■感想など■

2012年09月27日

【ボクキミ】ユウ15

■■【15】■■

 誰もいない、鍵のかかった園芸部に壁を透過して入り込み、一度優也に戻って全てをリセットする。
 そして鞄からケータイを出してチェックすると、ケータイを机の上に置き、鞄を抱えたまま再びウィッチ・ユウへと変身した。制服も眼鏡も手にした鞄も、肉体以外の全てのものが光り、透過し、分解して、変化した肉体に、魔女コスへと入れ替わって装着される。
 妙齢な女性の姿になったユウは、おっぱいを揺らしながら机に屈み、ケータイを手にすると、メーラーを起動し、ざっとチェックする。
 壁の時計の時刻は、午後1時ちょっと過ぎ。
 指定された時刻は午後1時半。
 場所は隣町の住所で、マンションかアパートの一室らしい。
「……何人かな……」
 そう呟いたユウは、自分がうっすらと微笑んでいる事には、全く気付いていなかった。


 まだ日も高い真っ昼間から、ユウは4人の男達と繋がった。
 男達は全員素っ裸で、ユウだけが魔女コスだった。全員、学校でユウを一度は抱いたことのある男子生徒だった。
 窓からの日差し以外は薄暗く、家具も無い。カーテンすら無く、床にはただ薄汚いマットレスが敷かれているだけだった。壁も床もコンクリート打ちっ放しで、ただ部屋の隅で、ストーブが赤々と燃えているのだけがわかった。
 まだ内装が入っていない、建設途中のマンションだった。
 「彼」の実家が所有する建設会社の、「彼」の息のかかった社員が都合した場所らしい。今日はここで、男達が飽きるまで、ユウは抱かれるのだという。明日の終業式を控え、二学期の終了と迎える冬休みへの“お祝い”だと、男の一人が嘯(うそぶ)いた。
 部屋の隅には固定カメラがあり、男の一人もハンディカメラを構えている。
 ユウがこの部屋に来た時から、男達は全員裸だった。
 ユウは男達に望まれるまま、彼らとディープキスを繰り返し、おっぱいでペニスをパイズリ愛撫して、順番にフェラチオをしていた。そしてフェラチオの最中、おっぱいは一度に2人の男に左右から吸われ、噛まれ、抓られて、キスマークと歯形でいっぱいになっていった。
 仰向けにされ、ひっくり返されて尻を抱かれ、二つに折り曲げられて上から叩きつけられ、跨がされて腰を振った。
 ユウの充血してたっぷりと濡れた膣内には、男達が入れ替わり立ち替わり精液を注ぎ込んでいった。
 白濁して飛び飛びの意識の中で、膣内を蹂躙するペニスが4種類以上あるのに気付いた時、ユウは新たにやってきた男達が、部屋の中で大勢ひしめいている事を知った。

 立っている者。

 座っている者。

 笑っている者。

 酒を飲んでいる者。

 写真を撮っている者。

 少なくとも10人以上いるように見えた。
 ユウは仰臥したまま、全身に玉の汗を浮かべたまま、まるでひっくり返ったカエルみたいに両足を広げて、何度も何度も何度も何度も何度も何度も……その大勢の男達を正常位のまま受け入れ、その膣内に大量の精液を受け止めた。
 ユウの膣口からはその大量の精液が溢れ出し、尻の穴まで伝い、マットレスに精液溜まりが出来るほどだった。
 7人か8人目くらいまでは、なんとか意識があった。
 その筈だ。
 でも、そこからはもう、何も記憶が無い。
「うあっ……?」
 突然意識が浮上し、“ビクッ”と体を震わせて目を開いた時、辺りに人の気配は全く無かった。
 顔がパリパリと引き攣っていて、左目が開かない。ツンとしたアンモニア臭が鼻をつき、汗と唾液と精液と愛液などの性臭と混じりあって、ひどい悪臭を放っていた。全身の汗が冷えたのか肌が冷たいのは、エンチャント(魔力付加)で体温調節されてはいるが、体表面温度においては、ある程度の低下は避けられないからだった。
 口内に違和感がある。
 唾液とも違う“ねとねと”したものは、精液だろうか。膣内とは違い、自分の唾液と混じり合った精液は、経口吸収に時間がかかる。それは既に経験済みだった。
 部屋の中は暗い。
 そしてやはりここには他に誰もいなかった。
 エンチャント(魔力付加)で視覚強化されたユウの目だからこそ、「彼女」にはほぼ問題無く見えるが、普通の人間なら窓からの薄明かりでようやくぼんやりと見える程度だろう。
 マットレスは、じっとりと濡れてべとべとしている。尿と精液が混じり合ってぐちゃぐちゃになっているのだ。
 苦労して左目を開き、目の回りを手で拭った。髪の毛も顔も首もおっぱいも腹も手も脚も、精液の臭いとアンモニア……小便の臭いが混じり合って、すごい臭気を放っていた。
「んっ……」 
 “ゆらり”と重たいおっぱいを揺らしながら身を起こすと、股間にひどい違和感を感じた。
 すぐに、膣とアナルにバイヴが挿し込まれているとわかった。
「うぅ……」
 十分に濡れていない膣から、バイヴを強引に“むりむり”と引き抜く。それは凶悪な極太サイズの黄色い電動バイヴで、中に引き攣れたような痛みを伴った。“ボドンッ”と床にそのバイヴを投げ捨てると、アナルからも、普通サイズのバイヴを引き抜く。
「んぅ……」
 バイヴを抜き、それでも違和感のあるアナルに指を少しくぐらせると、指先に触れるものがあった。それを苦労して引き出すと、それはウズラ卵サイズのピンクローターが2個も入れられたコンドームだった。
「ぅんっ……」
 ぱっくりと開いたままの膣孔とアナルが、ひりひりと痛む。
 見下ろせば、“べとべと”“ぬとぬと”した首や胸元、量感のものすごいLカップおっぱいや、白い内腿には、キスマークや歯形や抓られたような痕が大量に散在し、元からそんな模様でもあったかのような有様になっていた。
 ユウは溜息を吐いて、窓から暗い夜空を見上げた。
 月は見えない。
「そうかぁ……」
 孤独がユウの胸を刺す。
 今日は、体中に精液をかけられ、放尿され、バイヴを挿し込まれたまま壊れた玩具のように捨て置かれたのだ。
 今までで、一番酷い扱いだったかもしれない。
 それでもユウの心は、まるで凍ったように動かなかった。


