■感想など■

2012年09月01日

【ボクキミ】ユウ11

■■【11】■■

 11月13日、日曜日。

 目が覚めた時、ユウは素裸だった。
 脱がされたはずのコスチュームは、ユウの意識が喪失した時点で形状を維持出来ず霧散したのか、どこにも見当たらなかった。
 世界が揺れている。
 まだ、夢を見ているようだった。
 意識がぼんやりとして、ここがどこなのかも咄嗟には把握出来なかった。
 まだ学校のクラブハウスの一室の、そこに敷かれたままの、薄汚れたマットレスの上にいるのだと気付いたのは、襲い来る快楽の奔流に再び飲み込まれそうになったからだ。
 誰かが、大きく開いた自分の右太股を抱き抱え、男根で膣を“使って”いた。体の動きに合わせておっぱいが“ゆっさゆっさ”と揺れ動き、視界が揺れる。
 昨日いた男達とは、体格も肌の色も違う男だった。よく日焼けし、左腕に何重もの鎖のタトゥが刻まれている。マスクをしておらず、剃り上げているのか、禿頭(とくとう)が汗と脂でてらてらと光っている。
 でも、それだけだ。
 視界にフォーカスがかかっているようで、周囲の様子がさっぱりわからない。
 ぬるま湯に首までつかってたゆたっているような、どこか皮膚感覚さえも鈍く、そしてぬるく甘ったるい感じだけが体に纏わりついていた。
 ふと男が呻き、腰の動きを止めて体を震わせた。

 ──あぁ……出てる……ナカで……出てる……

 肉茎の先端から迸った精液が膣奥を叩く。
 全身が痙攣するようにビクビクと震えた。
 やがて意識が真っ白に塗り潰され、そして……途切れる。
 次に気が付いた時には、もう別の男になっていた。
 脚を開かれ、体を割り開いて挿入される。
 すぐに男が中に入ってくる。
 再び体が揺れ、熱い汗が顔に、おっぱいに、腹に降り掛かる。
 男の匂い。
 汗の匂い。
 むせかえるような、濃密な精の匂い。
 そしてまた膣内で射精され、気を失う。
 その繰り返しだった。
 何度目かの覚醒で、ユウは「彼」の声を聞いた。
 いや、それはもしかしたら夢の中で聞いたのかもしれない。
 断片的で、不確かで、そして変にエコーがかかっているような感じすら、したから。

「気が付いた?」

 どこにいたの?

「さすがにずっと男の相手してると疲れたんじゃない?」

 ずっと?

「一晩中だよ」

 一晩中……。

「昨日は6人だったろ」

 そうだった?

「5人追加したんだぜ」

 5人?

「何回出された?」

 わからない。

「まだ平気?」

 わからない……。

「平気そうだな」

 もうやめて……。

「まだ全然満足してねーんじゃね?」

 やめて……。

「それにしても、中で出しても、何分かしたら消えるってスゴイよな」

 消える?

「吸収されるのか、それとも排除されるのかはわかんねーけど」

 何が?

「ナカ出しし放題だよ」

 もう助けて。

「俺、今日は哉汰と約束があるからもう行くわ。ユウちゃんは、もうちょっと楽しんでよ」

 待って。

「じゃあ、後で」

 待って。

 置いて行かないで。

 その後の記憶は断片的過ぎて、本当にあった事なのか、それとも自分の妄想だったのかわからない。「彼」は一晩中、男達の相手をしていたと言った。その間、ずっと膣内で射精されていたのだろうか? 体の奥に哉汰のものではない精液を注ぎ込まれていたのだろうか?

 哉汰。

 「彼」は、哉汰と約束があると言った。
 哉汰と会うのか。
 自分はもう、何日もまともに彼と会話をしてない。
 いつも短いやりとりだけだ。
『カナちゃん……』
 彼を想うと涙が溢れる。
 でもそれ以上に、彼を想いながら見知らぬ男に抱かれている自分が、どうしようもなく悲しかった。
 
§         §         §


 夢現(ゆめうつつ)の中で男の誰かに請われ、いつものコスチュームを再び身に纏った記憶があった。
 誰かに抱き抱えられ、四角くて大きな車に乗った記憶があった。
 明るい日の光の中で、二人同時に責められた記憶があった。
 キスされながらおっぱいを揉まれ、おっぱいを吸われながらあそこを指が“くちゃくちゃ”と出入りした記憶があった。男は左右に陣取っていたようだったが、どっちの男がキスして、どっちの男があそこを弄っているのかはわからなかった。
 あそこを舐められながら、両手に掴んだ陰茎を交互に咥え、しゃぶった記憶があった。
 おっぱいで陰茎を挟んで、扱いて、嘗めて、咥えた記憶があった。
 声を放った記憶があった。破廉恥に叫び、請い、悦び、泣き、うっとりと恍惚に溺れながら。
 膣内で射精して欲しくてたまらなかった。
 だから自分からしがみついた。
 膣奥を叩く精液の勢いに、何度も簡単に意識を持って行かれ、それがどうしようもないほど気持ち良かった。中出しされた後に膣から精液が垂れ出てくるという事がほとんど無いことに気付いたのは、何度目の膣内射精の後だったろうか。「彼」が夢うつつの中で言っていたように、本当に「吸収される」のかもしれない。
 でも、それより何より、膣内で射精されると、その悦びが心に満ち、だから男達とのセックスが気持ち良くて仕方なかった。
 途切れた記憶の合間には「彼」もいた。
 「好きだ」「愛してる」「オマエは俺のもの」「毎日オマエの事ばかり考えてる」……そんな“愛の言葉”を耳元で囁きながら、「彼」は2回も膣内で“射精してくれた”。

