■感想など■

2012年08月19日

[THEM]『Piece.05』「ふたりあそび」〜彼女にはナイショ〜

■■【2】■■

 ユフィの両手で揉み上げられ、ティファはうっとりとした表情を浮かべ始めていた。
「気持ち良いの……?」
 ユフィがそう聞くと、彼女は無言でこくりと頷く。
 身を、任せていた。
『かわいい……』
 ユフィは不意にそう思った。
 思ってから、その自分の心の動きに戸惑いを感じた。
 ティファを可愛いと感じるなんて、初めてかもしれない。
 彼女はいつも強くて、嫌味なくらいカッコよくて勇ましくて、エアリスとはまた違った『おねーさん』だった。
 そのティファを、今、自分が気持ち良くしてる。

 自由にしてる。

 胸がどきどきした。
『なんだよ!? アタシはレズビアンなんかじゃないぞ!?』
 祖国ウータイの宗教寺院の僧の間には、衆道(男性同士の恋愛)を「清きもの」「美しきもの」として嗜(たしな)む者もいるが、女性同士というのは聞いた事が無い。
 ウータイを出て、こうしてティファ達といろんな地方を巡るようになって初めて、女性同士で愛し合う人達がいる……というのを見知ったのだ。
 なのに、自分がまさか女性相手にこんな気持ちになるなんて……。
『違う違う違う! これは……その……あれだ、アタシにはお袋がいないから、だから……ちょっと人のおっぱいが気になっただけで……うん、そうだ……そうに決まってる』
 心の中で言い訳して自己弁護しても、それでもユフィの手はティファの乳房を離れず、そのやわらかさ、まろやかさを楽しむように動いた。

 ……と。

「あっ……」
 ユフィは、不意に感じた自分の肉体の変化に声を上げ、ティファの胸から両手を離した。
 ささやかな胸が“きゅうう……”として、乳首が“ちくん”と痛んだ。
 自分で自分の胸に触れてみる。
 わからない。
 触れるだけでは、何も感じない。
 だけれど、
「いたっ……」
 指で、乳首の辺りを押してみると、なんだかこりこりしたものがあった。
 梅の種のような、サクランボの種のような、そんなこりこりとした感触のものが胸の中に埋まっている気がした。
「……どうしたの?」
 はっ……として気がついたティファが、頬を赤らめたままユフィを見た。
 陶然としてユフィに胸を触られるままになってしまった自分が、少し恥ずかしかったのだ。
「胸が……」
「胸?」
「痛い……どうしたんだろアタシ……」
「痛い? どこが?」
「……びょ……病気じゃないかな? ……大丈夫かな?」
 両手で自分の胸を覆ってティファを見る彼女は、まるで雨の中置き去りにされそうになっている子犬を思わせるほど心細げだった。
「ちょっと見せて」
 ユフィを自分の隣に座らせ、胸に手を当てる。
 薄くても、少年の胸とは違って脂肪の持つ柔らかさがあった。
「ここ?」
 周囲から、中指と薬指を揃えて軽く押していく。
「……ちがう……と思う」
「……ここ?」
「いたっ! ……そ、そこ……なんかあるだろ?」
 わずかな膨らみの、おそらく乳首だと思われるしこりの下に、もう一つ別の、小指の先くらいのしこりがあった。
「…………今まで痛かったこと、ある?」
「最近、時々……でもこんなに痛いって思った事は無かったよ」
「ふうん……」
 この痛みは、ティファにも経験のある痛みだ。
 成長期に入って、乳房の中に乳腺のタネのようなものが出来る。
 痛みは、それが発達し始める合図のようなものだからだ。
 ただし、ユフィの歳までこうならなかったのは、多少問題があるようにも思える。
 ユフィは16歳になる。
 ある程度……ささやかではあるが、乳房脂肪もある。
 バージスライン(乳房の境)はまだ全然曖昧ではあるが、確かに膨らんでいるのだ。
 にも関わらず、今になって乳腺の発達が始まるなどというのは、今まで乳腺だけが異常なほど未成熟だったという事になる。
 普通、乳腺の萌芽(ティファを診た時の医師は、こう表現した)は、若干の個人差はあるものの本来なら7歳から13歳くらいには経験しているものだからだ。
 戦時下で栄養的に不充分だったウータイの食生活や、ホルモンバランスの異常などでは説明がつきそうにもない。
「大丈夫。病気じゃないわ……たぶん」
「ホント?」
「……う……うん。私にも経験ある。“これから大きくなるゾ!”っておっぱいが頑張ってるのよ」
 今は不安にさせる事も無い。
 ティファはそう考えて、ユフィの胸をそっと撫でた。
「あ……」
 ユフィの口から、普段の彼女からは想像も出来ないほど可愛らしい声が漏れた。
 そして……
「あのさ……キ……キス……ってさ……」
 ユフィは気が付くと、そう口にしていた。
 なんとなくそういう気分になった……としか、言いようが無い。

 ティファの指があんまりにも優しかったから。

 ティファの顔があんまりにもそばにあったから。

 目がとろんとして、視界に霞みがかかったような気がした。
 自分でも何を言ってるのかわからない。
 葛藤していた。
『どうしちゃったんだアタシは……』

 まさか、ティファにキスしてみたい……なんて!

