■感想など■

2012年07月21日

【ボクキミ】ユウ6

■■【6】■■

 11月2日、水曜日。

 朝から「彼」のメールが、優也のケータイで着信音を鳴らした。
 食事中だった。
 母が出掛ける前に作ってくれていた朝食を食べているところだった。
 数時間まえの哉汰のとのキスで、少しだけ食欲が戻ったのだ。
 大好きなスパニッシュオムレツとオレンジジュースとトーストだった。

 でも吐いた。

 着信音は、哉汰からではない。
 哉汰からのメールは、通常とは違うものが設定してあるからわかる。
 そして「彼」からのメール着信にも、通常とも哉汰用のものとも違う音が設定してある。
 だからわかった。
 聞いた瞬間、胃が痙攣を起こしたみたいになって嘔吐感が急激にこみ上げ、キッチンシンクに駆け寄ってブチ撒けた。

 全部吐いた。

 涙が出た。

 嘔吐した苦しみと、「彼」からの心理的苦痛、それに「またいいように遊ばれる」という恐怖からの涙だった。
 メールには「●●町六丁目▲▲番地305 谷 8:30 直行」とあった。直行とは、「彼」のアパートには寄らず、直接そこに向かえということか。
 ふざけている。
 人を何だと思っているのか。
 そう思ってすぐ「オモチャ」だと自嘲した。

 ──朝から。

 朝から、また、見知らぬ男に身を任せるのか。
 朝から、また、哉汰と違う男に弄ばれるのか。
 そして、また、キスで狂って精液を飲むのか。

 男の自分が、女になって男の精液を飲むのか。

 どうして朝なのだろう。
 せめて、哉汰の顔を見てからでもいいではないか。
 そう思っても、抗議も抵抗も出来ないのはわかっていた。
 時間は無かった。
 時計を見ると7:40を過ぎていた。
 指定された時間まで、あと1時間も無い。
 優也は出来るだけ心を落ち着かせると、自宅電話の受話器を取った。
 相手は高階先生だ。
 慎重に言葉を選び、“いつものように”「体調不良で欠席」すると伝えた。
 彼にはこれで「ウィッチとしての活動で登校出来ない」と伝わるはずだ。詳細は、通例通り後で報告すればいい。
 基本的にウィッチの活動には、長老会が定めた不文律以外には一切の制約はなく、ウルフとの関係は絶対の信頼と信用で成り立っている。ケガレの発現を感知する事は、どのような場合であっても例外無くウィッチだけが可能であり、そこに人命が関わっている以上、一分一秒が惜しまれることから、ウルフへの詳細な事前報告は義務とされていない。救急車や消防車などの特殊車両に、事前の出動申請やスケジュール報告が義務付けられていないのと似ている。そもそも高階への連絡にしても、社会的には学生に身を窶(やつ)している立場上、必要なことだと優也が感じているからに過ぎず、逆にいつも高階から
『いちいち報告する必要は無いぞ? 休みなら休みで、こっちで適当に誤魔化しておくからな』
 と言われる始末であった。
 そのため、今回も優也の報告に対して、高階の方から問いかけられる事も無かったのだった。

§         §         §


 自宅で変身し、朝の町並みを見下ろしながら●●町の六丁目▲▲番地を目指したユウは、降り立った場所に立つ三階立てアパートの305号室を見上げていた。
 時間は8時25分頃だろうか。
 時間ギリギリまで部屋を訪れないのはせめてもの抵抗だった。
 無駄だと思いながらも、そんなささやかな抵抗をしてみせるのが精一杯だったのだ。
 念のためケガレの気配を探るが、どこにも異常はない。妙な魔力結界も張られている様子はないし、周囲にも特に気になる点は無かった。
 玄関前に立ち、表札を確かめると、ユウは短く念じて「透過」の魔法を発動させた。
 手を伸ばし、ドアに指先を潜り込ませると、大きく一歩を踏み出す。
「すげ。マジでユウだ。ホンモノだよ」
 薄暗い部屋の中で、声がする。
 目がその明るさに慣れると、入り口からまっすぐ延びた廊下の先にリビングが見え、そこに男が一人座っていた。
「あ、あの……」
「こっち来いよ。早く!」
 乱暴の物言いをする男は、リビングのソファに下着姿で座っていた。上は黒のTシャツ、下は趣味の悪い柄物のトランクスだ。
 しかもトランクスの前はパンパンに張っており、もう既に男恨が勃起しているのがわかった。
 これからユウにする事を想像し、妄想し、いきり立って興奮しているのは明白だった。
「来いって言ってんだろッ!?」
 その様相にゾッとして躊躇したユウに、男の怒声が飛ぶ。
「は、はいっ!」
 ユウは、ウィッチである時も優也である時も、他人に怒鳴られる事に慣れていない。
 ウィッチの時はチョーカーの魔石によって普通の人々からは認識されないようになっているし、優也の時もプリズム・グラスによって任意に認識を逸らすことが出来るため、その手のトラブルとは縁が無いからだ。
 もそも日常生活で怒鳴る人種というのは、「ヤ」の方々か「キ」の方々、または学校の教師くらいなうえ、ウィッチの生活圏における日常生活は、ウルフによって警護されているのが常だから、自分に向けられる怒声に慣れろと言う方が無理というものだ。
「……ッ!?」
 男の怒声に引っ叩かれるようにして薄暗いリビングに足を踏み入れたユウは、息を呑んだ。
 カーテンが引かれて日の光が絞られた部屋の中、壁一面に、写真が所狭しと貼られていた。

