■感想など■

2012年08月12日

[THEM]『Piece.05』「ふたりあそび」〜彼女にはナイショ〜

■■【1】■■


 夕闇が街を包み始めていた。

 先行した彼等は、もう村に着いただろうか?
 斥候を兼ねて、クラウドとバレット、それにエアリスの3人が半日ほど離れた隣村まで向かったのは、今日の昼頃の事だ。
 30分ほど前にPHSで連絡が入った時は、山陰で薄暗くなり、あと1時間以内に到着しない場合はキャンプすると言っていた。
 この地方には地図にも載っていない村が点在し、しかもその距離は住人の感覚で『半日』とか『昼飯まで』とか、そんな曖昧な表現でしか計る事が出来ない。
 今更ながら、ガイドでも雇えば良かったと思う。
「私も……」
 ついそう口にしてしまってから、濡れたように艶やかな黒髪の女性は慌てて口をつぐみ、周りをきょろきょろと見まわした。
『私もついていけば良かった』
 そう言いかけてしまったのだ。
 だが、心配そうな様子を生意気で皮肉屋の忍者娘にさんざんからかわれた後では、その言葉を素直に口にするのは、ひどく躊躇(ためら)われたのだった。
 3人をよほど信頼しているのかどうか知らないが、寡黙なガンマンは愛煙家の艇長に引きずられるようにして宿屋1Fの酒場へと降りていったばかりだし、機械猫は部屋に篭もったきり出て来ない。
 隻眼の獣はといえば、宿屋の食事が合わないとかで近くの森へ狩りに行ったばかりだ。
 クラウド達からの連絡を待ち続けて落ち付かない彼女にしてみれば、まるで自分がクラウド達を信じていないようで、その事が更に彼女を落ち付かなくさせていた。
「……考え過ぎても……ダメだよね……」
 彼女は小さく溜息を吐(つ)くと、忍者娘と一緒に寝る事になる部屋へと脚を向けた。


「なにしてるの?」
 ふ……と小さく息を吐いてから部屋のドアを開けた黒髪の彼女−ティファ=ロックハートは、ツインベッドの上でこちらに背中を向けた少女に訝(いぶか)しげに声をかけた。
 途端、少女はびくん!と身体を震わせて、おもしろいくらいに動揺した顔を向け、引きつった笑みを浮かべて
「な、なんにも」
 と言った。

 ……おもいきり不自然だった。

「……それ、私のバッグじゃない?」
 少女が後手に隠したものを視線で示して、ティファはその形の良い眉をきゅっと顰めた。
「あ、あ〜……ええと〜……」
「なあに? もじもじして…………始まっちゃったの?」
「……え? あ、うん、そう! そうなんだ実は! いや〜まいったまいった」
 上擦った声でそう言いながら頭を掻く少女−ユフィ=キサラギに歩み寄りながら、ティファはにっこりと天使の笑みを浮かべる。
「そんなわけないでしょ?」
「あ〜……え〜〜? ……いや、ほんとーだよ〜?」
 目が泳いでいる。
 自称忍者のワリには、この少女は実に隙が多い。
 こうして感情を容易に見抜かれてしまうようでは、忍者の主な活動たる諜報や隠密などは行えるものではない。
「あなた、2週間前に終わったばかりじゃない」
「……知ってたの?」
「…………その時にナプキン貸したの、私なんだけど?」
 たっぷりと豊かな胸の下で腕を組み、半眼でユフィを見下ろすティファには言い知れぬ迫力があった。
 ユフィはごくりと唾を飲み込み、戦略的撤退を決め込もうと尻だけでベッドの上をずり下がり始める。
 その動向を制するように、ティファはずいっと彼女ににじり寄り、深く息を吐き出すと右手を出して恐い顔をした。
 オヤツの摘み食い常習犯を叱るママよりも恐い顔だった。
「返して」
「え?」
「マテリア」
「なんのこと?」
「とぼけないで。今日手に入った『連続斬り』と『盗む』のマテリアを、あなたがすごおくモノ欲しそうな顔して見てたの、知ってるんだから!」
「しょ、証拠でもあるのかよ! アタシが盗ったってゆー証拠でもさぁ!?」
「じゃあ後に隠したバッグを出しなさいよ」
「…………ほら」
 ユフィは右手でバッグを前に出すと、ティファに向けて差し出した。
 左手はまだ後のままだ。
 今時子供でもしないフェイクだった。
「あっ!」
 その手をティファは取る。
 ぎゅっと握って、ユフィが逃げられないようにしてしまった。
「は、離してよっ!」
「そっちの手も出しなさいよ!」
「やだ!」
「ほらっ! やっぱり持ってるんじゃない!」
「これはアタシが見付けたんだからアタシんだ!」
「ふざけないで! 誰の物とかじゃないでしょ? みんなの物でしょ!?」
「アタシんだ!」
「この旅の間は、マテリア見つけても、それをちゃんと使える人が使うってみんなで決めたじゃないの! 旅が終わったらちゃんとあげるから!」
「いつ旅が終わるんだよ!?」
「そんなの私にもわからないわよ!」
「じゃあ、いつコイツがアタシのモノになるかわからないだろ!?」
「いいから渡しなさい!」
「ヤダッ!」
 ティファはユフィに覆い被さり、彼女の右腕を左手で掴んだまま後に回した左腕を捕まえようとした。
 けれど体勢が不安定なためか、ユフィも必死で逃れようと暴れるためか、どうもうまくいかない。
 彼女の右腕の腕を捻り上げて関節をキメてしまえば、いかにユフィといえども身動きは出来ないだろう。
 対人格闘術での関節技も習得しているティファにとって、それは馴れない箸で食事するよりも容易(たやす)い事だ。
 だがそれではユフィの腱や筋肉を痛めてしまう事になるし、最悪、間接を壊してしまう事にもなりかねない。
 もちろん、負傷しても回復魔法“ケアル”によって治療すればいいとも思わないではない。
 けれど、ティファはそこまでするつもりはなかった。
 仲間を痛めつけてまでしなければならない事でもないと、思うのだ。
 それが、ティファの甘さであり、闘いにおいても非情になりきれない要因ともなっていた。
 相手が“それほど脅威のある人間ではない”というだけで、手心を加えてしまう事があるのだ。
 自分に劣る者に対して、決定的に甘いのだ。
 それは、こと闘いにおいては命取りともなりかねない。
 クラウドには、再三注意されている事でもある。
「わ・た・し・な・さい・よっ!」
「イ・ヤ・ダって・いって・る・だろ!?」
 ベッドにユフィを組み伏せ、彼女に身体を重ねながらも必死に奪おうとするティファと、それから逃れて奪われまいとするユフィ。
「あ……」
 最初に気付いたのは、ユフィだった。
 もみ合ううちに互いの身体が熱く火照り、キスするくらい近づいた顔で互いの瞳を覗き込んでいた。

