■感想など■

2012年08月11日

【ボクキミ】ユウ9

■■【9】■■

 どんなに嫌なことでも、どんなに屈辱的なことでも、それが日常化してしまえば、後はそれを如何に受け入れ、義務的に、機械的にこなしていくかだけに腐心するようになる。考えてしまえば行き詰まり、悩んでしまえば息も止まるほど苦しくなるからだ。
 だから考えないようにする。
 決して悩まないようにする。
 自分の心が、完全に壊れてしまわないように。

 「彼」の命令で、見知らぬ男達にユウとして抱かれるようになり、優也が朝、寝ているのか起きているのかわからない浅い眠りから目覚めて、まずするようになったのはケータイに届くメールのチェックだった。新着フォルダに「彼」からのメールがあれば、“それを実行するための計画”を素早く脳裏に浮かべ、可能となるように根回しをする。無ければ準備を整えて、以前と同じく学校に登校する。
 都市部の繁華街の街角に立つ娼婦のように、避妊具やアフターピルなどの常備薬、化粧道具や脱脂綿や消臭スプレーなどが入っていると言われるハンドバッグの類(たぐい)を持つ必要は無かった。
 変身を解けば、全てがリセットされるのだ。
 全てが“何も無かったこと”に出来るのだ。
 リセット出来ないのは記憶だけだった。
 記憶さえどうにか出来れば、後はどうとでもなった。
 だからこそ、消えない記憶が必要だった。
 心の支えになる消せない記憶が必要だった。
 もう、猶予は無い。
 きっと明日にでも男達に命じて「彼」が、または「彼」自身が、自分を避妊具無しで抱く。膣内で射精し、自分達の「印」を付ける。「この女は自分達のモノだ」という「楔(くさび)」を打ち込む。
 優也には、その予感があった。
 確信は無いが、そうなるという予感だった。

§         §         §


 11月11日、金曜日。
 ホームルームを終え、「用事があるから」と理由をつけて哉汰と別れ、すぐにウィッチ・ユウに変身すると、学校近くのアパートに向かった。
 そこに「今日の男」が待っていた。
 顔を見て愕然とした。
 相手は同じ学校の三年生であり、顔見知りの上級生だった。
 一年生である優也と哉汰と三年生とでは、普通の学校生活を送る上でほとんど接点が無い。それでも覚えていたのは、学校内でも有名なバスケ部のエースだったからだ。
 彼は、ウィッチ・ユウが朋坂優也だとは知らないようだった。もともと面識など無く、有名人である彼を優也が一方的に知っているというだけの存在だったから、当然と言えば当然だろう。それだけが救いだと思ったが、いずれ、それも知られるに違いない。
 ユウは会話もそこそこに、夕日が射し込む部屋の中で、魔女っ娘コスのままその先輩とディープキスをし、おっぱいを好きに愛撫させ、パイズリフェラで奉仕し、体位を何度も変えながら激しくセックスした。
 おっぱいに射精された。
 顔にかけられた。
 むせ返るような精液の青臭い匂いに、理性があっという間に吹っ飛んだ。
 自分から普通サイズの陰茎に吸い付き、そのまま口内射精された精液を口いっぱいに溜めて、請われるまま見せた。
 写真もいっぱい撮られた。
 でも、そんなことはもう気にもしなくなっていた。
 おっぱいもあそこもお尻も、尻の穴も広げた膣口も、全部撮られた。
 繋がっているところも撮られた……と、思う。
 記憶なんか無い。
 膣壁を擦り上げるゴムの感触がもどかしく、この肉茎を生で味わえたらどんなに気持ち良いだろうか……とか、ゴムが破れて精液が膣内に漏れたらどんな気持ちだろうか……とか、そんな事ばかり考えていた。
 それが出来ないこと──いや、してはいけないことだとは、わずかに残ったなけなしの理性が教えてくれていた。
 だからその代わり、哉汰に「愛される」事を夢想しながら男の体中を嘗めた。
 男根だけじゃない。
 しわしわの金玉袋はもちろん、苦味のある尻の穴も嘗めた。
 硬い毛の密生する脚も嘗めた。
 足の指の間も、足の裏も嘗めた。
 そうしながら、相手が哉汰だと想像してありえないほど興奮していた。
 男とのセックスを終え、一旦家に帰って変身を解くと、いつも男のメンタリティが優也を激しく責めた。
 自分がしたことを思い出して吐いた。
 今までも同じだ。
 こんな事は頻繁だった。
 でも、もう、ダメだ。
 もう耐えられない。
 “狂ってしまえないこと”が、耐えられない。
 だからこそ、

