■感想など■

2012年08月04日

【ボクキミ】ユウ8

■■【8】■■


 毎日、股を開いた。

 毎日だった。
 たまに開かない時もあったが、キスはした。
 必ずした。
 嫌だと思っても、いつも強引にされた。
 フェラチオもした。
 おっぱいも嘗められた。
 吸われた。
 しゃぶられた。
 揉まれた。
 噛まれた。
 歯型もいっぱい付けられた。
 キスマークはもっとだった。
 あそこも弄られた。
 指を突っ込まれた。
 出し入れされた。
 嘗められた。
 吸われた。
 ほじくられた。
 太腿の内側を抓られた。
 そこにはキスマークもいっぱいにつけられた。

 毎日、だった。

 1日に何人もの男を相手にした日もあった。
 まるで、盛ってどんな相手とでも交わるメス犬のようだった。
 事実、ユウの体はここ数日のうちに、男達によってものすごい速さで開発されていった。
 「女の悦び」を刻まれ、男のモノをその胎内に受け入れ、悦びの声を上げ、うっとりと「女である(女でいることの)幸せ」を噛み締めた。
 キスするだけでスイッチが入り、ただおっぱいを吸ったりあそこを触って“もらったり”するだけでは、体が充足しなくなっていた。
 もっと強く。
 もっと刺激的に。
 もっと享楽的に。
 もっともっともっと。
 体がより強い快楽を求め、男を求め、男の精を、精子を膣奥で受け止める事を渇望しているのがわかった。
 このままでは自分から男に膣奥での射精を求めてしまう。
 「中出し」を要求してしまう。
 前後不覚になり意識が朦朧とした状態で、膣内に、子宮に、体の深奥に見知らぬ男の精液を受け止めたいと狂ってしまう。

 でも、最初は哉汰が良かった。

 「哉汰で」でも「哉汰なら」でもない。
 「哉汰が」良かった。
 もう、哉汰でないと駄目だと思った。
 男である優也としてのメンタリティではおかしいのかもしれないが、女であるユウとしてのメンタリティは確かにそれを求めていた。
 これから他の男の精子を子宮に注がれる事が避けられないのであれば、せめて最初は哉汰に「印」をつけて欲しいと思ったのだ。
 いや、理由付けなど、もうどうでも良かった。
 自分は、哉汰に抱かれたかった。
 哉汰に「女の悦び」を与えて欲しかった。
 哉汰に、望みを叶えてもらいたかったのだ。


 ──でも、叶わなかった。


 11月4日金曜日から10日の木曜日に至るまで、ユウは毎日、夜になると哉汰の部屋を訪れた。
 いつも「キス」と「乳吸い」はセットになっていて、月曜日の時点でキスは15回目、乳吸いは11回目にもなっていた。
 毎日哉汰と違う男に抱かれ、哉汰と違う男とキスし、哉汰と違うチンポをしゃぶり、哉汰のではない精液を飲んだその唇で哉汰とキスした。
 そして哉汰と違う男に吸われ、しゃぶられ、舐められた乳首を、恍惚の中で哉汰に吸わせていた。
 哉汰には決して気取られないように。
 哉汰には絶対に心配させないように。