 柔らかい体。

 オンナの体。

 ティファのヴォリュームたっぷりな胸がユフィの薄い胸に押し付けられ、むにむにとやわらかく変形してつぶれていた。
 さらさらの髪からは、自分とは違うシャンプーの香りと、自分と同じ“生物学的女”とは思えないような香(かぐわ)しい香りがしている。

 なんで?!

 そう思った。
 自分でもおかしいと思った。

 なんで、アタシがドキドキしなくちゃいけないんだ!?

 ひどい混乱だ。
 頭がぐちゃぐちゃした。
 けれど、だんだんと無口になり、動きも緩慢(かんまん)となり、ティファの顔を見ていられなくなって、とうとう“むすっ”とした顔を真っ赤にして、ユフィは暴れるのを止めてしまったのだった。
 そして、そのユフィの反応の変化にティファがようやく気付いたのは、彼女が動きを止めた左腕をぎゅっと掴んだ時だった。
 はっとして見れば、自分の今の姿といえば、まるで夜道でうら若き乙女を襲い、今まさにその“操”を奪おうとする暴漢そのもののようだった。
 無抵抗の少女の体の上にピッタリと身を重ね、両手首を掴んで逃げられないように、暴れられないように拘束している。
 ちょっと顔を寄せれば、その若々しくも可憐な唇に口付けてしまいそうだ。
「さ……さっさと渡しなさいよね」
 身を起こして、ユフィの左手から2つのマテリアを奪い取ると、ティファは乱れた髪を整えながらそそくさとベッドの縁に座った。
 バッグの中の小物入れにマテリアを仕舞い込み、ユフィからは少し離れた所に移動する。
 どたばたと暴れたせいか、鼓動が激しくて顔が火照って腫れぼったかった。
「……もう、こういうこと、しないでね?」
 ベッドの上でのろのろと身を起こしたユフィに、ティファは少し優しく言った。
 ちょっと大人気無かったかな?……と自分でも思ったからだ。
 けれど、ユフィの次の言葉は、ティファには思いがけないものだった。
「あのさ……」
「……ん?」
「……ティファのその胸さ……いつから大きくなったの?」
「は?」
 頭が真っ白になった。
「あ、いや、その……なんか、さ……すごく……重かった」
「なによ突然……」
「いいだろ? それくらい教えてくれても」
 “ぽちょぽちょ”とぶっきらぼうに言うユフィの、どこがティファの琴線に触れたのかはわからない。
 でも気が付くとティファは、小さく息を吐いて肩の力を抜いていた。
「…………膨らみだしたのは……16の頃……かな?」
「それまではペッタンコだったの?」
「……まっ平らじゃないわよ。Aカップ……くらいかな?」
「今は?」
「……いいじゃない。そんなの」
「Iカップ?」
「そんなにあるわけないじゃない!!」
「Eカップ?」
「……もうちょっと、大きい……かな?」
「F?」
「……………………あと、ちょっと」
「……G……カップ?」
「……う……うん…………って、なによその奇人変人でも見るみたいな目はぁ!」
「だって……トップとアンダーの差が25センチなんだよ? そんなの人間……」
 『人間じゃない』と言いかけたユフィは、慌てて口を塞いでティファを見た。

