■感想など■

2011年12月05日

【ボクキミ】6

■■【6】■■

「なんだよ歯切れ悪いな」
「ええと……」
「言えよ。いいから」
「……その……キスによる魔力補給には、『激烈なる快美感(オルガスムス)』が伴うんだって」
「は?」
「だから、その、キスすると、その、えっちしたときみたいなものすごくきもちいいかんじになるんだって」
「……棒読みすぎんぞオマエ」
「だ、だってボクまだそんなの経験したことないもんっ! カナちゃんもでしょ!?」
「カナちゃん言うな」
 顔を真っ赤にしながら抗議する優也に、だが哉汰は賛同する事が出来なかった。
 なぜなら、さっきの路地裏でのキス。
 あれはちょっと触れただけなのに、なんかすげー気持ちよかったのだから。
「そ、それにパートナーが異性な事が多いのにはもう一つ大きい理由があって……」
「あ〜〜……なんかもう、何聞いても驚かねぇ」
「神経細胞が密集している感覚受容体が、数多く集中している部分……って、顔だけじゃないでしょ?」
 言いにくそうに顔を真っ赤にしたまま、優也はちらちらと上目遣いに哉汰を見た。
「……あぁ?」
「その、あの、頭とは反対の……その……か、下半身とか」
「あ〜〜〜〜……」
 これは哉汰にもなんとなくわかった。

 ──性器の事を言っているのだ……と。

 下半身において、神経細胞が密集している感覚受容体が数多く集中している部分との接触……いわゆる「性器同士の接触」とは、
「……格好もエロけりゃ、やることもエロいんだなウィッチってのは!」
 つまりは、セックスするということなのだろう。
「ご、誤解だよぅ!」
 だが、あながち誤解でもないのは、その後聞いた優也の説明で哉汰にも良くわかった。
 曰く、

 魔力補給は回数を重ねれば重ねるほどオルガスムスの深度も深くなり、補給される魔力も多くなる。それは、魔力回路の適合性が最適化され補強強化されるからだ。
 そのため愛情を確かめるセックスを、そのまま魔力補給と重ねてしまうペアも数多く存在するらしい。
 また、そしてキスの場合はその接触の長さと補給される魔力の量は比例するが、セックスの場合はたった1度でキス数回分の魔力が補給されるのだという。
 その上、女性のウィッチにおいては、男性パートナーとキスしながら膣内に射精される事で、膨大な魔力流入が行われて十分以上の魔力が補填されるうえに、その質も極めて良質であるらしい。
 だからこそ、ウィッチのパートナーは異性が選ばれるのである。

 ──ということらしい。
 昔から魔女の行うサバトなど、悪魔学の論書ではサタンとの性交や乱交などが行われているとされていたが、中には本当に良質な魔力補給のためにパートナーと積極的にセックスを繰り返すウィッチもいたわけだ。
 ……というか、昔はきっとそれこそが主流だったのだろう。
『キスしながらの膣内射精(なかだし)で、膨大な魔力補填……って、エロ過ぎだバカヤロウ』
 考えただけで熱が出てきそうだ。
「ひょっとして、おばさんのパートナーって、やっぱりおじさんなのか?」
「……父さんに決まってるでしょ」
「じゃあオマエって、おばさん達の魔力補給で出来た子?」
「!? ……知らないよそんなの!」
 さすがに顔を赤くして、優也はぷんすかと怒ってみせた。
「だ、だいたい、魔力に質なんかあるのかよ」
「あるよ。……って、母さんが言ってたし、ボクもそう思う。だから、ボクは出来ればカナちゃんにパートナーになって欲しいんだ」
「パートナー……」
「も、もちろん、その、キスだけだよ?」
「当たり前だ馬鹿」
 例えばパートナーからウィッチに対して行われる魔力供給に際しては、その親和性が重要視される。そのためパートナーには、信頼し、一定以上の愛情を感じている相手を選ばれるのだという。
 高い親和性の元に交わされる信頼と愛情のこもったキスは、魔力回路への浸透性も高いらしいのだ。
 ……と、優也に聞いて、
「愛情……」
 哉汰はなんとも言えないような表情で優也を見た。
「あっあっあっ、ち、ちがうよ! 愛情って言っても、それは友情とか、そういうので……」
「わかってるって」
 真っ赤な顔で懸命に否定する優也に、哉汰は小さく息を吐いて笑ってみせた。