 何食わぬ顔をして。

 いつもと何も変わらない笑顔で。

 彼を裏切っている罪悪感で心が引き裂かれ、だがそれと同時に、彼を欺いている背徳感で、性感が否応無しにも高まった。
 忌まわしくも甘い性感。
 体に残る穢れた快美感。
 心は嫌悪しているのに、体が求めている。
 心と体がどんどん剥離していく感覚の中、哉汰の元へと通う深夜だけが、ユウのせめてもの心の拠り所になっていた。
 毎日、夜中に哉汰の部屋を訪れ魔力供給を請う理由として「ケガレの活動が活発化し、それに伴ってウィッチの活動も頻発するようになったため」と説明したが、それも決して嘘ではなかった。「彼」の命令で男の元へと向かう途中で、何度もケガレを『函(パンドラ)』に閉じ込め、魔力を以て消散・自浄修復したことがあるのだ。もちろん、ウィッチは『函(パンドラ)』の形成も『濁怨(ケガレ)』の消散にも、莫大な魔力を必要とする。だがその魔力は、不本意にもユウを抱く男達が、意識しないまま不完全ながら魔力回路に溜め込んでいたもので急凌ぎとなっていた。
 魔力回路は、本来ならば誰にでも備わっているものであり、ウィッチではない人間も、自覚も無く日々体内で魔力を煉(ね)っているものだ。ユウは図らずも、その魔力を男達から受け取っていたというわけだ。でなければ、アンカー設置と『函(パンドラ)』の形成と維持、ケガレの消散によって魔力を消費し、元の姿に戻る事も出来なくなってしまうところだ。
 そうなれば「リセット」が不可能になり、哉汰の元へ訪れる事が出来なくなる。
 男達とのセックスの残滓(唾液や精液の匂いや、歯形やキスマークなどの内出血)を身に付けたままで彼の元へなど、行けるはずもないからだ。
 そうして哉汰の元を訪れ、キスをし、おっぱいを与え、彼が自分を求めてくれるのを待った。哉汰は、自分から求めて「はいわかりました」と言うような少年ではなかったから。
 それが如何に下劣で卑怯な行為であるかは承知していた。
 でもそれが自分の望みを叶える、最後の手段だと信じた。

 ──ユウの望み。

 毎日のように「彼」や男達に穢され、自由にされ、思うままに貪られるなかで、たった一つの心の支えとなっていったもの。
 それは、哉汰に抱かれること。
 哉汰に抱いてもらうこと。
 哉汰の精液を膣で受け止め、本当の意味において深いところで繋がって、魔力回路結合を強固で完璧なものにすること。

 それ一点に集約されていった。

§         §         §


 11月04日、金曜日。
 学校が終わってから、ウィッチ・ユウの姿で、見知らぬ男に抱かれた。
 全身にタトゥを入れた筋骨逞しい壮年男性だった。町外れにあるマンションの、男の部屋に入って、すぐだった。何時間抱かれ続けたのかわからない。男の精力はものすごく、気が付いた時には夜になっていた。
 短い休息を取り、「リセット」してから夜中に哉汰の所へ向かった。
 たっぷりとキスをして、おっぱいを吸ってもらった。
 これでキスは9回目。乳吸いは5回目だった。
 全然少ないと思った。
 他の男達とは、もうその数十倍はしていたから。
 もっともっとして欲しかった。でないと、最後に「彼」にする「奉仕」で、心まで上書きされてしまいそうで怖かった。

 11月05日、土曜日。
 午後からモデル姿で、一度に2人の男に抱かれた。
 いかにもな格好をした、頭の悪そうな中学生くらいの2人の少年が相手だった。こんな少年にもウィッチ・マニアがいるのかと驚いたが、会話を聞いていると、単に「大人の女を抱ける」と聞いただけの「彼」の「客」らしかった。二人には交代に人前を連れ歩かれ、暗がりに引き込まれては体を嬲られた。おっぱいを吸われ、嘗められ、噛まれて叩かれた。おっぱいをおもちゃにされ、それでも体が悦んでいることに絶望しながら歓喜した。気が狂いそうだった。ミニスカートの下にパンツを履く事は許されず、何度も人目を盗んでは捲り上げられて、二人交互にあそこの濡れ具合を確認された。壁に手を付き、お尻を手で分けられあそこを覗き込まれると、体の中身全てを確認されているようで恥ずかしかった。日が落ちると、廃屋になった木造家屋に連れ込まれ、交互に抱かれた。激しく、強く、そして執拗だった。大人のオンナのカラダへの興味と欲望を、散々叩き付けられた気がした。
 コトが終わると、夜に哉汰の所に行った。
 キスをして、おっぱいを吸ってもらった。
 これでキスは10回目。乳吸いは6回目だった。
 「彼」の所へ“戻った”のは夜中の2時だったが、「彼」は起きて待っていた。「奉仕」の間中、彼はユウの頭をまるでペットにするように撫で続け、いつしかユウのフェラチオには、自覚の無いまま、単に狂っただけではない「熱」のようなものがこもっていた。