 遅かった。

「だ・れ・が・ウ・シ・で・すっ・てぇ?」
「いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!」
 ぐりぐりぐりぐりぐりぐり……と頭を拳骨で挟まれて、ユフィは悶絶しながらのたうち回る。
「そ、そんな事言ってないだろー!?」
「どうだか!」
 ぐいっと乱暴にティファの手を振り解くと、ユフィはいきなり水をぶっかけられた猫みたいな脅えた目で、ベッドの隅に逃げた。

 ……涙目になっていた。

「……ユフィは大きくなりたいの?」
「……別に……考えたこと無い。女のおっぱいが大きくて喜ぶのはオトコだけだし、そんなのぶら下げてたら修行の邪魔になるもん」
「ぶら…………失礼ね。まだ垂れてないわよ」
「なにも、ティファのおっぱいが垂れてるだなんて言ってないだろ? ちょっと被害妄想じゃないの?」
「……う……」
「ね、ちょっと触っていい?」
「…………い……いいけど……」
 好奇心でいっぱいのユフィの瞳に少したじろぎながら、ティファは不承不承ではあったものの、彼女に体を向けた。
 ユフィはベッドの端から四つん這いに這い寄って、ティファの前にちょこんと座る。
 かしこまって正座しているのが、なんだか可笑しかった。
「じゃ、じゃあ……触ります」

 ……声までかしこまってた。

 くすくすと笑って、ティファは
「はい。どうぞ」
 と胸を差し出す。
 よく考えるとむちゃくちゃヘンな構図でシチュエーションだったけれど、初めてブリキのオモチャを与えられたちっちゃな男の子みたいなユフィ相手には、まあいいや、という気分になっていたのだった。
 それに、セブンスヘブンでも、ジェシーによく触られたし、店の馴染みの娼婦館の姐さん達にもしょっちゅう挨拶みたいに触られていたから、同性に触られる事にはすっかり慣れっこになっていたのかもしれない。
「ほんとにデッカイなぁ……」
「……あのね、しみじみと言わないでくれる?」
「だって……アタシの街にだってこんなにデッカイおっぱいの人なんていなかったし……いったい、何食べて育ったらこんなになるんだろう……」
「別に……普通の食事だけど……」
 ユフィがおずおずと両手を伸ばす。
 ぺとり……と、指を広げたまま掴むようにして手の平を乗せると、そのまま遠慮がちに指を動かしてみる。
 ティファの乳房は思ったよりも遥かにやわらかく、それでいて瑞々しい弾力に満ちていて、ユフィの思うまま“むにゅむにゅ”と形を変えた。
「ブラしてないの?」
「ん〜……今はね。ちょっと頑丈過ぎて、通気性がね……。長いこと着けてると、蒸れるの。ストラップで肩も痛くなってくるし……」
 一日中どころか、一分一秒の間もなく、重い肉が胸にくっついているのだ。
 それを支えるブラがしっかりとしている分だけ、ストラップは肩に食い込んで筋肉を固くした。
 一日着けていれば、凝りはやがて痛みにまで変わってしまう。
「ふ〜ん……ゴツイんだ?」
「……言い方に気をつけてよね。まるで鎧でも着てるみたいに聞こえるわ」
「“ガードする”って意味じゃ、似たようなモンじゃない」
「それはまあ……そうだけど……」
「今は? タンクトップだけじゃないよね?」
「……んっ……あんまり強くしないで」
「ご、ごめん」
「今は、チューブトップ(収縮性ノンストラップブラ)だけ」
「でも……本当は、ずっとブラしてた方がいいんデショ?」
「……まあ……楽だし……型崩れするのが恐いし……そうした方がいいのはわかるんだけど…………や、やだ、くすぐったい!」
 ユフィが乳房を下から掬い上げるようにして持ち上げた時、指が脇腹に触れたらしい。
「ごめん。だけど、こうしてると楽じゃない?」
「え?」
「手ブラ」
「ばか」
 乳房を持ち上げて、むにむにと揉む。
 目を見張るほどに大きな肉の塊が、ユフィの両手で自由に形を変えた。
 ティファはしばらくの間、くすぐったがったりしていたが、やがて少しずつ無口になり、数分後にはとうとう目を瞑って、ユフィの手に身を任せてしまっていた。
 やわやわと揉み上げ、パン生地を捏ねるようにたぷたぷと形を変える。
 その手触りは、やわらかくて、優しくて、乳房が女性の象徴と言われるのも、ユフィにはなんとなくわかる気がした。
 物心ついた時には、母はこの世には無く、母代わりの乳母はいたけれど、その乳母の乳房に触れた事は無かった。
 同じ年頃の女の子達は、ユフィを『頭領の娘』という目でしか見なくて、肌が触れ合うようなじゃれあいなど、ついぞした事が無い。
 神羅との闘いには自分も参加するものだと信じていたし、男に混じって修行の真似事(ユフィはあくまで本気だったのだが)をしている方が、同世代の少女に混じって日々を過ごすよりも何倍も楽しく、そして充実していたのだ。
 闘いに敗れ、男達が牙を抜かれて刃を折られ、負け犬のように尾を丸めてからは、たった一人で修行を続けてきた。
 そして今日(こんにち)まで、同世代の友人と遊ぶ事など、考えもしなかったのである。
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