「え? なに? キス?」
「あ、いや……その……アタシ、その、まだしたこと無くてさ」
「ええっ?」
「いや、その、だから、け、経験はあるんだ! 当たり前だろ?!」

 子供の頃飼ってた犬の“疾風丸”(ハヤテマル)が相手だけど。

「その……だから……き、きもちいいキスってゆーの? するだけで頭くらくらきちゃうみたいな……ティ、ティファなら経験あるかなぁ……って」
「……まあ……ある……かな……?」
 ティファは目をパチパチと瞬かせると、少し寂しそうに言った。
「……ズイブン自信無さげじゃん」
「だって……」
 気持ち良いキスは何度もあったけれど、本当に心から好きと思えた相手とのキスは、無い。
 ……無かった。
 それはやはり、寂しい……。
「……してみる?」
 ティファは、なんとなくその場の雰囲気から言ってみた。
 途端、ユフィの目がいっぱいに開かれる。
「ええええええええええっっ!??」
 正直ティファは

 マズった!

 と、思った。
「あっ……だっ……イヤならいいの。別に、そのっ、ちょっと言ってみただけだから」
「してみる」
「そうよね。やっぱり女同士じゃ……え?」
「……なに?」
「…………」
 まじまじとユフィの顔を見る。
 不機嫌そうに唇を突き出して、真っ赤になってた。
「な、何事も経験だろ? だったら、まあ、いいかな……って思っただけ」
「そう……」
「……なんだよ。するなら早くしてよ」
「あ……うん……じゃあ…………するね?」
「うん」
 いつもこれくらい素直ならなぁ……と、きっと他のメンバーの誰もが思ってしまうくらい素直に、ユフィは“きゅっ”と目を閉じた。
 一重の瞼(まぶた)がふるふると震えている。
 ちょこんとした可愛らしい鼻の下には、うっすらと産毛が生えているのが見えた。
 眉も元気なまま、キリリと濃い。
 適度に焼けた肌は、ピチピチとした張りと若さに満ちている。
 まだ、顔の無駄毛を剃ったりスキンケアに気をつけたり……なんて事とは、まるっきり無縁なのだ。
 恋愛もセックスも……いや、キスすらも知らず、野山を駈け回るのが一番楽しい時期のやんちゃな男の子が、女の子の形をして座ってる気がした。
 ティファは……たぶんこの時初めて、ユフィを自然に、心から「可愛い」と思えた。
 まだ無垢なのだ。
 この子は。
「……ん……」
 両手でユフィの頬をふうわりと包み、わずかに上向かせる。
 そ……と顔を近付け、上唇だけに唇で“ちょん”と触れた。
 それだけで“ぴくん!”とユフィの体が反応する。
 “ちょん、ちょん”と、小鳥がついばむようなキスを繰り返し、舌先でユフィの下唇をちょっとだけ嘗めた。
 それから、ゆっくりと相手を慈しむようなキスをする。
 舌をユフィの口内に入れる事はせずに、唇を自在に動かし、彼女の唇だけを“食べる”。
『うわーー!! うわーー!! うわーー!!』
 未知の感覚と、それがもたらす思いもよらない快感に、ユフィの頭はすっかりパニックに陥り、戸惑い、自分がどうなってしまうのか不安で心細くて、ベッドのシーツを掴んだまま指の関節が白くなるまで握り締めた。
 “んむ……あむ……”と唇を“食べられる”たび、ピリッ……と背筋を電気が走った。
 ぶるるっ……と体が震えて、急におしっこがしたくなってムズムズして、そんな自分が恥ずかしくなって思わず泣きそうになって涙が滲(にじ)んだ。
 いつの間にか、二人の唇が離れている事にも、気付かなかった。
「ん……」
「ふう……」
 二人とも、互いの唇を離してからも、しばらく甘い余韻に浸っていた。
 ユフィはともかくティファでさえ、その心地良さに酔っていた。
 男とするのとは全く違う、優しくやわらかく心地良い感覚だったからだ。
 ふ……と、二人ともほとんど同時に目を開ける。
 照れ臭くて、どちらからともなく笑みが零れた。
「……す……ごい……あたま……まっしろ……だぁ……」
 まだユフィは“とろん”とした目をしていた。
 目に涙が滲んでいて潤み、おまけに充血して白目が赤味がかっている。
「気持ち良かった?」
「……うん……でも……またおっぱいが痛い……」
「ふふ……キスで感じちゃったんだ……」
「……しょ、しょうがないだろ? 初めてだったんだから!」
 ユフィはティファの言葉にむっとして、そっぽを向き、唇を突き出して拗ねた。
 その仕草には、仲の良い妹が姉にするような甘えがあった。
「やっぱり初めてだったんだ」
「う……」
「……いいの? せっかくのファーストキスなのに」
「……いいよ。だってこれは練習だもん」
 ユフィの言葉に、ティファはちょっと目を見開いて、それから優しく笑った。
「じゃあ、もっと練習しなくちゃ、ね?」
「……もっと? ……ど、どんな……??……」
 こくん……と喉を鳴らて、ユフィが身を乗り出す。
 好奇心に火が着いてしまったようだ。
「それはね……」
 ティファが、とろけるような微笑みを浮かべる。
 可愛くて仕方ない、やんちゃな妹を見るような……そんな微笑みだった。

 3日後、妙に仲の良いティファとユフィを見て、エアリスはなんだか仲間ハズレな気分になってしまい、拗ねてしまった彼女を苦労して二人がかりで宥(なだ)めたのは、


 また、別の話。


         −おわり−

■■[THEM]『Piece.05』「ふたりあそび」〜彼女にはナイショ〜■■

「2012/08/12 00:00」投下開始
「2012/08/19 00:00」完了
この記事へのコメント
ありがとう推力さん!
Posted by 青玉 at 2012年08月19日 00:28
 えっと……よくわかりませんが、はい。
Posted by 推力 at 2012年08月27日 10:16
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