 11月06日、日曜日。
 午前中から3人の男に、順番に抱かれた。
 1人目はウィッチ・ユウの姿。一見、真面目そうなサラリーマン風の青年で、上品なスーツを着こなしている男が相手だった。
 駅前のビジネスホテルの一室に呼ばれ、そこでその男に抱かれた後、すぐに次の指定場所に出掛けて2人目に抱かれた。
 2人目はモデル姿だった。人があまり来ない、公園の中だった。人影が無いとはいえ、昼中の、しかも屋外でセックスする事に抵抗が無かったわけではない。だが、不意打ちのようにキスされ、朦朧とした状態で雑木林に連れ込まれてはどうしようもなかった。自分の気が狂っているとしか思えなかった。精神的にどこか病んでしまったのではないかと冷静に観察している自分がいた。
 そして三人目はウィッチ・ユウの姿だった。
 学校の近くの一軒家だった。夜まで、精根尽きるまで好き勝手に激しく貪られたが、魔力はひどく充実していた。
 この日も夜に、哉汰の所に行った。
 そしてその後で「彼」の所へ“戻った”。
 この日は「奉仕」もそこそこに、初めて「彼」自身がユウの膣に男根を挿入“してくれた”日となった。
 正常位で、した。
 バックで、した。
 何度もオルガスムスに昇りつめ、何度も失神した。
 男達とは違った、何か特別とも思える不思議な快美感に戸惑ったが、そんなはずはないと心が拒否し、無理矢理その事実から目を逸らした。
 男達に体を嬲られ、哉汰に心を愛撫され、そして「彼」に体を「愛され」る日々が始まったことを、この日のユウはまだ気付いていなかった。

 11月07日、月曜日。
 学校帰りに哉汰と別れ、その後ですぐに変身して4人の男に抱かれた。
 最初の2人はモデル姿だった。1人目に駅の構内にある公衆便所の個室で抱かれた後、別の場所で待ち合わせた男の車に乗って、訪れる人も少ない寂れたパチンコ屋の駐車場で2人目に抱かれた。前日に公園で繋がったことを思えば、スモークのかかった車内でのセックスは、それほど抵抗を感じなくなっていた。
 そうやって1人ずつ抱かれたあと、最後に別の場所で、別の2人に、ウィッチ・ユウの姿で一度に抱かれた。
 隣町の工場の事務所だった。薄汚れた服を着た、現場作業員風体の中年の2人が相手だった。ねちっこく、執拗な愛撫に何度も気を失った。
 この日も、夜には哉汰の所に行った。
 これでキスは12回目。おっぱいは8回目だった。
 圧倒的に少ないが、それでも幸せだと思った。哉汰の頭を抱きながら、彼に知られないようにひっそりと泣いた。
 そして最後に「彼」に抱かれた。
 フェラチオの後、床に這いつくばって尻を掲げ、彼が打ち付ける肉の音にうっとりと耳を傾けた。
 「彼」はユウを抱いている間、ずっと「好きだ」「愛してる」と囁き続け、その言葉はユウの心に染み込んでオンナのメンタリティを冒す甘い毒となっていった。

