■感想など■

2009年05月08日

第1章「男と女の境界線」

■■【6】■■
 それから3日間、圭介はただひたすらに眠り続けた。
 何度も夢と現を往復し、どれが現実でどこからが夢なのか、朦朧とした意識の中では判断出来なかった。夢の中で母がめそめそと泣き、父がガハハと酒を飲みながら笑った。かと思えば母がニコニコと嬉しそうに笑って何度も頬擦りしてきて、父は憮然とした顔で酒を飲んでいた。現実でも夢でも、機嫌が良くても悪くても酒を飲んでいる父の頭を思い切り引っ叩いてやりたかったけれど、ほとんど動かない体ではどうしようもなかった。
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2009年05月07日

第1章「男と女の境界線」

■■【5】■■
 家に帰り、玄関の鍵を開けて、どうにか2階の自分の部屋まで上がったところまでは覚えている。
 けれど、圭介にはその先の記憶が無かった。
 気持ち悪い。
 胸がムカムカして、胃がぐるぐると動いているのがわかる。胃がせりあがって、何も入っていない中身をそれでも放出しようと痙攣するように震えた。なんとか制服を脱いでベッドに潜り込んだものの、圭介には、もう自分がどんな格好をしているのかさえわからなかった。
 シャツを着ているのかどうかもわからない。
 ズボンは?ベルトは外しただろうか?
 そもそも本当に自分は制服を脱いだのだろうか?
「……ぅ……んっ……」
 体の感覚が無かった。
 ただ、熱かった。
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2009年05月06日

第1章「男と女の境界線」

■■【4】■■
 目が覚めた時、圭介は一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。
 体が、ドロドロに溶けてしまったかのようだ。息をする事で、かろうじてコレが自分の体なのだと認識出来る感覚…………。
 熱い。
 服を脱いでしまいたい。
 ここは、どこだろう?
 白い天井。
 蛍光灯。
 クリーム色のカーテン。
 声。
「…………こえ…………??…………」

 声が聞こえる。

 叫ぶ声。
 ボールを追う声。
 掛け声。
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2009年05月04日

第1章「男と女の境界線」

■■【3】■■
 ぐったりとして動かなくなった圭介を背負い直し、健司はそのまま保健室へ向かった。当然のように圭介の自称『保護者』であるところの由香も、後を“てとてと”とついて行く。伸吾には、教室に先生が来たら遅れる理由を伝えてくれるように言って、1Fのトイレの前で別れる。担任の「はるかちゃん」は、教師2年目の真面目さでもって結構時間に正確なため、きっと今頃なら、2階の渡り廊下を教室に向かって歩いて来ている頃に違いない。

 この学校は、生徒用昇降口から入ったその建物が「教室棟I」で、隣の、職員室や保健室、図書室などがある「管理・学習交流棟」とは、カッチリ並行に建てられている。
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2009年05月03日

第1章「男と女の境界線」

■■【2】■■
 彼、山中圭介がこの街に引っ越してきたのは、小学校の3年生の時だった。
 自分では、もうそれが本当にあったことなのか定かではないが、両親の話によると小学2年生の1学期の時、原因のわからない高熱で一週間ほど昏睡状態となった事があるらしい。
 その時は夜間でもあり、家から近く、また救急救命センターとしても機能している大学医学部附属病院へと運ばれたのだと、母は言った。
 けれど、その病院は地元でも優秀な医師が揃っている事で有名だったものの、医師達の少年に対する扱いが気に食わなかったとかで、父が強引に病院を移してしまったのだ。
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2009年04月30日

第1章「男と女の境界線」

◆◆ 第1章 ◆◆ 「男と女の境界線」

 最初のその変化に気付いたのは、幼馴染の少女だった。

■■【1】■■
 満天にひろがる青空は、ゆったりと流れる雲と共にどこまでも広かった。
 5月。
 天気はすこぶる良い。
 風はゆるやかで湿気も少なく、初夏の爽やかな空気を制服の中に運んでくれる。昼近くになれば、温められた空気で汗ばむほどの陽気になるかもしれないけれど、少年は一年のうちで、この時期の登校時間が一番好きだった。
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