■感想など■

2012年09月18日

[LIPS]『Piece.04』「二人の睦」〜愛しあうということ〜

■■〜もう一度聞かせてほしい〜■■



 匂い。



 ……汗の匂い。

 彼の、匂い。

 荒れ狂う海の波間で風と雨に翻弄され、くるくるとまわりながら何度も転覆しそうになる。
 そんな、嵐の中へ無謀にも漕ぎ出した小船のような感覚が薄れ、ゆっくりと感覚が戻ってくる。

 最初は、彼の肌の感じ。
 しっとりと濡れている。
 噴き出した汗が背中を伝う。
 ぎゅっと抱きしめる。
 胸に、彼を感じたい。
 でも彼は、私を気遣って重みを任せてくれない……。
 重くても、いいのに。
 重いのが、いいのに。

 その次は、音。
 彼の息吹き。
 少し、荒い。
 熱い吐息。
 私の左の耳に吹きかけられる、吐息。
 喉を鳴らす音。
 布擦れの音。
 どきんどきんどきん……とした、心臓の鼓動の音。
 これは、私の鼓動。

 そして、匂い。
 汗の匂い。
 彼の匂い。
 逞しくて乱暴でワガママな、彼の匂い……。
 蜂蜜を光に溶かしたような金色の髪から立ち昇る、優しい整髪料の匂い。

 彼が、頬にキスをする。

 私の頬にキスをする。

 おでこにも。
 そして、たっぷりじらして、唇に。
 私は、ぼおっとして、くたっとして、彼に、全てを任せる。

 不意に、彼の存在が遠のく。

 ぬるっ……と、彼が、出ていく……。

 喪失感。
 今まで自分の体の一部だったものを無くしてしまうような、哀しみと切なさが胸に満ちる。
 繋がっている時は、確かに感じられたのに。
 一つに溶け合ったような、どこまでも混じりあっていくような、そんなとろけるような感覚にひたれたのに。

「ク……クラ……ド……」

 名前を呼びたい。

 あなたの名を呼びたい。
 でも、うまく喋れない。
 必死に、離れていこうとする彼を抱きしめる……。
 太くて逞しい首を引き寄せて、ほっぺたを彼のにすりすりする。

 やだ。

 行っちゃやだ。
「どうしたの?」
 優しい声。
 戸惑ってる。

 どうして?

 どうしてわかってくれないの?
 そう思うと、憎らしくなる。
 こんなにもあなたが好きなのに、それをわかってくれないあなたが憎らしくて、悲しくなる。
 言葉に出来ない。

 伝えたい。

 でも、出来ない。
「ティ?」
 耳元で囁くあなたの声は、私をいつでも幸せにしてくれる。
 満ち足りた気持ちにしてくれる。
 でも、涙は止まらない。
 止められない。
「ティファ……」
 名前。
 私の名前。
 私は、あなたが口にする私の名前が、いちばん好き。
 戸惑ったような、困ったような、ちょっと拗ねたような、そんなあなたの声で囁かれる私の名前が、この世でいちばん好き。

 だから。

 ね?

 あのね?

 もう一度、優しくキスして。
 そして囁いて。

『好きだよ』

 その一言で、いいの。
 その一言で、私は闘える。
 あなたのために闘える。

 たとえこの命を失うとしても。

 だから。

 ね?

 クラウド。

 だから……。


         −おわり−

■■[LIPS]『Piece.04』「二人の睦」〜愛しあうということ〜■■
■■〜もう一度聞かせてほしい〜■■

「2012/09/18 00:00」投下開始
「2012/09/18 00:00」完了
この記事へのコメント
うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
Posted by 青玉 at 2012年09月19日 12:35
 ど、どうしたんですか?
Posted by 推力 at 2012年09月20日 10:11
萌えた、と言っておきましょう
Posted by 青玉 at 2012年09月20日 12:11
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