 嬉しかった。

 幸せすぎて、いっそこのまま死にたかった。

 膣から、子宮から充実し満たされて至福に“侵されて”ゆく。
 正常位で「彼」に組み伏せられ、抱き締められ、ゆっくりとしたストロークで膣奥をつつかれたら、至近距離から「彼」の垂らしてくる唾さえもがユウにはたまらない甘露だった。もっともっととねだった。甘ったるい──「好きだ」「愛してる」「オマエが必要だ」「オマエがいないと俺はダメになる」「ずっといれてくれ」「俺のものでいてくれ」「俺のものだ」「オマエといると幸せで死にそうだ」──などの言葉を囁かれ、ディープキスされながら、子宮口に熱い精液が降り掛かると、あっと言う間に意識が飛んだ。
 たっぷりと膣内に射精され、意識が混濁したまま「彼」を強く強く抱き締めた。
 自分が何を口走ったのか覚えていない。
 きっとろくでもない事だろうとは思うが、声を消されている以上、少なくとも「彼」にも男達にも聞こえていないと思うと安心出来た。
 安心……出来た。


 深く暗い海の底からゆっくりと浮かび上がるみたいに、意識が鮮明になってきた時、ユウはどことも知れない場所を走る車の中にいた。
 誰かの膝の上に“だっこ”されながら、両方のおっぱいを手慰みのように“もにゅもにゅ”と揉まれていた。
 浅黒い手だ。
 ゴツゴツした、大きい手だ。
 その手が鷲掴みにしても掴みきれないおっぱいを、男はパン生地か粘土でもこねるように揉みしだいている。
「気がついたか?」
 耳元で、耳たぶを嘗めるようにして囁かれる。
『あぁ〜……』
 それだけでゾクゾクして体が熱くなった。
 首をすくめ、口を開けたら涎が垂れた。
「黒髪の方に変身しな」
 男が何を言っているのかわからず、ぼーっとしていると、男は雑誌のページを開いてユウに見せた。
 それは18禁の男性雑誌のようだった。
 どこか見覚えのある巨乳系AV女優が、短い白のタンクトップとミニスカートを身に付け、大股開きでにっこりと微笑んでいる。豊かなおっぱいはタンクトップからはみ出して濃い乳輪が見えているし、パンツを履いていない股間は限界ギリギリのモザイクが入った性器が“ぱっくり”と口を開いている。
 破廉恥をカタチにしたような、そんな写真だった。
 それで、わかった。
 男は自分に、あの黒髪のモデル姿になれと言っているのだ。
 そして、それはつまり、これから自分は外に連れ出され、この男に外で抱かれるという事を、意味していた。
 涙は、出なかった。
 ユウは淡々と変身し、まず車内で一度、男にめちゃめちゃに抱かれた。下に組み敷かれ仰向けに脚を開き、四つん這いにされて尻を捧げ、対面座位で尻の穴をいじられ、男に跨って巨大なおっぱいを“ゆっさゆっさ”と揺らしながら自分で腰を上下に揺すった。
 揺らされ、折り曲げられ、組み伏せられ、また揺らされた。

 世界が揺れた。

 ぜんぶゆれた。

 意識が白濁した。

 いつ、外に出たのかわからない。
 気がついたらコンクリートの壁に手をついていた。
 体温調節のためにエンチャント(魔力付加)された体表面には、冷気を感じなかったが、それでも冷たい風がそよいでいるのはわかった。
 頭上を時々、線路を走る電車の音がする。
 夕方だった。
 河原の線路橋だった。
 そこで、男にバックでナマ挿入されていた。
『あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ』
 コンクリート製の橋柱の壁面に両手を付いて、がに股気味に脚を開き、背後の男に尻を両手でガッチリと掴まれ、固定されながらガツガツといいように責め立てられていた。重たいおっぱいが重力に引かれ、体から下に垂れて“ゆっさゆっさ”と揺れ動く。顔を伏せているおかげで、長い黒髪が顔を隠してくれているのだけが幸いだった。

 幸い?

 今更、誰に顔を見られて困るというのだろうか。
 短い白のタンクトップは乳房の上に捲り上げられ、スカートはいつ脱がされたのかわからない。元々ノーパンなのだから脱がす必要も無かった筈だが、男の考えなどユウにはどうでも良かった。
「へへっ……いいかっ!? いいだろっ!?」
 男が何か言っている。
 真っ赤なチョーカーで声が消されているので答えられないが、答えるつもりもなかった。
 いや、もし答えられても、息も絶え絶えでまともに答えられたかどうかもわからない。
 涙と涎がぽたぽたと垂れる。
 特に涎は、生肉を前にした飢えた野犬のように、喉までだらだらと垂れていた。
 汗と淫液で、おっぱいもあそこもべちょべちょだった。
 体中の水分が全ていやらしい汁になって体の外へと流れ出していく気がした。
 膣内を蹂躙する陰茎が太い。そして膣孔の擦り方に偏りがあるため、少し曲がってる気がする。
 自分の尻をバックで責め立てている男を、ユウは振り返った。上半身に黒のダウンジャケットを着込み、頭を短く刈り込んで、右耳にルーズリーフのようにリングピアスをいくつも付けている若い男だった。
 モデル姿に変身しろと言ったのとは、違う男だ。
 いつ、変わったのか。
 というより、何人に抱かれたのかさえわからなかった。
 でも、