 変身を解いてリセットし、再び元の姿に戻った優也は、不快な臭いの充満する部屋の中でケータイをチェックした。
 時刻は夜の11時をとうに過ぎていて、午後1時半から実に10時間近くも、この部屋にいた事になる。
 いったい何時間に渡って、自分は男達におもちゃにされたのだろうか。
 徹底的にけがされ、絶望的なまでに弄ばれ、刹那的に使い捨てられた。
 そういう感覚だけが、あった。
 それでも、

 リセットさえすれば全てが元通りになる自分が我慢して、それで大切なもの(哉汰)を護れるのなら安いものだ。

 そんな滅私的な、時として嗜虐的な自己犠牲が根幹にあるがゆえに、ユウの精神は「決定的な破滅」を免れていたのだった。
 優也は溜息を吐いて、メーラーを起動する。
 そして胸が潰れそうなほどの痛みを心に感じ、泣いているような、笑っているような笑みを涙を滲ませた瞳に浮かべた。
 今日はもう、哉汰の所へは行けそうもない。


 そこには今日最後の「命令」メールが、未開封のままそこにあったからだった──。


§         §         §


 午前11時半過ぎ。
 ユウはモデル姿で、指定された場所に立っていた。
 メールに添付されていた画像の通り、尻が少し隠れる、腰骨までの白い毛皮のジャケット(ショートコート?)を着て、下には伸縮性の生地で体にぴったりと張り付いたような藍色のボディコンシャスなショートワンピースを身に着けていた。
 胸元は大きく開いていて布地がピチピチに張り詰め、巨大なLカップおっぱいが今にも溢れてこぼれそうだった。そして股下5センチくらいの超ミニな裾からは、むちむちとした太股が伸び、ノーパンの股間が今にも見えてしまいそうになっている。
 まるで、海外の映画などでよく見る、街角に立つ客待ちの娼婦そっくりだ。
 その格好に加え、ユウの膣にはあの凶悪で極太な電動バイヴが深々と突き挿さっている。括約筋を押し広げ、粘膜を擦り、黄色くて太くて長いシリコン製品が、膣孔の奥深くまで“みっちり”と詰まっていた。
 メールにそうあったのだ。

 ──指定の場所に、バイヴを入れたまま行け、と。

 ユウはあの部屋でウィッチ・ユウに再び変身し、そしてモデル姿に再変身すると、その場であそこにバイヴを挿入しようと苦心した。アナルに入っていたものは、腸液と便に汚れていて悪臭を放っていた。変身を解いても、体に付着した分泌物や排泄物以外は分解・消去されないらしい。そのため、自然とバイヴは先程苦労して抜いたばかりの、あの凶悪な極太サイズしか無かったのである。
 だが、さっきまで入っていたのだから入れるのは容易いと思われたバイヴだったが、強引に抜いたそれは、唾液を垂らしてまぶしてさえも、濡れていない膣には中々入らなかった。
 壁に右手をつき、ややがに股になって左手でバイヴを挿し込もうとした。
 和式便器にするようにしゃがみ込んで左手で体を支え、腰を落としながら右手でバイヴを捻じ込もうとした。
 だが、いずれも途中であそこが痛くなり、思うように入っていかなかった。それはまるで「もう、こんなものを入れたくはない」と、体が拒否しているようだった。
 だから仕方無く、立ったまま壁に背中を預けて脚を開き、裾を捲り上げてオナニーをした。思えばこの体で、女の体でオナニーするのは、初めてだったかもしれない。でも、やり方はもう、十分過ぎるほどわかっていた。
 ワンピースの上からノーブラのおっぱいを左手で揉み、乳首を“くりくり”と摘みながら、右手に持ったバイヴの先端で、クリトリスを包皮の上から優しく撫でる。目を瞑り、おっぱいを揉む手が、クリトリスを弄る手が、哉汰のものだと想像する。それだけでじんわりと体が熱くなり、おっぱいが張って腰に“じゅわん”と何かが溢れ、吐息が湿り気と熱を帯びた。
「カナちゃん……」
 名を呼ぶ。
 “きゅうん”と子宮が啼く。
 すぐに、とろり……と膣内を伝って落ちてくるものを感じた。
 乳首が固く尖り、充血して膨らむ。乳暈(にゅううん)が“ぷくんっ”と膨らんで充実し、パンケーキみたいに厚みを増した。
「カナちゃん……」
 甘ったるい、声。
 男を誘い、性交を願って媚びを売る声。
 とても自分の声とは思えない淫靡な声を耳にして、ユウの体が羞恥と、それに勝る欲望で“カッ”と熱くなる。
 自分が心から彼のペニスを欲している──彼に抱かれたがっていることを改めて確認したから。
「あっ……」
 “ぬるん”と、左手の中指がぬかるんだ陰唇の狭間の膣孔に入る。簡単に根本まで入り、中の熱くて“ざらり”としたツブツブの膣壁を擦り上げた。
「ぅあぁうんっ……」
 鼻にかかった甘えた声が漏れ、唾液に濡れた舌で唇を嘗めた。

 哉汰が、している。

 哉汰に、されている。

 そう思うだけで、気が狂いそうなほど感じた。
 指はすぐに2本になり、たっぷりと染み出した膣液で“にゅるにゅる”とした抽送は、驚くほどスムーズだった。
 右手に持ったバイヴを膣孔で遊ばせ“ぬるぬる”と粘液をまぶし、わざと自分の耳に聞こえるように“くちゅくちゅ”と水音を立てた。

 濡れている。

 すごく、濡れている。

 そう思うとなおのこと腰が熱く、重く、痺れるように“じゅん”と濡れ震えた。
「うっ……んっ……」
 やがてたっぷりと股間が濡れ、潤うと、極太のバイヴを膣孔にあて、“ずぶぶ”と押し込んでいく。
「はぁあああぁん……」
 痛みは、無かった。
 それどころか、たまらない快感があった。
 腰が震え、頭が痺れた。
 自分がくねくねと尻を振っていることにも気付かなかった。
「んっ……んうっ……んん〜〜……」
 バイヴがすっかり膣内に収まるまで、あっという間だった。みっちりと隙間無く膣を満たしたバイヴに、充実感があった。「満たされた」と思った。電動バイヴのスイッチを入れたくてたまらなかった。
 そこにはもう「本当は自分は男なのだ」という意識は無く、女のメンタリティ以外は、何も存在していなかった。