 乳房。

 性器。

 尻。

 肛門。

 とろけて惚けた顔。

 ──それは、痴態だった。

 大きく引き延ばされた、赤色と桃色と肌色が踊る淫猥な写真の数々。
 ユウが「彼」に、そして今までの男達に見せた、だが決して自ら望んだわけではない、淫らな恥ずべき痴態の数々だった。
「あっ!」
 真っ青な顔で呆然と立ち竦むユウの腕を、ソファから男が身を起こして掴み、強引に引き寄せる。
「ぐずぐずすんなよ。時間ねーんだからよ」
「ま、待って」
「うるせえ」
 身じろぎして、掴んだ手を振り払おうとしたユウを、背後から男が抱き竦めた。
「いやっ!」
「黙れよ」
「い……」
 強引に顔を向けさせられ、顎を掴まれ、唇を奪われた。ヤニ臭い匂いと変な味の唾液が口腔内に流し込まれて、思わず吐きそうになる。
 ゾリゾリとした無精髭が頬に痛い。左手で両腕ごと動きを封じるように胴体を抱かれ、右手でビスチェを引き下ろされて、重たくて巨大なおっぱいが大きく跳ねた。
「やあぅっ──」
 悲鳴を上げかけて口を開いたのを見計らったかのように、男の熱くて太い舌が“ぬるり”と侵入して口の中を嘗め回した。


 ──それで、終わりだった。


 後はもう、これまでと同じだ。
 くちゃくちゃとした水音の響く中、すぐに頭が真っ白になり、何も考えられなくなった。
 耳を、頬を、唇を、首筋を、胸元を、おっぱいを、乳首を、所かまわず男の舌が這い回り、たっぷりとした重量の椰子の実みたいなおっぱいをめちゃくちゃに揉みしだかれ、意識が跳んだ。
 ショートした。
 夢現(ゆめうつつ)の狭間を漂うような、ふあふあとした現実感の乏しい中、ものすごい匂いの、白っぽくてにちゃにちゃした恥垢を丁寧に嘗め取り、嚥下(えんか)し、熱くてゴリゴリとした逞しい男恨をしゃぶっていた。

 美味しかった。

 うれしかった。

 幸せ…だった。

 こうしているのが、たまらなく幸福に思えた。
 ソファの上で肉幹をしゃぶりながら、男にパンツを脱がされた。ぼんやりとした中で「何をするのだろう?」と言葉にならない疑問が頭に浮かんだ途端、あそこを“ぬるっ”としたものが撫でた。

 “ぴちゃぴちゃ”と猫がミルクを飲む時みたいな音がした。

 “じゅるるるる”と汁物を啜り飲んだ時みたいな音がした。

「ぁあはぁ〜〜……」
 耐えきれずに声が熱のこもった吐息と共に漏れた。
 あそこを、嘗められている。
 そう知覚したら“ぞくぞくぞくぞく…”と腰から背筋を通り首筋まで震えが駆け上って涙が滲んだ。
 本当なら抵抗すべきだったのかもしれない。
 今までキスやおっぱいへの愛撫は許してしまったが、あそこへの手出しは意識があるうちはさせなかったという気持ちがあったから。
 でも男の指があそこを押し広げて、膣口を舌先でちろちろ嬲り、突付き、挿し込んで遊ぶと、抵抗する気持ちなんかどこかに行ってしまった。
 粗野で粗暴と思っていた男の舌が、言動よりもっとずっと繊細で優しかったから……なのかもしれない。
「はんっ……ぁんっ……ふあっ……」
 声が唇を割って、後から後から漏れた。
 膣口も陰唇の襞の隙間も、包皮に隠れるようにして埋もれたクリトリスも、後ろの蕾の皺の一つ一つさえ、男の舌は執拗になぞって“くれた”。