 ──消えない記憶(くさび)が欲しい。

 せめて自分を保つための「印」が欲しい。
 暗い部屋の中で静かに泣きながら優也は決意した。
 夜の10時を過ぎて哉汰の部屋を訪れると、彼が何か言う前にピンヒールを窓辺に敷いた新聞紙の上に揃えて置き、彼の前に正座した。そうして、太股の上に両手を揃えて置き、ベッドに腰掛けた哉汰の目をまっすぐに見た。
 今から自分が口にする言葉が、如何に破廉恥な言葉か理解していた。
 本当は男で、哉汰の親友(を自負している男)が口にするような言葉ではないことも、理解していた。
 哉汰のメンタリティでは、男同士の恋愛どころか、男同士でキスする事すら嫌悪の対象になるということも理解していた。
 だから、言葉を慎重に選び、事前に考えていた言葉を一字一句噛み締めるようにして彼に告げた。
『キスや乳吸いよりももっとロスが少なく、より効率的で高純度の魔力補給が望める方法に移行したい』
 ……というような内容の言葉だった。
「なんだその方法って」
「……カナちゃんがイヤじゃなかったらだけど」
「俺が?」
「カナちゃんにとっては、すごく気持ち悪いって思うかもしれない方法」
 ユウは自分の顔が熱くなり、頬が紅潮するのがわかった。
 恥ずかしい。
 言葉にするのが、たまらなく恥ずかしい。
 「彼」や男達には、もっともっと恥ずかしいこともしたし、されたし、言ったような気もするのに、哉汰を前にするとそんな事など吹き飛んでしまうくらい恥ずかしかった。
 ドキドキとうるさいくらいに心臓が高鳴り、唇が震え、目が潤む。
 哉汰の目が、何かを察したように見開かれる。
 その目を見ていられなくて、ユウは絨毯に手を突いて深々と頭を下げた。
 後頭部に突き刺さる、彼の視線が痛かった。
「ボクと……えっちして下さい」

 ……言った。

 言っちゃった。

 時間にして数秒間。
 いやひょっとしたら2秒にも満たない時間。
 そのほんの短い時間が、果てしなく長い時間に思えた。
「え……えっち!?」
 哉汰の喉が“ぐびり”と鳴る。
「お願いします」

 断らないで。

 お願い。

 お願い。

 土下座しながら顔も上げられず、ユウは胸の中でひたすら願っていた。
 もう、既に答えの出ている願いを、ひたすら祈っていた。
 でも……

「出来ない」

 哉汰の言葉に、体が震える。
 ああ、やっぱり……。
 ユウは目をぎゅっと閉じて、彼の言葉を噛み締めた。
 その言葉の裏にある、嫌悪からではない、むしろ自分の事を大切に思ってくれるが故の拒絶であるという想いを。
「いくじなし……」
 ここまで鈍感で純粋で親友想いで優しい男の子なんか、ほかにいない。
 哉汰の友達で良かった。
 哉汰の親友で良かった。

 ──哉汰と出会えて、本当に良かった。

「ん?」
「なんでもない」
 断られた悲しさよりも、自分を思ってくれるが故に欲望を押し殺した、彼の優しさこそが嬉しかった。
「カナちゃんならそう言うと思ってた」
「そ、そうか。ならいいんだ」
 ユウの言葉に、哉汰はホッとしたような、残念そうな、複雑な表情を浮かべた。
 だがユウには、今日この時に、是が非でも哉汰の中の「あるもの」を獲得、摂取しなければならない理由があった。