 どうでもいい……。

 昨日は結局、哉汰のところには行けなかった。
 だから早く終わって、今日は彼のところに行きたかった。
 また、彼のモノを口に出来ると想うだけで耐えられる。
 彼のたまらなく美味しい精液を、まるで高級ワインのように味わい、舌で転がし、香りを楽しみ、ゆっくりと嚥下することを想えば、こんなことは些細な事だった。
 哉汰とキスをして、その唇を嘗めて、舌をしゃぶって、唾液を吸って、飲ませてもらうのだ。
 哉汰におっぱいを嘗めて、しゃぶって、吸って、揉んでもらうのだ。
 哉汰の陰茎を嘗めて、しゃぶって、吸って、飲ませてもらうのだ。
 つまりは、そう、

 ──哉汰を、思うさま、味わうのだ。

 それだけを、想った。
 その思考そのものが、既にかつてのユウではなく、快楽に溺れ、淫乱で淫欲まみれに爛れた結果なのだと、知ることさえ無いままに。
「おい」
 快楽の中、哉汰の“おちんちん”をどう可愛がってあげようかという妄想に埋没していたユウは、不意に男が声をかけ、右足を掴んで持ち上げた拍子にバランスを崩し、壁から右手を離した。まるで犬のオスが小便をするようなポーズだった。左手だけで体を支え、男が責めるままに体を揺らされる。脚を開いたことで結合が深くなり、頭の中が真っ白になって哉汰との妄想が押し流されてしまう。
『ああっ!! ああっ!! あぁあああっ!! 』
 ガクガクと首が揺れ、おっぱいも“だっぷんだっぷん”と盛大に揺れ動く。男との結合部分からは“ぶちゅぶちゅ”と粘液質な水音が聞こえてきていた。淫汁は、太股にまで垂れている。飛び散り、地面にまで滴っているに違いない。
『ああ、すごいっ! すごぉいっ!! ふかぁいよぅっ!! すごぉいぃっ!!』
 脳が焼かれる。
 すっかり開発されたポルチオ性感帯が、膣奥から体全体に例えようもない幸福感を広げてゆく。ユウの子宮口は、妊娠もお産の経験も無いのに、そこがコリコリではなく少しやわらかめになっている。そこを男の陰茎が圧迫し、揺らし、「オスに求められるメスの本能」「男に孕めと種付けされる女の本能」を刺激し、脳を蕩かせ思考を沸騰させるのだ。
 自分がいかにだらしなく、とろけた顔をしているのか、ユウにその自覚は無かった。だが、哉汰には絶対に見せられない、見せたくはない顔をしているのだろうという思いはあった。
 激しくもねっとりと執拗な抽送が生む快美感を“楽しんで”いたユウは、男が尻を掴んでいた左手を伸ばし、跳ね回る右乳房を掴んで揉み立てると、いやいやと首を振った。
 もっと男の男根を味わいたかった。
 陰茎が与えてくれる快感を貪りたかった。
 巨大で男の手にも余る肉でありながら、ユウはおっぱいが弱かった。揉まれ、そして乳首を捏ねられたり、“きゅきゅ”と摘まれたりすればあっという間に昇り詰め、オルガスムスに埋没して意識が飛んでしまうのだ。
 ポルチオ性感を高められた後は特にひどい。繰り返し何度もイキ、体全体が熱くなって耳たぶを噛まれても首筋を嘗められても脇腹を撫でられてもイってしまう。
 それでは陰茎が与えてくれる膣内快感を十分に楽しめなくなってしまう。
 “いやいや”と首を振ったのは、その抗議のためだった。
 男の手が強めにおっぱいを揉みしだく。
 赤く充血してぱんぱんに膨らんだ、少し大きめの勃起乳首を摘み、“きゅっきゅっきゅっ”と断続的に刺激する。
『あっ……イ…イク……』
 何度目かの絶頂だった。
 立て続けにイッた後はいつもそうだ。
 あと少しで頭が“飛ぶ”。
 何もわからなくなる。
 そう感じた、その瞬間だった。

「だからって撮影するってのはまた別の話だろ!?」

 え?

 一瞬、それは、白濁した意識が生んだ幻聴だと思った。
 でも違った。
「誰だ!」
 今まで自分をバックから激しく責め立てていた男が、突然陰茎を抜いて背後へと走っていくのがわかった。ユウはわけがわからず、地面にへたりこんだまま、のろのろと後ろを振り返る。
『……え?』
 さっきまで自分の腿を抱えて馬鹿みたいに腰を振っていた男が、パンツごとズボンを引き上げながら走っていくのが見える。
 だが、それはいい。
 そんなものは、どうでもいい。
 問題は、その向こう。
 夕焼けの土手を、互いに罵りあいなら必死に駆け上がってゆく二人の少年の姿だった。
 その片方。
 涙で滲んでぼやけた視界で、懸命に一人の少年の遠ざかる後姿へと目を凝らした。
 それは、ユウが知っている人物に、良く似ていた。
 最も心を許した少年の、その背格好にすごく良く、似ていた。
 そう。
 そうだ。