 11月08日、火曜日。
 学校からの帰宅途中で変身し、立て続けに3人に抱かれた。
 3人共、モデル姿で会った。
 1人目はくたびれた中年で、会社のトイレに呼び出されてそこで抱かれた。トイレの個室で壁に手を付き、尻を抱かれながらめちゃめちゃに突かれた。気が遠くなるくらい気持ち良かった。
 2人目はその会社からさほど遠くない、マンションの踊り場だった。誰かに見られるかもしれない恐れで躊躇したが、尻を抱かれて抽挿(ちゅうそう)が始まれば、そんな想いはすぐに吹き飛んでしまった。
 3人目は「彼」にしては珍しく、場所と時間を正確に守るようにとの命令が追記されていた。駅西繁華街にあるビルの非常階段の踊り場で、浅黒い肌で体格の良い、チンピラ風の男が相手だった。吹き曝しの非常階段で、男にキスされ、おっぱいを揉まれながらフェラチオをし、パイズリした後で非常階段の手すりを掴まされ、左足を男に抱え上げられたまま貫かれた。体力のある若い男の精力に翻弄されながら、おっぱいを吸われ、ガンガンと下から貫かれ、涎が垂れるほど気持ち良かった。
 そして、この日も夜中に、哉汰の所へ行った。
 キスをして、おっぱいを吸われると、それだけで体中に瑞々しさが戻るような気がして元気が出た。
 また、頑張れると思った。
 まだ、大丈夫だと思った。
 その気分のまま「彼」の所に“帰り”、「彼」とたっぷりセックスした。そこには心の幸せは無かったが、肉の幸福が、確かに在った。
 でも、それを汚らわしいと感じる心の正常さが、どこかに置き忘れてしまったかのようにポッカリと無くなっていた。
 この日も「彼」は「好きだよ」と囁きながらユウの口内に射精し、「愛してる」と囁きながら陰茎を膣に挿入して激しく責めた。

 11月09日、水曜日。
 この日の相手は1人だった。
 昨日と同じ、駅西繁華街を指定された。
 時刻は夜だった。魔女っ子コスのいつもの格好で、どこかのアパートの一室で、逞しい体躯の男に体中を貪られた。こんなにもゆっくりと男に抱かれたのは久しぶりだった。たっぷりと乳房を与え、丁寧にパイズリで奉仕し、うっとりとした顔で脚を広げて、根本まで深々と男恨を受け入れた。男は4回も膣内で射精し、使用済みになったコンドームは4個にもなった。
 男とのセックスが終わると、哉汰にメールして夜中に会いに行った。
 そして、もうすっかり慣れた感じで「愛」を交わした。そういう自覚の無いままの、けれど他人が知ったらそうとしか思えないほど濃密で親密な友愛の発露としてのキスであり、乳吸いであった。
 そしてその後は“いつものように”「彼」の所に“帰って”、「彼」が求めるままにセックスした。キスをし、「好きだよ」と言われながらフェラチオをし、パイズリをし、寝転がった彼に跨って自分で「彼」の男根を膣で迎えた。「愛してる」と言われながら左手の指で自分の陰唇を開いて、右手の指で「彼」の陰茎を固定して腰を下ろしていく時、今までにない興奮を覚えて「彼」に指摘されるまで自分が笑っている事に気付かなかった。
 そして身を起こした彼にキスされながら両手で尻を掴まれ、ぐにぐにと揺すられたら意識が飛んだ。巨大なおっぱいが邪魔でとてもキスしにくかったが、無理ではなかった。キスしながらのセックスが、ユウを狂わせた。膣内で「彼」の剛直が膣壁を押し開いていく感覚に狂った。あそこが、男達に蹂躙されたあそこが、最後に「彼」によって適正化されるような気がした。膣が「彼」のカタチを覚えていくようで少し怖くなったが、この体位が「対面座位」というのだと「彼」に教えられて、何だかすごく嬉しくなった。
 こんな“気持ち良い”格好は、いつか哉汰とする時には絶対にしようと、そう思ったのだ。