 あそこを直接触られるのが、こんなにも気持ち良かったなんて。

 自然と腰が動き、ひくつき、膣と子宮とおっぱいと乳首が“きゅんきゅん”と切なく啼いた。
 男が嘗めても嘗めても“とろとろ”“じゅくじゅく”と膣液は溢れ、もっともっと、はやくはやくとオンナの本能が叫んだ。

 ──はやく?

 何を?
 そう思う間もなく、何かが陰唇を巻き込みながら“ずにゅう”と膣孔へと侵入してきた。
 たっぷりと濡れて、ほぐれて、充血して広がった膣は、それを“ずぶずぶ”と飲み込んでは“きゅうきゅう”と締め付ける。
『あ……ゆび……』
 入ってきたのは男の指だ。
 括約筋に力を込めて膣口を“きゅ”と締めると、それが良くわかった。
 節だってて、関節があって、膣内(なか)で動いている。
『ゆび……入れられちゃった……』
 「彼」にしか、入れられていないのに。
 まだ哉汰には触られてさえいないのに。
 昨日の哉汰の無邪気な寝顔が脳裏に浮かび、胸がズキンと痛んだ。
「うめぇ……うめぇなお前のマン汁」
 男はぬるぬるした膣液を掻き出すかのように、執拗に指の出し入れを繰り返し、とろりとこぼれ出たそれを“じゅるじゅる”と野卑に啜っては喉を鳴らして飲んだ。
「いや……いやぁ……」
「何が『いやぁ』だよ。こんなに尻をくねくね振りやがって。もっともっとして欲しいって押しつけてきやがるくせによ。窒息しちまうぜ」
「ちがっ……あぁああ〜〜……」
 指で広げた陰唇の中を“べろべろ”と嘗め回され、ぽってりと充血した肉厚な大陰唇を“にゅるにゅる”“はむはむ”と唇で甘く噛まれ、挙げ句は膣腔を太い指で蹂躙されながら尖らせた舌でクリトリスを突付き回された。
 事実、男が言う通り、ユウのその豊かでヴォリュームたっぷりの尻は発情した犬のように振られ、男の口に性器を押し付けるような動きを見せていたのだ。

 無意識に。

 自覚の無いままに。

 体が求めるままに。

 それを男はわざと声高に指摘する事で、ユウの羞恥を煽っていた。
 男は知っているのだ。
 背徳と羞恥は、快楽という素材に対する最大最高の美味なるソースであることを。
 男の男根をゆるく握ったまま意識が朦朧としたユウは、再びソファの上に転がされ、気が付いた時には男に馬乗りにされていて、その超重量級の巨大おっぱいで男の肉茎を挟んでいた。
 両手で、両側から痛いくらいにキツくおっぱいをサンドイッチされ、“ずにゅっずにゅっ”と粘液まみれの男根が“おっぱいの中”を前後する。
 やっぱりパイズリか。
 もう、そんな感慨しか浮かばない。
 おっぱいを男の好き勝手になぶられ、遊ばれ、使われる事に慣れてしまったオンナの、どこか乾いた達観が思わせたものだった。

§         §         §


 結局、男はおっぱいで1回、フェラで1回ずつ射精し、ユウはそのどちらも精液を口内に注がれて全て飲み下した。
 昨日と同じだった。
 口内の精液を味わいながら嚥下(えんか)した時、超絶的なオルガスムスに意識が飛んだ。
 目の前で火花が何度も何度も散り、一瞬で脳が焼き切れたような強烈な閃光のイメージに満たされ、痙攣のような震えと共に体が硬直し、弛緩した。
 乳首は痛いくらいに勃起し、尖り、下腹部では子宮が“きゅんきゅん”と切なく啼いて、膣がバルーン現象を起こして大量の膣液が溢れて垂れた。

 激烈な快美感。

 強烈な満足感。

 そして多幸感。

 キスと乳吸いだけでは得られない、魂を蕩かす劇薬のような感覚。
 こんなのを何度も感じていたら、そのうちにコレ無しではいられなくなるかもしれない。
 そんな恐れがユウの心を襲ったのも事実だった。
 だが、それを恐れの中で自覚したからといって、それで自分から止められるかといえば、決してそうはいかないのが今のユウなのだ。