 ──哉汰。

『うそ……うそぉ……』
 ユウは地面に座り込んだまま、ぶるぶると震える手で乱れた髪を直した。そして今になってようやく気付いたかのように、慌てて剥き出しになったままの裸のおっぱいを、タンクトップに仕舞おうとした。だが、大き過ぎるおっぱいは短く小さいミニタンクトップでは到底全部隠す事も出来ず、上からも下からも、そして横からも白くてすべすべとした柔肉が溢れてこぼれてしまう。
『え……? なんで……?』
 そして、ここに至ってユウを驚愕させたのは、改めて見た自分の体の惨状だった。
 おっぱいは汗や唾液でべとべとに濡れている。それはいい。いや、厳密には良くはないが、「いつものこと」だから目を瞑ってもいい。
 問題はそれではない。
 おっぱいや太股を中心として、体中に残された、黒っぽく変色した内出血の痕(あと)だった。それは男達の手で、指で、そして口で、歯で付けられた、激しいセックスの残滓。特にボツボツといくつも汚らしくシミのように散らばっているのは、いわゆる俗に“キスマーク”と呼ばれる内出血斑だった。
 いつもであれば、変身を解けば消えるものが、一昼夜、間を置かずに複数の男達に何度も繰り返し抱かれ続けた、その結果だった。
 ユウは真っ青な顔で土手を見上げた。
 そこにはもう、先ほどの少年の姿は無い。
『カナちゃん……なの?』
 今のが、もし、彼だったら。
 哉汰だったなら。
 この姿を見られたことになる。
 体中に、男達に“愛された”痕をいっぱい刻み、そしてその姿のままバックから尻を抱かれ、ナマで挿入され、快楽に狂い淫欲に溺れていた、この姿を。
『ち、違うよね……カナちゃん……じゃないよね……』

 どうしてここに?

 何をしてたの?

 考えても理由は浮かばない。
 やはり見間違いだったのではないか?
 あまりにも自分が哉汰の事ばかり考えるものだから、そう思えてしまっただけなのでは?
 哉汰に見られたかもしれないことを恐れるあまり、ユウは知らず自らの記憶の改竄をしてしまおうとしていた。
『あっ……』
 リングピアスの男が、ブツブツと文句を言いながら地面に唾を吐き、真っ青な顔でまだ地面にへたりこんだままのユウを強引に立たせると、近くに落ちていたスカートを拾い上げた。
 そして下半身が裸のままのユウを、河川敷に停めたままの車まで強引に引き摺っていく。型は古いが、車体はピカピカに磨かれた黒いワンボックスタイプのライトバンだった。
 ユウは考える事をやめ、男に手を引かれるままにふらふらとついていった。
 そこでユウは男に、中断された続きとばかりに、犯されるようにして再び抱かれた。
 車内には他に2人の男がいた。
 後部座席のドアを開かれ、乗り込むように指差されたユウは、上半身を車内に入れたところで白い尻を掴まれ、そのままバックから挿入された。
 前置きも何も無い。
 “ぶちゅっぶちゅっぶちゅっ”と、とろとろに濡れて緩んだ膣が立てる粘液質な水音が辺りに響く。
 男はガツガツと叩き付けるように腰を前後させ、ユウの白くて豊かな尻が波立つ。
 “バチン”“バチン”と、男がその尻を平手で叩き、赤い手形をいくつもつけてゆく。
『ああっ!! あああぁあ〜〜〜っ〜〜〜!!』
 足を広げろと両足首を蹴られると、がに股のような格好のまま腰をしっかりと掴まれたところで意識が飛んだ。
 今度こそ、何もわからなくなった。
 白濁した意識の中で、いつの間にか口に咥えた男根をしゃぶっていた。
 重力に引かれた重たい椰子の実おっぱいを揉まれ、乳首を扱かれ、吸われ、噛まれた。
 3人がかりだった。
 狂うなという方が、無理だった。
 最後は膣内にたっぷりと射精され、口内で射精され、長い黒髪が散る背中に射精された。
 中も、外も、白っぽい粘液でどろどろになった。
 息も絶え絶えでぐったりとしていると、
「車の中が臭くなる」
 と男に言われ、真っ赤なチョーカーを外されて、河川敷の草叢の中に突き飛ばされ、捨て置かれた。
 いらなくなったおもちゃのような扱いだった。

ぶうううぅぅ……ぶちゅぶちゅぶちゅ……ぶっ……

 膣内に送り込まれた空気が、肉を割って外に放出される音が、まるで放屁のようにマヌケな音を立てた。
 仰向けになった背中やお尻や太腿に、青臭い雑草がちくちくと痛かった。
 車のエンジン音が遠ざかってゆく。
 空が夕焼けで真っ赤に染まっている。
 冷たい風が、誰も通らない冬の河川敷を吹き抜けてゆく。

 涙が、溢れた。

 ただその中で、ひたすらに祈った。
 あの少年が、哉汰ではありませんように。
 哉汰に良く似た、他の誰かでありますように。
 それだけを、ひたすらに、祈っていた。


 日が落ち、辺りがすっかり暗くなると、ユウはのろのろと身を起こして周囲に誰もいないことを確かめた。
 冬の夜の河川敷になど、余程の変人か変質者か浮浪者くらいしかいないだろうが。
 揺れ動く重たいおっぱいを、冷たい風が撫でてゆく。
 エンチャントによって体温は維持されているが、風の冷たさは感じるのだ。とはいえ、着る物など周りには何も無い。胸元まで捲り上げられたタンクトップには、べっとりと精液がこびりつき用を成さないし、そもそもこんな格好ではどこにも行けない以上、服の入手は難しかった。
 あれだけ男達に抱かれながらも、思ったより魔力は満ちていない。元の──優也の姿に戻るのは難しそうだった。魔女姿に再変身して、人々に見えないように魔力障壁を張って空を飛ぶのが精一杯だろうか。
 数日前から気付いてはいたが、男達から得る魔力だけでは、最早このハードな生活の中で、魔女の姿から優也へ戻る魔力を維持するのは難しくなっていた。
「ふぅ……」
 ユウはモデル姿から魔女の姿へと変身し、体にこびりついた男達の不快な臭いと、精液や唾液、そしてなんだかわからない“べとべと”したものを全て消した。
 やはり哉汰の上質な魔力と性遺伝子(精液)が必要だ。
 それが無くては、もう自分は自分でいられなくなるだろう。
 そんな予感がユウにはあった。
 本当の自分が「優也」なのか、それとも「ユウ」なのか。
 最近は特に、その境界が曖昧になりつつあるのもまた、事実なのだ。
「消えない……な……」
 街灯も無い暗闇の中、数時間ぶりに自分の声を聞きながら、ユウは胸元の、斑に散った内出血斑を指でそっと押さえた。
 きっと首にも、そして太腿の内側や尻や、ビスチェ風コスで隠れた下腹にもたくさんあるのだろう。

