■感想など■

2011年11月28日

【ボクキミ】5

■■【5】■■


 生活形態(普段の姿)は14歳で肉体が固定された、男子高校生の朋坂優也。

 戦闘形態(対ケガレ戦の姿)は24歳程度の超グラマラス女ウィッチのユウ。

 では、本来の年齢である24歳成人男性の朋坂優也はどこにいるのだろうか?

 哉汰は小さく息を吐くと気分を切り替えた。
 今はその疑問は置いておくべきだ。
 そう思ったのだ。
 様々な驚きの事実が次々と明かされて頭がパンクしそうだった。
「しかし……今までよくバレなかったな」
「まあ、予防策としてコレかけてるからね」
 優也はそう言って、顔からしたら結構大きめの黒縁眼鏡を外してみせた。
 眼鏡を外すと、色素の薄いさらさらの髪や色白の肌と相まって、ちょっと男の子っぽい女の子に見える。
 女の子っぽい男の子……ではない。
 男3割、女7割って感じだった。
「……眼鏡?」
「うん。ボク達はこれを『識力偏向眼鏡(プリズム・グラス)』……って、呼んでる」
「……プリズム眼鏡とどこが違うんだ?」
「???……それは知らないけど、この『識力偏向眼鏡(プリズム・グラス)』は、人の認識を逸らせる、魔法具(マジック・アイテム)なんだよ」
「姿を消すとか、そういう?」
「消すっていうか……認識させないようにするの」
「同じだろ?」
「うーん……見えてる事は見えてるんだけど、人為的に特別なものとして認識させないから、“見落とさせる”んだよ」
「わかんねー」
「例えばね……そうだなぁ……ボクが空から下りたあの路地裏。あそこへ入る入り口に、薬屋さんがあるでしょ? その店先には、販売用のポップがあったんだけど、それが何のポップだったか覚えてる?」
「なんだよ急に」
「いいから答えてよカナちゃん」
「カナちゃん言うな。……いや、意識して見てないから、そんなもん覚えて…………あっ」
「そういうこと。人間って、実際に目から入る情報は膨大だけど、その中から認識したもの以外は、ほとんど脳の記憶野に残らないものなんだ。当然だよね。見たもの全部覚えてたら、脳がパンクしちゃうもの。つまりこの眼鏡は、これをかけている人間……この場合はボクを、見る人の認識外に、しかも強制的にしてしまう眼鏡なんだ」
「強制的?」
 哉汰がそう言うと、優也はにこっと笑って眼鏡をかけ直した。
「見えていたものを、強引に見えなくするには、ある程度の強制力が必要なんだよ」
「そういうもんか」
 実に便利な道具があったものだ。
 これがあれば女子の着替えとか銭湯の女湯とか入り放題ではないか。
 もちろん、思ったとしても哉汰はそんなこと、一言も口には出さなかったが。
『そういえば、ドラえもんにもそういうアイテムがあったな……確か“石ころ帽子”とかいうやつじゃなかったっけか?』
 被るとどんな事があっも「人に気にされなくなる」帽子……だったはずだ。
「けど、俺はお前が見えてるぞ? 学校の奴等だって、お前が見えてないわけじゃないだろ」
「そりゃそうだよ。かけてるだけで見えなくなるなら、何も隠れる必要ないもの。それにかけた瞬間から消えるってわけじゃないんだよ?」
「そうか」
「これでもそれなりに魔力を消費するから、ここぞという時にしか発動させられないんだ」
「発動……今も魔法使ってるのか?」
「? ……ううん?」
「使ってみてくれないか?」
「今? ……いいけど……面白いものじゃないよ?」
「いいから」
 哉汰が強く促すと、優也は不承不承頷いた。
 目を瞑り、右手で眼鏡の蔓(つる)をちょっと触る。
「はい」
「……え? 今、魔法使った?」
「うん」
「…………何も起こらないじゃないか」
「だから面白くないって言ったじゃない」
 優也は、その細い眉を下げて苦笑した。
 嘘を言ってるわけではないのだろうが、まだまだ言っていない事も多そうだ。
「漫画とかアニメみたいに、こう、ぶわぁと光る魔法陣とか出ないのか?」
「魔法陣?」
 諦めの悪い哉汰の言葉に、優也は目をぱちくりとさせて唇を突き出した。
 そうすると、子供っぽい顔付きがさらに幼くなる。
「丸くてさ、中にこう、円に沿って図形とか記号とかが並んでる……」
「あー……あれ? あれは、ボク達ウィッチの間では『術式展開輪環(サーキット・サークル)』って言われてるよ」
「サーキット・サークル?」