 指定された場所に現れたのは、典型的なチンピラ……似非ラッパー風味のDQN(ドキュン)だった。
 薬でもキメてるのか、どこを見ているのかわからないような半目、団子のような鼻、厚ぼったい唇は半開きで、くちゃくちゃとガムを噛んでいる。鼻にも唇にもピアスが鈴なりだ。間違ってもクラブで人気が出るようなタイプではなかった。メモリープレイヤーを首に下げていて、ヘッドフォンからはガチャガチャとした音が盛大に漏れている。
「へぇ……」
 “にたにた”としたいやらしい笑みを浮かべながら、モデル姿のユウの全身を上から下まで何度も無遠慮に眺めると、不意に右手を伸ばしてワンピースの裾を“ぐいっ”と捲り上げた。
「あっ!!」
 声を上げ、慌てて裾を押さえようとしたユウに構わず、男はしゃがみ込んでユウの股間を覗き込む。
「すげ……マジにバイヴ入ってるよ。マジウケる」
 そう言いながらユウの太股に右手を割り入れて、強引に広げさせた。
「いや……」
「ん? ああ、忘れてた」
 男はユウの声に身を起こすと、真っ赤なチョーカーをポケットから取り出してユウの首に填め、ポケットから紙と紅い宝石を取り出してそこに書かれていた文字を読み上げた。
「!?」
 「ルーン」だった。
 紅い宝石が鈍く光ると、たちまち声は奪われ、言葉を封じ込まれる。
 本来、「ルーン」は決められた韻と特殊な発音が重要視されるが、魔術を修得していない素人の発音や、単純化されたものでも問題無く起動したのは、この紅い宝石が補助的な役割を果たしているため……なのかもしれない。となれば、この紅い宝石も魔石の一種なのだろう。
 今までの男達も、皆、これか、またはこれと同じような補助用魔法具を持っていたのだろうか?
 言葉を発せなくなったユウを、男は強引に物陰に引き込むと、無理矢理抱き締めてキスをした。
『うううっ……』
 ガムのミント風味とタバコの臭いが混じって気持ち悪い。流し込まれる唾液を懸命に嚥下していると、男の右手が後ろからワンピースの裾から中をまさぐり、中指と薬指が尻肉の間にねじ込まれてアヌスを弄り始めた。
『んうっ……うぅ〜〜っ……』
 自然、アヌスに力が入り、括約筋が収縮して、膣孔に入っているバイヴを“きゅんきゅん”と締め付ける。ユウはその太さ、長さ、表面のイボイボや反ったカタチを如実に感じて、無意識に“もじもじ”と尻を揺すった。
「ハハッ、もう感じてんの? すげ。さすが淫乱」
 いやいやと首を振るが、男は尚も面白がって、人差し指の第一関節までアヌスに潜り込ませた。それと同時に、ボディコンのワンピースの上から、たわわな重量感たっぷりのおっぱいを鷲掴みにして“もにゅもにゅ”と揉み立てる。
『あぁああ〜〜……』
 そうしてユウの抵抗力は、確実に男によって速やかに、確実に剥がされていった。

 たっぷりとキスされ、おっぱいを揉まれ、あそこやアヌス、クリトリスをじっくりと弄られたユウは、ふらふらとしたおぼつかない足取りで、男に支えられるようにして深夜の道を歩いた。
 バイヴのスイッチは既に入れられている。目盛りはLOWだ。「ぐいん……ぐいん……」と、断続的に捻りの入った動きが膣を刺激し続けている。まるで雲の上を歩いているような気分だった。
 深夜とはいえ、幹線道路沿いのためか、人通りは全く無いという事はない。「ものすごい体」をしたキャバ嬢か風俗嬢のような女と、似非ラッパー風DQNの組み合わせが珍しいのか、たまに擦れ違う人は必ずと言っていいほど、ジロジロと見た。相手が男性だと知ると、男はユウのワンピースの裾を勢いよく臍のあたりまで捲り上げ、面白半分に股間を露出してみせる。
 その股間でうねうねと動く黄色いバイヴを見ると、見せられた男は大抵、嫌悪感を露わにしてそそくさと歩み去るか、好奇心まるだしにして覗き込もうとするかのどちらかだった。
 ユウは恥ずかしさと情けなさと屈辱に身を震わせ、それとは全く違う、気が狂いそうなほどの快楽に気が狂いそうになっていた。
 それは被虐の悦びだった。
 肉の悦びに支配された、穢れた感覚だった。
 男は何度かケータイで誰かと話をしていた。

「何時? ああ? 10分後? こまけぇな」

「わぁーってるよ。約束だからな」

「ああ、見える。あそこでいいのか?」

「は? 中で? 店員は? 一人? 金? 自腹かよ」

 何を話しているのかは、さっぱりわからなかったが、今のユウにはそんなことはどうでも良かった。
 やがて男は幹線道路沿いのコンビニの近くまで来ると、ユウにそこのトイレに入って待つように言った。
 理由も目的も教えられなかった。
 でもわかった。

 ──今から「そこ」で、この男に抱かれるのだ。

 たっぷりといじられ、嬲られ、もてあそばれて辱められた体は、もうこれ以上ないくらいに「出来上がって」いる。
 ユウはふらつく足を進めながら暗い期待感に胸を膨らませ、コンビニの自動ドアの前に立った。

§         §         §


 深夜シフトの店員は、無気力そうな表情で、でも目だけは好奇心に満ちた光を宿したまま、目の前を通るユウを見ていた。
 ワンピースから半分近くも露出し、ノーブラのため歩くだけで重々しく“ゆさゆさ”と揺れ動く巨大な乳房を店員の目が追ったのも、そして高いヒールのせいでむちむちとした豊かな尻がモンロー・ウォークのように左右に揺れるのを商品棚の陰に隠れるまでずっと見詰めていたのも、ユウは全て知っていた。
 トイレに入り、激しい鼓動を鎮めるように備え付けの洗面台の前に立って、その鏡に写った自分の姿を見る。
『すごい……』
 首筋や乳房の上部には、男達に「愛された」証のキスマークが、いくつも散っていた。
 そして顔は首元まで上気したような綺麗なピンク色に染まり、目は潤んで涙が滲んでいる。鼻孔が広がって空気を求め、ぽってりとした唇はキスをせがむように半開きになって唾液に濡れ光る白い前歯が覗いていた。
 それは、すっかり欲情して性交を待ち望む「牝」の顔だった。
 バイヴの代わりにちゃんとしたペニスで犯して辱めて征服して欲しいと願っている、淫乱なオンナ以外の何者でも無かった。
『あぁ……』
 膣の中のバイヴが与える断続的な刺激は、飢餓感を嫌でも煽る。
 うねうねとした捻りの動きだけでは「足りない」のだ。
 侵入方向に前後した、深く浅くを繰り返す抽送の動きが。
 内臓を押し上げ子宮を揺らす、あのガツガツとした動きが。
「待ったか?」
 男は数分もしないうちにトイレに入ってきた。
「店員には貸し切りにしといてもらったからよ」
 店員に金でも渡したのか、男はそう言いながらズボンの尻ポケットに財布を仕舞った。

