■感想など■

2011年11月21日

【ボクキミ】4

■■【4】■■

 ウィッチは『函(パンドラ)』の形成も『濁怨(ケガレ)』の消散にも、莫大な魔力を必要とする。
 そのためウィッチには、闘いにおいての魔力消費を極力抑え、効率良くケガレの消散を行えるよう特殊な戦闘形態が存在し、あの露出過多な魔女っ子風コスチュームも、実はその一つなのだという。本来であればウィッチは必要最低限の衣服しか身に着けないため、裸である事が最も望ましいらしい(大気と触れる表面積が大きければ大きいほど、大気から、魔力となる魔素を得る事が出来る……という、冗談みたいな“とんでも設定”らしい)のだが、さすがにそれでは闘いにくいため、ああいう形態になったのだとか。もっとも、それがなぜ魔女っ子風コスチュームになったかは……ウィッチの間でも長らくの謎だった。
「ああいう格好……恥ずかしくないのか?」
「もう慣れた……って言ったら嘘になるけど、実際、ウィッチの姿になってる時はあの恰好が普通で当たり前だって本気で思ってるから」
「じゃあ写真に撮って見せられたら?」
「し、死んじゃう」
 もちろん戦闘形態=(イコール)魔女っ子風コスチュームというわけではなく、普段の姿……いわゆる生活形態とは髪や目の色、髪の長さや時にはプロポーションまで変化するウィッチもいるのだという。
 そして通常であれば、ウィッチは戦闘形態を解くことで、すみやかに魔力の補充段階(生活形態)へとシフトするのが常らしい。
 だが、戦闘形態へ至るには更に性変転(トランス)を経るという、通常とはもう一段階プロセスを必要とする特殊なウィッチである優也は、闘いの後、そのままでは通常の生活形態へとスムーズに移行できないのだという。
 それでも今までは、先代ウィッチである母親と行動を共にすることで、生活形態への移行に必要な魔力を彼女から分け与えてもらうことが出来ていたため、それほど不都合は無かったのだ。
「そういえばさ。オマエが17歳じゃなくて本当は24歳だとしたら、おばさんはいくつなんだ? 前にオマエ、おばさんは39歳とか言ってただろ? オマエは22歳の時に産んだ子供だったって」
「う、うん」
「それが正しいとしたら、39プラス7で……46? いや、ひょっとしてもっと……」
「あ、それは本人の前では絶対に言わない方がいいと思うよ。命が惜しかったらね」
「う……わ、わかった」
 46歳(仮定)であの若々しさプラス“ぼっきゅぼん”スタイルの、ぽわぽわした癒し系美人の専業主婦……。
 魔女以外の何者でもない。
『ウィッチこえぇ……』
 だが先月、大規模なケガレ討伐の際に、優也の母親は大怪我を負った。幸い、怪我は大事には至らなかったものの、彼女はそれを期に引退を決意したのだそうだ。
 それから優也は半ば強制的に独り立ちし、以後、魔力補給のためのパートナー無しで、三回もケガレと闘ってきたのだという。
「母さんからは、早くパートナーを見つけるように……って、ずっと言われてたんだけど……ね」
「なんでそうしなかったんだ?」
「だって……」
 ウィッチ同士であれば、魔力の譲渡は、手と手を重ねるだけで容易に行うことが出来た。
 だが優也に関しては、なぜかは知らないが、母曰く、「心を許した異性のキスでないと魔力を回復して元の姿に戻れない」のだという。
 それも女性形態時の異性。
 つまり……男性からの自発的キスである。
 いくら女性の姿であっても、男性とキスすることに抵抗があった優也は、それを避け、自然回復のみに努めてきた。
 そのため過去三回の闘いでは、魔力を回復するまで1日半、あまりにも魔力の消耗が激しい時などは丸2日ほどの時間を必要としたらしい。
「丸2日? ……48時間か。それって、先々週の木曜と金曜か?」
「うん。正解」
「2日も、ずっとあの大人の女の姿から元に戻れなかったのか?」
「……うん」
「じゃあその間、どうしてたんだよ? 家にいたのか?」
「ううん。ちょっと家からは遠かったから、かくまってもらってた」
「かくまって……って、誰に? 仲間のウィッチにか?」