 それは哉汰の遺伝子──可能であれば性遺伝子だった。

 魔力回路の親和性・融和性が最高位まで高まり、パートナーの魔力回路が安定期を迎えた頃に行うと、その魔力吸収率と共に双方の代謝機能を含めた身体機能の強化・向上が見込める方法として、古来より行われてきた──と、ウルフのデータベースに存在している過去の文献からの方法だった。
 もちろん、ただ単に遺伝子の体内摂取だけなら、キスで行う唾液交換の際、唾液に含まれる微量の細胞核でことは足りる筈だ。
 だが、文献では女性型ウィッチであれば男性パートナーの精子、男性型ウィッチであれば女性パートナーの経血……と、かなり特殊な(そもそも経血に性遺伝子は含まれていない)ものを体内に取り込まなければならないとされているため、おそらくその状況に置かれた双方の精神状態……つまり愛情や信頼や、その他諸々の気持ちこそが重要視されるのだろう──と、ユウは見ていた。

 そして、それこそが「印」であり、「消えない楔(くさび)」となるのだと。

「でもボクはカナちゃんの遺伝子が必要。出来れば性遺伝子」
「なんだそれ」
「わかってるでしょ? それともハッキリ言わないとわからない?」
 ユウの声が上擦り、頬が火照る。
 きっとこれは哉汰も断らない。
 その確信が、体を熱くした。

 ──精子だよ。

 ユウの囁くような声に、哉汰が引っ叩かれたように目を見開いた。

§         §         §


「親友でしょ? ボクにはカナちゃんだけなの。こんなこと頼めるのカナちゃんだけなの」
 それでも往生際悪く何か言おうとした哉汰の気勢を制するように、ユウは最終兵器を取り出した。
「ず、ずるいぞお前」
 自分でもそう思うが、背に腹は代えられないとはこの事だった。
「ずるくてもいい。それくらい切羽詰まってるんだ。このままだとボク……」
「……?……このままだと?」
 思わず滑らせた言葉に哉汰が訝しげに眉を潜める。
 まさか本当の事を言うわけにいかず、一瞬ユウは口篭った。

 ──このままだとボク、カナちゃん以外の人に身も心も奪われちゃうんだよ?

 そんな気持ちを振り払って、ユウは絨毯に額を擦り付けるように下げていた頭を勢い良く上げた。
「カナちゃんの魔力とボクの体との親和性が高いのは前に言ったでしょ? それは本当。前よりずっと上手に『函(パンドラ)』を形成できるようになったし、持続時間も延びたんだ。ケガレの探知もより早く正確になったし、もしこれでカナちゃんの性遺伝子を定期的に受け取れるようになったら、ボクはもうケガレに負けることは絶対無くなる気がするんだ」
 一気にまくし立て、そうすることで自分を鼓舞した。
 彼に嘘を付くのは心苦しいが、世の中には付いて良い嘘と悪い嘘がある。

 ──そしてこれは、良い嘘だ。

 哉汰を護るために必要な嘘なのだ。
「……怪我、しなくなるのか?」
「うん。何があっても傷付かない」
「負けなくなるのか?」
「うん。ボクは強くなるよ。何にだって負けなくなる」

 そうだ。

 負けない。

 「彼」に植え付けられる汚れた快感にも、今後、おそらくきっと近い内に男達から注がれる精にだって。
 体の中に哉汰の精があると思えば、どんな事だって耐えられる。
 それに、身体機能が強化・向上すれば魔力も強化される。
 哉汰が心配する髪の色だって、きっと元に戻るだろう。
 そして何より──
「わかった」
「ありがとう! カナちゃん!」
「カナちゃん言うな。っていうか……定期的って、これ一回じゃないのか?」
「それはごめん。魔力増強は変身を解くたびにリセットされるから、魔力供給時に毎回行わないといけないんだ」
「俺は、どうすればいい?」
「じっとしてて。ボクに任せて」
 エッチ(膣内射精)しないで行う、『接触状態での精子摂取』と言えば、方法は一つしかない。
 それをこれからするのだ。
 そう思うとユウの体が熱く火照った。
 目眩するほど興奮が高まる。
 期待に鼓動が早打ち、お腹の中のオンナの器官が熱を持った気がした。
 正座から身を起こし、膝立ちのままベッドに座る哉汰へとにじり寄った。哉汰を見上げる自分の瞳が潤んでいるのがわかる。
「セ、セックスはしないぞ?」
 焦る哉汰が、まるで脅える子供のよう。
 考えてみれば、普段あんまり意識していないが、肉体年齢はともかくとして、魂の年齢は24歳と17歳で、実に7歳も差があるのだ。
 そう思うと哉汰が可愛く見えて仕方ない。
「うん。でも、セックス以外にも精子を体内に取り入れる方法はあるから」
「ちょ、おま、それって……」
「大丈夫。するのは初めてだけど、ボクも男だからどこをどうすればいいか、なんとなくわかるから」
 自分で言いながら、悲しみがひっそりと心に満ちる。