 男はぼんやりと棒立ちになっているユウの毛皮のジャケットを脱がせると、藍色のワンピースの裾を両手で掴み、するすると巨大なおっぱいの上まで簡単に捲り上げてしまった。ブラジャーもパンティも身に着けていないユウは、それだけで素裸に近い格好になってしまう。
 ユウはただ男のするままに任せ、そして男がすぐにおっぱいに吸い付いて乳首を嘗めしゃぶるのを、陶然とした瞳でじっと見下ろしていた。
 そして男がおっぱいから口を話すと、彼に何か言われる前に背中を向け、洋式トイレの貯水漕に両手をつき、その豊かな白い尻を突き出して性交をせがむようにゆらゆらと揺すった。
「へへ……待ち切れねえか?」
 侮蔑的な男の言葉も耳に入らなかった。
 滑らかでシミ一つ、黒子一つ無い背中。
 豊かで柔らかそうな、脂のたっぷりのった白い尻。
 体から下方へと垂れ下がり、重々しく揺れ動くたわわなおっぱい。
 それらを男の手が這い回り、撫で、さする。
 ただ、その心地良さだけに意識を向け、うっとりと目を瞑った。
「すげぇ……」
 男は右手でカメラを構え、左手で体から垂れ下がる椰子の実みたいな巨大Lカップおっぱいを乱暴に揉み込んだ。鷲掴みにし、形が変わるくらい握り締め、牛の乳房にするように“ぺちぺち”と叩き、揺らし、乳首を摘んで変形するくらい引っ張る。男の手にも余る豊満過ぎるほど豊満なおっぱいは、男の思うままに自由にその形を変えた。
『あ〜〜ぁ〜……』
 それだけで忘我したユウの半開きの唇から透明な涎が垂れ、便器の中に滴った。
「デケぇ乳だな。マジウケ。牛でも相手にしてるみてーだ」
 フラッシュは焚かれず、シャッター音だけが何回も個室に響く。
 やがておっぱいを好きに嬲っていた男の手は、豊かな尻の間から頭を出していたバイヴを掴み、“ぬぬぬ”と引っ張り出し、そして一気に“ぬっ!”と押し込んだ。
『あ”っ!!』
 待ち望んだ、侵入方向に前後した、深く浅くを繰り返す抽送の動きだった。ピンク色のハートマークが飛び散りそうな、そんな至福に満ちた表情が浮かぶ。
『あぁ〜〜〜……あ〜〜〜……』
 声の出ない口が「あ」の形のまま固まり、涎がたらたらと垂れる。
 ユウは“くねくね”と尻を振りながら、バイヴを握った男の手が、その白い尻に“じゅぼじゅぼ”と激しく出し入れして「くれる」のを愉しんだ。
 やがて男がベルトを外す音が聞こえ、パンツごとズボンを引き下ろすのが気配でわかった。
『あっ……』
 振り返り、ちらりと肩越しに見た男の陰茎は、長さが20センチはあろうかという特大の肉幹だった。しかも太くて浅黒くてゴツゴツしている。今まで何人のオンナをこれで啼かせてきたのか。
『あんっ』
 “ぼぶっ”と間抜けな音を立てて、ユウの膣からバイヴが引き抜かれる。
『あ…ああ……あ〜〜〜〜……』
 バイヴを引き抜いた後、ぱっくりと口を開き、木の洞(うろ)のような暗い深淵を見せる膣口へ、男はペニスを“ぬるぬるぬる……”と挿入しながらカメラのシャッターを何度も切った。
『あぁ〜〜……すごい……すごぉい……』
 膣の奥の奥まで届く。
 子宮口にキスされる。
 コツコツとノックされ揺らされるオンナの臓器が、悦びに震えて歓喜の涙を流した。
「うわすげっ……なんだこのマンコ……具合最高だな」
 “にちゅにちゅ”と粘液の音を立てながら腰を揺すり、ユウの膣の具合を確かめながら男は呻いた。
「これだったら安いもんだ」
 『安い』……。
 自分はいったいこの男にいくらで貸し出された──いや、売られたのだろう?
 だがそんな意識は、すぐに始まった激しいピストンにたちまち霧散した。
 撮影している余裕すら無くしたのか、男は洗面台にカメラを置くとユウの尻を両手で掴み、ガツガツと貪るように腰を前後させ責め立てた。
 そうして尻を叩き、おっぱいを鷲掴みに握り、中に入れたまま2回も射精した。
 男は、充血して真っ赤に広がった膣口から、どろどろの精液が溢れ出てくる所を撮影し、そして再び、精液がこぼれないよう栓をするように、さっきのバイヴを挿し入れてスイッチを入れた。そうしてユウを便器に座らせ、ペニスを口にねじ込んで綺麗に“掃除”させると、自分だけ先にトイレを出て行ったのだった。
 ユウはしばらく便器に座ったままぼんやりと余韻を味わっていたが、ケータイの着信バイヴに急かされるようにして立ち上がった。そしてトイレットペーパーで手早く口元やおっぱい、そして内股などを拭くと、ボディコン・ワンピースを胸元から引き下ろして豊かなヒップを隠した。
 水を流し、毛皮のジャケットを着ると、洗面台の鏡で乱れた髪を整えて膣内でうねる電動バイヴを意識しないようにしながらトイレのドアを開ける。
 慣れた、動きだった。
 単純な手順の繰り返しだ。
 もう何度も何度も繰り返した、トイレでのインスタント・セックスと何ら変わりなかった。
 だから、商品棚の間を縫うようにして出口へと足早に向かう間中、店員にずっと見られていても気にしなかった。
 トイレでセックスしていたと明らかにバレていたけど、気になんかしなかった。