 キスマーク。

 そして噛まれた歯型や、強く掴まれた指の痕。

 哉汰ではない男達に散々弄ばれ、抱かれ、オモチャにされた証。
「見せられないよ……こんなの……見せられるわけ……ない……」
 嗚咽が漏れる。
 両手で顔を覆い、咽(むせ)び泣いた。

 でも。

 ああ、そうだ。
 哉汰の魔力があれば、何も問題は無い。
 哉汰の魔力があれば、全部消せるのだ。
 哉汰とキスをして、その唇を嘗めて、舌をしゃぶって、唾液を吸って、飲ませてもらえば。
 哉汰におっぱいを嘗めて、しゃぶって、吸って、揉んでもらえば。
 哉汰の陰茎を嘗めて、しゃぶって、吸って、飲ませてもらえば。

 ──全部、リセット出来る。

 また「綺麗な体」で“会える”のだ。
 両手から顔を上げ、うっとりと微笑むユウの髪は、いつしか 昏い赤……まるで熟したザクロかアメリカンチェリーのような、どこか毒々しい色彩になっていた。

§         §         §


 イメージを固め、いつもの魔女コスの上に、上半身を太股まですっぽりと覆う、ポンチョのようなものを羽織った。
 ファンタジーものとかに出てくる、全身を覆うマントのようなものとか、いっそライダースーツのようなものも考えた。でも、いつもと違い過ぎる格好は、哉汰にいらぬ不信感を与えるだけのような気がしたからやめた。
 男達によって体中に刻まれたキスマークと歯形を哉汰の目から隠すだけなら、きっとこれで十分だろう。そう思ったからというのも、ある。そこには「鈍感なカナちゃんにはきっと気付かれない」という、彼に対する侮(あなど)りも確かにあった。そして「自分の異常に気付いて欲しい」という無意識の働き掛けも、きっとあったに違いなかった。
 ともあれ、そうして夜もすっかり更けた頃、ユウは哉汰の部屋へいそいそと出掛けた。男女は逆だが、まるで平安時代の“逢瀬”のようだった。または、古い因習の残る田舎では今もあると言われる“夜這い”だろうか。哉汰の部屋の窓の外に立つ頃には、頭の中はもう魔力供給というより、むしろ“えっちなこと”でいっぱいになっていた。
 部屋に招き入れてくれた哉汰は、当然、いつもと違う格好の理由を問いたそうにしていたが、ユウが先を制するように
「この服が気になる? 今日の相手はね、いつになく強力な奴で、ボクの中の魔力が枯渇してちょっと治癒がうまくいかなかったんだ。それで、胸のところに結構ひどい痣が残っちゃったの」
 と言った。
「だ、大丈夫なのか!?」
「うん、内臓に達するようなものじゃないし」
「そ、そういう問題じゃない。ちょっと見せてみろ」
 懸命な形相で歩み寄り、ポンチョに手を掛けようとする哉汰の手を掴んで、ユウはやんわりと押し戻した。
 彼の心遣いが嬉しくて苦しくて切なくて、飛び上がりそうなほど心が浮き立つのに泣きたくなるほど悲しく、そしておっぱいに残る、男達に刻まれた汚いキスマークを思うと胸が潰れそうになった。
「……ほんとに大丈夫。いつもの魔力補給で、全部元通りになるから大丈夫だよ」
「でもなぁ……」
「もうっ。カナちゃんが心配するといけないから、こうやって隠してきたんだよ?」
 視線に想いを込めて、ちょっと甘えた感じに言うと、哉汰はいつも強くは出られない。
 ユウはそれを知っている。
 でも、それを知りながら、それをあえて行ってしまえるようになった自分を、ユウ自身「狡猾だ」と想った。
 もっと素直に哉汰に接したいのに、策を弄さないといけなくなっている現状を哀しいと想った。
「でも、さすがに痣が恥ずかしいから電気は消してね」
 そう言って、いつものように「大好きだよ」という気持ちを込め、笑顔で哉汰を見つめた。

 そして、哉汰とキスをした。

 「大好き」と想いながら、そのやわらかい唇を丁寧に嘗めて、震える舌を吸い出してしゃぶって、甘い唾液を啜って味わって飲ませてもらった。
 何人もの男達に嘗められ、しゃぶられ、啜られ貪られた唇で。

 哉汰におっぱいをあげた。

 「大好き」と想いながら抱き締めて、乳首を嘗めて、しゃぶって、吸って、たっぷりと揉んでもらった。
 何人もの男達に嘗められ、しゃぶられ、吸われ、噛まれ、揉まれ、叩かれ、抓られたおっぱいで。

 男達に穢され、弄ばれ、おもちゃにされて刻まれた記憶が、哉汰によって浄化され清められ、真新しい自分へとリセットされる。
 全てが“哉汰”に染まってゆく。
 そう思うだけで嬉しさのあまり頭がくらくらとして口内に唾液が溜まり、口を開けばだらだらと垂れてしまう気がした。
 あそこはもっとひどかった。
 キスした瞬間には膣が“きゅうん”と啼いて、子宮が“きゅんきゅん”と悦んで、“ぬるん”と膣液が溢れ、すぐにバルトリン腺液がたっぷりと滲み出して滴(したた)り落ちた。
 完全にスイッチが入っていた。
 発情のスイッチだった。
 雌が雄を求める性交願望のスイッチだった。