§         §         §


「まあ、事情はわかった」
「じゃ、じゃあ」
「パートナーにでもなんでもなってやるよ」
「カナちゃん……」
「カナちゃん言うな。……で? さっきみたいにキスするだけでいいのか?」
 哉汰は椅子から立ち上がって、ベッドに座る優也を見た。
 セックスしろと言われたら困るが、ちょっとキスするだけならなんとかなる。親友が困って頼ってきたのに、それに応えないなんてのは男がすたるというものだ。
 それに、見ず知らずの男とキスしろと言われた訳ではないのだ。
 顔も女の子っぽい優也なら、出来なくもない。
 そう哉汰は思ったのだが、
「ちょ、ちょっと待って。その、この姿の時にキスしても、あんまり意味はないと思うし、それにカナちゃんの身体には、まだボクの身体とリンクする魔力回路が形成されてないから」
「どういうことだ?」
 顔の前で両手をぱたぱたと振って逃げ腰になった優也に、哉汰は訝しげに眉根を寄せた。
「……ていうか、カナちゃんって……もういいや」
「あ、うん……えっと……TVとビデオとか、パソコンと外付けのハードディスクとか、機械と機械を繋ごうとする時に、プラグにはそれぞれの規格があるじゃない?」
「ふむ」
 なんとなくわかる。
「もっとわかりやすく言うと、単三電池を単一電池みたいに使うにはアダプターを使ったりするでしょ?」
「そうなのか?」
 余計にわからなくなった。
「うん。ええと……」
「まあ、つまりは俺の体の中に、お前の身体に合うように魔力変換器を造る……って考えとけばいいのか」
 腕を組んで困ったように唸り始めた優也に、哉汰は椅子へと座り直してそう言った。言ってから、自分の言った「魔力変換器」の言葉の響きになんとなく納得してしまう。
 なるほど、改造超人か。
「うん、そうそう! でね、それには施術(しじゅつ)が必要で」
「手術!?」
「あ、違う違う。しじゅつ。術を施すって書く方。でね、それにはボクの身体の一部を体内に取り入れて欲しいんだ」
「へ? ……お前、虫も殺さないような顔して、おっそろしいこと言うなあ」
「…………なんとなくカナちゃんの考えたことわかるよ」
「違うのか!?」
「違うよ! そうじゃなくてね、身体の一部って言っても、何もボクの肉を食べるとかじゃなくて、ちょっと血を嘗めるだけでいいんだけど」
「お、おどかすな!」
 まさしく優也の言うように、皮膚の一部とか指とか、そういう類のものを食べなくてはいけないかと思っていた哉汰はホッと息を吐いた。
「でも、さっきはキスで元に戻ったぞ?」
「あれは緊急だったから。本来受け取れるだけの魔力の、十分の一も無かったんだよ。言ってみれば、パイプを通して水を注ぐのに、パイプが細くて水のほとんどがこぼれちゃった状態っていうか……」
「ふーん……。ところで、お前に提供する魔力って、提供したことで俺の中から失くなったり減ったりしないのか?」
「うーんと……自分では気付いて無いかもしれないけど、カナちゃんの中に在る魔力はとても濃度が高くて、その上純度も桁違いに高いんだ。これは実際にカナちゃんの魔力を取り込んだボクにしかわからない感覚かもしれないけど……カナちゃん、前世はひょっとすると魔神か魔王クラスのウィッチだったんじゃない?」
 知るか馬鹿。
 哉汰は優也の言葉に苦笑し、
「濃くて純度が高いって……例えばどういう感じなんだ?」
「ええとね、例えば普通の人がアルコール度数4%のビールだとしたら、カナちゃんのは43%のウィスキー……いや、ひょっとしたらそれ以上かも」
「聞いただけで酔っ払いそうだな」
「例えだから。でもだからこそカナちゃんがパートナーになってくれたらいいなぁって思ったんだよ」
 実際に飲酒しているかどうかは別にして、例えがアルコールとは、さすが自称24歳。
 思わず哉汰はそう思ったが、目の前の童顔と24歳という年齢の組み合わせには、まだまだどうしようもない違和感があった。
「でも、そうだね。“魔力酔い”って言葉もあって、急に大量の魔力を補給したら、魔力回路がオーバーロードして自律神経系に影響が出るらしいんだ。判断力、運動能力、記憶力、そして何より理性や自制心が低下して酩酊状態に近くなるし、伴うオルガスムスもものすごくて危険だから、その辺は十分気をつけないといけないらしいし」
「おいおい。俺の魔力は濃い上に純度が高いんだろ? 大丈夫なのか?」
「大丈夫。キス程度なら問題無いと思うよ。もちろん、セックスとかしちゃったら……べ……つ、だ、けど……」
「…………」
「…………」
「…………」
 みるみる優也の顔が真っ赤に染まり、そわそわと視線を彷徨わせた。
 ……何を想像してしまったのか一目瞭然だった。
「……と、とにかく、安心していいから!」
「めちゃくちゃ不安だわっ!」

 何はともあれ、この日、哉汰は優也の血を嘗めて霊的契約を結び、正式にウィッチとしての彼のパートナーとなった。
 これが哉汰と、ウィッチ・ユウとの、とんでもなく刺激的な日々の「はじまり」となるのだとは知らず……。
この記事へのコメント
ふむふむ
鬱にはならなそうでひと安心
Posted by 青玉 at 2011年12月05日 03:14
 あ〜……うん、まあ、はい。
 ごにょごにょ。
Posted by 推力 at 2011年12月19日 12:15
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