 なのに。

「……ッ!?」

 ──どうしてよりにもよって、こんなところで彼と出会ってしまったのか。

 彼が、そこに、いた。
『カナちゃんっ!!?』
 店内から出た瞬間、すぐ近くに無言で立っていた哉汰に気付き、ユウは全身を震わせておののいた。戦慄が走り抜けるというのはこういうことか。そう思った。“ぞわっ”と、腰骨の辺りから首の後れ毛の辺りまでの産毛が一気に逆立った。腰に力が入らず、両足が“ガクガク”と揺らぐ。
『なんでぇ?……どうしてぇ?……』
 頭がパニックを起こし、彼から熱風のように押し寄せる嫌悪と侮蔑の感情に、ただただ恐れを成して身が竦んだ。
 だが、ユウは乱れた髪を手早く整えながら、一切何も言わずに哉汰の横を通り過ぎようとした。
 まだ哉汰は、この姿の自分が、ウィッチ・ユウだと──優也の変身した姿だと気付いていない筈だと思い出したのだ。
 哉汰の激しい感情に炙られるようにして、ユウは彼の側を通り抜け、慌てないように、ボロが出ないように、ひたすらそれを思いながら高いヒールを履いた足を進めた。
 そして、彼から数メートル離れた所で、不意に押し寄せていた彼の感情がピタリと止まった。

 凪だった。

 凍り付いたような冷たい感情しか伝わって来なかった。
 ……すると、
「あのっ」
 不意に、ユウは哉汰の、自分を呼び止める声を耳にした。
 ビクッと体が震えた。
 聞き違いかと、思った。
 哉汰に背中を向けたまま、その場で足を止めた。
 心が全身を耳にして、哉汰の声を聞こうとしていた。
「……この街から、出ていってもらえますか?」
 心臓を、鷲掴みにされた気がした。
 冷たくて、硬くて、鋭くて、ギラギラに尖ったナイフの先端で背中を切り裂かれているようだった。

 それは、全ての拒絶。

 それは、存在の拒否。

「この街から、出ていって下さい」
 ここにいることを、自分の近くにいることを、強く強く否定する、少年の強烈な断固たる心の発露だった。
 ユウは凍り付いた顔のまま、頭をわずかに斜め下へと傾け、哉汰の言葉に耳を澄ませた。
「あなたがいることで、迷惑している人がたくさんいます。俺もそうです。俺の……大切な親友が、大事な人が好きなこの街で、あなたみたいな汚い女がいると迷惑なんです」

 『大切な親友』

 『大事な人』

 それが自分の事だと、ユウはすぐにわかった。
 「優也」と「ユウ」の事だとすぐにわかった。
 その言葉を発した時だけ、哉汰の感情はいつも自分に向けてくれる、あたたかくて、やさしくて、ずっとずっとくるまっていたくなるほどに心地良い冬の朝の布団のような安らぎに満ちていたから。
『カナちゃん……』
 凍り付いたまま、ぽってりとした唇がわなわなと震えた。
 このまま「ボクなんだよ」と言ってしまえたら、どんなに楽だろうか。
 でも言えない。
 言えるはずもない。

 たった今まで、すぐそこのトイレで、

 自分は、哉汰ではない見知らぬ男に尻を抱かれ、膣内に射精されながら快感に震えていたのだ。

 立ち止まったまま、ユウの長い黒髪が寒風にそよぐ。
「聞こえてますか?」

 もう、やめて。

 もう、許して。

 懸命に感情を押し殺して立ち尽くすユウは、哉汰が駆け寄って来た事に反応する事が出来なかった。
「なあっ! 聞こえないのかよ?」
 毛皮に包まれた左腕を掴まれた。
 そのまま強引に振り向かされた。
 遠心力でおっぱいが揺れ動く。
 長い黒髪が乱れ、顔が隠れた。

 でも、見た。

 間近で見る哉汰の顔は、いつもと同じ、大好きな「カナちゃん」の顔だった。

 笑ったつもりはなかった。
 でも唇がひきつって、歪んで、笑ったように見えたのか。
「なんなんだよお前ッ!!」
 カッと瞬間的に哉汰の心が怒りで塗り潰され、ユウは彼に突き飛ばされてその場に尻餅をついた。
 もとより、足に力なんか入らなかった。
 ヒールは高く踏ん張りは利かず、おまけにあそこには、今も断続的に動くバイヴが挿入されていた。
 ユウは無様にコンビニの駐車場で腰をしたたかに打ち、両脚をあられもなく広げて、陰毛の無い、まるで子供のようなピンクのおまんこを露出した。
「あんた……」
 哉汰の顔が歪み、呻くように呟いた。

 ──ぜんぶ、見られた。

 そう思った。
 足を広げたことで腰まで派手にズレ上がったワンピースの裾からは、股間が尻まですっかり露出していた。そこでは黄色くて太い凶悪な電動バイブが、膣口を押し広げるようにして突き立ったまま“うねうね”と動いている。それに、首や胸元と同じようなキスマークがいくつも浮かんだ太股には、どろどろとした、精液か膣液かもわからないような粘液がべったりとこびり付いているのだ。
 何も言えなかった。
 声は奪われたままで、言葉は封じられていた。
 口元は引き攣り、笑みが浮かんでいるかのように歪んでいるのがわかる。
 ユウは哉汰の視線から逃げるように脚を閉じ、ワンピースの裾を懸命に両手でずり下げながら、のろのろと立ち上がった。

 泣きたかった。

 泣けなかった。

 感情が凍り付いていた。
 その時だ。
「この街から出ていけ! この便所女!!」
 何かが、頭にぶつかり、割れ、中身がこぼれ、おっぱいに当たって、アスファルトに落ちる。
 緩慢な動作で見下ろすと、地面に転がったそれは、肉まんとその中身の餡だった。
「何やってんですか!?」
 哉汰が手に持っていた肉まんを投げ付けた事にようやく気付いたのは、騒ぎを聞きつけたコンビニの店員が、入り口から出てきて自分を庇うかのように哉汰の前に立ってからの事だった。
「お客さん。今の、そこのカメラに写ってますからね」
 店員が入り口の上方にある監視カメラを指さし、哉汰を見る。
「これ以上ここで面倒起こすなら、警察呼びますよ!?」
 哉汰が店員の言葉に固まっている間に、ユウは店員に軽く会釈をすると、そのまま二人に背中を向けて可能な限り足早にその場を離れた。
 一刻も早くここを離れたかった。
 哉汰のそばを離れたかった。
 高いヒールに何度もつまづきかけ、股間に挿し込まれたバイヴの動きが腰を重くさせる。
 アスファルトで打った尻が痛い。
 そして何よりも胸が痛い。
 自分でない自分に向けられる哉汰の嫌悪と侮蔑に、身が竦み、景色が滲む。
 凍り付いていた感情がいつしか動いていた。
 涙がぼろぼろとこぼれ、嗚咽が喉をこみ上げる。
 その脳裏へ突然、まるで追い打ちをかけるかのように、ビジョンがぶつけられた。