 体が全力で喜んでいるのがわかった。

 全身に力が漲り、活力を取り戻し、肌の瑞々しさや張りまでもが充足した。

 男達に付けられたセックスの残滓が、あっという間に薄れ、消えていったのが、視認しなくてもわかった。
『すごい……すごいすごいすごいすごいすごいすごいっっ!!』
 “ちゅうちゅう”“ぺちょぺちょ”と自分の乳首を赤ちゃんのように吸って、嘗めて、歯を立てないように唇で甘く噛む哉汰が愛しくて愛しくて仕方なかった。

 噛んでもいいのに。

 歯形をつけてもいいのに。

 キスマークだって、哉汰ならいいのに。

 むしろ「俺のものだ」って付けて欲しいくらいなのに。

 優し過ぎる哉汰がもどかしく、切なくて、そして物足りなかった。男達がする十分の一でもいいから、この体に「哉汰の印」を刻んで欲しかった。フェラチオで得る性遺伝子も、体に打ち込まれた「消えない楔(くさび)」では有り得たけれど、本当は膣奥でたっぷりと放出して、それを吸収して自分のものにしたかった。
 今日で、自分と哉汰のキスは17回目、乳吸いは12回目、そして……フェラチオは2回目になる。
 ユウはそれを全部覚えていた。
 「彼」や男達にされた回数は覚えていなかった。
 覚えておくつもりもなかったし、覚えられないほどキスや乳吸いやフェラチオやセックスを繰り返していたということでもあった。
 だからこそ哉汰との逢瀬は、少ないと感じる。
 少ないどころか全然足りない。
 だから、

 毎日でもしたい。

 だから今日からは毎日しよう。

 そう思った。
 男達に毎日抱かれるのなら、毎日哉汰を味わえなければ割りにあわない。
 哉汰を護るために男達に抱かれているのだから、それくらいは許されていいはずだ。
 ユウの思考は、やがてそんな風に変化していき……そしてユウ自身はその思考がひどく偏った、そして危険なものだということに気付けずにいたのだった。
「はむっ……んっ……んっんっんっんっ……」
 ベッドに腰掛けたまま仰臥した哉汰の、その剥き出しの股間の前に足を揃えて膝立ちになり、ゆっくりと童貞ペニスを咥え、深いストロークで愛撫する。
 遮光カーテンもぴっちりと閉めた、暗闇の中の行為は、いつもより興奮した。
 エンチャント強化された視覚は閉ざされる事はないが、“暗闇で自分も相手も見えない状態にあると思っている”哉汰の、いつもと違う雰囲気に興奮していた。光の下ではどこか照れもあって、快感に完全に埋没しようとしないのが哉汰だった。それが闇の中では素直な表情を見せてくれるのだ。
 闇の中で目を瞑り、ユウが与える快楽を受け取りながら、それを甘受するのは罪悪かのように唇を噛み締めている。きっと声が出そうになるのを我慢しているのだ。
『カナちゃん……』
 いつも男達にしている時は、大抵が上から目線の高圧的な態度で見下されている感が強かった。イラマチオ(強制口淫)で強引に喉奥まで犯そうとする男は特にひどい。相手のことなど考えず、まさに“性処理に使っている”と言わんばかりの傲慢さばかりだった。
 でも、哉汰は違う。
 ユウの方から求めたフェラチオ(膣腔以外での粘膜接触状態での精子摂取)なのに、どこか「申し訳ない」といった感じに眉を顰める。
 唇を噛み、手を握り締める。
 彼は心の中でいつもユウに向かって謝っているのだ。

 「男のお前に、男のモノなんかしゃぶらせてごめん」

 「気持ち良いって思ってごめん」

 「本当はイヤなはずなのに、こんなことさせてごめん」

 言葉にすれば、そんなような思考で。
 ユウは「ユメワタリ(夢渡り)」で既にそれを知っていた。
 だが、知っていることを哉汰自身には言えないため、それを否定する事が出来ない。

 「カナちゃんのだもん。全然イヤなんかじゃないよ」

 「もっと気持ち良くなっていいよ」

 「ボクこそ、そんな風に苦しめてごめんね」

 そう言えたら、どんなにかいいだろうか。
 いつもそう思っていた。
 だからせめて「大好き」という気持ちを込めて丁寧に、たっぷりと時間をかけて、哉汰の男根を嘗めしゃぶった。
 伝われば、いいと思う。

 ボクはカナちゃんが大好き。

 大好きで大好きでたまらないの。

 他の誰より、カナちゃんのおちんちんをしゃぶってる時が一番幸せ。

 ずっとずっとこうしていたい。

 カナちゃんのだけ、ずっとずっと味わっていたい。

 あまりにもその想いが強くて、哉汰がイキそうになると根元を掴んで射精を抑えた。
 もったいなくて。
 もっともっとこの時間を楽しみたくて。
 もっともっとこの時間を楽しんで欲しくて。

 ──この幸せな時間が続いて欲しくて。

 “きゅ”と指で尿道を圧迫し、射精感が収まるのを待ってから、先端から耐え切れずに滲んできた精液混じりのガマン汁(カウパー氏腺液)を嘗めた。
 美味しかった。
 極上の甘露だった。
 そのままストレートかロックで味わうのが最も美味しいビンテージ物の最高級モルトウィスキーは、水で薄めに割ってもその極上の香りや味わいを窺い知る事が出来るように、哉汰のガマン汁はほんの少しの精液が混じっているだけにも関わらず、ユウの体を奮わせ、恍惚に誘い、紅潮・発汗を促してたまらない気持ちにさせた。
 言い付け通り、今日は“ユウが来る前にオナニーしてヌいておく”だなんていう、許されざる極悪非道な重犯罪は犯さなかったらしい。