「うん。でも昔はともかく、今はどのウィッチもサーキット・サークルは、むやみに展開したりなんかしないよ? 大事な法式図や文字を読まれたら、相手から簡単に無効化(キャンセル)とかされちゃうし」
「キャンセル……そういうもんなのか?」
 魔法無効化。
 『ドラクエ』の呪文、「マホステ」みたいなものだろうか。
 哉汰はぼんやりとそう思った。
「母さんとか同じウィッチの人とかにも聞いたんだけど……」
「うん?」
「昔はそれでも、敵の知能はもっと下等……っていうか動物的で、法式図を読まれる心配なんか無かったみたい。だから大っぴらに展開してても全然問題無かったんだけど……例の『ホリーの反乱(7月のホリー)』以降は、サーキット・サークルを解読して瞬時に無効化するような敵がいっぱい出てきたから」
「じゃあ、ウィッチはどうやって魔法を使うんだよ?」
「うーん…………強く思う……かな?」
「考えるだけで魔法が使えるってことか? 呪文とか無し?」
「そんなに簡単じゃないけど……まあ、そんなようなものって思ってもらって構わない……かな」
「へぇ……」
 世に溢れる物語だと、魔法と名の付くものはほとんど全て、長い詠唱があったり、手印を刻んだり、呪文名を叫んだりというのが普通だから、強く念じるだけというのは、哉汰にしては拍子抜けの感は否めなかった。
 なんとなく“超能力と変わらないんじゃないか?”と思えてくるのだ。それではどうにも「魔法」としてのありがたみと言うか、ロマンが無い。
「サーキット・サークルを展開する理由は、主に魔力回路の構築なんだけど、本来なら魔力回路は誰にでも備わっているもので、ウィッチじゃない人間も、自覚しないまま、日々体内で魔力を煉(ね)っているものなんだって」
「魔力を……煉る?」
「うん」
 哉汰の頭に、粘土を捏ねているイメージが浮かんだが、もちろん魔力は手に掴めるものではないから、そんな感じではないのだろう。
「でね……今、ボクを含めてウィッチって呼ばれている人達は、魔力回路を術式に展開して、効率良く、かつ効果的に魔力を使えるように特化した人達なんだ」
「良くわからんが……一般人と、特殊訓練を受けて肉体が最適化した兵士との違いみたいなもんか?」
「どちらかというと、一般人と改造超人との違いに近いかな?」
「……わかったようなわからんような……」
「うん、まあ、とりあえず最後まで聞いてみて。……それでね、ウィッチは例外無く、魔力を活動限界点まで放出した後は必要最低限を残してすっかり枯渇した状態になるから、どうしても魔力の迅速な補給か回復が必須になるんだ」
「で、それが何で、お前の場合はキスになるんだ?」
「……ええと……これはボクも母さんに聞いただけだからよくわかってないんだけど……ウィッチのサーキット・サークルは全身の神経網の伝達物質によって固有の魔力展開がされているんだって。神経網そのものが魔力回路って言うか……ん〜と……『神経に魔力が宿ってる』って言ってもいいかもね。そこが一般人との大きな違い。だからウィッチの魔力吸収には、実は神経細胞が密集している感覚受容体が数多く集中している部分との接触が、最も適しているんだ」
「感覚受容体?」
「人間の五感、触覚・視覚・聴覚・嗅覚・味覚を司る器官が密集した部分。つまり肌・目・耳・鼻・舌が一箇所に集まってる……」
「頭?」
「そう。その中でも接触に対して痛みを伴わない感覚受容体……口腔内の感覚器官同士の接触による魔力補給が最も効率が良くて、そして魔力のロスが少ないんだって」
「だから……キスか」
「うん。これは何もボクに限ったことじゃないくて、その、ウィッチは必ず一人のパートナーを必要とするけど、そのパートナーが異性である事が多いのは、そういう理由もあるんだ」
「へえ……そういう理由『も』、ってことは、他にもあるのか?」
「うん…………」
 そう言ったきり、優也は口ごもって哉汰から視線を外し、自分の膝を見詰めた。
この記事へのコメント
先頭の女湯……

粘膜接触エロい!
Posted by 青玉 at 2011年11月28日 00:48
>先頭の女湯……
 修正しました。

 粘膜は、エロいですよね!
Posted by 推力 at 2011年12月03日 11:14
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/49526426

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★