■感想など■

2012年09月23日

[THEM]『Piece.09』「オリジナルザックラBL風味」

 黒髪の、比較的体のがっちりとした青年が、今にも死にそうな顔でふらふらと歩いて来た時、彼は、少し遅い昼食を慌てて掻き込むのに夢中であった。
 午後の訓練にはまだ間があるのだが、以前訓練中にみっともなく吐き戻した経験を持つ、この金髪の少年は、少しでも早く消化しようと、それだけを考えていたのである。
 だから、宿舎のリビングルームのテーブルに、じっと視線を注ぐ彼に気付いたのは、テーブルの上に広げたピッツァが、あと2ピースを残すのみとなった頃であった。
「…………なに?」
 おあずけを食らった犬よろしく、少年の座る背もたれに両手を置いて、ぐび……と唾を飲み込む青年に、少年は、氷よりも冷たい視線を向ける。
「食わせろ」
「やだ」

 ……即答だった。

 一呼吸も置かない少年の言葉に、青年の心がふかぁく傷つく。
「食わせろってば」
 それでも彼は、にっこりと笑って、彼の肩に「親しみを込めて」手を回した。
「やだよ」
 あくまで冷静に、何でもないかのように拒否の言葉を口にする少年に、青年のこめかみがぴくぴくと震えた。
 ……と、突然青年はぎゅううう……と少年の頭を抱えると、左手の拳を頭にぐりぐりと当てる。
「食わせろってば! いいじゃねーか少しくらい!」
「やだったらやだ!」
 それでも尚抵抗するのだから、少年の強情さも見上げたものだ。
「く〜わ〜せ〜ろ〜!」
「い〜や〜だ〜!!」
 残り2切れなのだから、あげてしまって良さそうなものなのだが……。少年も意地になっているのか、がんとして譲らない。
 二人はひとしきり、無言でじたばたと取っ組み合うと、やがて息を切らして向かい合った。
 肩で息をして、互いを睨み合う。
「いいかクラウド。男ってのは、困った人には優しくしなくちゃダメなんだぞ」
 どうやら懐柔策に切り替えたようだ。
 にっこりと笑みを浮かべ、もっともらしく肯きながら両手を組む。
「誰が困ってるのさ?」
「俺」
「どうして?」
「寝坊して、訓練に遅れたから追加訓練食らった」
「自業自得じゃないか」
「………………」

 …………失敗したようだ。
 (ひょっとして頭悪いのか?)

「あ〜あ、昨日は二人であんなに燃えたのに……冷たいぞクラウド」

 ……今度は泣き落としか?

 青年は、クラウドと呼ばれた少年の向かいのイスに座り、いじいじと背もたれに「の」の字を描いたりした。

 ……鬱陶しい事この上ない。

 クラウドはうんざりしながら、大きく溜め息をついた。
 この青年に憧れる、多くの仕官候補生や女性兵が見たら、どう思うだろう……と、ちらりと思う。
 ソルジャー1stにほぼ確定し、後は認定式を待つのみの、性格はともかく能力は優秀な、年上の親友を眺めやりながら、クラウドは少々頭が痛かった。
「ザックス……人が聞いたら誤解するから止めろよな。ポーカーしただけだろ?」
「『これ以上は止めて』って泣いて頼んだのは誰だ?」
「それはアンタ。スリーカード以下で勝てると思ってるアンタが悪い」
「俺の下でぐっすりだったくせに……」
「二段ベッドだから当たり前」
 何を言っても動じないクラウドに、まるで拗ねたような視線を送る。
 対してクラウドは、実に慣れたものだ。
 ひょい……とピッツァを摘み上げると、彼が物欲しそうに見ている前で、平然と平らげてしまった。
「買ってくればいいじゃないか」
 クラウドはピッツァを缶ジュースで流し込みながら、いじましく皿に残ったカケラを摘まんでいるザックスに向かって、溜め息と共に口を開く。
「……金が無い」
「どうして?」
「いやあ……まあ、な、いろいろと」
 あさっての方向を見てぼりぼりと頭を掻くザックスを見て、クラウドは、
『女か……』
 と、溜め息と共に心の中で小さく思った。
「貸して」
 目をきらきらさせて、両手を合わせて頼み込むザックスに、クラウドは無言で舌を出す。
「ケチ」
「自業自得だよ。我慢しなよ。明後日は給料日だろ?」
「つれないなぁ……俺とお前の仲じゃないかぁ……」
「誤解されるから止めなって。殴るぞ」
「ソース付けたまま凄んでも、怖かないぜ」
 ごく自然な動きで、クラウドの唇の右に付いたソースを、親指で拭う。
 彼はちょっとの間じっとその指を眺めていたが……

ぺろっ

 ……と、「嘗めた」。
「!」
 途端に、クラウドの顔が赤く染まる。
 自分でもどうしてだか理解できないが、血が頭に上り、頬が火照るのを感じたのだ。
「止めろよなそういう事!」
 パニックに陥った頭をムリヤリ引き戻し、殊更に声を張り上げるクラウドに対して、ザックスの方は平気なものだ。
「ん? なんで?」
 何でもなかったかのように指をしゃぶっている。
 クラウドは、深い脱力感に挫けそうだった。
「………………50ギルだけだぞ」
 我ながら甘いな……と、クラウドは自嘲気味に笑う。
 その笑みをどう誤解したか、ザックスは彼をぎゅう……と抱きしめると、
「やったぜクラウド! 愛してるよん」

んちゅ……

 彼の頬にキスをした。

 その後何があったか……二日後の給料日まで、彼が一文無しでどう過ごしたかは、わざわざここに記す事も無いだろう。
 その間、すきっ腹を抱えて哀れにすがるザックスを、ずっと相手にしなくてはならなかったクラウドも、大変といえば大変だったのだが……。

 それは、平和な日常の一コマとして、記憶の片隅に記されるのみである。


         −おわり?−

■■[THEM]『Piece.09』「オリジナルザックラBL風味」■■

「1998/02/20 ??:??」執筆完了(未公開)
「2012/09/23 00:00」投下開始
「2012/09/23 00:00」完了
この記事へのコメント
わはははは!ザックいいキャラだなぁ
Posted by 青玉 at 2012年09月23日 00:36
 自分の中での彼のキャラはこんなんです(笑)。
Posted by 推力 at 2012年09月24日 13:32
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