 でも。

 哉汰にはオナニーすら禁じておいて、自分のしている事はどうだ。
『ボク、もう他の人といっぱいセックスしちゃったんだよ?』
 哉汰の、硬くて若い童貞ペニスをやわやわと握りながらユウは思う。
『毎日、他の男の人に中出しされてるんだよ?』
 尿道に滲んだ精液の先走りを“ちゅうちゅう”と啜り、亀頭全体を舌で“ぬりゅぬりゅ”と嘗めたくりながらユウは思う。
『毎日、頭の中が真っ白になるまで抱かれてるんだよ?』
 仮性包茎気味に余った皮を唇で引っ張り、引き下ろして、精液のカスを丁寧に嘗め取りながらユウは思う。
『でもカナちゃんのおちんちんをこうしてると、全部忘れられるんだ。全部、どうでもよくなるの』
 やわらかい陰毛の密生する童貞チンポの根元を嘗め、唾液をたっぷりとまぶしながらユウは思う。
『ボク……』

 カナちゃんがいないと……ダメな体になっちゃった……

 思えば、ゾクゾクするほど嬉しくて、泣きたくなるくらい切なくなった。
『早く抱いてね。ボク待ってるから。いっぱいいっぱい我慢して、いっぱいいっぱい泣いちゃうと思うけど』
 おっぱいで陰茎を挟み、唾液を垂らしてパイズリしてあげならユウは思う。
『早く抱いてね。それまで、ボク毎日来て、何でもしてあげるから』
 “もにゅもにゅ”とおっぱいで陰茎を捏ねながら、その先端を舌先で“ちろちろ”と嘗めながらユウは思う。
 やがて、何度も何度も射精を中断させ、たっぷりと時間をかけて味わった哉汰の男根から迸った精液は、ねっとりと濃密な香りと粘度を保ったまま口内で上顎を叩き、口いっぱいに広がってユウの欲望も思惑も渇望も淫欲も何もかもを巻き込み、そして昇華させ、ただただ幸福に満ちた至高の絶頂へと彼女を導いた。
『んあっ……あぁ〜〜〜〜……ッッッ!!……』
 2日前……金曜日のフェラチオが単なる遊びだったように思えるほど、与えられたその快美感は強烈だった。
 「美味しい」「気持ちいい」「大好き」「幸せ」「心地いい」「嬉しい」「楽しい」「最高」「ありがたい」「素晴らしい」……ポジティブで陽性で躁状態なプラスエネルギーの奔流が体中を駆け巡っていた。
 これこそが耽溺(たんでき)なのだろう。

 コレさえあれば他にはもう何もいらない。

 コレ無しではもう生きていけない。

 そんな風に思えてしまうほどの幸福感と充足感と満足感と充実感だった。
「んふっ……ふぅん……」
 口いっぱいに広がり“ねとねと”とした精液が、若干喉に引っかかりながらも食道から胃の腑へと滑り落ちてゆく。咽頭から鼻腔に抜けた青臭い匂いが、ユウの心をやわらかくほぐしていった。
『あぁ……』
 コレを毎日味わえるのであれば、男達に抱かれておもちゃにされ、侮蔑的に嘲笑されることなど、ほんの些細なことに思えた。
 コレを毎日味わえるのであれば、たとえ淫乱と言われようが淫蕩と言われようが、好色、淫ら、淫奔(いんぽん)、淫婦、多情、多淫、色情狂、ふしだら、自堕落、色キチガイ、姦婦、ヤリマン……その他ありとあらゆる罵声や嘲笑や非難や暴言や酷評を受けようが、何も恐れる事は無いと思えた。
 惜しむらくは。
 口腔内で味わうのではなく、
 フェラチオで射精されるのではなく、
 あそこで、
 膣で、
 膣内で、
 とろとろの粘膜で包んだ膣奥の子宮口のすぐそばで、
 たっぷりと高純度で高濃度な魔力のカタマリと、恋焦がれた哉汰の精液を放って欲しいと思った。
 「彼」や他の男達にしてしまっているような、脚を大きく開いて挿入されながら、その脚を腰に絡めて抜けないように固定し、思うさま体の奥底へ射精して気持ち良くなって欲しいと思った。
 だからユウは一瞬、フェラチオを乞い願った時のように、何か理由を付けて自分とセックスしないといけない状況に哉汰を追い込んでみようか……とさえ思った。
 土下座までして真摯に頼んだのに、それを断るほど哉汰は頑固で友達想いで融通の利かない素敵な大馬鹿だけど、自分を助けるためにと真摯に何度も請えば、きっと許してくれる。
 抱いてくれる。
 そういう確信がある。
 しかし、こればかりは強制も誘導も出来ない。「真の愛合による交歓」は、パートナーの自主的で積極的な意思の元でしか成立しないと、これもウルフのデータベースに存在している過去の文献に記述されていたのだ。
 その真偽はともかく、ユウ自身も、哉汰の方から求めて欲しいと思っていた。
 それは、彼のために他の男達に身体を提供し続けているユウの、彼に対するたった一つの我侭(甘え)だったのかもしれなかった。