「ううん。ウィッチの支援ネットワークがあるから」
「支援ネットワーク? なんだ。ずいぶんと近代的なんだな?」
「……ウィッチを何だと思ってるの? 支援ネットワークは世界中にあるんだよ? 『WOLF(Witch and Obbligato Loyal Friends)』って呼ばれてる。日本支部は1980年代に出来たものなんだって」
「ウルフ──狼?」
 お? なんかちょっとカッコイイぞ?
 でもなんで英語なんだ?
 哉汰はそう思ったものの、口に出すのはやめておいた。
「“ウィッチとその絶対不可欠で誠実な友人達”……っていう意味らしいよ。ケガレとその眷族、そして下僕(サーヴァント)と闘うためには、ウィッチもそれなりの組織力で対抗しないといけないからね。元々は、15世紀くらいにヨーロッパを席巻した『魔女狩り』に対抗するために発足した局地的な自衛組織がそのはじまりって言われてるらしいけど……。あ、ボクが魔力を回復してた時にケガレの発生は無かったから安心してね。ウルフの方からも臨時に代わりのウィッチを派遣してもらってたけど」
 ──派遣。
 ウィッチってのはアレか? 担当エリアとか決まってるのか?
 哉汰はそんな事をふと考えた。
「で、そのウルフってのは、この街でも活動してるのか? なんて言うんだっけ? 支部? 秘密基地?」
「秘密基地って言い方は変だけど、拠点みたいなものはあるよ。でも、これ以上は秘密だから言えないんだ。ごめんねカナちゃん」
「カナちゃん言うな。……まあ、秘密なのはしょうがないだろ。で? 魔力が戻って元の……ええと、その姿に戻れるまで、ウルフの人たちにかくまって貰ってたってことか?」
「うん」
「じゃあ、変身する時も?」
「そうすることもあるらしいけど、ボクはまだしたことはないかな。それに、急を要する場合は補佐を要請する時間も無いからね。いつもいつも協力してもらえるってわけじゃないと思う。母さんと一緒の時は母さんにフォローしてもらってたけど、一緒じゃない時は、さっきみたいに路地裏に入ったり、空きビルに入ったり、地下道に入ったり、いろいろ」
「けどさ、今のその姿は、魔力の消費を一番抑えられる姿なんだろ? なんでその姿に戻るのに魔力がいるんだ? 魔力が無くなったなら自然に戻るようにはなってないのか?」
 哉汰は先ほどから感じていた違和感を、そのまま疑問として口にしてみた。
「変身の時に性別まで変わるせいか、そんな便利になってないから、こうして苦労してるんだけど……そうだね。着ぐるみを想像してみてよ」
「着ぐるみ?」
「着ぐるみって、あれで結構着るのにそれなりに苦労するんだけど、脱ぐだけなら簡単だと思うでしょ。でも、今着てる着ぐるみを脱いで、もっと動きやすい別の着ぐるみに着替えるって考えてよ。動きやすくても着ぐるみは着ぐるみで、着るにはそれなりに苦労するのは同じじゃない?」
「待て。お前の例えはわかりにくくていかん」
「うーん……どう言えばいいかなぁ」
「さっき、ウィッチの姿でも魔力は自然回復するって言ってたよな」
「うん」
「ウィッチの姿での自然回復と、その姿での自然回復は、魔力の消費が抑えられている分、今の姿の方が早いのか?」
「うん」
「まあ、つまりは、戦闘形態であるウィッチの姿と、生活形態である今の姿では、ええと……魔力の自然回復と消費のバランスが違ってて、そのシステムっていうか仕組みも違うから、別の仕組みに変えるにはそれなりの魔力の消費が必要……て、そういうことなんだな?」
「さっきから言ってるじゃない」
「言ってねーよ」
 『何言ってるの?』とでも言いたそうにきょとんとした顔で言う優也が、哉汰には何と言うかこう……ものすごく腹立たしい。
 だが大事な事が一つ、有耶無耶なままになっているのではないか?
 そう、哉汰は思う。
この記事へのコメント
なんとwwwww
Posted by 青玉 at 2011年11月21日 00:28
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