と言っていた少年の心中やいかにww
Posted by Q at 2011年10月26日 22:50
推力さんおかえりなさい!
こちらの作品はいつみてもいいですね!

youtubeにある「7番街の未使用イベント」という動画が最近のお気に入りです。

デンゼルの登場で「マリンに手を出すな」と言っていた少年の心中やいかにww
Posted by Q at 2011年10月26日 22:52
あ!二重投稿になってしまいました。すみません;
Posted by Q at 2011年10月26日 22:56
 ありがとうございます!

 「7番街の未使用イベント」ですか?
 よくわかりませんが……今度見てみます。
Posted by 推力 at 2011年10月27日 16:24
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