 それは、哉汰が心に浮かべたビジョンだった。

 そのビジョンが、たった今、自分が体験したかのような強烈なほどの鮮明さで浮かび上がる。

 背中へ唾を吐きかけられた。
 相手は哉汰だった。
 大切で、大切で、大切で、自分の何を犠牲にしても護りたくて、ずっとそのままの彼でいて欲しいと願った哉汰だった。
 その哉汰に、唾を吐きかけられ、背中を蹴られ、蹴り倒され、土足でおっぱいを踏みつけられた。
 逃げようとした尻を蹴り上げられ、そして猛犬のように顔を敵意でいっぱいにした哉汰に、ユウは罵られた。


 ──死ね!


 お前なんか死ねばいい!
 死んでしまえ!!

 死ね!

 死ね!!

 それは、ユウが、優也が今まで聞いたこともない、哉汰の暗い感情のカタマリだった。
 ショックのあまり、息を飲んだ。
 呼吸が出来ず、胸元で手を握り締めた。
 涙がこぼれ、唇がわなわなと震え、視界が滲んで何も見えなかった。
『……カナちゃん……』
 脚を引き摺るように、ユウはのろのろと歩いた。
 その胸にぶつけられるビジョンの中で、ユウは哉汰からずっと、その豊満な体を想像の中で蹴られ続けていた。

§         §         §


 思えば、当然の事だった。
 むしろ今までこうならなかった事の方が不思議だった。
 ニアミスは何度もあったろう。実際に「それ」を見られた事もあったのだ。
 だからこんな風に突然出会う事も十分に考えられたし、当然、「便所女」の存在を嫌っている彼から直接こんな風に嫌悪の感情をぶつけられることも考えられたのだ。
 でも、考えなかった。
 考えないようにしていた。
 それはなぜか。
 当たり前だ。
 それがあまりにも悲しく、そしてその悲しみに耐えられないと思ったからだ。

 どこをどう歩いたのか、ほとんど覚えていない。

 気が付くと後ろからさっきの似非ラッパー風のチンピラに肩を抱かれていた。
「知り合いか?」
「あいつの言った通りだったな」
「面白かったぜ」
「なんだよ、ぐちゃぐちゃじゃねーか」
「見られて感じたのか」
「泣くほど気持ち良いか?」
 色々と話しかけてきたが、何を言っているのかわからなかった。
 どうでも良かった。
 街灯の少ない夜道でボディコンのワンピースを捲り上げられてほとんど裸にされても、別にどうでも良かった。
 電動バイヴを引き抜かれて、駐車場の車の陰でまた尻を抱かれた。
 ゆさゆさと体が揺れ、おっぱいが揺れ、気が付いたら終わってた。
 中に射精されて太股に垂れてくる精液をぼんやりと見た。
 似非ラッパー風のチンピラはいなくなってた。
 首の真っ赤なチョーカーは、そのままだった。

 ──ああ、まだ終わってないんだな。

 ただ、ぼんやりとそう思った。
 案の定、すぐにケータイへメールがあった。
 機械的にケータイを開き、メーラーを起動して確認した。
 服を代えて体を綺麗にしておけと命令されていた。
 だから、した。
 再変身して、服を代えた。
 キャミとミニスカートにした。
 ハイヒールは歩きにくいので、今度はローヒールにした。
 そのまま夜道を歩いていたら3人の男に取り囲まれていた。
「こいつ?」
「話だとな」
「ちょっと歳いってね?」
「30前だろ? 25、6ってとこじゃね?」
「すげーオッパイ。こんなのザラにはいねーだろ」
「決まりだな」
「お前、連絡しとけよ」
「いや、確認確認」
 男達は口々に何か言っていたが、「オッパイ見せな」と言われた事だけ理解できた。
 だから、した。
 路上で、男が構えるカメラに向かって、自分でキャミソールを捲り上げた。
 “ぼろん”とおっぱいを放り出すと、たちまち3人の顔が好色そうな笑みで脂下がるのがなんだかおかしかった。
「うわすげ」
「これ、歯形か?」
「キスマークもすげぇな」
「まあ、これで確定だろ」
「何でもアリだな」
「そういう話だ」
「でもなんかおかしくね? 反応無さすぎ」
「頭足りねぇんじゃね?」
「いいんじゃね? オレら、別に抱けりゃあそれで」

 やっぱり抱かれるのか。

 もう、どうでもいい。

 好きにすればいい。

 ただ、そう思った。
 今日はこの3人が最後だといいな。どうせ今日はもう、カナちゃんの所には行けないんだし。
 そう思ってから、ユウはそれが嘘だと、自分でも気付いていた。

 護りたかった。

 ずっと護っていると思っていた。

 それだけが心の支えだった。

 でも、心が折れた。

 大好きなカナちゃん。
 大切な親友でパートナー。
 その人の強い思念があんなにも強く流れ込んできた。

 死ね。

 死ね。

 死んでしまえ。

 自分ではない自分に向けられた言葉。
 この姿は自分ではない。
 でも、自分でもあるのは確かなのだ。
 自分は哉汰に「死んでしまえ」と思われるようなことを、ずっと、何日も何週間も、彼に隠れて、彼にバレないように、知られないように、気付かれないように、ずっとずっと続けてきたのだ。