 11月10日、木曜日。
 この日の相手も1人だった。
 場所も、一昨日と昨日と同じ、駅西繁華街を指定された。そして、時刻が夜なのも同じだった。
 ただ、外見はモデル姿を指定された。
 ユウはそこで、腹の出た中年に時間をかけてねちっこく抱かれた。
 まず最初に長い長いキスでとろとろにされ、首や胸元、おっぱいや腹まで嘗め回され、唾でべとべとにされた。特に両乳首はしつこく何分も強く吸われ続け、じんじんと痛いくらいだった。
 その後、男のたっての願いで陰毛を剃らせた。変身の際、外見を変える要領で、剃らなくても陰毛は無くせたのだが、剃る事も料金に入ってると男に言われたら“仕方なかった”。言う事を聞かなかったと「彼」に報告でもされたら、困るのはユウの方だったからだ。シェービングクリームと2枚刃の安全剃刀で、1本も残さないような執拗さで剃毛され、うつ伏せになって尻を男に向けて掲げた時はさすがに恥ずかしかったが、それもあそこを嘗められ、ほじくられ、指で広げられて、何度も何度も抜き差しを繰り返されたら、どうでも良くなった。
 男はそのまま尻を抱いた。そして尻から激しくムチャクチャに責められた。ガッシリと尻肉を鷲掴みにされ、男根が体の奥の子宮入り口をノックして揺らしまくると、ユウは声の出ない口をいっぱいに開いて喘ぐように啼いた。
 死ぬかと思った。
 そこからはあまり記憶が無い。何度も意識が飛んで気を失い、気を失っては男の行為の激しさに目覚める。その繰り返しだった。
 そんな男とのセックスは、ユウに自ら禁忌とした渇望を強くした。
 男達に、中で射精されたい。
 膣に中出しされたい。
 子宮に白く濁った子種液を注がれたい。
 そんな、自ら奈落に堕ちるような忌むべき願望を、夢見心地の中で思い描いた。
 相手は、もう哉汰でなくても、誰でも良いと思った。
 でも、男とのセックスが終わると、その考えにゾッとして震えた。
 哉汰以外は嫌だと思う気持ちがどんどん薄れていく。
 消えていく。
 それがユウに恐れを抱かせた。
 夜中に、哉汰にメールして会いに行った。いつまで経っても自分を求めてくれない哉汰に苛立ちさえ感じたが、彼の本当の気持ちは「ユメワタリ(夢渡り)」でいつでもユウに伝わっていた。自分との友情を大切にしてくれようとするあまりに、自分とのセックスを自分で禁忌としているのだと、わかっていた。
 でも今は、それがもどかしく、そして悲しく、苦しかった。
 このままでは哉汰ではない男の精液を膣に受け入れてしまう。
 膣の奥の子宮の奥に、哉汰ではない男の精子を入れてしまう。
 そしてそれを、自分は嬉々として受け入れてしまうだろうという、恐ろしい予感があった。
 哉汰の所から「彼」の所に“帰って”、ユウは「彼」が言い出す前に「彼」にキスし、「彼」のズボンを脱がせてモノを咥えた。どうせ抵抗しても無駄だし、嫌だと言っても抱かれるのはわかっているからだった。それでも、彼が終始ニヤニヤと笑っているのを見るのはユウを苛立たせた。
 だから自分から狂った。何もかもわからなくなるように自分から「彼」に体を開き、求められるままにセックスした。
 正常位で、した。
 バックで、した。
 対面座位で、した。
 「愛してる」と言われながら寝転がって、互いの性器を嘗めしゃぶって愛撫した。そうすると何もかも忘れられた。これは仕方のない事なのだ。そう思いながら精液を飲み干した。
 快楽に「溺れてしまった」という意識は、全く無かった。


 毎日、見知らぬ男達に抱かれ、おもちゃにされ、その合間に必要とあればケガレと闘い、消散・自浄修復させる。
 そして夜には哉汰の所にいそいそと出掛けて、彼とのキスと乳吸いで、今度は自分の体を浄化してもらう。
 その上で、一日の締めくくりとして「彼」に「愛」を囁かれながら抱かれる。