 ごめんね。初めてじゃなくて。

 だが、そう思いながらも興奮は止められなかった。
「じゃあ、いい?」
 そう言って哉汰が何か言う前に哉汰のズボンとパンツに手をかけた。
「ちょ、ちょっと待て、自分で」
「だめ」
 抵抗する間も与えなかった。
 手慣れた動作でパンツをズボンごと膝まで引き下ろすと、ガチガチに硬く勃起した元気なアレが、まるでバネ仕掛けの玩具みたいな感じに“びょん”と勢い良く跳ね上がる。
「わお」
 思わず嬉しくて声が出た。
「わお、じゃねーよっ!! 待てって言ってるだろうが!」
 ちょっとムッとした。
 往生際が悪いにもほどがある。
「待てない。なに? カナちゃんは男なのに一度決めたことをいざとなったら無しにするの?」
「そ、そうじゃねーよ。そうじゃねーけどさ」
 ユウはしどろもどろに言い訳する哉汰を見上げ、早く彼の陰茎を味わいたくて“うずうず”する体を揺すった。
「じゃあなに? 恥ずかしい?」
「あ、当たり前だろ……」
 このままでは、なんだかんだ言って「今日はやっぱりやめておこう」とか言われかねない。
 そう思ったユウは強硬手段に出ることにした。
「うーん……じゃあ、やっぱり最初に魔力の方からもらっとくね?」
 つまり、いつも自分が「彼」や男達にされているように、まずキスでとろとろにして抵抗力を根こそぎ奪う作戦に出たのだった。
「な……うむぅっ!?」
 ユウは哉汰の首と頭をガッチリと両手でホールドし、のしっと体重をかけて有無も言わさずキスをした。
 主導権は完全にユウにあった。
 いくら哉汰とのキスが他の男なんかとは比べようもないくらい気持ち良くて陶然として有り得ないほどの至福を与えてくれるとは言っても、回数としてはまだ15回しかしていないのだ。様々な男達とその数倍はキスを繰り返したユウにとって、哉汰を意のままにするのは容易かった。

§         §         §


 キスしながら、哉汰のモノに出来るだけ触らないように気を付けた。
 まだ味わいもしないうちに射精されたら困るから。
 もったいないから。
 美味しそうな先走りが垂れ落ち、それさえももったいなくてうずうずしたけど、耐えた。
 そうしてユウは哉汰の全てを、唇も舌も何もかもを吸って、嘗めて、しゃぶって、食べた。
「あぁ〜……」
 1分もしないうちに哉汰は朦朧とした体(てい)でベッドに横たわっていた。ぐったりとして、目に涙まで溜まっている。
「カナちゃんの方が女の子みたいだね」
「う、うるせー……」
 力無く目を瞑り、懸命に自分を保とうとしている哉汰が愛しくて可愛くて、ユウはもう我慢出来なかった。

 だから、「いただきます」、した。

「おうっ」
 頭上で、哉汰が声を上げる。
 けれどユウも、余裕なんか無かった。
 あまりにも美味しそうで、たまらなく体が疼いて、彼の陰茎を一気に喉奥まで“ぬるん”と飲み込んだら、途端に脳がスパークして目がチカチカして真っ白になって、目が“ぐるん”とひっくり返って全身が痙攣した。
 瞬間的に失神したのだ。
 死ぬかと思った。
 強烈で鮮烈な快美感に、本気で死を予見した。
 体全部をどこか遠くに持っていかれるような、魂だけ体から抜き出されて消滅してしまうような、底知れぬ怖さがあった。
 自分を保てない。
 ユウという個を失い、一個の「オンナ」という本能に狂う。
 「彼」や男達には数分から数十分かけて落とされる地点に、哉汰の先走りは一瞬でユウを連れていこうとしていた。
『あぁ……』
 おっぱいが張って痛かった。
 乳首が屹立して痛かった。
 あそこはもう洪水だ。
 陰唇は充血して花開き、彼のモノを迎え入れたくてとめどなく涙を流している。
 “びちゃびちゃ”の“どろどろ”の“ねとねと”だ。
 「どうしてコレを“抱いて”はいけないの?」と泣いている。
 気が付けば夢中になって吸っていた。
 口内で、熱くて硬くて“びくびく”脈動してる、肉の茎を。
「んひっ」
 哉汰が声を上げる。
「お、おまっ」
 哉汰が何か言おうとする。
『ボクの邪魔をするな』
 本気でそんな事を思い、