 彼を護るために。

 いや、彼を護るためだと、自分に理由を付けて。

 強くありたいと思った。

 強くあらねばと思った。

 でも、護りたいと願った人に嫌悪され、唾棄され、死ねと思われて罵倒されてまで強くあり続けられる心では、無かった。

 もう、彼の前には、以前と同じようには立てない。

 もう、彼の前には立てない。

 彼のそばには、いられない。



 ごめんね。



 ごめんね、カナちゃん。

 ごめんね。

 でも、安心して。

 カナちゃんは、ボクが護るから。

 何があっても。

 そばにいられなくても。

 ずっと。

 ずっと。


 ──カナちゃんは、ボクが護るから。


 ユウは、泣きながら3人の男に抱かれた。
 おっぱいを吸われ、しゃぶられ、抓られた。
 バックからガンガンと激しく突かれた。
 アナルにも挿入され、直腸で射精された。
 その白くてやわらかい尻を3人に引っ叩かれた。
 Lカップおっぱいが跳ね回るのも構わず、騎乗位で下から何度も突き上げられた。
 おっぱいを順番に噛まれた。
 腫れ上がるまで抓られ、叩かれ、握られた。
 フェラした唇で小便を飲み、キスで吸われた舌で男の肛門を嘗めた。
 男達に与えられる快楽に埋没していった。
 男達に快楽を与える事に埋没していった。
 そして。

 その間、ずっと。

 ずっと。

 ずっと。

 ユウは呟いていた。
 叫んでいた。
 譫言(うわごと)のように囁いていた。
 「ごめんね」「カナちゃん」「ごめんなさい」と、繰り返し繰り返し、まるで呪文のように言い続けていた。

§         §         §


 でも、そんな魔法はどこにも存在しない。

 そんな呪文で叶う魔法などは存在しない。

 それは彼女が、一番良くわかっていた。
 いつでも現実は冷酷で冷徹で厳格で無慈悲なのだ。だからこそそんな現実から人々を護るためにウィッチが存在し、哉汰を護るために自分がいた。

 ……はずだったのに。

 男達がユウを解放したのは、深夜の4時──もう朝方だと言ってもいい時間だった。
 12月も残り10日程になる頃には、日の出はずっと遅い。
 窓の外はまだ真っ暗で、部屋の四隅には闇が蟠(わだかま)っていた。
 ユウはモデル姿のままベッドの上で目覚め、視線だけで周囲を見回して、すぐ側にこちらへ横顔を向けている人影を見付けた。
 長身で体格の良い青年だ。
 顔付きは嫌味なくらい整っており、軽くブリーチした短めの髪はサラサラで良く手入れされている。

 ──「彼」だった。

 そのまま長いこと、ぼんやりと見やる。
 その人物は、ベッドの端に腰掛け、オレンジ色の小さな明かりで静かに本を読んでいた。
 真剣に開いた書面へ目を落とすその横顔は、整った風貌と共に実際の年齢よりも年を経ているように見えた。
 ズボンは履いていたが、上半身は裸だった。
 細身でありながら筋肉質な体躯には、もう何度抱かれたのかわからない。その肌触りや香りや味や舌触りまでもが、ユウの魂の深いところに刻み込まれていた。

 ああ、そうだ。

 このひとは。

 ──自分を、この「地獄」へと落としたひと。

 自分を脅して、見知らぬたくさんの男に貸し出し、体を売らせ、穢れた快楽を植え付け刻み付け教え込んだ、ひどいひと。

 一日の最後には必ず自分を抱き、愛を囁きながら体の深淵を穿(うが)つような激情を打ち込み、「印」を付けて体を適正化してしまう、ざんこくなひと。

 にくい、ひと。

『でも……どうして……?』
 優也としてのメンタリティでは、自分を裏切り、友を裏切り、決して許せざる憎悪の対象であるはずなのに、こうしてウィッチ・ユウとして相対(あいたい)してしまうと、どうしてこんなにも胸が切なくなってしまうのか。
「オレは、汚れた女しか愛せない」
 不意に、本の文字を追いながら「彼」が呟いた。いつもの、どこかフザケた感じの物言いではなかった。
 思い詰めたような、胸に大きな苦悩を抱えたような、罪人が懺悔するような口調だった。
 騙されてはいけない。
 どうせこれも演技なのだ。
 そう思うのに跳ね除けられないのは、子袋にたっぷりと射精されながら耳にする時の、あの声音に似ているからか。
 ユウは首の真っ赤なチョーカーが、既に外されている事に気付いていた。
 自分が目覚めてからずっと「彼」の横顔を見詰めていた事に、「彼」がいつから気付いていたのか気になったが、自分から「彼」に声を掛けるつもりは全く無かった。
 それでも「彼」はユウの答えを待たず、一人でポツポツと話した。

「こんな気持ちになったのは初めて」

「本当は男だから? でも今は女だ」

「俺ではパートナーになれないか?」

「愛してるんだ」

「自分の本当の姿がどっちか、自分でもわかってるんじゃないか?」

「ユーヤはどっちでいたいんだ?」

「男でいたいか? それとも、女でいたいか?」

「女でいいじゃないか」

「女でいてくれ」

「愛してる」

「オレにはオマエしかいないんだよ」

「オレの全てをオマエに刻み込みたい」

「そのためなら、何だってする」

「オマエがオレの女にならないのなら、もう何もいらない」

「哉汰がいるからオレのものになれないのなら、哉汰を殺す」

「愛してる」

「汚れた女しか、オレは愛を感じない」

「オマエは汚れるたびに綺麗になる。美しくなる」

「オマエは美しい」

「汚れたオマエは美しい」

「愛している」

 こんなことは初めてだった。
 「彼」がこんなにもたくさんの言葉を、それも、きっと「彼」の心の奥底に沈んでいた、「ほんとうの彼」に近いところにある言葉を、訥々と語るなんて。
『でも……』
 ユウは、自分でも何がなんだか、どうしてそうなってしまったのかわからないまま、目尻から大粒の涙をこぼした。
 重たいおっぱいを“ゆらゆら”と揺らしながら身を起こすと、長い黒髪がさらさらと肩を滑り落ちる。
 「彼」が手を伸ばし、モデル姿のユウのサングラスを指で摘むと、音も立てずに砕けて、輝きながら飛散した。

「オレはオマエがどんな女でも愛せる」

 ボクをこんな風にしたのはキミじゃないか。

「どれだけたくさんの男とセックスしても、それでオマエの輝きが曇るなんて思っていない」

 嫌がるボクを、たくさんの男とセックスさせたのもキミじゃないか。

「むしろ男に穢されれば穢されるほど、オマエは美しく、強く輝く」

 勝手なこと言わないで。ボクはキミのために生きてるわけじゃないし、キミのものでもない。

「オレのものだ」

 キミのものじゃない。

「オレのものだ」

 ちがうっ!