 コトが終わった後、ユウが意識混濁で朦朧としているうちに、その終了を「彼」に知らせる。
 そんな風な取り決めが、事前にされているのかもしれない。
 ユウが意識を取り戻し、気だるげにソファから身を起こすと、男はケータイでメールを送信し終わったところだった。
「気が付いたか。マジで気ぃ失くすのな」
 汗と精液と唾液でべとべとするおっぱいを、ユウは両手で男の視線から隠すようにして抱いた。男はそんなユウの後ろに回り、面倒臭そうに髪をかき上げて、短く「ルーン(魔術的な韻を踏んだ、魔術言語)」を唱えた。
 その時になって初めて、ユウは首に、あの真っ赤なチョーカーが巻かれていた事に気付いたのだった。

 ──また、撮影されたのだろうか。

 そう思い気が滅入るが、チョーカーを外している男に、それは聞けなかった。聞いて、もしそうだったとしても男が撮影データを削除してくれる保障も無いし、それどころか逆上してもっとひどい事をされたりしたら、それこそ余計な事を言っただけになってしまうからだ。
 チョーカーを外すと、一通り射精してしまえば用は無いとばかりに、男は裸に剥かれたユウを置いて浴室に行ってしまった。
 シャワーでも浴びるつもりなのかもしれない。
 一方、ユウはといえば、変身を解いてさえしまえば、汗や唾液や体液などに濡れた肌も、おっぱいや首筋に付けられた内出血──キスマークも、荒っぽく執拗に蹂躙された膣粘膜の痛みも、まつわりついた匂いさえもリセットして消えてしまうのだから、シャワーを浴びるどころか、疵の治療の必要さえ無かった。
 若干疲労感は残るものの、それでさえ男達から得た魔力で回復する事が出来たからだ。
 そう。

 男達からは、魔力が得られるのだ。

 もちろん、哉汰から得るような莫大で濃厚で純粋な、「純魔力」とでも言うべき上質のものではないが、少なくとも変身やちょっとした簡易魔法で消費した魔力を、補って十分な量であった。
 巨大な椰子の実乳房を“ゆらゆら”と重たげに揺らしながら、ユウはふらつきつつもソファから立ち上がる。
 脱がされたり、精液をかけられたコスチュームは、一旦消してから再び纏った。
 優也に戻る(リセットする)わけではないから濡れた肌も内出血も匂いもそのままだが、少なくとも着衣だけはちゃんとした事になる。
 こういう時、魔法は便利だ。
 そう思ってから、ユウは泣いているような、笑っているような、様々な感情が入り交じった表情で顔を歪めた。
 自分が何を思って「便利」としたのか思い至り、どんな顔をしていいのかわからなくなったからだった。

§         §         §


 男の部屋を出て、人影の無い場所で変身を解き、一旦優也の姿に戻ってから再び変身する。
 優也の姿となってケータイが物質化(そもそも、ウィッチに変身している間の服や所持品がどうなっているのか、どこに存在しているのか、優也自身も実は知らないのだが)すると、既に次の場所を記したメールが着信しており、ユウに変身して指示された場所に向かう。
 そして再び男のおもちゃになり、キスされ、受け入れる受け入れないの是非もなく男恨を咥え、精液を飲んだり、顔やおっぱいや服にかけられたりする。
 一人目の男がした事で、それに対する抵抗がユウの中で無くなったのか、“どうせ抵抗しても無駄だし、そもそもキスされてしまえば前後不覚になって何でもされ放題なのだから”という諦めが心に汚泥のように溜まったからなのか、男達は容易くユウのあそこを当然のように触り、指を入れ、嘗め、啜った。

 【仕方ない】

 そんな、諦めと達観で創られた言葉を胸に、それを2回も繰り返せば、後はもうほとんど作業に近かった。
 3人目の男の部屋から出て、人気の無い路地裏で変身を解いた優也は、ケータイが再び新たなメールを受信している事に気付いて溜息を吐いた。