じゅるるるるるっ……

 ユウは口内にいっぱいに溜まった唾液混じりに、湿った音も高らかに強く啜りあげた。

§         §         §


 思いのほか逞(たくま)しい陰茎を咥えて、しゃぶって、嘗めて、しごいて、射精感に“きゅうん”と縮み上がった“可愛い”玉袋を、唾液をたっぷり付けては嘗めて唇で甘噛みする。少し仮性包茎気味に余った皮と亀頭の間には、舌をねじ込んで“ねとねと”する恥垢も丁寧に嘗め取った。
 嬉しくて嬉しくて嬉しくて。
 主人に誉めてもらいたくて一所懸命な犬みたいだった。
 初めてもらった御褒美の玩具で遊ぶ子犬みたいだった。
 けれど、

「なんか、おま、お前さ、初めてって割に、すげー慣れてないか?」

 不意に哉汰が言った言葉に、一瞬で頭の中心が冷え、“ギクリ”とユウの肩が震えた。あまりにも夢中になり過ぎて、ユウは自分が、男達に「仕込まれた」フェラチオの仕方を無意識に行っていたのだと知った。
「こんな時に言うのもなんだけど、ボク、カナちゃんより7年多く生きてるからね。自慢じゃないけどオナニー歴も長いから、どこをどうすればいいかなんて、きっと本当の女の子よりずっと知ってると思うよ」
 すらすらと言葉が出た。
 特に考える事もなく「嘘」が出た。
 そこに罪悪感は無い。

 だってこれは、彼を護るために必要なものだから。

「け、経験豊富って、わけか?」
 でも、彼の無邪気な言葉は、ユウの心を薄く、浅く、でも広い範囲で切り裂いていった。

 ──何も知らないで。

 ユウ自身がそれを望み、そうあることに腐心し努力しているにも関わらず、彼の無邪気な言葉と態度に“彼女”は心を痛め、そして彼を小憎らしく思った。
 更に哉汰は憎らしくも、ユウがくる前にオナニーしてしまったらしく、なかなか射精には至らなかった。
 先走りは滲むし、肉茎はガチガチ、亀頭は充血して真っ赤だ。
 なのに射精してくれない。
 ユウは早く飲みたいのに。
 口の中でたっぷり溜めて、味わって、形がわかるくらい“ぷりぷり”としたゼリー状の童貞精液を、ゆっくり噛んで堪能してから、唾液と混ぜてから嚥下したいと思うのに。
 仕方ないから、こうなったら「彼」にも誉められ、男達にも絶賛されたアレをするしかないと思った。
『これでイかなかったら……』
 そうしたら、もう後は彼を「襲う」しかない。
 彼が何と言おうと、抵抗しようと、押さえつけて拘束して、またキスで意識を朦朧にして、横になった彼のアレを跨いで指で支えて、彼の表情を見ながらゆっくりと、尻を揺すりつつ膣で呑み込むしかない。
 もちろん、ユウにはむしろそっちの方が数倍……数億倍望むところなのだけれど。
『カナちゃんが悪いんだからね?』
 オナニーなんかするから。
 ユウはビスチェのカップ部分を“べろん”と引き下ろしておっぱいを無造作に放り出すと、そのまま哉汰の太股に乗せて、柔肉で童貞勃起ちんぽをすっぽりと包み込んだ。そうしながら外側から両手で乳を寄せ、包み込んだ肉茎を“もにゅもにゅ”と捏ねる。