 ──「彼」に体を、“適正化”される。

 それがユウの、優也の日課になりつつあった。
 それを、他の誰にも気取られぬように、完璧に隠匿しながらこなさなければいけなかった。
 中でも哉汰とウルフには、絶対に知られたくない。
 特に哉汰には。
 その思いで一杯だった。
 もちろん、哉汰をパートナーにすることに最後まで強固に反対していた高階先生には、ちらりとでも相談出来なかった。
 自分を抱く男達に対する対策も、一応は、していた。
 ユウ自ら結界を張り、彼女に触れた者の記憶は、その中だけでしか持続しないようにしていたのだ。それは自己防衛であり、決して男達の立場を慮(おもんぱか)っての事では無かったが、結果としてそうなってしまった事は否め無かった。ただ、あの赤いチョーカーを付けられている状態でそれがどこまで可能かは、正直、ユウにもわからなかったが、だからといってそれをやめるわけにもいかなかった。
 そんな毎日を送りながら哉汰にコトがバレなかったのも、もちろん哉汰が“そういうこと”には絶望的に鈍いということもあったが、本当の所を言えば、それは当然と言えば当然だったのかもしれない。

 なにしろ「主犯」である「彼」が、哉汰の友人であり協力者なのだから。

 哉汰の友人こそが、主犯なのだから。

 「彼」──カナケンは、慎重に哉汰の意識をそらし、誘導し、自分に疑いが向けられないようにしながらユウを弄び、ひたすら哉汰を欺いていたのだ。
 優也を心配し、焦る哉汰の顔を見ながら、ほくそ笑んでいたのだ。

§         §         §


 基本的にウィッチは自分がケガレの発生を感知するか、ウルフからの連絡や要請でしか動かない。最近はこの街でケガレの存在を感知する事も多く、定期的なウルフからの活動報告に伴う定時巡回もあり、休む暇が無い。
 真実は伏せ、哉汰にはそう説明していた。
 心配そうな哉汰の顔を見るのは辛かったが、いつものように微笑んで「大丈夫」と言うのが精一杯だった。
 本当の事など言えようもない。
 言ってはならない。
 そう心に秘めながら、毎日、見知らぬ男達に抱かれ、おもちゃにされ、その合間にケガレと闘い、消散・自浄修復させる。
 精神的にも肉体的にも過酷な日々に、疲れが溜まらない方がおかしかった。注意力が散漫になり、ぼんやりしてしまう事も多くなった。
 だが、そんな中でも「彼」からのメールは絶えなかった。
 哉汰と一緒に学校から帰る途中にメールが届き、一人で学校に引き返した事も一度や二度ではなかった。そんな時は忘れ物をしたのだと言い訳したが、哉汰がどこまで信じたのか不安もあった。
 一緒に下校する回数も確実に減っていた。
 「園芸部に用がある」「先生に呼ばれている」「委員会で資料を作らないといけない」……言い訳に出来そうなものはどんどん使った。
 高階にも心配され、校内で何度も声をかけられたし、美化委員の仕事を理由に哉汰との下校を止められたこともあった。
 もともと哉汰をパートナーにする事には反対だった高階は、すぐにでもパートナーを解消し、哉汰の体内に構築された魔力回路の消去処置を提言したが、優也にはそのつもりは全く無かった。今の段階での魔力回路の消去処置は、哉汰の体と精神に多大なる負担をかけ、障害を残す可能性があったからだ。
 それでも高階は、優也のためならば哉汰を切り捨てるだろう。
 それがわかっていたから、優也は自分がしていることの全てを慎重に秘匿する必要があった。


 ユウにとって、他のウィッチ、そしてウルフの目を欺くことは、実はそんなに難しいことではなかった。
 特に「ウィッチを護り、補佐する事を目的とした組織」であるウルフは、その保護対象であるウィッチ自身に欺かれる事をほとんど想定していない事もあって、知識と準備が万全であれば、母や高階先生のような、自分に日々密接に関わっている人よりはずっと「騙す」のはたやすいと優也には思えた。厳格で堅牢な組織であるゆえに、そういう組織にありがちな「身内への甘さ」とでも言うべき部分が最悪の形で露呈したようなものだ。
 とはいえ、それを責める事は出来ないだろう。
 「ウィッチである」というのはそれだけで一つの信用であり、ウルフは「決して仲間を裏切らない」事を大前提とした確固たる関係に対して、絶大なる信頼を置いているためだった。
 もちろん、『七月のホリー』を引き起こしたホリゾントの例もあるが、あれは近代でも希なケースであり、常日頃からウィッチが人類を裏切ると想定して動いている人間など、ウルフ内にはいないし、そういう想定をしないことがウルフに身を置く最低条件だからだ。