「オレならどんな事でも全て受け入れる」

 受け入れてくれなくたっていい。

「男達のセックスに溺れ、快楽を貪って精液に狂ったオマエでも」

 ボクを……ボクをそんな風にしたのはキミじゃないかぁ……。

「哉汰はオマエを受け入れてくれるのか?」

 受け入れてくれるよっ!

「本当か?」

 本当だもんっ!

「男達のセックスに溺れ、快楽を貪って精液に狂ったオマエでもか?」

 キミのせいでしょぉ!?

「そうだ。オレだ。だからオレだけがオマエを愛せる。哉汰は、無理だ」

 そんなこと……ない……。

「ユウ。愛してる」

 キミなんか大嫌い!

「愛してる」

 だいきらい。

「愛してる」

 だい…きらい……。

 いつしかベッドの上で仰臥したまま両手を押さえられていた。
 涙のこぼれた目尻、額、頬、顎、首筋、耳たぶ、鎖骨、肩……と、順番に丁寧に一つ一つゆっくりとキスされていく。キスされたところが熱を持ち、それが繋がって体全体が“じんわり”と熱くなってくると、下腹部の奥にあるオンナの臓器が“じゅわん”と啼いた。
「いや……」
 キスは、男達に付けられたキスマークや歯形や痣を、一つ一つ吸い上げるようにしてなぞり始める。
 首筋から胸元、そしておっぱい。
 腹から脇腹を過ぎ、左のおっぱいをゆったりと揉まれながら“ころん”と転がされて初めて両手を解放されていた事に気付いた。
 キスは左脇腹を過ぎ、うつ伏せにされた背中に至り、そこからお尻の方までゆっくりと下がってゆく。
「んっ……んっ……んっ……」
 “ぴくんぴくん”と、恥ずかしいほど反応してしまう自分の体を呪いながらも、ユウは「彼」が左脚を持ち上げ、その間に頭を潜り込ませたのを知った。
「あっ……いやっ……」
 「彼」のキスが、広げられた股間にあるキスマークや歯形や痣をなぞり始める。
 さあっと内腿に朱が入り、綺麗なピンク色に染まった。
「うっ……うっ……うぅっ……うっ……」
 翻弄されていた。
 それも当然だった。今や「彼」は、ユウ以上にユウの体を事を良く知っていたからだ。

 どこを責められたらどうなるか。

 どこを愛されたらどう乱れるか。

 ユウの弱いところをユウよりも正確に把握している。
 しかも、今日のはいつもと違う。
 いつもよりずっと優しく、執拗で、そして丁寧だった。
「んぅううう〜〜〜〜っ!!」
 右手の指を噛んで声を潜めるが、気持ち良いところを気持ち良いように次々に責められ、ユウはおっぱいを“ゆさゆさ”と揺らしながら身をくねらせる事しか出来なかった。
 散々男達にペニスを突っ込まれ、何度も何度も膣内(なか)で射精されたあそこを、「彼」が嘗める。クリトリスを包皮の上から吸い上げ、舌で揺らし、捏ね、唇で小陰唇を挟んで引っ張り舌で嬲る。“じゅるるっ”と音を立てて啜られた後で、長い舌が“ぬっぬっぬっ”と膣孔の中を掻き出すかのように、そのざらりとした表面で擦り上げた。

 狂う。

 狂ってしまう。

 声なんか出したくなかった。
 あの真っ赤なチョーカーが無い状態でいつものように責められたら、自分がどんな破廉恥で恥知らずなことを口走ってしまうのか、簡単に想像出来てしまったから。
 そして、きっと言ってしまう。
 口にしてはいけない言葉を言ってしまう。
 言わされてしまう。
 それだけは、絶対に嫌だった。
「愛してる」
 甘ったるくも真剣な「彼」の囁きが耳朶を打つ。
 それは、耳から滑り込み脳を侵す「毒の言葉」だった。
「オマエも好きだと言ってくれ」
 いやいやと首を振り、涙をこぼして抗うが、「彼」はそれを許さないとでも言うように“ぷくん”と充血して膨らんだ乳首を“きゅきゅ”とリズミカルに摘んで抓った。
「いやっ……いやっ、ゆるしてっ……ゆるしてぇ……」
「愛してる」
「やだっ! やだぁ!」
「愛してる」
「ボクはっ……きらいっ……きらいっ!!」
「オレは愛してる」
「ひいんっ!!」
 “ぬるん”と、体を割り開いて入ってくるものがあった。
 「彼」だった。
 「彼」のモノだった。
 もうすっかり慣れ親しみ、他のどんな男達に抱かれても、これだけはわかるようになってしまった、「彼」のペニスだった。
「ひうっ……うぅふっ……うぅ〜〜んっ……」
 “くうっ”と肩を竦め、目を瞑り、唇を引き結んだユウの両足が幾度となく跳ね、爪先が丸まって震える。
 “チカチカッ”と、閉じた瞼の裏で光が瞬き、あそこと子宮と脊髄と乳首と脳が直結してものすごいエネルギーが走り抜けたような感覚に涙が滲む。
 「彼」が入ってきただけで、立て続けにイッてしまったのだった。
 認めたくない。
 でも、認めないといけないのか。
『カナちゃん……』
 もう、大切なひとの顔が、浮かばない。
 もう、大好きな彼の声が思い出せない。
『ボク……もう……』
 ゆっくりとした、膣にペニスの形を教え込むような抽送をする「彼」に、ねっとりとしたキスをされながら、ユウは涙をこぼした。

 それはユウが初めて自覚した、哉汰との大切な日々への、決別の涙だった。


この記事へのコメント
これは・・・
ほんとにいろいろな意味でひどい話ですね・・・だからこそ救済をこの目にするまで止められない・・・。ほんとにタチの悪い・・・w。
どうかがんばってください。
Posted by アンディ at 2012年09月27日 02:08
まだだ!まだ終わらんよ!
哉優のらぶらぶちゅっちゅを見るまでは!
Posted by 青玉 at 2012年09月27日 07:39
 らぶらぶっちゅっちゅを先に書いたりしてます。
 でもその前に広げた風呂敷を畳む作業が難航。なんでこんな設定付けたんだ、エロなんだからそんなのいーじゃん、そう思いながら、一方で私のゴーストが叫ぶのです。「エロを生かすのはエロじゃない部分だろ?」と。

 それはそれとして、不条理系ツンドラ娘に浮気もしてます。そっちの方が筆がのってたり。
 「悪友TS少女」? そっちも進んでます(←浮気し過ぎだろオマエ)。
Posted by 推力 at 2012年09月27日 10:36
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