 パイズリ。

 「彼」も、男達も、必ず要求し、そして賛美し、射精してくれる。
 だから哉汰もきっとしてくれるだろう。
 その確信の裏付けが、哉汰ではない男達からの賞賛というのが悲しいが、今のユウはそんなことにも思いが巡らなかった。
「ちょ、おまっ……」
「……初めてしてみたけど、難しいね」
 自分で言ってても嘘臭いが、哉汰にしたのはこれが初めてなのだから、まるきり嘘というわけではないのだ。
「くぅ……」
 哉汰の反応を見ながら、色々と試してみる。
 擦り合わせた両方の乳首で亀頭を刺激したり、急に“むぎゅう”と全体を圧迫してみたり、おっぱいから少しだけ亀頭を出して伸ばした舌先で“ちろちろ”と刺激したり。そしてもごもごと口内で唾を溜めると、おっぱいの谷間に“とろぉ……”と垂らした。こうすると、そのぬめりが潤滑油代わりになって、乳房を上下に滑らせやすくなるのだ。これも男の一人に教えられた技だった。
「うぅ……うううぅ……」
 もう限界が来たのか、哉汰の切羽詰まった声が耳朶を打つ。腰が“ぐぐぐっ”と浮き気味になり、おっぱいの「中」で陰茎が幾度となく跳ねた。
「イク? もうイッちゃう?」
 ユウの言葉にコクコクと馬鹿みたいに頷いて、哉汰は両手を“ぎゅっ”と握り締めた。
 「彼」や他の男達よりもずっと早い。
 すぐにでも彼の精液が飲みたいが、それを相反するようにもっとずっと“楽しみたい”という気持ちが強かった。だから哉汰にはもっと頑張って欲しかったが、女慣れしていないガチガチの童貞ちんぽでは、たとえオナニーした後でも、ここまで責められたら耐え切るのは無理なのだろう。
『仕方ないか……ほかの……』
 そこまで思い、ユウは自分がいつの間にか自然と他の嫌悪すべき男達と、目の前の哉汰とを比べ、更には落胆さえ感じている事に気付いてゾッとし、自分自身に吐き気を覚えた。
「あっ……い……」
「いいよカナちゃん! そのまま出してっ!」
 言いながら“たぽんたぽん”とおっぱいでリズミカルに肉幹を上下に擦り、“もにゅもにゅ”と刺激し続ける。
 足りなくなったぬめりを、再び唾を垂らすことで補充すると“にっちゃにっちゃ”といやらしい音がまた聞こえはじめ、ユウと哉汰の耳を刺激した。
「ううぅ……」
 “ぐぐぐっ”と哉汰の腰が持ち上がり、硬直する。
 恥ずかしいのか、哉汰は目を閉じて左腕で顔を隠した。
『カナちゃん……可愛い……』
 ユウはその様子を、期待感に溢れた悦びの目で、じいっと見つめた。
「イク……イクッ!」
「はい」
 自然と顔がほころび、口元がゆるみ、満面の笑みとなるのを止められなかった。
 ようやく訪れる渇望の時。
 それを迎える悦びに、体が震えた。
 乳に埋もれた哉汰の幹の先端の、その亀頭の鈴口が“ぱくっ”と開いたのを見て、ユウはすかさずその噴出口へ喜々として吸い付き、咥え、今か今かと射精の瞬間を待った。
「うぅっ!」
 哉汰の腰が二度三度と震える。
「んっ……んんっ……んぅふぅぅ……」
 口内で哉汰の男根は若干少な目の精液を射精し、これが三度目とは思えないほどの勢いと濃さでユウの上顎を叩いた。
 口腔内に広がる哉汰の味。匂い。舌触り。
 喉に“ずるり”と滑り落ちてゆくジェル状の白濁液は、ユウを幸福で満たし、満足感と充実感でとろとろに酔わせるのに十分だった。
 いや、それ以上だろうか。
 体内に残る「彼」や男達と繰り返したセックスの残滓が、綺麗に洗い流されていく気がした。体がリフレッシュし、心が、魂が瑞々しさを取り戻していくようだ。
「んっ……んっ……」
 ユウはごくっごくっと喉を鳴らして精液を飲み下すと、一通り哉汰の射精が終わるのを待って、鼻から大きく息を吸い込んだ。
『ああ〜……すごい……こんな……』
 鼻腔に満ち、肺に満ちる哉汰のにおい。
 大切なひとのにおい。
 少し蒸れた陰茎と、若くて濃い精液の匂い。
 くらくらする。
 実際に目眩さえ感じた。
「んふぅ……ん……」
 尿道に残った精液がもったいなくて、口に咥えたままの陰茎を“ちゅうちゅう”と啜り、カリの部分を丁寧に舌で拭う。その上で、唇で亀頭の精液をこそぎ取るようにして“ちゅるっ”と若幹から口を離すと、口腔内に残った精液を舌で集め、“くちゅくちゅ”と良く味わってからゆっくり嚥下(えんか)した。
 最高級の極上フレンチを食べて、そのソースがもったいなくてパンで綺麗に皿を拭って食べるような感覚だった。