 優也の母、真美……ウィッチ・マミは、ここ数ヶ月、ウルフ中央本部や長老会、そして東ヨーロッパのウィッチ古老院への出向や会議・会合に忙殺されており──それはウィッチ・ユウに役目を譲った後に、ウルフ日本支部から是非にと請われた顧問委員の仕事が元ではあったのだが──家を空ける事が、以前の数倍は増えていた。
 また、父親は出張が多く、今も外国に滞在中のため自宅には優也一人の事が多かったのも、優也の行っている不貞行為(?)が露呈される妨げになっていた。ただ、炊事洗濯などの家事は優也一人でも十分こなせるため、日常生活に支障はなかったが、家を頻繁に留守にするには近所への覚えが悪いこともあって、自宅の敷地内には魔術結界を張ってあった。
 その結界とは、優也の「プリズム・グラス」をより強力にしたような力──「特定の目的を持って敷地内に近付いた者から、その目的自体を消去する力」を持っていた。
 特定の目的とは「訪問」「破壊行為」「窃盗」「侵入」であり、つまり、近くを通りかかったり新聞等の配達をする程度なら問題無いが、“家に対して能動的に直接的な干渉しようとした時のみ”その動機理由そのものを消去して、目的意義を喪失させるというものだった。
 しかし、それでは電話での連絡に関しては効果が無いため、優也は真美に、簡単な受け答えだけなら可能な『使い魔』の設置を頼む事を怠らなかった。

 もちろん、事は簡単ではない。

 親……特に母親の勘というものは、いつの世であっても全く油断出来ないものだ。子供の、ほんの些細な変化にも敏感に反応し、疑惑の目を向けてくるものだからだ。そしてそれは、如何に留守がちであろうとも、優也の母、真美も同様であった。
 だから、この時期に“マミからユウへの代替わりを期にした役目引継のための単独活動を行う”……という事は、真実(ほんとうのこと)から母の目を逸らすための恰好の理由となった。それもユウから言い出した事ではなく、以前よりマミから打診されていた事であればこそ、だった。
 それでもユウは「今の状態」を維持する事が最善の策だと信じた。
 男達や「彼」に体を弄ばれても、それで哉汰を護れるのなら、哉汰の安全と、哉汰との友情と、哉汰への想いを、そして何より哉汰との関係──二人の日常を護れるのなら、自分は耐えられると想い続けた。


 ケガレとの闘いに哉汰を同行させる事は、あの夜以来、一度も無かった。男達に抱かれる合間にケガレを捕獲・消失させるのだ。同行など出来ようはずも無かった。
 それでも自分を思い、心配し、なんとか力になりたいと願う哉汰の心が嬉しく、でも自分がしていること、されていることを知られなく無かったから、なんとか理由をつけて同行は我慢してくれるよう「お願い」した。
 その代わり、哉汰は同行出来ないことに引け目を感じたのか、ユウが求める限り、どんな事でも協力を惜しまなかった。どんな時間だろうと魔力供給を受け入れてくれたし、長時間になろうとも付き合ってくれた。