 哉汰の精液をゆっくりと味わい、魔力をたっぷりと補填したユウは、哉汰の家を出ると彼の見ている前で優也に戻ってみせた。
 男に戻ると、昨日から今日にかけて自分がしたこと、されたことの記憶が針のように心を突き刺し、ナイフのように切り裂く。その痛みを堪え、胸元を“ぎゅ”と掴めば、心配そう哉汰の視線と目が合った。

 大丈夫。

 大丈夫だよ。

「カナちゃんはボクが護るから」
 言葉にせず口だけを動かし、窓辺の哉汰に手を振って優也は夜の町を駆けた。

§         §         §


 哉汰の家から十分に離れると、優也は再びユウへと変身して夜空を飛翔し「彼」の元へと戻った。
 それは一日の締めくくりであり、「彼」が課したユウへの「義務」だった。もちろん、ユウには不本意であり、絶対に好き好んでしている事ではない。
 それでも向かってしまうのは、決して「彼」に心許したわけでも、体が求めているわけでもなかった。
 そうしないと、哉汰を護れないからだ。
 そうすることで、哉汰を護れるからだ。

 だから“仕方ない”。

 ユウはそう自分に言い聞かせながら、毎日「彼」に抱かれた。
 甘ったるい言葉を囁かれながら。

「好きだ」

 うそ。

「愛してる」

 うそ。

「オマエは俺のものだ。そうだろ?」

 ちがう。

「俺はオマエのものだ」

 ちが……

「俺にはオマエが必要なんだ」

 うそ。

「本当だ」

 うそ……。

「オマエとこうしてるのが俺の真実だ。他には何もいらない」

 やめて。

「オマエは可愛い」

 いや。

「オマエは素晴らしい女だ」

 ボクは女じゃない。

「女だ」

 女じゃない!

「女だ。そして俺のモノだ。俺の愛した女だ」

 やめて。

「愛してる」

 ……やめて。

「愛してる」

 もう、やめてぇ……。

 対面座位で腰を揺すられながらキスされ、唇も舌も歯茎も嘗められ、おっぱいをゆったりと優しく揉まれ、耳たぶを甘噛みされ、首筋をべろべろと嘗められながら何度も何度も何度も何度も何度も「愛」を囁かれた。
 ベッドに押し倒され、膣のカタチを確認するかのようにゆったりとしたストロークで膣奥まで揺らされ、耳孔に舌を差し込まれ、“べちょべちょ”と唾液の立てる音の合間に「愛」を囁かれた。
 ひどい、男(ひと)。
 ユウのオンナのメンタリティが悲鳴を上げる。
 怨嗟(えんさ)の声を上げながら、確実に自分の心と膣内の“弱いところ”を突きながら、たっぷりと濃密な甘い毒を注いでくる「彼」を、ユウは本気で憎いと思った。
 あまつさえ、
「哉汰はもう抱いてくれたか?」
「哉汰に抱かれなくて寂しいだろう」
「哉汰に気付いてもらえなくて悲しいだろう」
「哉汰の代わりに抱いてやる」
「哉汰に抱かれない寂しさを俺で埋めればいい」
「哉汰に気付いてもらえない辛さを俺にぶつければいい」
 こんな風に優しく、強く、強引に囁かれて、ユウの心は「彼」の毒に冒されていった。
 これではまるで、安いメロドラマにありがちな“夫に振り向いてもらえず間男にいいように遊ばれる人妻”そのものではないか。
 自分は本当は男で、哉汰とは親友で、抱いてもらえないのは当たり前なのに、それを「不幸だ」「可哀想だ」と断定的に話されるのは哉汰に対してあまりにも失礼というものだ。
 なのにユウの心は、「彼」の言葉に動揺し、不安を覚えてしまう。
 そして、射精。
 膣奥への、当たり前のような中出し。
 「オマエは俺の物だ」と言いたげな、まるでマーキングするような膣内射精。
『あぁ〜〜〜……だめ……だめぇ……』
 涙がこぼれる。
 唇が戦慄(わなな)く。
 膣奥を叩く「彼」の精液のイキオイは、それがそのまま「彼」の「愛情」の証のように思え、それを否定しながらも信じたいと思う自分がかすかに存在する事に、ユウは慄(おのの)いた。

 ──心が、侵されてゆく。

 体だけではない。
 心が、哉汰で占められていた心の領域が、「彼」によって上書きされ、浸食され、塗り潰され始めていた。
この記事へのコメント
ものすごい勢いで誤字脱字
男恨 → 男根
汗と脂てらてらと → 汗と脂でてらてらと
降り懸かる → 降り掛かる
ボルチオ → ポルチオ
社内 → 車内
先を征する → 先を制する
ではり得た → ではあり得た
光の元 → 光の下
根本 → 根元
本流 → 奔流
Posted by 青玉 at 2012年09月01日 22:17
>男達に毎日抱かれるのなら、毎日哉汰を味わえなければ割りにあわない。
> 哉汰を護るために男達に抱かれているのだから、それくらいは許されていいはずだ。
> ユウの思考は、やがてそんな風に変化していき……そしてユウ自身はその思考がひどく偏った、そして危険なものだということに気付けずにいたのだった。

俺にはそんなに危険な思想には思えないのですが。
Posted by 青玉 at 2012年09月01日 22:21
 ぎゃああああああ……

 えぐえぐ……直します……あ、後で……ぐす……。
Posted by 推力 at 2012年09月02日 02:22
 修正しました。

 「危険な思想」というのは、「男(元の自分)であれば絶対に考えないだろう」「男のアイデンティティを揺るがす思想」ということで……。
 いえ、まあ、「今更何言ってんだ?」レベルなんですが。
Posted by 推力 at 2012年09月02日 20:49
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/57716372

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★