 少しも残してたまるものか。

 そんな執念めいたものまで思わせる執拗さだ。
「ああすごい……」
 ユウは思わずうっとりと囁くように溜息を漏らした。
 高純度で高濃度な魔力のカタマリと、恋焦がれた哉汰の精子の中の性遺伝子が、胃の腑から全身へと快美感を広げてゆくのを自覚する。
 肉体を構成する細胞の一つ一つが、分子の一つ一つが、原子の、素粒子の、その一つ一つが残らず悦んでいる。
 オンナとしての体が、乳が、腰が、尻が、陰唇が、膣が、そしてその奥の奥の子宮が、渇望してやまなかった哉汰の精子を、口腔内からとはいえ体内に取り入れたことを、本気で悦んでいる。
「ああぁ〜……」
 涙が自然と溢れる。
 口内では新たな唾液がじゅくじゅくと溢れる。
 陰唇内ではバルトリン腺液やスキーン腺液が、そして膣内にも膣液がたっぷりと滲み出してくる。
 それは、男の姿では決して味わうことの出来ない、貴重な体感であった。
 それは、愛しいと感じる男を欲する、女の本能……。

 真に胎内に迎え入れたいと願う相手を欲する、オンナの性。

「やっぱりカナちゃんのが……」
 ユウは陶然としながら無意識にそう呟いた。
『やっぱりカナちゃんのが良い。他の誰でもない、カナちゃんの精液が欲しい』
 目の前で、射精を終えて半立ちになった陰茎を再び扱き、咥え、嘗め、しゃぶって硬くして、繋がりたい。
 生で。
 避妊具なんかいらない。
 そのままで、膣に迎えて、肉壁で締め付けて、ねちょねちょと愛撫して、腰を捻って尻を振って、哉汰がたまらなくなって思い切り射精してくれるまで楽しみたい。

 でもそれは叶わない。

 叶わないのだ。

『どうして……』
 どうして、してくれないの?
 どうして抱いてくれないの?
 聞けない問いを胸に、ユウは両手で固く勃起した乳首を、涙を零しながら“くりくり”と弄りまわしていた。

§         §         §


 哉汰のところから「彼」の元へと“帰る”と、ユウは自分から「彼」に飛びつくようにしてキスし、おっぱいを与え、パンツを脱いで脚を開いた。
 「彼」を求めたかったのではない。
 むしろその逆だった。
 「彼」に抱かれる事で、哉汰への想いを強固にし、「彼」では得られないものを明確にしたいと願ったのだ。
 もうすっかり慣れた感じに正常位で抱かれ、バックで尻を責められ、騎乗位でおっぱいを掴まれながら腰を揺すった。

 思った通りだった。

 前よりも感じない。

 哉汰の性遺伝子によって与えられた極上のオルガスムスは、口腔内からの摂取でありながら「彼」や、おそらく他のどんな男達に与えられる快美感もがただの紛い物でしかないと、ユウの体によって“彼女”自身の理性にしっかりと知らしめたのだった。
 これは哉汰による「印」が、しっかりと己の魂に刻まれた証だと、ユウは思った。

 大丈夫。

 これで大丈夫。

 薄いゴム越しに「彼」が膣内で射精する感覚にうっとりと酔いながら、それでもユウの心は、哉汰が与えてくれた至福だけを反芻し、安堵していた……。
この記事へのコメント
ここだけ見れば救いがあるように見えますね

径血→経血(月経の血なので)
Posted by 青玉 at 2012年08月11日 00:39
 修正しました。

 そうですね。
 ここだけ見れば……。
Posted by 推力 at 2012年08月16日 16:30
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/57169092

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★