 ──これで、4人目だ。

 朝からのメールを、凍ったような冷たい目で見る優也に、哉汰に見せるような、いつものあの“ほにゃほにゃ”とした笑みは無い。

「●●町六丁目▲▲番地305 谷 8:30 直行」

「二丁目九番地2 高坂 11:00 直行」

「4─3─4ー8 木崎 1330 直」

「★★★町1─7─3大屋1530直」

 指示メールは、段々短く、まるで暗号のような文字の羅列になっていった。
 会ったのは、年齢も職業も住んでる場所もバラバラで、一見接点など無いような男達。
 昨日と一昨日の2人を合わせても、共通するのは、
 「彼」の知人(または客?)であるということ、
 ウィッチ・ユウを知っているということ、
 ユウのおっぱいに執着する巨乳・爆乳フェチだということ、
 あの真っ赤なチョーカーを所持していたうえに「ルーン」を唱えたこと、
 その4点だけ。
 幸い、ウィッチ・ユウの正体が一人の少年であることも、パートナーの存在を知る者も、まだ一人もいないようだった。
 「彼」と、最初の5人以外は。
 そういう意味では、「彼」は約束を守ってくれている、ということになるのだろうか。
 ユウは誰も通らない、薄暗い路地裏で小さく溜息を吐くと、「彼」とは別のフォルダに振り分けてあるメールを開いた。
 それは昨日から何通もサーバに届いていた、哉汰からのメールだ。
 そこには優也を心配する彼の、親友を心から心配する彼の、あたたかく真摯な想いがあった。
「カナちゃん……」
 凍り付いた目が揺らぐ。
 涙がこぼれそうになって、優也は服の袖で拭った。
 制服に着替える事無く家からそのまま出たので、服は私服のままだった。変身する前に着ていたダッフルコートのポケットから、見つめ合うユウと哉汰の写真を取りだし、大きく息を吸った。

 大丈夫。

 大丈夫。

 自分に言い聞かせる。
 どんなに穢されてもリセット出来るこの体だ。
 この体さえ自由にさせておけば、少なくともその間は哉汰の安全が保障される。
 ならば、「彼」の言うことを聞きながら、「彼」に従う「フリ」をしながら、打開策を見つける事は可能だろう。
 母には相談出来ない。
 ウルフにも、もちろん当の哉汰にも相談出来ない。
 これは自分だけが、自分一人だけが出来る──いや、自分が原因で引き起こした、自分にしか出来ない戦いだ。
 時計を見ると、時刻は15時15分を過ぎていた。
 あと少ししたら、4人目の男の所に向かわなければいけない。
 優也はケータイのメーラーを立ち上げ、2人目に向かう時から少しずつ書き綴っていたメールを開いた。
 2人目の男にキスされながら、3人めの男におっぱいを愛撫されながら、意識が少しでもあるうちにずっと考えていた内容を、推敲し、書き足してゆく。
 そこには「ケータイが壊れてずっと連絡手段が無かったこと」「場所は言えないが本土から離れた離島の街で大規模なケガレ発生が確認されて、その応援に駆り出されていたこと」「今日ようやく本土に帰ってきて、ウルフの支部でPCを借りて発信したこと」「魔力は2日間の待機で回復して、今はちゃんと優也に戻れていること」などを、細心の注意を払いながら綴った。
 そして最後には、「今からすぐ支部を出るから、このメールに返信しても読めない」「電話も出来ないが心配しないで欲しい」「もし急用があったら、いつものアドレスにメールして欲しい」と書いて締めくくった。
 それを、ウィッチの活動で利用している、ウルフの息のかかったプロバイダのメールサービスに送信する。
 そのサービスは、登録指定したアドレスに、指定した時刻に予(あらかじ)めアップロードしておいたメールを配信してくれるものだった。
 配信元はわからないようになっているし、ヘッダも巧妙に偽装しているから、身元を知られたくない相手にメールを送るのに、ウィッチは使用している。優也も何度か利用したことがあるが、まさか哉汰に対して利用する事になるとは思わなかった。
 配信時刻は、学校のホームルームが終わった頃に設定した。
 その時間には、優也はユウとして4人目の男に体を与えている真っ最中だろう。
 メールを送信し終わった優也は、周囲に人影や視線が無いことを確認して再びユウへと変身した。

 綺麗な体。

 真新しく汚れ一つ無いコスチューム。

 でも、心はどこか薄く汚れたような、気持ち悪さに覆われていた。
 巨大なおっぱいの前で、両手の指を絡ませて祈るように目を閉じた。

 大丈夫。

 大丈夫。

 そう、自分に言い聞かせる。
 この日、もう何度目かも忘れしまった言葉を再び繰り返す。
 数時間前の哉汰の寝顔に、誓う。
「大丈夫。カナちゃんは、ボクが護るから」


 そしてユウは、結局この日、6人の男を相手にした──。

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