 それが嬉しかった。

 それが幸せだった。

 至福だと、思った。

 だから、その後で必ず「彼」の元を訪れて「愛」を囁かれながら「彼」が満足するまで抱かれる事など、全然“我慢出来た”のだ。
 ただある夜、いつもの魔力供給を終えた後で、哉汰に気になる事を指摘された。
 ユウの髪が、哉汰の元を訪れる度に色が濃く、昏(くら)くなってきているというのだ。ユウ自身にも、理由はわからなかった。でも想像は出来た。本来のパートナーではない男達からの魔力によって、魔力回路がいわゆる機能障害を起こしているのではないか、と。でもそれを哉汰に説明する事は出来なかったから、「ケガレとの接触が多ければ多いほど、その浄化の際の負担が大きく、不浄の残滓とでも言うべきものがウィッチの体内魔力回路に蓄積されていき、髪の色が変化するのは、それが目に見える形として顕現したため」とか「普段であれば数日の間に自然浄化されるのだが、頻繁に起こるケガレの発生によって、それが滞っているのだろう」などと誤魔化した。
 それに対して哉汰は「便秘で大腸がフン詰まりになったみたいなもんか?」と言ったのだが、そのあまりにも暢気でデリカシーの無い言葉に、ユウは呆れ、落胆し、そしてそこに、もう取り戻せない“哉汰と二人で過ごした日々”の残滓を見たような気がして何も言えなくなった。
 彼の顔を見ているのが辛くて、悲しくて、その日は帰るまでずっと一言も口を利けなかった。
 開けば嗚咽が漏れてしまうから。
 哉汰の前ではもう泣かないと決めたのに、泣いてしまいそうになるから。
 だから、怒ったフリをした。
 それが精一杯だった。
この記事へのコメント
濃密な性行為に開発されていく様がすごくエロかったです!

づつ→ずつ
否が応でも→厭(いや)が上にも/否応なく
反らし→逸らし
シェイピング→shaving (シェイビング)
白く白濁→二重表現
Posted by 青玉 at 2012年08月04日 00:50
いつも盛りだくさん(誤字がじゃないですよ)、おつかれさまです。
ユウ、お馬鹿な子……
ところで、高階先生は淫魔化うんぬんを知っていたということは、過去にユウと同じような目に遭ったウィッチもいたってことでしょうか。やっぱ危機管理が東電並の組織だと思っちゃうなあ。
Posted by tai at 2012年08月04日 01:11
>青玉 さん
 なんか「づつ」じゃないと気持ち悪い感じがするんですよね……なので多用してしまうのですが「新仮名遣い」では「ずつ」が正しいということで、修正します。

 他、修正しました。

 ……通常運転でした……。
Posted by 推力 at 2012年08月05日 21:10
>tai さん
 基本、ユウはアホの子だと思います。気分的には、「試験のカンニングに天才的な冴とテクニックを発揮する」、『試験あらし』(聖日出夫/少年サンデーコミックス)の主人公「嵐」みたいなタイプかと(ここで『究極カンニング漫画 カンニンGOOD』[毛内浩靖/てんとう虫コミックス]が出てこない辺りで年がばれそうですが)。バレないように工作する知恵があったら、今の境遇から逃れる事に全力を尽くせよ、と。

 淫魔化云々の知識は、日本ではなく、15世紀以降のヨーロッパで積み重ねられ、蓄積されてきたデータからのものだと思います。
 「危機管理が東電並の組織」……というのは、まあ……(笑)。
 その辺の詰めの甘さは、私(作者)の詰めの甘さがモロに出てる感じだと思います。
 「編集さんがいないアマチュアの甘さ」でも同義。
Posted by 推力 at 2012年08月05日 21:36
うわぁい試験あらし! わかりやすい……
Posted by at 2012年08月08日 14:48
あ、↑は自分です。

いや、ばらされたくなかったら言うこと聞け、で「言うことを聞いていればばれない」と考えるあたり、美味しいなあと。
Posted by tai at 2012年08月08日 14:54
 まあ、定番ですよね(笑)。

 それにしても「試験あらし」の通じる方がいらっしゃったとは……。
Posted by 推力 at 2012年08月08日 21:24
>キスしながらのセックスが、ユウを狂わせた。〜

何これ超くやしいんですけど(真剣)
哉汰...
Posted by SP(嫉妬ポイント)がたまりっぱなしで at 2012年08月08日 23:22
 やはり「らぶらぶちゅっちゅ」の雰囲気ありますからね……「堕ちた」って感じで。
Posted by 推力 at 2012年08月09日 09:07
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